寄稿・インタビュー
Aftonbladet(アフトンブラーデット)紙 WEB版(令和5年5月12日)(仮訳)
「日本はスウェーデンとの関係強化を望んでいる」
ストックホルムでの閣僚会合を前に、日本の外相が寄稿
スウェーデンは、日本にとって、基本的価値を共有し、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の維持・強化に向けた重要なパートナーである。さらに、ロシアによるウクライナ侵略に際して、両国はそれぞれロシアの東西の隣国として、安全保障上の利益、課題の多くを共有している。現下の厳しい国際安全保障環境を踏まえれば、欧州とインド太平洋の安全保障は切り離して議論することはできず、両国の関係強化はこのような認識を体現するものである。
国際社会は、今、歴史の転換点にある。ロシアによるウクライナ侵略は、国際秩序の根幹を揺るがしている。このような、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序に対する挑戦は、決して単なる地域的な問題ではなく、国際社会が一致して対応しなければならない共通の課題である。このような課題に連携して取り組まなければ、同様な挑戦が他の地域でも発生しかねず、我々の平和と繁栄を支えてきた既存の秩序が根底から覆されかねない。
一方、インド太平洋では、東・南シナ海において、力による一方的な現状変更の試みが継続・強化されている。台湾周辺での軍事活動も活発化している。また、中露は、日本周辺での共同飛行、共同航行などの、軍事連携を強化している。
さらに、北朝鮮は、我が国のEEZ内に落下したものも含めICBM級弾道ミサイルの発射を繰り返すなど、前例のない頻度と態様で弾道ミサイル発射を行っており、挑発をエスカレートさせている。
こうしたインド太平洋の厳しい安全保障環境を前にして、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を守っていくためには、インド太平洋の国々のみならず、欧州の同志国とも結束して対応していくことが死活的に重要である。私は、スウェーデンをはじめとする欧州諸国のインド太平洋地域への関与強化を歓迎する。
そして、ここストックホルムに欧州及びインド太平洋の閣僚が集い、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の重要性、そしてそのような秩序がインド太平洋でも守られる必要があることについて議論する機会を持つことは極めて重要であり、時機を得ている。
特に、本年は日本がG7議長国、本年前半はスウェーデンがEU議長国を務めており、両国の関係強化はこれまで以上に重要になっている。今年は、強固な政治・防衛、貿易・投資、学術、文化等あらゆる面での二国間関係を一層深化させる絶好の機会であると認識している。
実際、日スウェーデン関係は様々な分野において着実に進展している。昨年12月には防衛装備品・技術移転協定が署名され、先端的な防衛技術を有するスウェーデンとの安全保障協力の礎ができた。
両国の大学と企業は、グリーン、デジタル、生命科学などの分野でも優れており、こうした分野での協力も進んでいる。MIRAI、対日理解促進交流(日本語で「未来」の意味)プログラムの下、両国の20の大学が学術交流を活発に実施している。また、スウェーデンに拠点を有する日本企業である日立エナジー社は、世界最大のパワーグリッド企業として、世界のグリーン転換に貢献している。
2018年、当時文部科学大臣であった私は、ルンドにある巨大な量子ビーム研究施設MAX IVを訪問し、スウェーデンの科学技術力を目の当たりにした。こうした経験に基づき、私は両国の先端技術協力は更に深まる余地があると確信している。両国は、共に未来に進みつつある。本年を、日・スウェーデン二国間関係の更なる飛躍の年にしたい。
今回、そのスウェーデンを外務大臣として初めて訪問し、EU議長国であるスウェーデンがEUと共催する「インド太平洋閣僚フォーラム」に出席する。昨年、私はフランスが開催した同フォーラムにオンラインで出席したが、本年はストックホルムでの対面出席が叶い嬉しく思う。
来週、日本は、G7広島サミットを開催する。そこでは、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を守り抜くという、G7の強い決意を首脳レベルで世界に示していく。法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を守り抜くため、日本は、スウェーデンをはじめとするEU加盟国そしてインド太平洋の同志国とも緊密に連携していきたい。