
武器貿易条約(ATT)アジア太平洋地域会合
議長サマリー(仮訳)
2009年2月26日、27日
(英文はこちら)
- 2009年2月26日及び27日、東京において、武器貿易条約(ATT)アジア太平洋地域会合が、外務省及びオックスファム(Oxfam)の共催により開催された。阿部信泰財団法人日本国際問題研究所軍縮・不拡散促進センター所長(前国連事務次長(軍縮担当))が議長を務めた。本件会合議事に関する議長サマリーは以下のとおり。
- 参加者は、国際的な武器移転に関する既存の義務、各国の運用状況、国際的・地域的な枠組みについて情報交換を行い、無責任な武器移譲が引き起こす問題について様々な観点から活発な意見交換を行った。また、ATT構想は約10年間の歴史があること、また、その目的は、各国が通常兵器の輸出入や移譲を行う際に適用される法的拘束力のある普遍的な共通基準の創設であることが述べられた。
- 参加者は、アジア太平洋地域の各地において無責任な武器貿易がもたらす影響を確認し、同地域における多くの課題を特定した。そのような影響について、東チモール及びフィリピン等の具体例が提示され、アジア太平洋地域の様々な安全保障上の問題や武器移転の規模は、世界の武器貿易の縮図であることが指摘された。参加者は、自国の安全保障のために武器を求める国家は、武器の購入によって、地域における自らの安全保障を失い得るという安全保障上のジレンマを克服することの重要性について議論した。
- アジア太平洋地域が、地域の武器管理に関する取り決めの欠如にかかる課題、及び軍縮分野での議論の膠着に直面している一方、オタワ条約及びオスロ条約にみられる動きがあること、また、国連総会におけるATT決議への同地域の支持は顕著であることが確認された。武器管理に関する取り決めに未参加の国であっても、これらの取り決めの規定に従って行動していることが指摘された。
- 加えて、参加者は武器移転が貧困削減及び社会・経済開発に与える影響を議論した。無責任な武器移譲が、紛争の拡大、重大な国際人権法及び国際人道法違反、貧困の増大、教育・医療や福祉のための資源の好ましくない転用等を引き起こすことが指摘された。
- 参加者より、今後のATTの議論において、このように複雑な問題をどのように取り上げていくかについて、有用な示唆があった。ニューヨークでのオープンエンド作業部会(OEWG)は、すべての国家と市民社会の意見を聞く絶好の機会であり、ATTが国連憲章の原則に従ったものであるべきとの合意を引き出した政府専門家会合(GGE)から新たな段階に入ったことが確認された。全ての国家がATTの議論に関与する必要性が確認された一方、コンセンサスの原則のジレンマが時には国連の枠組みの外でのプロセスを後押しすることも示唆された。
- 参加者は、武器移転において考慮すべきいくつかの要素として、武器禁輸措置を課す国連安保理決議に関する国家の既存の義務、国際人道法、国際人権法、貧困削減及び社会・経済開発を後退させるリスク、武器犯罪もしくはテロリズムへの転換のリスク、地域の安全保障への影響等を指摘した。また、参加者は、ATTにおける客観的基準の確立の重要性を確認した。
- 参加者は、国連の枠組みでATTについて議論を行っていくことの必要性を確認し、武器移転の問題の検討に当たっては、世界の武器の輸出入国や移譲に携わる国、武器産業、市民社会を含むあらゆる利害関係者の関与が重要であることが確認された。