軍縮・不拡散

原子力安全に関する福島閣僚会議(結果概要)

平成24年12月17日

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 12月15~17日,福島県郡山市において「原子力安全に関する福島閣僚会議」が開催され,117の国及び13の国際機関が参加(46の国・国際機関から,閣僚・国際機関の長を含むハイレベルが参加)し,閣僚級の本会合(15日)及び専門家会合(16~17日)が開催されたところ,概要以下のとおり。

 本件会議は,閣僚及び専門家レベルで,東京電力福島第一原子力発電所事故から得られた知見及び教訓を国際社会と共有し,更に透明性を高め,そして,原子力安全の強化に関する国際社会の様々な取組の進捗状況を議論することを目的として,我が国及び国際原子力機関(IAEA)が共催したものであり,事故から1年9ヶ月しか経っていない中で今回の会議を福島で開催することにより,原子力安全の強化の重要性につき強いメッセージを発信することができたものと考える。また,IAEA原子力安全行動計画の策定から1年を経たタイミングで国際社会の取組についてハイレベルで議論が行われたことにより,国際的な原子力安全を更に強化していくことにつながると期待される。

1.閣僚級本会合(15日)

 冒頭,共同議長(玄葉外務大臣,ファディラ・ユソフ・マレーシア科学技術革新省副大臣)による開会挨拶が行われ,玄葉大臣は,国際的な原子力安全強化という共通の目的に向けた議論への期待とともに,福島訪問を通じ,参加者には震災後の福島の歩みを感じていただきたいとして,被災者・被災地への思いを表明した。
その後,玄葉大臣による我が国主催者演説,天野IAEA事務局長の挨拶,潘基文国連事務総長挨拶の代読に続き,各国から演説が行われ,本会合終了に際し,成果文書として「原子力安全に関する福島閣僚会議共同議長声明」が発出された。

(1)我が国主催者演説

  1. ア.主催者として玄葉外務大臣が演説を行い,被災者生活再建・被災地復興への強い決意とともに,避難生活を余儀なくされている方,放射線の影響に不安を覚える方々が今も多くおられることに触れ,今回の会議を通じて世界の叡智を被災地に集めるとともに,被災地の取組を世界に発信し,今回の会議を廃炉,除染及び廃棄物処理,健康管理等,国際社会との協力を更に強化する契機としたいと述べた。
  2. イ.また,オンサイト・オフサイトの事故対応の現状を説明し,我が国は,廃炉,除染,原子力安全等の研究開発や,健康影響評価の分野で積極的に貢献していくと述べた。
  3. ウ.さらに,我が国の原子力規制委員会の創設を紹介の後,原子力安全分野の我が国の国際貢献として,(1)引き続き事故の知見・教訓を共有していく,(2)IAEA安全基準や原子力安全関連条約等の原子力安全に関する規範構築に貢献していく,(3)IAEAの緊急時対応援助ネットワーク(RANET)の強化等,緊急時援助の分野においても貢献していくことを表明した。
  4. エ.終わりに,「福島の再生なくして日本の再生なし」との決意の下,福島で安心して子どもを生み,育てることができるよう,また,福島で安心して働き,生活できるよう日本は引き続き全力で被災者・被災地の再生に取り組むとの決意を改めて強調した。

(2)ワーキング・ランチにおける我が国発表

 本会合の合間に行われたワーキング・ランチにおいて,長浜環境・原発事故収束・再発防止・原子力防災担当大臣から,我が国における原子力安全の強化,除染・廃棄物処理,健康管理等についてのスピーチを行った。また,佐々木経済産業審議官から,東電福島第一原発の廃炉や原子力事業者の安全性対策等における我が国の取組を紹介するとともに,これを通じた世界の原子力安全向上への貢献について決意を表明した。

(3)成果文書の発出

 共同議長の責任の下,本会合においてIAEA加盟国により示された見解の内容や趣旨を反映した成果文書として,「原子力安全に関する福島閣僚会議共同議長声明」が発出された。同文書では,序文において,東日本大震災により被害を受けた日本国及び日本国民に対する国際社会の連帯を再確認し,国際社会から,福島を訪問し,福島の現状を知る機会を得たことへの謝意が表明された。また,東電福島第一原発事故に関し,震災及び原発事故からの復旧及び復興に係る福島県民及び福島県の多大なる努力に言及されるとともに,原発の安定化,放射線量の大幅な低減などについて我が国が報告した進展が歓迎され,また,除染の進展が認識された。さらに,国際的な原子力安全の強化に関連し,IAEAの緊急時対応援助ネットワーク(RANET)の強化に向けた努力等,緊急事態対応に係る努力の重要性が強調され,また,科学的かつ客観的な情報に基づく対応の重要性が強調される等,IAEA原子力安全行動計画に盛り込まれた主要な項目の進展が言及された。

