アフリカ
ジンバブエ共和国(Republic of Zimbabwe)
基礎データ
令和2年2月19日


一般事情
1 面積
38.6万平方キロメートル(日本よりやや大きい)
2 人口
1,444万人(2018年 世銀)
3 首都
ハラレ
4 民族
ショナ族,ンデベレ族,白人
5 言語
英語,ショナ語,ンデベレ語
6 宗教
キリスト教,土着の伝統宗教
7 国祭日
4月18日(独立記念日)
8 略史
年月 | 略史 |
---|---|
11世紀 | ショナ族によるマプングブウェ王国の成立 |
13~15世紀 | ジンバブエ王国の繁栄(グレート・ジンバブエ遺跡) |
1890年代~ | セシル・ローズ率いる英国南アフリカ会社による占領 |
1923年 | 英国の自治植民地としての南ローデシア成立 |
1953年 | ローデシア・ニアサランド連邦成立 |
1963年 | 連邦解体 |
1965年 | 白人スミス政権による南ローデシア(ローデシア共和国)の一方的独立宣言 |
1968年 | 国連安保理対ローデシア経済制裁決議採択 |
1970年代 | 黒人解放団体によるゲリラ活動の激化 |
1979年 | 独立に向けて平和的解決合意(ランカスターハウス制憲協定の署名) |
1980年 | ジンバブエ共和国として英国から独立,ムガベ首相就任 |
1987年 | ムガベ大統領就任 |
1990年 | ムガベ大統領再選 |
1996年 | ムガベ大統領三選 |
2002年 | ムガベ大統領四選 |
2008年3月29日 | 総選挙(大統領選挙,上院・下院選挙,地方選挙)実施 |
2008年6月27日 | 大統領決選投票の末,ムガベ大統領が五選 |
2009年2月13日 | 包括的政府が成立(ムガベ大統領,チャンギライ首相) |
2013年7月31日 | ムガベ大統領六選 |
2017年11月 | ムガベ大統領辞任,ムナンガグワ大統領就任 |
2018年7月30日 | 総選挙(大統領選挙,上院・下院選挙,地方選挙)実施 |
2018年8月26日 | ムナンガグワ大統領就任 |
政治体制・内政
1 政体
共和制(複数政党制)
2 元首
- エマソン・ダンブゾ・ムナンガグワ大統領(Emmerson Dambudzo MNANGAGWA)
- 2017年11月24日就任,2018年8月26日再任。(任期:5年)
3 議会
- 二院制
- (下院:定数270名(選挙区選出210名,比例代表60名),任期5年,上院:定数80名(選挙区選出60名,伝統的チーフ代表枠18名,障害者代表枠2名),任期5年)
4 政府
- 外相名
- シブシソ・モヨ(Hon. Dr. Sibusiso Moyo)
5 内政
- (1)1980年の独立以来37年間にわたり,ムガベ大統領(当初は首相)が政権の座にあった。2002年3月に行われた大統領選挙は,ムガベ大統領(与党ZANU-PF)とチャンギライ野党MDC党首により激しく争われたが,ムガベ大統領が四選を果たした。選挙後,与野党間の対立が激化。2003年6月にMDCが計画した大規模な反政府デモに対し,政府は治安部隊の出動,MDCの党首逮捕などの強硬措置を発動した。
- (2)2005年8月の憲法改正により,1987年に廃止されていた上院が復活。11月の上院選挙では,与党ZANU-PFが90%の議席を確保し,上院・下院でのZANU-PFの優位性が確保された。
- (3)与党ZANU-PFと野党MDCの間の政治的対立が一層激化する中,2008年3月の大統領選挙では,いずれの候補者も過半数に及ばなかったため,ムガベ大統領(ZANU-PF)とチャンギライ党首(MDC)による決選投票が行われた。結局,チャンギライ党首が同決選選挙からの撤退を表明し,同年6月27日,ムガベ大統領が勝利を収めた。これに対し国際社会は,同選挙は公正・自由でなかったとして激しく非難し,G8北海道洞爺湖サミットでも,ジンバブエ情勢を懸念する声明が発出された。
- (4)国際的な批判が高まり,アフリカ周辺国等の仲介努力が続けられた結果,2009年1月26-27日に南アフリカにおいてSADC緊急首脳会議が開催され,ア 2月11日までに大統領(ムガベ現職大統領)及び首相(チャンギライ党首)が就任すること,イ 2月13日までに他の閣僚等が就任し,与野党協働の政府樹立を完了させることが要請された。ジンバブエ与野党は最終的に同要請を受け入れ,2月11日,チャンギライ党首が首相に就任し,同13日に包括的政府が発足した。
