寄稿・インタビュー
岩屋外務大臣によるエゲメン・カザフスタン紙、カザフスタンスカヤ・プラブダ紙(カザフスタン)への寄稿
8月24日から26日にかけて、日本の外務大臣として3年ぶりにカザフスタンを訪問します。以前から望んでいたカザフスタンへの訪問が実現し、大変うれしく思います。
カザフスタンをはじめとする中央アジアと日本との交流の歴史は、千年以上も前に遡ります。シルクロードを通じて、多くの文化や技術が日本に到達し、日本の歴史や社会に大きな影響を与えてきました。数千キロの陸と海が中央アジアと日本を隔てているにもかかわらず、我々は長きにわたり、互いに文化的・民族的な親近感を育んできたのです。
日本はカザフスタンの独立後、1992年にいち早く外交関係を樹立しました。以降30年以上にわたり、カザフスタンを一貫して支援し、カザフスタンの友人であり続けてきました。例えば、日本は、カザフスタンの独立直後から、インフラ、人材育成を含む国づくりの支援を行ってきました。また、日本企業が石油やウランのプロジェクトに参加するなど、ビジネス分野における協力も進んでいます。
旧ソ連時代に約40年間にわたり450回を超える原水爆核実験が行われたカザフスタンでは、今でも被爆の影響に苦しまれる方が多いと承知しています。日本は、唯一の戦争被爆国としての経験と知見を活かし、ODAによる医療機材の提供や人材育成などの協力、さらに、セメイ市(旧セミパラチンスク)における市民団体や大学などの民間による医療支援などを通じて、カザフスタンの核実験被害者への援助を積極的に行ってきました。
更に歴史を遡れば、先の大戦終了後に多くの日本人が旧ソ連によって抑留されました。カザフスタン政府及び国民の皆様には、日本の地を踏むことなく、カザフスタンで命を落とした日本人の方々の遺骨を収集する事業や御遺族などによる慰霊巡拝事業の実施、また、2023年のアスタナ市における慰霊碑の建立に当たり、多大な御理解と御協力を頂いています。心より感謝いたします。
日本は、中央アジアの重要性に早くから着目してきました。そして、日本が触媒となって、中央アジア諸国自身が主体となる地域協力を推し進めることを目的に、2004年には、カザフスタンの協力の下、中央アジア諸国と共に、日本が世界に先駆けて「中央アジア+日本」対話の枠組みを立ち上げました。その第1回外相会合は、同年にここアスタナで行われ、当時外務大臣であったトカエフ大統領が出席されました。これまで9回開催された外相会合をはじめ、20年間以上にわたる「中央アジア+日本」対話のたゆまぬ歩みの中で行われた数多くの政治対話や人的交流は、日本と中央アジアを結ぶ強固な紐帯となっています。
今日、中央アジアは着実な経済発展を遂げ、欧州とアジアをつなぐ交易路として、その重要性はますます高まっています。同時に、国際情勢の変化により、中央アジア諸国が大きな影響を受けていることも日本はよく認識しています。中央アジアを取り巻く環境が急激に変化している今こそ、中央アジアにおける地域協力は不可欠となっています。こうした情勢も踏まえ、「中央アジア+日本」対話の枠組みも活用して、中央アジアとの関係を更に強化していく、そして、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を共に堅持していく、それが今回の私の訪問の大きな目的です。
8月25日に予定されているヌルトレウ・カザフスタン副首相兼外務大臣との会談においては、これまでの両国間の協力・交流を土台として、防災・減災、脱炭素化などの持続可能な発展に向けた協力を深化させるとともに、経済安全保障を含む国際的な課題に対処すべく、率直な議論を行う予定です。今回の私のカザフスタン訪問を一つの契機として、カザフスタンの友人の皆様と共に、両国関係の発展に尽力していく所存です。
最後に、本年4月から「いのち輝く未来社会のデザイン」のテーマの下開催されている大阪・関西万博では、カザフスタンのパビリオンに連日多くの訪問者が訪れております。8月10日にはシャッカリエフ貿易・統合大臣御出席のもと、カザフスタンのナショナルデー・イベントが開催され、大変な盛況を見せました。万博を契機として両国の様々なレベルでの人的交流や経済的な交流が一層強固なものになることを期待しています。万博閉幕まで約1か月半となりましたが、2017年にアスタナ国際博覧会を開催されたカザフスタンの皆様に、ぜひ日本を訪問していただきたいと思います。
日本国外務大臣 岩屋 毅