2.専門家会合(16~17日)

(1)専門家会合1「東電福島原発事故からの教訓」

(議長:ウェイトマン英原子力規制機関長)
田中原子力規制委員会委員長及びメザーブIAEA国際原子力安全グループ(INSAG)議長から,それぞれ,東電福島原発事故の教訓及びシビア・アクシデントからの原発の防護等に関する基調講演が行われた後,パネリストである欧州安全規制グループ,米,ブラジル,韓国,インド及び露の代表からプレゼンテーションが行われた。その後の意見交換においては,シビア・アクシデントの発生を防止し,事故が起きた際の影響を緩和するための方策を不断に追求していく重要性等が強調された。

(2)専門家会合2「東電福島原発事故を踏まえた原子力安全の強化(緊急事態に係る準備及び対応を含む。)」

(議長:ジャマール加原子力安全委員会上席副長官)
フローリーIAEA事務次長及びラコステIAEA安全基準委員会委員から,それぞれ,IAEA原子力安全行動計画の実施を始めとする原子力安全の強化及びIAEA安全基準の強化に関する基調講演が行われた後,パネリストである世界原子力事業者協会(WANO),中国,仏,UAE,我が国(大島原子力規制委員会委員),インドネシア及びスイスの代表からプレゼンテーションが行われた。その後の意見交換においては,原子力安全の強化は終わりのない不断の取組である点等が強調された。

(3)専門家会合3「放射線からの人及び環境の防護」

(議長:デラ・ロサ・フィリピン原子力研究所所長)
クレメント国際放射線防護委員会(ICRP)科学事務局長及びレンティホIAEA核燃料サイクル・廃棄物技術部長から,それぞれ放射線防護及び公衆へのコミュニケーション並びに除染に関連する活動及びオフサイト活動に関する研究開発に関連する課題に関する基調講演が行われた後,パネリストである世界保健機関(WHO),原子放射線の影響に関する国連科学委員会(UNSCEAR),国連食糧農業機関(FAO),南ア,福島県(内堀副知事),国際赤十字・赤新月社連盟(IFRC)(近衛会長)及び欧州委員会の代表からプレゼンテーションが行われた。その後の意見交換においては,福島県からの説明への謝意が示されるとともに,放射線防護・除染・健康影響等に関し,リスク・コミュニケーションの重要性等が強調された。

3.閉会セッション

 各専門家会合において表明された考えや立場を踏まえた議長サマリーが発表され,共同議長代理及び共催者であるIAEAから閉会の挨拶が行われた。

4.福島・IAEA協力文書の署名

 本件会議の際に,15日,佐藤雄平福島県知事と天野之弥IAEA事務局長との間で,「東京電力福島第一原子力発電所事故を受けた福島県とIAEAとの間の協力に関する覚書」への署名が行われた(玄葉外務大臣が立ち会った。)。これにより,今後,IAEAとの間で,福島における放射線モニタリング及び除染,人の健康,並びに,緊急事態の準備及び対応の分野における協力が進むことが期待される。

5.その他(サイトツアー,サイドイベント,二国間会談)

  1. (1)会議開催に先立つ14日には,福島第一原発,福島における除染活動及び福島県内の被災地現場の視察等のサイトツアーが実施された。
  2. (2)本件会議期間中,我が国関係省庁,福島県立医大,IAEA・カナダがそれぞれ事故後の我が国の取組,健康管理,今後の原子力規制に係るIAEA会合に関するサイドイベントを実施したほか,会場内では福島県,IAEA,我が国関係省庁によるパネル展示等が行われた。
  3. (3)玄葉外務大臣は,本件会議の機会に,バトー仏エコロジー・持続可能な開発・エネルギー大臣,キリエンコ露ロスアトム社長と会談を行った他,ヴァーシチェンコ・ベラルーシ非常事態大臣との間で原発事故後協力協定の署名を行った。

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