
紛争予防に関する宮崎イニシアティブ
(仮訳)
平成13年3月
1.小型武器
G8は、世界の多くの地域における、小型武器と軽兵器(以下「小型武器」とする)の野放しかつ非合法な移転と、情勢の不安定化を招く蓄積が、平和、安全、繁栄に対する重大な脅威となっていることを確信する。それ故、G8は、小型武器が責任ある合法的な方法で移転されることを確保し、情勢の不安定化を招く現存の蓄積を正当な防衛・安全保障上の必要に見合う水準まで削減するための、各国、地域的、及び国際的努力を強く支持する。
情勢の不安定化を招く小型武器の拡散は、国際社会に対し、輸出管理政策、不正取引の予防、法執行と犯罪防止、武装解除と元兵士の動員解除・社会復帰、紛争後の復興、治安部門の改革等の多くの分野の課題を提起している。G8は、これら全ての分野において、国際機構と各国が、重複を避けつつ協調的で一貫した政策を策定することによりそれぞれの取組をより効果的なものとする必要があることを強調する。
G8は、
- (イ)2001年の小型武器の不正取引のあらゆる面に関する国連会議の開催とその成功を期待する。我々は、特に小型武器の不正取引撲滅のための国際的努力を実質的に強化する成果を生み出すであろう広範な議題をもって右会議に臨む。
- (ロ)小型武器の移転が国連憲章に謳われている自衛の権利と合致することを認識しつつ、かかる輸出の管理と許可を高度の責任をもって行うことを確認する。より厳格な規制を有しない限り、G8は、輸出許可に際して、受取側の正当な防衛・安全保障上の必要を最小限の基準とする。G8は、他国に対する侵略や抑圧に使用される明確な虞のある場合には、小型武器の輸出を許可しない。最後に、G8は、各国毎に、またワッセナー・アレンジメント等の国際場裡において、小型武器の非合法な転売・再輸出の危険を最小化するため、さらなる行動を検討する。この目的のために、G8は、武器仲介業の効果的な国内の取締りの重要性について合意する。G8は、他の小型武器輸出国にそれぞれの政策の中で以上のような原則を採用するよう強く慫慂する。
- (ハ)需要側に対する補完的な措置の重要性も強調する。この関連で、G8は98年10月のECOWAS(西アフリカ諸国経済共同体)による小型武器の輸出入・製造モラトリアム(一時停止)の採択を歓迎し、小型武器拡散の問題を抱える他の地域が同様の措置を検討するよう慫慂する。G8は、その輸出許可の決定においてECOWASのモラトリアムを尊重することを確保するための措置をとると共に、他の輸出国に対しても同様のことを求める。また、G8は、最近採択された、大湖地域及びアフリカの角地域における不正小型武器の拡散問題に関するナイロビ宣言を歓迎する。G8は、可能な諸国が、ECOWASモラトリアム及びナイロビ宣言の実施への資金・技術協力を行うよう慫慂する。
- (ニ)不正な武器取引の被害国・地域に対し、(不正取引の)発覚した例や不正な小型武器の供給経路に関する情報の交換を含め、この点に関する透明性を向上するよう慫慂する。G8は小型武器の刻印(マーキング)はその追跡可能性を向上させうると考える。G8はかかる小型武器の移転の透明性向上に関する国際的合意の形成に努める。小型武器の不正取引との闘いと信頼醸成のため、G8は、適当な場で、国内法制、実行、経験に関して情報交換する用意があり、他の諸国に対しても同様のことを求める。
- (ホ)小型武器の不正取引への対抗措置が根本的に重要であることを強調する。G8は、自国領内からの、自国領経由の、或いは領内への、小型武器の不正移転を防止するため、効果的な国内の輸出管理・執行体制を維持する。我々は、国連安保理が課する全ての武器禁輸を厳格に実施することを確認する。この目的のために、G8はこれら禁輸の法的執行を可能にする適切な国内法制を強く支持する。我々は、対UNITA(アンゴラ全面独立民族同盟)措置違反に関する報告を調査するとの安保理の決定等の、国連の制裁をより効果的にするための努力を強く支持する。
- (ヘ)小型武器の不正取引から直接被害を受ける国が効果的な管理を実施するための能力向上計画を支援する用意がある。G8は、この分野での協調された地域的・国際的行動の重要性を強調し、銃器・弾薬・爆発物・その他の関連部品の密造・不正取引防止のためのOAS(米州機構)全米条約や、南部アフリカにおける不正な武器取引対策のためのEU(欧州連合)/SADC(南部アフリカ開発共同体)行動計画等のイニシアティヴを歓迎する。G8はまた、ワッセナー・アレンジメントその他の国際的、地域的な場における、不正取引経路や転売先等についての適切な情報交換の拡大を重視する。
- (ト)効果的な法執行及び犯罪防止の措置を通じ、小型武器の不正保有及び悪用の問題に取り組む必要があることを認識する。銃器に関しては、G8リヨン・グループは、その所掌範囲内において、銃器の密造及び不正取引に対するG8各国の政策及び対策の有効性を改善する方法についての検討を継続する。G8は、2000年末までに国連国際組織犯罪条約銃器議定書の交渉の完了を確保するため、銃器の不正取引と闘うための国際的な努力の重要な要素となるであろう同議定書の審議において積極的かつ建設的な役割を果たす。
- (チ)情勢の不安定化を招く小型武器の現存の蓄積を削減する努力に対し、完全なる支援を約束する。G8は、被害国・地域が、信頼醸成措置と余剰若しくは不法所有されている小型武器の回収・廃棄を促すインセンティヴを採用するよう慫慂する。G8は、小型武器問題への対処を意図する特定目的の基金(国連、地域、特定域内に既設、若しくは新設されるもの)を含む、自発的な資金・技術協力を通じ、かかる取組を支援する用意があることを確認するとともに、国際社会に対して同様のことを求める。この関連でG8は、紛争終結後の状況において、武装解除と元兵士の動員解除・社会復帰の包括的事業が極めて重要であることを強調する。G8は、かかる事業を、適切な場合に紛争当事者間の和平合意や平和維持軍その他の関連ミッションのマンデート中に含めることを支持する。
- (リ)情勢の不安定化を招く小型武器の蓄積への取組において、例えば、地域レベルでの意識向上等を通じ、市民社会が果たす役割の重要性を強調する。G8は、国際社会及び被害国政府が、小型武器の野放しの拡散と情勢の不安定化を招く蓄積の防止のための取組に市民社会を積極的に参画させるよう慫慂する。
- (ヌ)情勢の不安定化を招く小型武器の蓄積の被害国・地域において回収されたあらゆる余剰・不法所有の小型武器が、直ちに廃棄されない場合は、望むらくは国際的或いは第三者の監視の下に、早期かつ効果的な廃棄まで適切に保管・管理されるべきであるとの原則を支持することを再確認する。