北極・南極

平成29年10月31日

 10月25日及び26日,フィンランドのオウル市にて北極評議会高級北極実務者会合が開催されました。
 オブザーバーである我が国からは,井出敬二北極担当大使らが参加しました。

1 北極評議会の会合

 北極評議会が行っている活動として,科学協力,環境保護,教育活動などについて,下部組織(6つの作業部会,2つのタスクフォース,1つの専門家会合)(注)からの活動報告があり,意見交換が行われました。

(注):下部組織は以下の通り。

  • (1)北極圏汚染対策プログラム作業部会(ACAP: Arctic Contaminants Action Program
  • (2)北極圏監視・評価プログラム作業部会(AMAP: Arctic Monitoring and Assessment Program
  • (3)北極圏動植物相保全作業部会(CAFF: Conservation of Arctic Flora and Fauna
  • (4)緊急事態回避,準備及び対応作業部会(EPPR: Emergency prevention, Preparedness and Response
  • (5)北極圏海洋環境保護作業部会(PAME: Protection of the Arctic Marine Environment
  • (6)持続可能な開発作業部会(SDWG: Sustainable Development Working Group
  • (7)北極海洋協力タスクフォース(TFAMC: Task Force for Arctic Marine Cooperation
  • (8)北極タスクフォース(TFICA: Task Force on Improved Connectivity in the Arctic
  • (9)ブラックカーボン及びメタン専門家会合(EGBCM: Expert Group on Black Carbon and Methane

2 オブザーバーとの対話

  • (1) オブザーバーの諸国(注),諸機関から,北極の汚染対策での貢献について紹介がありました。
    (注:日本,中国,韓国,インド,シンガポール,英国,イタリア,フランス,スペイン,オランダ,ドイツ,ポーランド,スイス。また,欧州委員会も恒常的なオブザーバーの資格はまだ認められていませんが,参加しました。)
  • (2) 井出大使からは以下の通り,汚染対策における日本の貢献を説明しました。
    • 日本は以下の5つの方途を通じて汚染対策で貢献していく。
    • 第1に,日本は北極評議会の作業部会(AMAP,PAME,SDWG,CAFF)と専門家会合(EGBCM)の活動に積極的に参加している。先週,自分はこれらの専門家と面会し,作業部会の活動について意見交換してきた。彼らは,今後とも貢献していくつもりである。ACAP,EPPRとの連携をどうするか今後検討・相談していく所存である。
    • 第2に,2013年に策定された「北極海洋油濁汚染準備・対応に関する協力協定」(北極評議会メンバー8か国が締約国。日本は締約国ではない。)は,第17条に非締約国との協力を規定している。もしそのような協力条項を発動することになるのであれば,日本としても諸般の事情が許す限り貢献していく用意がある。
      本協定に基づいて,非締約国との協力が行われたことは未だないと理解しているが,参考までに申し上げれば,実際日本はこれまで油油濁のための協力を実施してきている。例えば,2006年と2013年にフィリピンに国際緊急援助隊油防除専門家チームを派遣した。また,韓国とも2007年に海上保安庁職員が協力を行った。
    • 第3に,北極の問題は,国際的な枠組を通じての取り組みが有益な場合が多い。IMO(石油汚染の取り組み),UNEP(世界水銀アセスメントやSLCP削減のための取り組み),OECDによる化学物質対策,水俣条約等における日本の貢献は,北極圏の問題への貢献になるものである。
    • 第4に,二国間の協力を実施していく。北極評議会議長国のフィンランドの優先順位を日本も尊重していく。本年7月,日本の国立環境研究所とフィンランドの国立環境研究所は協力覚書を締結した。具体的協力内容は現在検討中だが,重要な問題であるブラックカーボンは協力項目の一つの候補であろう。日本はロシアともブラックカーボンについての協力を進める。日本の国立極地研究所は,ロシアの北極・南極研究所と8月に協力覚書を締結し,ブラックカーボンの共同観測の準備を今月から開始した。なお,アジア諸国はブラックカーボン排出量の報告義務はないが,日本は今後可能な範囲で対応していく。このような科学協力が一層進展することを期待している。
    • 第5に,ビジネス関係者との連携を一層強化する。日本のビジネスが北極圏で今後活動をしていくので,汚染問題,環境保護への配慮を一層払うことを確認している。既にヤマルプロジェクトに参加している日本企業とも意見交換している。SDWGでは,先住民コミュニティーから,質の高い上下水道施設,ごみ処理施設を求める声があると聞いている。日本の優れた技術が活用されたら素晴らしい。

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