軍縮・不拡散

国際原子力機関(IAEA)第53回総会の結果概要

平成21年10月6日

1.概要

(1) 9月14日から18日まで、ウィーンにおいてIAEA(国際原子力機関)第53回総会が開催され、我が国政府代表として、野田聖子内閣府特命担当大臣(科学技術政策)(当時)が出席した。

(2) 野田大臣は、総会初日に一般演説(演説順序は1番目)を行い、我が国の原子力の平和的利用及び核不拡散に関する取組みを包括的に表明するとともに、天野之弥次期事務局長の下で全ての加盟国が一致団結して困難な諸課題に立ち向かっていくことを呼びかけた。


2.主要な議題

(1)天野次期IAEA事務局長の任命の承認

 エルバラダイIAEA事務局長の後任として、天野核不拡散・原子力担当大使の任命が満場一致で承認され、天野大使は宣誓の後、指名受諾演説を行った。

(2)北朝鮮

 「IAEAと北朝鮮との間のNPT保障措置協定の実施」に関するIAEA総会決議がコンセンサスで採択された。ポイント以下のとおり。

  1. (イ) 本年5月の核実験実施を非難。
  2. (ロ) 更なる核実験を実施しないことを要請。
  3. (ハ) 安保理決議1718及び1874に基づく義務の加盟国による完全実施の重要性を強調。
  4. (ニ) NPTの完全な履行及び包括的保障措置の完全かつ効果的な実施に向けたIAEAとの協力を要請。
  5. (ホ) すべての核兵器及び既存の核計画の放棄を含め、六者会合共同声明及びその他の六者の約束の完全実施の重要性を強調。
  6. (ヘ) 六者会合への即時無条件の復帰を要請。

(3)中東におけるIAEA保障措置の適用

 すべての域内国に対してNPTへの加入を求めるとともに、IAEA保障措置に関連する国際的な義務の遵守を求める内容の決議が、賛成多数で採択された。

(4)イスラエルの核能力

 イスラエルに対しNPTへの加入を求めるとともに、全ての核施設をIAEA保障措置の下に置くことを呼びかける内容の決議案が提出され、賛成が反対を僅かに上回り、採択された。

(5)保障措置の強化

 包括的保障措置協定及び追加議定書を締結していない国に対して、可及的速やかに署名・締結を行うよう求めること等を内容とする決議が採択された。包括的保障措置協定の締結をすべての国に求める部分の分割投票に加え、決議全体も投票に付されたが、賛成多数で採択された。

(6)原子力施設に対する武力攻撃等の禁止

 平和的目的に利用される原子力施設に対するいかなる武力攻撃も国連憲章、国際法及びIAEA憲章の違反を構成するとして、原子力施設の防護の重要性を確認する内容の総会議長声明「稼働中乃至建設中の核施設に対する軍事攻撃乃至攻撃の威嚇の禁止」が発出された。

(7)原子力技術及び応用

 原子力技術及び応用に関する決議は、非発電分野及び原子力発電分野の両者を対象とした包括的なものとなっており、コンセンサスで採択された。決議の内容は、非発電分野については、医療用アイソトープ不足への懸念、ガン治療、ツェツェ蝿撲滅、水資源管理へのアイソトープ利用、飲料水の経済的生産の分野における中小型炉の利用の促進における支援強化等について、原子力発電分野については、原子力発電所導入等に際しての核不拡散、原子力安全、核セキュリティ確保の重要性、中小型炉開発及び革新的原子力技術開発の促進におけるIAEAの活動の重要性等についてそれぞれ言及したものである。

(8)核セキュリティ

 核セキュリティに関する決議は、昨年の総会は投票に付されたが、本年は、コンセンサスで採択された。決議の内容は、核物質の物理的防護や不法移転等に対する措置の重要性、核物質防護条約の普遍化に向けた取組みの要請、改正核物質防護条約及び核テロ防止条約の署名・批准促進等である。

(9)原子力安全

 原子力安全に関する決議は、昨年同様、コンセンサスで採択された。決議の構成は、昨年までは、輸送とそれ以外の二部構成であったが、本年は全体を一つにまとめたものとなった。内容としては、IAEA国際耐震安全センター設置等に言及している。

(10)技術協力

 IAEA技術協力活動を強化する必要性を強調し、すべての加盟国に対して技術協力基金に完全かつ遅滞なく拠出するよう求めるとともに、後発開発途上国に対する協力の重要性等を謳った決議がコンセンサスで採択された。


(なお、カンボジア及びルワンダの新規加盟が承認され、所定の手続きを経て正式に加盟する見通し。)

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