
原子力安全及び核セキュリティに関する国連ハイレベル会合(概要と評価)
平成23年9月22日
国際原子力協力室
9月22日,ニューヨークの国連本部において「原子力安全及び核セキュリティに関する国連ハイレベル会合」が開催されたところ,結果概要以下のとおり。
本会合は,原子力安全強化等に向けた国際社会の努力をハイレベルで支持し,モメンタムを与えるために開催され,福島第一原発事故の影響,原子力安全の強化,原子力安全及び核セキュリティ,緊急事態対応の強化等について発言が行われた(会合の模様は,UNウェブキャストにより世界に同時中継された。)。
1.開会セッション(首脳レベル)
- (1)潘国連事務総長による開会挨拶の後,ナスル国連総会議長(カタール国連代表部常駐代表),天野IAEA事務局長(ビデオ・メッセージ),ルーセフ・ブラジル大統領,サルコジ・フランス大統領,我が国野田総理(演説文:別添1,英訳:別添2。)(首相官邸ホームページへリンク)
,ナザルバエフ・カザフスタン大統領,李明博韓国大統領,ヤヌコーヴィチ・ウクライナ大統領による演説が行われた。発言者からは,我が国に対する連帯の表明,原子力安全の国際的強化のための国際原子力機関(IAEA)の強化の必要性,22日にIAEA総会で確定した原子力安全に関するIAEA行動計画の重要性等が表明された。
- (2)野田総理からは,事故は収束に向かっている,日本は事故の全事象を国際社会に開示し教訓を発信する,原子力発電の安全性を世界最高水準に高める,原子力を利用する多くの諸国の関心に応える,原子力施設の防護を強化する,エネルギーについては科学を動員し,合理性に立脚して,早急に次の行動を決める,旨述べた。
2.分科会(閣僚レベル(一部首脳も参加))
- (1)開会セッションに続き,2グループに分かれ,共に「原子力安全及び原子力災害リスク対応の強化」をテーマとする分科会が開催された。
- (2)第一分科会においては,我が国玄葉外務大臣がブラジルのメルカダンチ科学技術・イノベーション担当大臣とともに共同議長を務め,冒頭発言(発言文:別添3,和訳:別添4。)及び後半の議事進行を行った。共同議長の冒頭発言に続き,ドゥアルテ国連軍縮担当上級代表が,東京電力福島第一原発事故後の国連関連機関の取組を紹介。また,フローリーIAEA事務次長によるビデオ・メッセージの後,20か国以上の国が発言を行った。
- (3)玄葉大臣からは,我が国が総力を結集して事故の収束に努めていることを紹介するとともに,国際社会に対し,被災地の方々の不安を解放し,風評被害を防止するため,放射能の人体への影響について,科学的客観性を基礎に科学的知見を結集して,一般市民に分かりやすく発信するよう呼びかけた。
- (4)第二分科会においては,韓国(金星煥外交通商部長官)及びフランス(モリゼ・エコロジー・持続可能な開発・運輸・住宅大臣) が共同議長を務め,共同議長による冒頭発言,IAEAによるビデオ・メッセージの後,20か国以上の国が発言を行った。
- (5)いずれの分科会においても,事故時における国際的な情報共有の重要性が言及されるとともに,原子力安全を強化するための方途として,IAEAによるピア・レビューの拡充,IAEA安全基準の強化,規制当局の強化,原子力安全に関する国際的な法的枠組みの強化等が指摘された。
3.閉会セッション
- (1)分科会終了後,代表団が一同に会する形で閉会セッションが行われた。議長である国連事務総長による開会の後,分科会の共同議長4名(ブラジル,日本,フランス,韓国)から各分科会の議論を踏まえた発言が行われた。第一分科会の共同議長である玄葉外務大臣からは,議論の分科会の議論の模様を紹介した。
- (2)最後に,事務総長から議論の総括を行うとともに,会合で表明された意見を事務総長による理解として取りまとめた議長総括を作成する旨が紹介され,会合は終了した。
- (3)また,玄葉大臣が第一セッション冒頭で述べた,放射能の人体への影響についての呼びかけは,議長総括文書にも反映され,閉会セッションで事務総長も,その点の重要性に言及した。
4.とりあえずの評価
- (1)本件会合は,原子力安全強化等に向けた国際社会の努力をハイレベルで支持し,モメンタムを与えることを目的としたものである。本件会合には,我が国以外にも,ブラジル,フランス,ハンガリー,カザフスタン,リトアニア,韓国及びウクライナの首脳,オーストリアの副首相,多くの国の外相が出席し,異口同音に,事故に遭遇した日本への連帯,原子力安全向上の必要性,事故の際の情報共有の重要性,そのためのIAEAの重要な役割等々が述べられた。
- (2)放射能の人体への影響についての科学的客観性を基礎にした評価の方策を適切な国際機関が実施し,一般市民に分かりやすく発信すべきである,との玄葉大臣の問題提起は,議長サマリーにも反映され,閉会セッションで事務総長もこの点の重要性に言及し,玄葉大臣の問題提起はこの会議の成果の一つとなった。
- (3)本件会合は,原子力安全を強化するため,国際社会に対し,高いレベルでの政治的なメッセージを発出することを目的として開催されたものであるが,所期の目的を果たし得たものと考えられる。