北極・南極

平成29年12月7日

 12月1日,井出北極担当大使は,デンマーク外務省がグリーンランド自治政府,フェロー諸島自治政府及び北極経済評議会と協力して開催した北極におけるSDGsに関する会議(「Sustainable Development Goals in the Arctic – Local and Global Perspectives」)(於:コペンハーゲン)に参加しました。

  1. 会議の冒頭で,フレデリック・デンマーク皇太子殿下,サムエルセン・デンマーク外務大臣,フレデリクセン・グリーンランド自治政府外務大臣が挨拶を述べました。続いて,キンゴ・国連グローバル・コンパクトCEOが基調講演を行った後,イーエデ・グリーンランド自治政府財務・税務大臣らが発言を行いました。
    これらの発言では,北極圏におけるSDGsを達成することの必要性とその大きな挑戦に協力して立ち向かうべきとの指摘がなされました。
  2. 井出大使は,デンマーク外務省の要望に応えて,「北極における経済発展への日本の見方」と題して講演を行い,以下を発言しました。
    • 北極は世界全体にとり非常に重要である。閉ざされた局地的な問題ではなく,グローバルな課題である。デンマーク王国は重要な北極の大国の一つであり,日本にとり,デンマーク王国との戦略的パートナーシップは非常に重要である。本日の会議を通じて,北極に関するデンマーク王国,グリーンランド,フェロー諸島の要望や,関心等に対する理解を深めることができた。その理解を踏まえて,協力を一層進めていきたい。
    • 北極海航路のトランジット貨物輸送は,2013年をピークとして近年は減少している。これは中国経済の減速,石油価格の減少が背景にある。しかし将来どうなるかを予断できない。特にロシアは積極的に資源輸出に北極海航路を活用する考えであり,ロシアによる見通しでは,10年後には貨物輸送は年7千万トンにも上るとしている。なおロシアには,北極地域のビジネス振興に当たっては,外国のビジネス・パートナーの意見に耳を傾けるべきと伝えている。
    • ロシアのヤマルLNGプロジェクトは,中国の資金,日本のエンジニアリング技術,韓国の造船が組み合わさった巨大プロジェクトである。アジアの経済力を北極圏の持続的経済発展にどう活用するかが重要になっていることを示している。
    • 科学調査協力,持続可能な経済活動,法の支配の徹底という課題があり,まだやるべきことが沢山ある。この関連で,11月28日から30日までワシントンDCで行われた北極海公海における漁業規制に関する協議において,無規制な漁業の防止等を内容とする協定案について大筋合意に至ったと聞いており,喜んでいる。
    • 日中韓3か国の北極担当大使は定期的に会合を持ち,以上の様々な挑戦に協力して立ち向かうことを確認している。アジア諸国が責任感をもって北極協力を進めるとの確認をしていることをご紹介したい。
    • 持続可能な開発のために日本国内でも様々な努力が行われているが,デンマーク王国,グリーンランド,フェロー諸島の関係者との協力も日本としても深めていきたく,交流を歓迎し促進していきたい。
  3. この会議には,デンマーク,グリーンランド(5名の自治政府閣僚を含む),フェロー諸島,北欧諸国・カナダ等の政治家,官僚,ビジネス関係者,研究者,ジャーナリスト,NGOらの参加者がありました。井出大使も,レセプションの場も活用して,意見交換を行いました。特にグリーンランドとフェロー諸島の関係者からは,日本の各界との交流・協力を是非進めたいとの要望が出されました。

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