寄稿・インタビュー
上川外務大臣のイタリア訪問に際してのソーレ24オーレ紙への寄稿
1.ソーレ24オーレ紙(7月16日付け、13面)
「より公平で持続可能な貿易体制」(上川陽子)
7月16日から2日間にわたって開催されるG7貿易大臣会合へ出席するために、カラブリアを訪問しています。昨年、私が議長を務めたG7貿易大臣会合も国際貿易都市として歴史ある大阪・堺で開催しました。地中海有数の港を擁するカラブリアは、古くから貿易の要衝にあり、まさにG7貿易大臣会合にふさわしい舞台です。これから2日間、この地でアントニオ・タヤーニ外務・国際協力大臣の議長の下、G7各国の貿易大臣と我々が直面する課題について話し合い、G7の連携を確認できることをとても楽しみにしています。
国際社会が、緊張度を増すイスラエル・パレスチナ情勢、ロシアによるウクライナ侵略、パンデミック、気候変動等、山積する課題に直面する中、自由、民主主義、基本的人権の尊重、法の支配といった価値や原則を共有する我々G7は、世界経済の持続的な成長に向け国際社会を主導する役割を担っています。今般、我々G7貿易大臣は、自由で公正な貿易体制をさらに推進するためにここカラブリアに集結しました。今次会合では、WTOを中核とする多角的貿易体制の強化、公平な競争条件の確保、貿易と環境持続可能性、経済安全保障について議論します。これらは、昨年、私が議長を務めたG7大阪・堺貿易大臣会合のアジェンダを継承するものであり、更なる議論の深化に向けたG7議長国イタリアのイニシアティブを歓迎します。
WTOを中核とする自由で公正なルールに基づいた多角的貿易体制は、世界の安定と成長の基盤です。より機能する多角的貿易体制の実現に向けて、G7が率先してWTO改革を推進する必要があります。また、公平な競争条件の確保は、自由な貿易・投資を促進する上で不可欠です。先のG7プーリア・サミットで首脳間の強い決意が示された、有害な産業補助金や強制技術移転といった非市場的政策及び慣行、それらへの国有企業の関与、こうした市場歪曲的な政策及び慣行に起因する過剰生産の問題に対処しなければなりません。複雑に絡み合う国際的な経済的依存関係の下、経済的威圧への対応や、サプライチェーン強靱化に向けた経済安全保障面でのG7の連携も重要です。深刻化する気候変動や相次ぐ自然災害を受け、貿易政策も環境持続可能性に対応することも忘れてはいけません。
加えて、日本は、貿易における包摂性の向上、貿易への女性の参画の促進を、SDGsや女性・平和・安全保障(WPS)の観点から重視しています。日本は、アフリカやウクライナを含む世界各国で、女性の就労・起業支援を実施しており、本年2月に東京で開催した「日・ウクライナ経済復興推進会議」の際には、私自身、女性のエンパワーメントを通じた復興の重要性を強調しました。これからも、官民が一体となり、貿易を始めとする様々な経済活動への女性の一層の参画に貢献していきたいと思います。
私は、経済の発展の基礎には平和が不可欠だと考えています。国際社会が厳しい環境変化や地政学的なリスクなど複合的な課題に直面する中で、G7議長国としてのジョルジャ・メローニ首相、タヤーニ外相の力強いリーダーシップを高く評価します。2024年に入ってからイタリアを訪問するのは今回で3回目となりますが、イタリア議長年の成功のために力を尽くす考えです。