- (5)暫定的な枠組みである包括的政府は,与野党間で合意された政治合意(Global Political Agreement: GPA)に則り,各種政治改革を進めるとともに,新憲法を制定した後に総選挙を行うこととなった。新憲法制定プロセスは当初の予定より遅れたものの,2013年5月に新憲法が制定され,同憲法に基づき2013年7月31日に大統領選挙,議会選挙,地方議会選挙が同時に行われた。この結果,ムガベ大統領が六選を果たし,包括的政府は解消された。
- (6)2014年11月,グレース・ムガベ大統領夫人をZANU-PF女性局長に推薦する動きを受け,与党ZANU-PF内の派閥抗争が表面化し,同年12月,ムジュル副大統領と同派に属する閣僚8名が閣僚ポストを罷免された。
- (7)2017年11月,大統領後継の座をグレース大統領夫人と争っていたムナンガグワ第一副大統領のムガベ大統領による罷免を契機に,国防軍が国営放送局を占拠,ムガベ大統領を軟禁し,夫人支持派の閣僚を拘束した。与党ZANU-PFは,ムガベ大統領夫妻及び夫人支持派の閣僚を除名して,大統領退陣を要求。議会で弾劾手続が開始される中で大統領は辞任し,与党ZANU-PFの指名を受けたムナンガグワ氏が大統領に就任した。
- (8)2018年7月30日,ムナンガグワ大統領就任後初の総選挙(大統領選挙,上下院選挙,地方選挙)が実施された。選挙後,野党MDC同盟の支持者の一部と警察が衝突し,死傷者が生じた。同8月3日,ジンバブエ選挙管理委員会は,ムナンガグワ大統領が得票率50.8%で勝利した旨発表。同8月26日にムナンガグワ大統領が大統領に再就任した。
外交・国防
1 外交
- (1)2002年3月に実施された大統領選挙プロセスが公正ではなかったとの監視団の報告を受け,英連邦はジンバブエの英連邦評議会への1年間の出席停止を決定,2003年末にはジンバブエは英連邦を脱退した。
- (2)2000年代の各種選挙プロセスの混乱や政治暴力の横行から,EU,米,英,豪,加,北欧諸国は,ジンバブエ政府高官の渡航禁止,資産凍結等の制裁措置を実施。欧米諸国との関係悪化を受け,ジンバブエは「ルック・イースト」政策と称して,特に中国やイランとの関係を強化。
- (3)2008年に極度に経済情勢が悪化した影響で,食糧不足が発生し,医療・衛生,教育等の社会サービスが崩壊したため,各国は国際機関やNGOを通じた人道支援を拡大。
- (4)2013年7月の総選挙の結果について,欧米諸国は選挙プロセスにおける不正を指摘し,制裁を継続したものの,2014年以降,米国,EUは制裁対象を縮小し,関係改善の兆しが見られた。一方,ジンバブエは,2014年8月より南部アフリカ開発共同体(SADC)議長国(任期1年),2015年1月よりアフリカ連合(AU)議長国(任期1年)を務めた。
- (5)2017年の政権交代後,各種改革が実施され,国際社会では,ジンバブエ国内の状況が改善することに対する期待がみられた。他方,2018年の選挙後の事態及び改革実施の遅延を受け,ジンバブエと欧米諸国との関係改善は実現していない。
2 軍事力
- (1)予算
- 341百万米ドル(ミリタリーバランス2017)
- (2)兵役
- 志願制
- (3)兵力
- 総兵力 50,800(陸軍 25,000,空軍 4,000,パラミリタリー:21,800)
経済(単位 米ドル)
1 主要産業
- (農)たばこ,綿花,園芸
- (鉱)プラチナ,クローム,ニッケル,金,ダイヤモンド
- (観光)ビクトリアの滝やグレート・ジンバブエ遺跡等,世界遺産5か所
2 GNI
258.1億米ドル(2018年:世銀)
3 一人当たりGNI
1,790米ドル(2018年:世銀)
4 経済成長率
6.2%(2018年:世銀)
5 物価上昇率
28.0%(2018年:世銀)
6 失業率
4.91%(2018年:世銀)
7 貿易額(2018年:WITS)
- (1)輸出
- 40.37億ドル
- (2)輸入
- 62.59億ドル
