日本の安全保障と国際社会の平和と安定
平成22年度平和構築人材育成事業 平和構築文民専門家訓練コース修了生
ADRA Japan プログラムオフィサー内田順子さんへのインタビュー
国際平和協力室インターン片桐彩(かたぎり あや)
早稲田大学法学部3年
(注)インタビュー実施日は平成26年9月5日
1.平和構築人材育成事業に応募した理由を教えてください。
ADRA Japanで2年半ほど海外に駐在した後、帰国して一段落ついて改めて現場で感じたことを新しいことに繋げたいという思いで応募しました。
2.研修に参加された感想を教えてください。
様々な経験をされている参加者の方々から話を聞く機会をいただけたことはとても大きかったです。
研修内容は平和構築や、国連の役割等に関するもので、自分のそれまでのNGO職員としての業務と直接には関連がないことであり、そうした自分にとって新しい分野に関する知識を得られたのが良かったです。
3.研修の中で一番印象に残っていることを教えてください。
ケーススタディで、仮想の地域で紛争が発生したと仮定して、グループワークを行ったのですが、やはり色々なバックグラウンドをもっている参加者の方が多く、自分の視点とは違う視点があるのだ、と感じたことが印象に残っています。
4.平和構築人材育成事業での活動は、ご自身のキャリア構築にどのような影響を及ぼしましたか?
当時も現在も、ADRA JapanというNGOで働いているのですが、違う立場からの国際協力への携わり方も考えているので、外国の方や色々な機関の職員といったそれぞれ立場の違う方から意見を聞けたのが非常に役立っています。
5.ADRA Japanでは主にどのような活動をされていますか?
今年の4月から7月末まで、エチオピア南西部ガンベラ地域にある難民キャンプにおいて南スーダンから流出した難民を支援するための緊急人道支援の立ち上げ事業を行なっていました。具体的には、難民キャンプにおいて衛生環境改善のためにトイレを建設し、衛生啓発活動を行なっています。難民キャンプを立ち上げるにあたってジャパン・プラットホームから緊急支援の資金をいただいていたので、帰国後の現在はADRA Japanの東京本部で現地への資金送金やバックアップ、ジャパン・プラットホームの東京事務局との調整業務を行っています。
また先日エチオピアの事業地である難民キャンプで発生した洪水の被害に対する緊急支援を行うため、来週からエチオピアでの活動を行う予定です。
6.ADRA Japan活動の中で一番印象に残っていることを教えてください。
私がかつてADRA Japan職員として南スーダンで働いていた頃の現地の同僚たちは、今難民キャンプで難民として生活しているのですが、そういった紛争が身近で起きている状況にすごく衝撃を受け、感情が揺れ動いてしまいました。2年半ずっと一緒に働いていた人たちが家族を亡くす状況に対して、緊急支援という形で自分ができることをできれば良いな、と思います。
また難民キャンプでの緊急支援案件は、私にとって初めて経験する緊急案件であったため、来週の現地での活動の開始に向けて、支援の準備や関係機関との調整、オフィスの立ち上げから物資の調達まで、目が回る勢いだったことも印象に残っています。
7.ADRA Japanでのスーダン事業に加えて、以前には在スーダン日本大使館で勤務されていましたが、なぜスーダンを国際協力の場として選ばれたのですか?
外務省の草の根無償委嘱員に応募するに当たって、当時大学院で研究していたボスニア・ヘルツェゴビナでの勤務を希望しましたが、第二希望も書いてくださいと言われアフリカ大陸と書いたところ、結果的にスーダンに決まりました。本当に巡り合わせですね。
その後は南スーダンで働きたい、それも、NGOで働きたいと思って、自分で仕事を探しました。
8.国際協力のかたちは様々ですが、その中で現場に赴く意義とは何だと思いますか?
私自身は特に専門知識があるわけでもなく、現地の言葉が話せるというわけでもないので、現地にとっては私でなければならないというわけではないと思います。一方で、こうして東京で業務をしているときに学校や大学で学生と話したりして、誰も知らない南スーダンの現地のことを伝えることが、自分が行っていることの日本社会へ対する意味ではないかと思います。
9.国際協力をしていく上での目標を教えてください。
今までの経験を通して、現地の人の視点など、様々な視点で見る、という点を自分の原点として忘れないようにしたいと思います。
10.平和構築人材育成事業への参加を考えている方にメッセージをお願いします。
平和構築分野で活躍されている方々を見ていると、アカデミックな活動とフィールドでの実務を繰り返している方が多いのですが、平和構築人材育成事業の研修に参加することで、自分の経験に引きつけて知識を学ぶことができ、両方に相乗的に効果が得られると思います。フィールドでは「援助とは何か」について考えて悩むことが多いため、この事業は、少し立ち止まってじっくり考える良い機会になると思います。