寄稿・インタビュー

令和6年2月23日

 上川外務大臣は、来週アブダビで開催される世界貿易機関(WTO)第13回閣僚会議(MC13)は、WTOが世界的な課題に対応するための機会であるとUAE国営通信WAMに語った。
 上川大臣は、Eメールによるインタビューの中で、MC13は、WTOを中核とする、ルールに基づく多角的貿易体制が、地政学的及び経済的な多数の課題に直面するただ中で開催されると指摘した。
 同大臣は、MC13が「改革のための閣僚会議」と称されており、我々は、MC13においてWTOの主な機能について必要な改革を進め、世界が直面する課題にWTOが効果的に対応できる国際機関であることを示せるよう、MC13を、WTOを変革する機会として活用する必要があると強調した。

最前線に立つUAE

 2023年12月にドバイで開催された国連気候変動枠組条約第28回締約国会議(COP28)を成功裏に開催したUAEは、2024年2月26日から29日までアブダビにおいてMC13を開催する。
 通常隔年で開催されるWTOの最高意思決定機関である閣僚会議には、約164カ国と貿易圏が参加する。
 上川大臣は、UAE政府およびMC13の議長であるタニ・ビン・アフメド・アル・ゼイユーディ貿易担当国務大臣の努力とリーダーシップに感謝の表明するとともに、UAEが自由貿易の価値を常に最前線で堅持してきたことに深い敬意を表すると述べた。
 また同大臣は、自由貿易の価値を共有する主要な貿易パートナーである日本とUAEは、WTOを中核とするルールに基づく多角的貿易体制の強化のため、現在、MC13の成功に向け協力していると述べた。

WTO改革

 上川大臣は、WTO改革に関して、加盟国は、気候変動、サプライチェーンの混乱、国家間の格差の拡大、デジタル貿易促進の障壁といった新しい課題にWTOが適切に対応できるよう、WTOの改革を進めなければならないとの見解を述べた。
同大臣は、WTO改革を進めるに当たり、すべての人々がジェンダーや出自等の別に関わらず貿易に参画できるようになるための包摂性について強調した。
 また同大臣は、日本は、MC13において、2024年までに全ての加盟国が利用できる完全かつ良く機能する紛争解決(DS)制度への道を開くことを強く希望していると述べた。
 また、WTOの審査機能の強化も重要であり、貿易歪曲的な産業補助金への効果的な対処も含め国際貿易が今日直面する課題にWTOが対処できるようする審議機能強化について前向きな成果を望んでいると述べた。

その他の優先事項

 上川大臣は、日本が漁業補助金協定の早期発効を望んでいると述べた。またこの点に関し、漁業補助金交渉の第二波交渉の加速化は、WTOのルール形成機能の観点のみならず、SDGsの達成や漁業資源の管理を通じた持続可能な開発の達成のために重要でると説明した。
 さらに同大臣は、電子的送信に対する関税不賦課モラトリアムの延長は、ビジネスの確実性や予見可能性を高め、国際貿易及び投資の重大な混乱を避けるために必須であると強調した。

開発途上国に対する支援

 上川大臣は、日本が国際貿易センター(ITC)の「貿易のための援助」プロジェクトへの貢献を通じ、特にデジタル貿易における女性の参画を含めて、開発途上国の多角的貿易体制への参画を支援していることを指摘した。
 持続可能な開発については、開発途上国及び後発開発途上国(LDC)による漁業補助金協定の実施を促進するため、日本は、他国に先駆けて、WTOの漁業信託基金に貢献したと述べた。
 この点に関し、昨年10月にWTOの一般理事会で採択されたLDC卒業国に対する支援措置の延長に係る決定、及びコモロと東ティモールがWTOに新規加盟する予定であることを歓迎すると述べた。
 さらに、現在WTOの有志国間で追求されている電子商取引、投資円滑化、サービス国内規制に係る共同声明イニシアティブ(JSI)を含む複数国間イニシアティブの進展は、多くのWTO加盟国にとって成長の原動力となり、多くの人に利益をもたらすと説明し、日本は、JSIの成果をWTOの法的枠組みに組み込むことを強く支持すると述べた。

日本・UAE関係

 上川大臣は、日本とUAEは2022年に外交関係樹立50周年を迎えたと述べた。
同大臣は、包括的・戦略的パートナーシップ・イニシアティブ(CSPI)の下、両国の協力関係は、エネルギーや経済といった伝統的な分野を大きく超え、気候変動、教育、科学技術、宇宙、防衛等幅広い分野における協力を深化していくこと、またこのような協力は、国際貿易の分野にも拡大するだろうと述べた。
 加えて、日本は、国際貿易を促進するための法的枠組みの確立と強化のためのUAEの努力を評価しており、この文脈で、日本は、日・GCC自由貿易協定(FTA)の交渉が本年中に再開されることを期待していると述べた。
 また、日本はUAEが中東・アフリカでビジネスを展開する国際企業に対し、安全な拠点と適切な保護を提供していることを高く評価していると述べて、インタビューを締めくくった。

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