8 主要貿易品目(2018年:WITS)
- (1)輸出
- 金,タバコ,ニッケル,フェロ・クロム等
- (2)輸入
- 石油,電力,トラック等
9 主要貿易相手国(2018年:WITS)
- (1)輸出
- 南ア(51.5%), UAE(18.1%),モザンビーク(9.7%)
- (2)輸入
- 南アフリカ(39.3%),シンガポール(21.7%),中国(5.7%)
10 通貨
ジンバブエ・ドル(2019年6月に再導入)。
2009年1月から複数外貨制を導入し,主として米ドル,南アフリカ・ランドを使用していた。旧ジンバブエ・ドルの流通は事実上停止。2014年1月より,日本円,中国元,豪ドル,インド・ルピーを新たに法定通貨として導入。2016年11月,米ドル現金の不足を補うため米ドルと同価で国内のみに流通するボンド紙幣を導入。2019年6月,ジンバブエ・ドルを再導入。
11 経済概況
1990年代後半以降,脆弱なガバナンスと経済政策の失敗により,インフレ,失業,貧困等が続いていたが,2008年の大統領選挙を巡る混乱と過度の紙幣発行によるハイパーインフレーションによって,経済は極度に混乱した。2009年1月,政府は複数外貨制(米ドル,南アフリカ・ランドを含む計9か国の通貨を国内流通通貨とする制度)を導入し,また同年2月に成立した包括的政府のもとで,中央銀行の準財政活動等抑止,現金予算編成に取り組んだ結果,極度の経済混乱は収束し,12年ぶりに経済成長を記録した。2012年以降は,慢性的な貿易赤字,巨額の対外債務や公務員給与で逼迫する財政等により,経済成長が鈍化している。
経済協力
1 日本の援助実績(2017年度までの累計)(単位:億円)
- (1)有償資金協力 380.65億円(2017年度なし)
- (2)無償資金協力 564.00億円(2017年度2.97億円)
- (3)技術協力実績 194.61億円(2017年度5.35億円)
2 主要援助国(2017年,単位:百万米ドル)
- (1)米国(222.4)
- (2)英国(135.8)
- (3)スウェーデン(33.8)
- (4)独(33.6)
- (5)日本(14.9)
二国間関係
1 政治関係
- 1968年
- 国連の南ローデシア制裁決議履行の一環として在ソールズベリー総領事館(1960年開設)を閉館
- 1980年
- ジンバブエ共和国独立と同時に国家承認
- 1981年
- 在ジンバブエ日本大使館開設(5月2日)
- 1982年
- 在京ジンバブエ大使館開設(3月8日)
2 経済関係
- (1)日本の対ジンバブエ貿易(2018年:財務省貿易統計)
-
- (ア)貿易額
- 輸出 32.4億円
- 輸入 16.4億円
- (イ)主要品目
- 輸出 自動車,化学製品
- 輸入 鉄鋼,粗鉱物,葉たばこ
- (2)日本からの直接投資
- NEC,富士フイルム,豊田通商,関西ペイント等がビジネスを展開している。
3 文化関係
- (1)文化無償協力
- ジンバブエ大学に対するLL及び視聴覚機材(1999年)
- (2)無形文化遺産保護のための協力
- ユネスコ世界文化遺産「ムベンデ・ジェルサレマの踊り」に対するユネスコ無形文化遺産保護日本信託基金を通じた保護プロジェクトの支援(2006年~2009年)
4 在留邦人数
98人(2018年10月現在)
5 在日当該国人数
151人(2019年6月現在)
6 要人往来
年月 | 要人名 |
---|---|
1980年 | 山中貞則特派大使(独立式典) |
1981年 | 愛知和男外務政務次官 |
1984年 | 北川石松外務政務次官 |
1991年 | 鈴木宗男外務政務次官 |
1994年 | 東祥三外務政務次官 |
1995年 | 柳澤伯夫外務政務次官 |
1997年7月 | 小泉純一郎厚生大臣 |
2000年1月 | 矢野哲朗参議院外交防衛委員長 |
2006年7月 | 日・AU友好議連南部アフリカ訪問団(大野功統衆議院議員(団長)) |
2012年8月 | 加藤敏幸外務大臣政務官(アフリカ貿易投資促進のための官民合同ミッション) |
2013年8月 | 鶴保庸介国土交通副大臣(第20回UNWTO総会出席) |
2015年9月 | 中根一幸外務大臣政務官 |
2016年3月 | 河野雅治政府代表 |
