寄稿・インタビュー
岩屋外務大臣のビジネス・デイ紙(南アフリカ)への寄稿(20日付、オンライン版)
岩屋毅:日本と南アフリカ — パートナーシップを通じたグローバル開発の推進
今年、南アフリカで開催されるG20の優先課題は、日本としても重視している分野
G20外相会合に出席するため、南アフリカを訪問します。外務大臣に就任後、私にとって初めてのアフリカ大陸への訪問です。活力に満ちた南アフリカの魅力を肌で感じることを楽しみにしています。昨年5月の総選挙を経て成立した国民統合政府(GNU)が、ラマポーザ大統領のリーダーシップの下、国民の多様な声を反映した国政運営を進めていることを心強く思います。
日本と南アフリカは、自由、民主主義、人権、法の支配といった、基本的価値や原則を共有する重要なパートナーです。今日、私たちが直面する国際社会の諸課題は一国だけでは解決できません。知識と技術を共有し、新しい解決策を共に生み出す必要があり、日本と南アフリカの協力がこれまで以上に重要です。
南アフリカ政府は、G20議長国として「連帯、平等、持続可能性(Solidarity, Equity and Sustainability)」というテーマの下、特にアフリカを念頭に、途上国の開発を重視しています。
日本は約30年前、アフリカ諸国によるオーナーシップと国際社会とのパートナーシップを重視し、世界に先駆けてアフリカ開発に関する枠組みであるTICADを立ち上げました。
本年8月には、アフリカ各国と日本の首脳級が一堂に会する「第9回アフリカ開発会議(TICAD 9)」を横浜で開催します。TICAD9では、「共創」をキーワードに、これまでの日本の取組を土台に、様々な課題への解決策をアフリカ諸国と共に創るべく、取り組んでまいります。G20とTICADが連携することで相乗効果が発揮できるよう、日本として議論に積極的に貢献する考えです。
また、今年のG20で優先課題とされている防災、債務持続可能性、エネルギー移行、重要鉱物はいずれも日本としても重視している分野です。特に、防災分野では、様々な自然災害に見舞われている日本の経験と知見により、世界に貢献できると考えています。また、債務の持続可能性を維持する観点から、今後も透明で公正な開発金融の促進のために協力を惜しみません。
国際情勢が大きく変化する今日において、友情と信頼に基づく良好な関係を築いてきた両国が手を携え、世界を「分断と対立」から「対話と協調」へと導いていかなければなりません。
今日、多くの日本企業が南アフリカに進出し、投資や雇用創出を通じて、南アフリカの技術革新と経済発展を後押ししています。その数はアフリカ最多となる約260拠点を数え、生み出す雇用は約15万人に上ります。
さらに両国の経済関係は、南アフリカの豊かな自然の恵みを活かした農産品を通じて深まっています。例えば、近年、健康志向の高まりとともに日本で注目を集めているルイボスティーやアボカドはその一例です。両国の経済関係を一層拡大すべく、連携を強化していく考えです。
日本と南アフリカとの間では要人往来が活発化しています。2023年7月、林芳正外務大臣(当時)がG7議長国として南アフリカを訪問したほか、南アフリカからは、昨年8月のTICAD閣僚会合に参加するため、就任直後のラモラ国際関係・協力大臣が訪日し、上川陽子外務大臣(当時)と会談しました。
また、同年12月にはラモホパ電力・エネルギー大臣が来日し、2023年に署名した水素・アンモニア分野における協力覚書に基づき、エネルギー分野での協力を深化させています。私は外務大臣として、こうした交流を通じて幅広く議論を行い、日本と南アフリカの人々が共に繁栄を享受できるよう、協力を深化させていく決意です。
両国の交流はスポーツの舞台でも輝いており、現在、日本のラグビーチームでは約40人の南アフリカ人選手が活躍しています。両国の選手が互いを尊敬し、同じユニフォームを着て戦う姿は、まさに友好の象徴です。
また、JETプログラムには、これまで900人以上の南アフリカの若者が参加し、日本の英語教育に貢献しながら文化交流の懸け橋となっています。
こうした多層的な交流により生み出される絆が、両国の未来を輝かせる原動力となっています。
今回はラモラ国際関係・協力大臣を始め、南アフリカの皆様にお会いできることを楽しみにしています。そして、良好な二国間関係を一層緊密なものにするとともに、南アフリカ議長国下でのG20の成功に向けて協力していきます。