軍縮・不拡散

クラスター弾に関するダブリン会議
概要と評価

平成20年5月30日

 5月19日~30日、アイルランド政府の主催により、オスロ・プロセスの一環としてクラスター弾に関する外交会議(「ダブリン会議」)が開催され、新たな国際約束案(「クラスター弾に関する条約案」)が採択されたところ、概要及び評価は以下のとおり。

1. 参加国・団体

 世界各地より、111か国の正式参加国(:2月のウェリントン会議で発出されたウェリントン宣言の参加国)に加え、オブザーバー国の代表、国際機関及びNGO多数が参加。我が国からは、外務省中根軍縮不拡散・科学部長を代表団長として、外務省及び防衛省から参加した。米、中、露、韓国等は不参加。

2.会議及び条約案の概要

(1)今次会議においては、アイルランド議長(オカレイ・ジュネーブ軍縮代表部大使)の議事進行の下、クラスター弾に関する国際約束の条文について、2月のウェリントン会議で配布されたテキスト案(ウェリントン・テキスト)及び各国より提出された条文案を基に交渉が行われた。その際、各国の見解の相違が大きい事項(クラスター弾の定義、非締約国との関係、貯蔵弾廃棄、不発弾除去、犠牲者支援等)については、調整役として指名された議長フレンドが個別に非公式協議を開催し、詳細な検討が行われた。

(2)その結果、クラスター弾の人道上の懸念に対処するための包括的な条約案が作成され、コンセンサスで採択された。同条約のポイントは以下のとおり。

(イ)一般的義務及び適用範囲(第1条):1)クラスター弾の使用、2)クラスター弾の開発、生産、取得、貯蔵、保有、移譲、3)禁止される活動に対する援助、奨励又は勧誘を禁止。

(ロ)クラスター弾の定義(第2条):1)10個未満の爆発性子弾しか含まず、2)それぞれの爆発性子弾が4キログラムより重く、3)単一の目標を探知し攻撃できるよう設計されており、4)電気式の自己破壊装置及び5)電気式の自己不活性機能を備えているもの(加重要件)は、禁止されない。

(ハ)貯蔵弾廃棄(第3条):自国について条約が発効後8年以内に廃棄。4年間の延長、更に必要に応じ4年間の追加延長が可能。

(ニ)不発弾除去(第4条):自国の管轄・管理下にある地域の不発弾を10年以内に除去し、廃棄。5年間の延長が可能。

(ホ)犠牲者支援(第5条):クラスター弾の直接の犠牲者のみならず、その家族及び地域社会も犠牲者の定義に含め、自国の管轄・管理下の犠牲者に治療等の援助を提供。

(ヘ)国際協力・援助(第6条):締約国は、可能な場合には、クラスター弾による影響を受けた締約国に対し援助を提供。

(ト)非締約国との関係(第21条):非締約国に条約の締結を奨励。非締約国がクラスター弾を使用しないよう勧奨するよう最善の努力を払う。第1条の規定にかかわらず、締約国、その軍隊及びその国民は、締約国に対し禁止される活動に従事する非締約国と共に軍事的協力及び軍事行動に従事することができる。ただし、締約国に対し、1)クラスター弾の開発、生産若しくは取得、2)締約国自身による貯蔵若しくは移譲、3)締約国自身による使用、又は4)弾薬類の選択が専ら締約国の管理下にある場合の使用の明示的な要請を行うことは認められない。

3.我が国の対応

 我が国は、クラスター弾の不発弾等による人道上の懸念を深刻に受け止め、これまでのオスロ・プロセスのすべての会議に積極的に参加するとともに、実効性のある国際約束を作成することを支持してきた。ダブリン会議においても、同様の観点から会議に参加し、新たな条約案の採択のコンセンサスに参加した。

4. 評価

(1)ダブリン会議において、人道的観点から手厚い内容の条約案がコンセンサスで採択されたことを評価。

(2)同条約への対応については、署名に向けて、今後真剣に検討。

(3)交渉が継続されているCCW(特定通常兵器使用禁止制限条約)の枠組みにおいても、引き続き積極的に交渉に参加。

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