寄稿・インタビュー
岩屋外務大臣によるロピニオン紙(フランス)への寄稿
(令和7年4月30日)
日仏「特別なパートナーシップ」の一層の深化
戦後の国際秩序は今、大きな変革期を迎えている。この歴史の転換期において、揺るぎない信頼で繋がる日仏が様々な分野において「特別なパートナー」であることが際立っている。
日本は法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を堅持するため、同志国との意思疎通を多重的・多層的に積み上げることを重視している。フランスがそのための最も重要な同志国の一つであることは疑いの余地が無い。
日仏間では、日仏協力のロードマップに基づき、民生原子力分野の協力及びインド太平洋や経済安全保障に係る対話の枠組みを通じた協力等も進展している。
現在、欧州も日本も戦後最も厳しい安全保障環境にある。4月はじめの NATO 外相会合の場では、従来から日本が強く訴えてきた欧州・大西洋とインド太平洋の安全保障が密接・不可分との認識が欧州各国にとっても共通認識になっていると強く感じた。ロシアのウクライナ侵略を含め、世界のどこであれ、力や威圧による一方的な現状変更の試みは決して許してはならない。
特に、日本ほど「ウクライナと共にある」ことを行動で示したアジアの国は無い。事実、日本はこれまで、ウクライナに対して、越冬支援や地雷対策支援、負傷兵の受入れをはじめ、人道面、財政面、復旧・復興面で様々な支援を実施してきた。早期の全面停戦、公正かつ永続的な平和の実現に向けて、フランスを含む欧州と共に努力を続けていく。
太平洋国家たるフランスや欧州も、インド太平洋情勢に無関心ではいられない。露朝軍事協力の進展は、欧州・大西洋とインド太平洋の安全保障の不可分性の表れ。ウクライナ情勢の更なる悪化を招くのみならず、インド太平洋の安全保障に及ぼす影響の観点からも、深刻に懸念。また、北朝鮮は核・ミサイル活動にまい進しており、その資金源の一つとされているのが暗号資産窃取を含む悪意あるサイバー活動。北朝鮮はこうした活動を国や地域を問わず展開しており、国際社会にとっての大きな課題。フランスを含むG7、そして国際社会と共に対処する必要がある。欧州と東アジアをつなぐ重要なシーレーンである南シナ海や東シナ海でも、力や威圧による一方的な現状変更の試みが継続・強化されている。さらに、台湾海峡の平和と安定は国際社会全体にとって重要である。
インド太平洋の安定のためには欧州の関与が不可欠。同時に、欧州の繁栄のためには、安定したインド太平洋が不可欠である。空母「シャルル・ド・ゴール」のインド太平洋地域への派遣や近年の日仏間の各軍種における共同訓練の実施などの動きを含め、フランスの同地域への揺るぎないコミットメントを非常に頼もしく思う。
4月に「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマとした大阪・関西万博が開幕した。人類共通の課題に対して何ができるか、世界中の人々が集い、知恵を出し合い、イノベーションを生み出す場となるものと確信している。特に、フランスパビリオン「愛の賛歌」は、最も人気があるパビリオンの一つ。フランスは欧州から日本を訪問する訪問客の上位3位に含まれており、今後更に多くのフランス人に日本を訪れてもらいたい。
今次フランス訪問(5月2-3日)を通じて、互いに惹かれ合い、高め合う日仏の深い絆を再確認し、特別なパートナーシップを更に深化させる機会としたい。