-国連の行政財政問題- |
1 国連の活動が拡大するにつれ,その基盤をなす国連の行政,人事および財政について,多くの問題が生じているが,わが国としても,国連外交を有効に進めていくうえから,このような国連の管理運営問題にも積極的に参画することが要請されている。
2 国連の通常予算の規模は,1973年において,2億ドルを超えるに至っているが,ソ連等一部諸国がかつてのスエズおよびコンゴにおける国連の平和維持活動に対する分担金の支払いを拒否しており,また,これら諸国が通常予算の一部項目に対する分担金の支払いをも拒否してきていること,さらに中国代表権交替以前の1,660万ドルにのぼる台湾の通常予算に対する滞納金が存在することなどから,国連は,1972年末において,約8,640万ドルの累積赤字をかかえている。しかも,通常予算の一部項目に対するソ連等の支払拒否が今なお続いているため,事態を放置する場合には,今後とも,毎年約400万ドルずつ赤字が累積していく事情にある。かかる国連の財政問題の解決探究のため,一昨年の国連総会で,米国,ソ連,フランス,英国,中国のほかわが国を含む15カ国で構成される財政特別委員会が設立され,この委員会において,昨年中を通じ過去の累積赤字の解消と赤字要因となっている通常予算の一部項目の処理方法につき包括的,抜本的な解決案を得るべく検討が重ねられてきた。しかし,ソ連,ポーランドの反対と中国の不参加などのため,委員会としてまとまった成案を得るに至らず,昨年の国連総会では,財政特別委員会の報告をテーク・ノートするとともに,事務総長に対し,解決の探究を要請する決議と赤字解消のための自発的拠出を受け入れるため事務総長の特別基金を設立する決議が採択されたにとどまった。
3 米国は,現在,通常予算に対し,分担率31.52パーセントという加盟国中最大の財政負担を行なっているが,一昨年来,米国政府は,国連という世界的機関が財政面において特定の一加盟国に過度に依存することは望ましくなく,また,一国の政治的影響力と財政的寄与との間に余りに大きな格差が生じることは好ましくない等の観点から,米国の国連分担率は25パーセントに削減されるべきであるとの考え方を折にふれ表明してきた。昨年の国連総会において,米国はその国連分担率を原則として25パーセントに削減する趣旨の決議案を提出し,その成立を最重点事項として推進した。これに対し,ソ連,中国,チリ,インドなどは,分担率は各国の支払能力(純国民生産)に応じて定められるのが原則であることを主張して反対したが,結局,賛成81(わが国を含む),反対27,棄権22と重要事項に必要な3分の2以上の賛成を得て採択された。また,分担率問題に関しては,米国決議案のほか,(i)一人当たり純国民生産の水準の低い国に対する分担率軽減措置を発展途上国に,さらに有利なように改訂を求めるブラジル決議案,および,(ii)現行の最低分担率O.04パーセントをO.02パーセントに削減するよう求めるイエメン決議案が成立した。1974年から1976年の国連次期分担率は,以上の諸決議をも考慮に入れ,本年春の分担金委員会で検討のうえ,本年の国連総会で決定される。
4 今日,国連職員の事務能率の低下,職員数の増加,これに伴う経費の増大といったことが問題とされているが,特に職員の給与制度を中心とする人事制度の改善は,国連にとって急務である。昨年の国連総会において,1974年1月より国連を始め各専門機関事務局職員約3万5,000名の人事問題を検討するため国際人事委員会の設立が決定された余,事務総長は本年の国連総会にその委員候補および付託事項等について報告を提出することとなっている。
5 国連事務局に勤務する邦人職員の数は,1966年30名,1968年33名,1970年46名,1972年62名と着実に増加しているが,邦人職員数の妥当とされる水準が74名から103名であることに照らし,わが国は依然として職員数の過少な国となっている。また,このような職員の数の問題にもまして,わが国の場合,幹部級の職員が極端に少ないことが特に問題と考えられる。わが国の国連に対する財政的寄与の増大に伴い,わが国が国際機関の管理運営面に一層関与していくための重要な手段として,さらには国際協力に対する人的な寄与との観点からも現状の改善に努力していくことが要請されている。