軍縮・不拡散

国際原子力機関(IAEA)第56回総会の結果概要

平成24年9月21日

(写真)国際原子力機関(IAEA)第56回総会の概要

 9月17日から21日までウィーンにおいて開催された国際原子力機関(IAEA)第56回総会の概要は以下のとおり。

1.山根外務副大臣の出席 

  1. (1)今次総会には我が国政府代表として,山根外務副大臣が出席し,総会初日(8番目)に政府代表演説を行った。
  2. (2)山根副大臣の演説の主要点は以下のとおり。(同演説の全文の和文(PDF)英文(PDF)

原子力安全の強化

  • 東電福島第一原発事故(以下「福島原発事故」という。)の教訓・知見を更に国際社会と共有するため,本年12月に「原子力安全に関する福島閣僚会議」を開催する。
  • IAEA原子力安全行動計画への取組を紹介。
  • 天野事務局長が事故の教訓に関する包括的な報告書を2014年に作成する旨表明したことを歓迎し,積極的に協力していく。

核セキュリティの強化

  • 福島原発事故からの教訓と核物質防護の最新のIAEA勧告を国内規則に反映。また,グローバルな核セキュリティ強化のための途上国支援の拡充を図る。

核不拡散体制強化の取組

  • 北朝鮮の核問題は,東アジア及び国際社会全体の平和と安全に対する脅威であり,NPT体制への重大な挑戦。
  • イランの核問題については,イランが国際社会の疑念を払拭し,その信頼を得ることが不可欠。
  • 保障措置強化のため,追加議定書普遍化に向け今後も積極的に取り組む。

技術協力・人材育成

  • 技術協力で安全,セキュリティ,保障措置が確保された原子力の平和的利用に貢献。
  • IAEAによる人材育成の取組,邦人のIAEA事務局での活躍を支援。

天野事務局長のリーダーシップ

  • 我が国は,いずれの分野のIAEAの取組も予算を抑えつつ効率化を通じて実現してきている天野事務局長のリーダーシップを高く評価。これを引き続き支えていく。

「革新的エネルギー・環境戦略」の決定

  • 9月14日の日本政府の「エネルギー環境会議」による「革新的エネルギー・環境戦略」の決定を受け,その概要を紹介。

2.事務局長演説

 総会初日冒頭の演説において,天野IAEA事務局長が演説。「原子力安全に関する福島閣僚会議」に言及し,本件会議においてIAEA事務局は,これまで開催された国際専門家会合の結論を概観する報告書を提示する旨発言を行った他,同事務局は,福島原発事故に関する包括的な報告書を2014年に最終的にまとめるよう準備する旨発言。

3.主要な議題 

(1)原子力安全

 最高水準の原子力安全を達成するため,福島原発事故の教訓を用いていくこと等を内容とする決議がコンセンサスで採択された。同決議は,昨年12月の「事故収束に向けた道筋」の完了を含む,同事故の収束に係る実質的な進展に留意するとともに,IAEA原子力安全行動計画の包括的な実施や「原子力安全に関する福島閣僚会議」への積極的な参加などを求めている。

(2)核セキュリティ

 昨年の総会と同様,核物質及び原子力施設の高いレベルの防護を維持し,核セキュリティ強化のための国際的な取組に対して支援を提供すること等を求める決議がコンセンサスで採択された。

(3)北朝鮮

 「IAEAと北朝鮮との間のNPT保障措置協定の実施」に関する決議が,コンセンサスで採択された。同決議では,北朝鮮による招待が中断されIAEAが監視・検証を行えなかったことに留意し,核政策を見直すとの北朝鮮の最近の声明に懸念をもって留意し,いかなる核政策の見直しにおいても非核化及び六者会合共同声明へのコミットメントを再確認することを強く要請。また,北朝鮮のウラン濃縮計画及び軽水炉建設に懸念を表明し,北朝鮮に,すべての核兵器及び既存の核計画の放棄並びにすべての関連する活動の即時停止を含め,関連の安保理決議下の義務の完全な遵守及び六者会合共同声明のコミットメントの実施を強く要請。

(4)中東におけるIAEA保障措置の適用

 すべての域内国にIAEA保障措置に関連する国際的な義務の遵守を求め,すべての関係国に域内の非核地帯設立に向けた取組を求める決議が,賛成多数で採択された(決議全体は賛成111(我が国他),反対0,棄権8。すべての域内国に対してNPTへの加入を求めるパラ2は分割投票にかけられ,賛成110,反対1(イスラエル),棄権8。)。

(5)イスラエルの核能力

 イスラエルの核能力に関し,例年,アラブ諸国が,イスラエルに対しNPTへの加入を求めるとともに,全ての核施設をIAEA保障措置の下に置くことを呼びかける内容の決議案を提出してきたが,昨年に引き続き,本年も決議案は提出されなかった。ただし,本議題の下で各国が発言。

(6)保障措置の強化・効率化

 包括的保障措置協定及び追加議定書の可及的速やかな締結等の奨励,それらの未締結国に対するIAEAの支援への協力などを盛り込んだ本年の保障措置決議案は,賛成多数で採択された。決議全体は賛成89(我が国他),反対0,棄権16。右投票に先立ち,パキスタンの求めにより,包括的保障措置協定の発効を全ての国に求めるパラの支持につき分割投票(2010年と同様)が行われ,支持された。また,核軍縮におけるIAEA保障措置の役割に関するイランの修正案が投票に付されたが否決。

(7)技術協力,原子力応用に関する決議

 昨年の総会と同様に,技術協力に関しては,活動強化の必要性を強調するとともに,技術協力プログラムを通じて技術移転を促進するよう事務局に求めること等を内容とする決議が,また,原子力の応用に関しては,ツェツェ蠅及びマラリア蚊等の撲滅支援強化,原子力導入等における原子力安全の重要性,革新的原子力技術開発におけるIAEAの活動の重要性を確認すること等を内容とする決議が,それぞれコンセンサスで採択された。

4.二国間の意見交換

 各種の二国間の意見交換の中で我が方より,エネルギー環境会議による「革新的エネルギー・環境戦略」の内容等につき説明を行った。

 (なお,トリニダード・トバゴ,フィジー,サンマリノの新規加盟が承認された。)


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