日本の安全保障と国際社会の平和と安定

平成26年10月10日
インタビュアー:
国際平和協力室インターン 大迫亜理沙 (おおさこ ありさ)
大阪大学外国語学部4年
  (ジュバにて海外研修中の仲間と(右:スワティさん))

1.ご自身のことについて教えてください。(出身地、専攻、若い頃の関心事など)

 インドのニューデリーで生まれ育ちました。両親は私たち兄弟が子供の頃からとても協力的で、職業に関し自由な道を進んで良い環境でした。高校生になるまで法律を学ぼうと思ったことはありませんでしたが、私は読むことや書くことが好きで、原則を適用することも得意でしたし、公平性に対する理解ももっていたので弁護士を志しました。ロースクールはとても楽しく、私は法律にどんどんはまりました。これまで、自分の職業選択を後悔したことは一度もありません。

2.平和構築人材育成事業に応募した理由は何ですか?

 平和構築人材育成事業に応募したのは、私が携わりたいと考えていた分野での知見を広げるためです。また、分野横断的な学びに取り組む多様なコミュニティの一員となりたいと思ったことや、長い間心惹かれていた日本を訪れたいと思ったことも動機となりました。さらに、アジア人の視点から構成されたこの事業を経験することに興奮を覚えました。それは、他の29人の研修員や講師陣と一丸となって、アジアにおける平和についてのニーズを追求する環境でした。

3.本コースの内容や、本コース通じて学んだことを教えてください。

 まずケーススタディの手法は、様々なバックグラウンドや経験を持つ他の研修員との交流を通し、講義だけでは得がたい視点や機会への窓を開いてくれました。二つ目には、事業を通じて、研修員の仲間や講師の方々とネットワークを構築することができ、専門家としての進路についてのサポートだけではなく、個人的なサポートが必要な時にも支えて頂きました。三つ目には、自分の興味を声に出し目標を広げることができ、今後のキャリア構築の可能性に関する自身の考え方を変えることが出来ました。四つ目には、純粋に法律的な状況のみならず、より幅広い場面でのリーダーシップスキルを身につけられたことです。そして最後に、この事業は私が日本に触れる最初の機会となりましたが、この事業のおかげで生涯にわたって日本に好意を抱き続けることになりそうです。

4.コースの中で印象的だったことを教えてください。

 プログラムの参加をきっかけに、私の知的関心や適性、そして熱意の全てを活かすことのできる平和構築分野でのキャリアを積みたいと思っていることに気づきました。平和構築分野における著名な講師陣、平和構築の分野で世界各地で活躍し続けている優れた仲間たち、平和構築人材育成センター(HPC)と外務省が提供する学びの機会。日本での研修中に、これら全てに触れる経験を得たことが平和維持活動でのキャリアを築くにあたってのこれ以上ないほどの出発点となりました。

5.国連南スーダン共和国ミッション(UNMISS)での現在の活動について教えてください。

 南スーダン共和国は独立して間もない国家です。私は、この国の政府のサポートをするために設立されたミッションであるUNMISSの法務ユニットで勤務しています。法務官として、法的なアドバイスや分析などを行うことで、ミッション・マンデートの円滑な実施に向けての支援を行っています。私のチームは、国連プログラムの現場での一貫性を高め、国連システム内の諸経費を削減するため、南スーダンの国連カントリー・チームとも緊密に連携しています。加えて、南スーダンで、独自の法務部を持たない国連機関等への支援業務を行っています。はじめは、UNMISS内での私の業務がそこまで幅広いとは考えていませんでした。しかし、今では現在の職務を通して、想像していた以上の責任感を感じています。

6.平和構築の現場で女性が参加する重要性は何だと思いますか?

 平和構築の過程で、女性の参加が重要であるということには、多くの理由があげられます。まず、あるプロセスが包括的で広く参加を促すものであるためには、女性が発言権を持つ必要があります。二つ目には、女性は持続的平和に向けた取組においてのジェンダーの視点を与えることができます。例えば、人道支援の従事者、政治的リーダーそして戦争により影響を受けた個人としての経験をもとに、女性は紛争解決プロセスにおいて有利に交渉することが期待されます。このように、平和構築活動の成功のためには女性の参加は不可欠であり、紛争後の社会の安定回復において女性の役割は極めて重要です。

7.将来、マリクさんと同じように平和構築の分野に携わりたいと考えている若者へのメッセージをお願いします。

 とても難しい質問ですね。まずお伝えしたいのは、平和構築の現場は必ずしも万人向けではないということです。非常に苛酷な環境で生活し、様々な外的要因のために仕事が滞ることには苛立ちを覚えるでしょう。さらには、現場での治安状況によっては身動きが難しくなることもあります。南スーダンの首都であるジュバでは同年代の多くの人々のように買い物や映画などには行けません。このような生活をしていると、実際よりずっと歳をとっていると感じることもあります。住んでいる地区が戦闘状態になった時期もありました。それでも、生活の質と仕事のやりがいを比較すると、今の時点では仕事が圧勝ですね。

 平和構築においては、たくさんの機会が得られます。キャリアの途中で刺激を求めることもあるでしょう。しかし、先輩のピースビルダー達の刺激的な話を聞いて、自分のキャリアの道筋をつけるのはやめた方が良いでしょう。成功への一本道はありません。私たちは自分で考え、道を築いていくのです。試しにやってみること、逸脱すること、そして何より失敗することを恐れず、人生を自分のものとし、それに誇りをもつこと。よく自分自身にも言い聞かせるのですが、平和構築で最初に就いた仕事が、自分のその後のキャリアを決めてしまうわけではないのです。

8.今後のキャリア・プランについて教えてください。

 漠然とした考えではありますが、弁護士として長く充実したキャリアを構築していきたいと考えていますが、同時にバックアップ・プランも頭の中にはあります。かつては全てを知りたいとの強い欲求を持っていましたが、最近、自分はサプライズや不確かな将来が好きなことに気づきました。唯一確かなことは、自分のキャリアは国際志向であり、世界のために価値をつくりだすものになるということですね。


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