2017年8月 | 日AU議連(逢沢一郎会長) |
2018年8月 | 田中和徳衆議院議員(総理特使,ムナンガグワ大統領就任式) |
年月 | 要人名 |
---|---|
1980年 | ムゼンダ副首相兼外相 |
1981年 | ムガベ首相夫妻 |
1983年 | マサンゴ運輸相 |
1986年 | マングウェンデ外相 |
1986年 | ンドロヴ工業技術務相 |
1987年 | チゼロ財務相 |
1987年 | カンガイ・エネルギー相 |
1989年 | ムゼンダ副大統領(大喪の礼参列) |
1989年 | ムガベ大統領(国賓) |
1990年 | ムレルワ環境観光相(花博出席) ムゼンダ副大統領(即位の礼参列) |
1991年 | チゼロ大蔵経企開発相(LLDC東京フォーラム出席) |
1993年 | フングエ・マシンゴ州知事 |
1993年10月 | シャムヤリラ外相(TICAD出席) マサヤ大蔵・経企・開発担当国務相(同上) |
1994年1月 | マコンベ国会議長(土井衆議院議長招待) |
1994年5月 | カリマンジラ情報・郵政・通信相 |
1995年8月 | ンコモ副大統領 |
1995年10月 | ゴーチェ外務副大臣 |
1996年5月 | ムデンゲ外相(中国訪問途次立寄り) |
1996年10月 | チナマサ財務副大臣 |
1997年5月 | モンベショラ鉱業相(投資促進ミッション),モヨ環境相(第3回気候変動枠組条約会議出席) |
1998年10月 | ホベ国家開発計画委員長(TICAD II出席) |
2000年6月 | マングウェンデ国務相(故小渕前総理大臣葬儀参列) |
2001年12月 | マコニ財務・経済開発相(TICAD閣僚レベル会合出席) |
2003年9月 | ムデンゲ外相,ムレルワ財務経済開発相(TICAD III出席) |
2005年4月 | ビマ外務次官,ダマサネ女性・ジェンダー・コミュニティー開発副大臣(愛知万博出席) |
2007年10月 | ムチェナ科学技術相 |
2008年5月 | ムンベンゲグウィ外相,カセケ観光庁長官(TICAD IV出席) |
2009年10月 | ジノチキウェイ科学技術相(STSフォーラム出席) |
2010年10月 | ジノチキウェイ科学技術相(STSフォーラム出席) |
2011年7月 | マスンダ・ハラレ市長 |
2012年7月 | チョムボ地方行政・都市・農村開発相(世界防災閣僚会議 in 東北出席) チャンギライ首相(実務訪問賓客) |
2012年10月 | ビティ財務相(IMF世銀総会出席) |
2012年12月 | チョムボ地方行政・都市・農村開発相(原子力安全に関する福島閣僚会議出席) |
2013年6月 | ムガベ大統領夫妻,ムンベンゲグウィ外相,ビマ産業通商相(TICAD V出席) |
2013年10月 | カスクウェレ環境・水・気候相(水銀に関する水俣条約外交会議出席) |
2015年3月 | ムガベ大統領,ムンベンゲグウィ外相,チョムボ地方行政・公共事業・住宅相,カスクウェレ環境・水・気候相,パレリニャトワ保健・児童福祉相(第3回国連防災世界会議出席) |
2016年3月 | ムガベ大統領夫妻(公式実務訪問賓客),ムンベンゲグウィ外相 |
2016年5月 | ムゼンビ観光相 |
2016年10月 | フロングワネ・スポーツ・レクリエーション相 |
2017年11月 | ムポコ第2副大統領(EM研究機構による招へい) |
2018年3月 | モハディ副大統領 |
2019年8月 | ムナンガグワ大統領,モヨ外務・国際貿易相,ヌーベ財務相,シリ土地・農業・水・気候・地方再定住相,カゼンベ情報通信技術・配達サービス相,ムルウィラ高等教育・科学・技術相,ンロブ産業・通商・企業開発相他(TICAD7出席) |
2019年10月 | ムンベンゲグウィ前外相(即位の礼に大統領特使として出席) |
7 二国間条約・取極
- 青年海外協力隊派遣取極(1988年7月)
8 外交使節
- (1)ジンバブエ共和国駐箚日本国大使
- 岩藤俊幸特命全権大使(2017年5月着任)
- (2)本邦駐箚ジンバブエ共和国大使
- タイタス・メリスワ・ジョナサン・アブ-バスツ特命全権大使(2015年9月着任)