寄稿・インタビュー

令和6年7月18日

 日本の外務大臣は今日ボスニア・ヘルツェゴビナを訪問し、オスロボジェニェに対し、日・BH二国間関係と日出ずる国から我々への支援について語っている。

日本とボスニア・ヘルツェゴビナの関係

 本日、ボスニア・ヘルツェゴビナを訪問することができ、大変嬉しく思います。 日本は、紛争終結直後の1996年1月にボスニア・ヘルツェゴビナを国家承認し、翌2月に両国の外交関係が樹立されました。過去28年間、日本は、ボスニア・ヘルツェゴビナの国家としての領土的一体性と主権の維持、民族多様性を支持し、政治的安定と経済発展を確保するために、同国の国作りを支援する国際枠組みである和平履行評議会(Peace Implementation Council)のメンバーとして、上級代表の活動も支えつつ、国際社会と協力し、復興・発展と信頼醸成に主体的に関与してきました。
 我が国は、この西バルカン地域でも一貫して関与してきました。かつて分断に苦しんだこの地域の融和と社会経済改革のため、ボスニア・ヘルツェゴビナ及びこの地域の平和と安定に貢献する「西バルカン協力イニシアティブ」の下、支援を進めてきました。2018年の同イニシアティブの立ち上げ以来、ハイレベルによる往来も活発になり、特にBHには、ここ6年間で2度日本の外務大臣が訪問しています。国際秩序が厳しい挑戦に晒される今、日本の外務大臣としてかつて悲惨な紛争に見舞われた西バルカン地域に足を運び、平和の尊さについて地域の皆様と率直に議論することは、意義があるものと考えます。 これまで日本がJICA等を通じて実施したBHへの援助総額は約3.8億ユーロを超えています。例えば、日本が1998年にサラエボ市、バニャ・ルカ市、モスタル市に供与した155台のバスは「黄色いバス」として、民族融和に貢献し、市民の足として親しまれてきました。
 また、「第二次世界大戦後の欧州における最大の悲劇」が生じたスレブレニツァ地域では、生活手段を奪われ、苦しい生活を余儀なくされた住民に対し、農業を中心とした経済基盤の再興支援を実施しました。同支援は民族の隔てなく実施され、住民間の信頼醸成にも貢献し、スレブレニツァ市民の生活再生を目指した支援として、地域の皆さんからも高く評価いただいています。
 両国はスポーツの分野でも交流を深めてきました。ボスニア・ヘルツェゴビナの国旗は、1998年、長野冬季オリンピックで初めて国際舞台で披露されたと伺っています。また、ボスニア・ヘルツェゴビナでは国民的スポーツであるサッカーは、両国交流の鍵となっていますが、日本では、2006年からイビツァ・オシム氏が、2015年からヴァイッド・ハリルボジッチ氏が代表監督を務められ、日本サッカーのレベル向上に貢献されました。

将来に向けた取組

 日本は、自由、民主主義、人権、法の支配といった基本的価値を共有する結束した欧州を支持しており、今年3月にボスニア・ヘルツェゴビナのEU加盟交渉開始が決定されたことを嬉しく思います。日本は、加盟交渉が早期に開始されるよう、ボスニア・ヘルツェゴビナ政府による各種改革の進展を期待し、引き続き、これを後押ししていきます。
 日本は、ボスニア・ヘルツェゴビナの将来を担う人材の育成のための支援も行っています。その内容は保健から防災まで多岐に亘ります。例えば、近年では、ボスニア・ヘルツェゴビナの人々の生活の質向上を目指した医療・保健体制強化支援、EU加盟プロセスの進展に必要不可欠な国境管理能力強化支援、防災・減災に係る知見共有等を実施しています。
 また、ボスニア・ヘルツェゴビナへの日本企業の進出も始まっており、欧州での事業を集約してボスニア・ヘルツェゴビナの工場を拡張するという事例もあります。国の安定と各種改革の進展が、日本企業の更なる進出につながることを期待しています。こうして、ボスニア・ヘルツェゴビナと日本の経済的繋がりが強固になることがBHの社会、ひいては西バルカン地域の平和と安定に繋がっていく。こうした考えの下、日本政府は引き続きボスニア・ヘルツェゴビナを含む西バルカン諸国への日本企業の進出を力強く後押ししていきます。
 また、今回の訪問では、クリシュト閣僚評議会議長、コナコビッチ外務大臣、また、シュミット上級代表などとお会いし、西バルカン地域の融和と連結性の促進を始め、両国の更なる協力について協議したいと考えています。

WPSの重要性

 日本は主要外交政策の一つとして、2000年に国連安保理で決議された女性・平和・安全保障(WPS)を推進しています。これは、女性自身が指導的な立場に立って紛争の予防や復興・平和構築に参画することで、より持続可能な平和の実現に近づくことができるという考えに基づく政策です。今回の訪問中、WPSに取り組む国連機関や現地NGOの関係者とも意見交換を行う予定です。バルカン地域、そして国際社会におけるWPSの視点を踏まえた持続可能な平和の具現化に向け、ボスニア・ヘルツェゴビナとの連携を一層強化していきます。

平和のためにボスニア・ヘルツェゴビナが果たす役割

 私(大臣)は、今回の訪問中、スレブレニツァ・ギャラリーを視察します。今日でも世界の様々な地域で紛争が続いています。ボスニア内戦の歴史に触れ、紛争の悲惨さと平和の重要性を再確認したいと思います。
 EU加盟プロセスが進展するという新たな段階を迎え、ボスニア・ヘルツェゴビナの人々、特に政治指導者が団結と和解を促進する努力を強化し、この国と国民の明るい未来を築くという目標を持って行動することを心から願っています。
 これまで両国の間で築かれてきた良好な関係を基礎とし、私の訪問を機に、日本とボスニア・ヘルツェゴビナとの関係が更に発展することを願います。同時に、和平履行評議会のメンバーとして、引き続き上級代表の活動も支えつつ、ボスニア・ヘルツェゴビナの安定・国造りに貢献していく所存です。


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