軍縮・不拡散

国連小型武器行動計画履行検討会議
概要と評価

平成18年7月10日

  1. (1)6月26日から7月7日まで、ニューヨーク国連本部において、国連小型武器行動計画履行検討会議(United Nations Review Conference on the Programme of Action on Small Arms and Light Weapons)が開催された。同会議は、2001年に策定された行動計画の各国による履行状況の検討を目的とし、政府、国際・地域機関及びNGO等から2000人以上が参加した。

    (2)会議では、一般討論演説や事項別討論等を通じて行動計画を引き続き履行していく各国の決意が改めて確認された。成果文書は合意に至らなかったが、移譲管理(MANPADSや非国家主体への移転規制も含む)、国際協力・支援、武器禁輸措置・輸出入管理の強化、開発と人道(児童兵・ジェンダー等)、弾薬など様々な論点につき活発な意見交換が行われ、それぞれの取組強化の必要性が指摘された。

  2. 我が国からは伊藤外務大臣政務官が団長として出席し、一般討論演説(ハイレベル・セグメント)における我が方ステートメント(下記骨子参照)を通じて、小型武器行動計画の更なる履行を促進し、小型武器問題への取組を一層強化していくことを訴えた。また、伊藤政務官は会議出席の機会を利用し、小型武器問題や国連改革等についてヴィンクラー・オーストリア(EU議長国)外務閣外大臣、ウェッセ・リベリア国際協力・経済統合担当外務副大臣、レジェス・コロンビア外務次官、マロック・ブラウン国連副事務総長と個別にそれぞれ会談した。

    【伊藤外務大臣政務官のステートメント骨子】

    (1)国際的枠組の構築

    今回の最終文書については、国際社会は、移譲管理につき国際的基準を設ける努力を行うべき。また、実効性を確保するために主要武器輸出国の参加を確保すべき。

    (2)小型武器被害国の現場におけるプロジェクト

    今後の現場におけるプロジェクト実施において以下の3つが優先的課題。

    (イ) 小型武器管理強化のための制度・能力構築支援

    (ロ) 人間の安全保障の観点から、小型武器回収と紛争の影響を受けた個人及びコミュニティへの支援

    (ハ) 効果的な支援実施のための方策の探求 : 2007年に、検討会議本セッションのフォローアップとして小型武器プロジェクトのベスト・プラクティスや需要ファクターを含む国際支援に関する東京小型武器ワークショップを開催。

    →2001年以降の支援実績を踏まえ、アフリカに対しては紛争予防・平和構築無償(平成18年度135億円)等を、アジアに対しては、テロとの闘いの観点を重視し、日ASEAN統合基金(75億円の一部)等も活用しつつ、小型武器に関連する支援に更に積極的に取り組んでいく。

  3. (1)我が国は、美根軍縮代表部大使が、同会議の副議長として議長を補佐するとともに、共同議長(日本・フィンランド)として我が国が発案した「国際協力・支援及びベスト・プラクティス」に関する事項別討論の議事進行を行うなど、会議に積極的に参加して日本の存在感をアピールした。同事項別討論では、我が国が無償資金協力を行っているカンボジアでの「平和構築と包括的小型武器対策プログラム」について、現場でのプロジェクト実施に当たっている木田・日本小型武器対策支援チーム(JSAC)プロジェクト・マネージャーが実際にプロジェクトを実施していく上での具体的な問題点や教訓などにつき発表した。

    (2)代表団長ステートメントを始め、英文パンフレットの配布やNGOとの意見交換を通じて、我が国のこれまでの具体的貢献を説明し、国際社会において我が国が果たしている積極的役割をアピールした。

    【参考1】国連小型武器行動計画の概要

     行動計画は、前文、非合法取引規制に関する具体的措置(国家レベル、地域レベル、グローバル・レベル)、履行・国際協力と支援、フォローアップの4つの章から構成されている。

    1.非合法取引規制に関する具体的措置

    • 小型武器非合法取引を規制するための法制度整備
    • 小型武器非合法取引に対するトレーシングのための措置(刻印、製造・移譲等に関する記録保持)
    • 実効的な輸出入許認可制度の確立・維持
    • 小型武器の非合法ブローカー取引の規制
    • 武器禁輸措置の効果的実施の確保
    • 小型武器の回収・破壊等を含むDDR(武装解除・動員解除・社会復帰)の実施
    • 武力紛争で被害を受けた児童の特別なニーズへの取組
    • 各国の法執行機関・国境管理機関・税関による情報共有
    • 各国による行動計画実施に関するデータの収集
    • 市民社会との協力
    • 教育・啓蒙

    2.履行・国際協力と支援

    • 国家、国際機関、市民社会等の協力
    • 行動計画の実施のため支援
    • 被害国における法制度整備、法執行等の分野における能力構築への支援
    • 税関・警察・軍備管理担当機関の間の協力、経験の共有
    • DDRへの支援

    3.フォローアップ措置

    • 2006年までに行動計画の実施状況を検討する会議の開催
    • トレーシング(追跡)に関する国際文書策定の可能性調査
    • ブローカー取引規制に関する国際協力強化のための措置

    【参考2】小型武器問題への我が国の貢献

    (1)国連総会への決議案の提出

    1995年に国連総会で小型武器政府専門家パネルの設置を求める決議案を提案して以来、ほぼ毎年決議案を提出。05年もコロンビア、南アフリカとともに提出し、コンセンサスで採択された。

    (2)国際会議の議長職等を通じ議論をリード

    2001年7月の国連小型武器会議で我が国の堂之脇光朗参与(当時)が副議長を、また2003年7月の第一回国連小型武器中間会合で猪口邦子軍縮代表部大使(当時)が議長を務め、会合を成功に導いた。

    (3)現場でのプロジェクト等への財政的支援

    (イ)武器回収・廃棄プロジェクトの例

    • カンボジアにおいて武器回収と組み合わせた開発、武器破壊、小型武器登録支援、啓蒙活動等を実施。2006年1月までに約1万3,000の小型武器及び約4万1,000の弾薬を回収。(平成14年度約4億5,000万円、平成16年度約4億6,600万円)
    • シエラレオネにおいて小型武器の回収及びコミュニティ・ベースの開発支援、武器トレーシング・システムの構築等を実施。(平成16年度約2億500万円、平成17年度約1億9,200万円)
    • リベリアにおいて小型武器の回収及びコミュニティ・ベースの開発支援、武器トレーシング・システム構築を実施(平成17年度2億3,200万円)

    (ロ)地域セミナーの開催

     2000年のG8宮崎外相会合に際し、国連内に小型武器基金(200万ドル規模)を設置することを発表。同基金により、中央アジア小型武器セミナー(2004年3月、於:カザフスタン・アルマティ)、南太平洋地域小型武器セミナー(2004年8月、於:フィジー・ナンディ)、ASEAN・中央アジア小型武器セミナー(2005年4月、於:北京)、ASEAN・南アジア小型武器セミナー(2006年5月、於:バンコク)などを国連等と共催。

このページのトップへ戻る
前のページへ戻る | 目次へ戻る