APEC(アジア太平洋経済協力、Asia Pacific Economic Cooperation)

平成26年5月18日

 5月17日及び18日,中国・青島市において,APEC貿易担当大臣(MRT)会合が開催された。APEC21エコノミーの貿易担当閣僚等が参加し,我が国からは茂木敏充経済産業大臣及び牧野たかお外務大臣政務官が出席した(牧野外務大臣政務官は「多角的貿易体制への支持と保護主義の抑止」のセッションに出席)。会合における議論の概要は以下のとおり。会合の成果として,「2014年APEC貿易担当大臣会合青島声明(日本語(骨子)(PDF)別ウィンドウで開く英語(PDF)別ウィンドウで開く)」及び「多角的貿易体制への支持に関する声明(日本語(骨子)(PDF)別ウィンドウで開く英語(PDF)別ウィンドウで開く)」が発出された。

1.多角的貿易体制への支持と保護主義の抑止

  • (1)アゼベドWTO事務局長からの報告を受け,昨年12月の第9回WTO閣僚会議(MC9)における「バリ合意」の実施状況及びドーハ・ラウンド交渉(DDA)の作業計画策定につき議論が行われた。APECとして多角的貿易体制への支持に関する独立文書を発出することで一致した。
  • (2)「バリ合意」の実施に関し,特に貿易円滑化協定(TFA)については,協定の早期発効・実施が最重要課題である点が強調され,途上エコノミーについては早期のカテゴリーA通報の実施,先進エコノミーについては積極的な技術協力支援の必要性が指摘された。
  • (3)ポスト・バリの作業計画については,農業,鉱工業品,サービスという主要3分野の間のバランスがとれた形で,実現可能な合意を目指していくべきとの旨の発言が多くあり,議論を加速化していくことで一致した。
  • (4)情報技術協定(ITA),新サービス貿易協定(TiSA),環境物品自由化などのプルリ交渉についても,DDAを後押しするものとして,妥結に向けた作業の加速化につき多く発言があった。
  • (5)特にITA拡大交渉については,交渉の早期妥結を目指すことが合意された。
  • (6)保護主義抑止に関し,スタンドスティル(新規の保護主義措置の不導入)の2018年末までの延長を求めることで一致した。
  • (7)我が国からは,ITA拡大交渉の早期妥結や環境物品交渉の推進に向けてAPECが指導力を発揮すること,保護主義抑止の重要性につき発言を行った。また,「バリ合意」の実施,特にTFAの早期発効及びポスト・バリ作業計画の策定推進の重要性につき発言を行った。

2.中国APECの優先課題

 中国APECの3つの優先課題((1)地域経済統合の進展,(2)創造的な発展,経済改革及び成長の促進,(3)包括的な連結性及びインフラ開発の強化)に沿って,11月の北京首脳・閣僚会議に向けた議論の進展を確認し,今後の作業につき指示を出した。

(1)地域経済統合の進展

  • ア アジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)は,「FTAAPへの道筋(2010年首脳合意)」において,TPPやRCEPなどを土台とすることとされているところ,我が国は,TPP,RCEP,日中韓FTAの全ての経済連携に参加する立場から,これらの交渉の早期妥結に積極的に貢献していく考えを表明した。
     各エコノミーからFTAAPに向けた取組への支持が表明され,域内の地域貿易協定/自由貿易協定(RTAs/FTAs)の透明性の向上,能力構築,FTAAPの実現に貢献するロードマップの策定の取組及びFTAAPの分析作業を促進させることで意見の一致を見た。
  • イ APEC域内におけるグローバル・バリューチェーンを推進するための方策について議論が行われ,我が国から,製造業関連サービス貿易の自由化・円滑化・能力構築支援に係る取組に進めていくべきとの考えを表明し,次世代貿易投資課題として合意された。
  • ウ 2012年APEC首脳会合において合意された環境物品リストの関税引下げ(2015年末までに54品目の実行関税率を5%以下に引き下げ)の着実な実施等について議論がなされ,我が国からは,途上エコノミーの能力構築支援に積極的に取り組んでいくとともに,環境サービス貿易の自由化・円滑化・能力構築支援に係る取組を具体的に進めていくべきとの考えを表明した。

(2)創造的な発展,経済改革及び成長の促進

  • ア イノベーション,経済改革を通じたアジア太平洋地域の長期的かつ持続可能な成長を目指すため,中小企業のグローバル・バリューチェーンへの参画,女性の経済参画,食料安全保障等の分野において情報共有や能力構築等の具体的な協力を進めていくための議論を行った。
  • イ 我が国からは,構造改革の重要性を述べる上で,我が国の「成長戦略」実施を通じた経済改革の事例を紹介するとともに,女性の活躍の推進に向けた取組をAPECにおいても推進していく旨表明した。

(3)包括的な連結性及びインフラ開発の強化

  • ア 域内の包括的な連結性(ハード,ソフト,人と人)の強化のための取組及びAPEC連結性青写真の作成について議論が行われた。
  • イ 我が国から,青写真の作成にあたっては,インフラの質及び官民連携(PPP)等のファイナンスが位置づけられる必要性を指摘するとともに,途上エコノミーの関係者を対象にインフラの質に関する能力構築支援セミナーを8月初旬に東京で開催し,11月の首脳会合までにインフラの質を適正に評価するためのガイドブックを作成することを提案し,歓迎された。


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