アジア | 北米 | 中南米 | 欧州(NIS諸国を含む) | 大洋州 | 中東 | アフリカ
(英語版はこちら)
安倍晋三日本国内閣総理大臣とグエン・タン・ズン・ベトナム社会主義共和国首相は、グエン・タン・ズン首相の2006年10月18日から22日までの日本の新内閣最初の賓客としての訪日に際し、建設的かつ前向きな対話を行った。双方は、2004年の「外相間共同声明:不朽のパートナーシップの新たな地平へ向けて」に基づき長期安定・相互信頼の精神の下にこれまで両国が培ってきた良好な関係を高く評価した。双方は、アジア地域の平和と繁栄のための戦略的なパートナーとして、二国間関係を一層拡大し、強化する決意を表明した。
双方は、これまで以上に頻繁にハイレベルで訪問や意見交換を行っていく意向を確認した。グエン・タン・ズン首相は、安倍晋三総理に対し、来る11月にベトナムを二国間公式訪問し、また、APEC首脳会談に出席するよう招待を行い、安倍晋三総理は招待を喜んで受けた。
双方は、一層調整された効果的な方法で二国間関係を促進するために、外交、安保、経済その他の分野であらゆる対話を促進する意向を表明した。
双方は、友好議員連盟の訪問を含む国会議員の間の頻繁な訪問が、両国間の相互理解と協力を深めるために大きく貢献していることに満足の意をもって留意し、このような訪問の更なる拡大への期待を表明した。
グエン・タン・ズン首相は、2005年度に日本のベトナムに対する政府開発援助(ODA)の額が1000億円を超えたことを歓迎しつつ、日本政府がベトナムに対するODAの最大の援助国としてベトナムの経済・社会の近代化に貢献してきたことに謝意を表明し、日越間の協力が将来高まることを希望した。グエン・タン・ズン首相は、新たなベトナム社会経済開発5か年計画を成功裡に実施するために経済改革及び汚職対策に取り組む決意を確かにするとともに、南北高速鉄道及び道路、ホアラック・ハイテク・パークのようなプロジェクトにおけるインフラ開発の重要性を強調した。安倍晋三総理は、グエン・タン・ズン首相の決意を歓迎し、ベトナム政府がインフラ開発を重視していることを認識するとともに、日本の優れた技術や知見を活用しつつ、成長促進、生活・社会面での改善、制度整備のような優先分野で支援を行うことで、ベトナムの社会・経済開発に力強く協力していく旨再確認した。安倍晋三総理は、グエン・タン・ズン首相の発言に留意するとともに、これらの提案を真剣に検討する。
双方は、カンボジア・ラオス・ベトナム(CLV)と日本との間で、CLV「開発の三角地帯」の確立をはじめとした協力を続けることが重要であることを認識した。グエン・タン・ズン首相は、高く評価するとともに、日本に対し、「開発の三角地帯」に対する更なる支援を行い、日本のビジネス界に「開発の三角地帯」への投資を呼びかけるよう要請した。双方は、これまでの日・CLV首脳会議を高く評価し、本年末の第12回ASEAN首脳会議の際に、第3回日・CLV首脳会議を開催する意図を表明した。
双方は、ベトナムのドイモイ路線の継続とベトナムの世界経済への統合の重要性を改めて強調した。この関連で、安倍晋三総理は、ベトナムの世界貿易機関(WTO)早期加盟に対する強い支持を表明し、ベトナムのWTO加盟がベトナムの経済発展を加速するよう期待することを表明した。また、安倍晋三総理は、ベトナムの世界経済への統合を、特にWTO加盟後において、日本が引き続き支持し、支援していくことを再確認した。
双方は、最近の緊密な二国間経済関係を歓迎しつつ、共同検討会の報告を踏まえて、日越経済連携協定(JVEPA)の正式交渉を立ち上げ、2007年1月に第1回会合を開催することを決定した。また、双方は、協力に関する条項を含む日ASEAN包括的経済連携協定(AJCEP)交渉の促進及び早期妥結に対するコミットメントを再確認した。
双方は、日本からベトナムへの直接投資の拡大において、「投資の自由化、促進及び保護に関する日本国とベトナム社会主義共和国との間の協定」及び日越共同イニシアティブが果たした役割を高く評価するとともに、日越共同イニシアティブ・フェーズIIを通じて更なるベトナムの投資環境改善及び日本からの投資促進に取り組むことを改めて確認した。この精神の下で双方は、日本企業に更にベトナムに投資するよう呼びかけた。
両国間の商業交流の膨大な潜在力を認識し、双方は、2005年に85億ドルの二国間貿易総額を2010年までに150億ドルに拡大することを希望しつつ、両国のビジネス界に取り好ましい環境を促進することを決定した。
双方は、投資誘致や市場成長の活性化のため、模倣品及び海賊版を防止する措置の強化や知的財産分野での協力を通じた知的財産の保護強化の重要性が高まっていることを認識した。
双方は、日本の「アジア・省エネルギー・プログラム」に基づき、省エネルギー分野の協力を一層促進するとともに、石炭、石油備蓄の分野における協力を推進し、エネルギー分野のフォーラムを開催することを決意した。
双方は、ビジネス交流の重要性につき認識を共有し、今回のズン首相訪日の機会に開催される経済セミナーを評価した。
双方は、経済競争や地球環境保護における科学技術の役割を認識し、本年8月に締結された日越科学技術協力協定に基づき、情報通信技術(ICT)を含む科学技術分野の協力を促進することを決定した。とりわけ、ICTに関して、双方は、今年度から開始された高等教育分野における日本のODA協力プロジェクトの重要性に留意した。
双方は、原子力エネルギーの平和利用に関する協力の重要性を認識し、法的、行政的その他の必要な基盤整備のために努力することを含め、この分野における協力を推進することを決定した。この関連で、双方は、原子力安全、セキュリティー及び不拡散の必要性を認識し、安倍晋三総理は、この点に関しIAEA追加議定書、核物質防護条約及び原子力安全条約が果たす極めて重要な役割を強調した。双方は、これらの努力は将来的に日越原子力協力協定に関する意見交換につながり得るとの認識を共有した。
これらの分野における協力を前進させるため、双方は、両国政府間の対話を開始することを決定した。
双方は、両国国民の相互理解がより緊密な二国間関係の基礎であることを認識しつつ、文化、教育、観光及びスポーツ分野の交流を通じ、相互理解を更に促進する決意を表明した。双方は、また、青年交流の重要性について見解を共有し、現在ベトナムにおいて行われている学生による映画制作活動の教育効果を評価した。
双方は、昨年5月の日本政府によるベトナムに対する文化交流使節団の提言に基づき、両国間の交流を包括的に話し合い具体的な文化交流プロジェクトを推進するため、ハイレベルの日越文化交流フォーラムを開催することを決定した。双方は、タンロン遺跡保存に関する日越合同専門委員会の設置に向けた最近の進展を歓迎した。
安倍晋三総理は、ベトナムにおける日本語普及、特に義務教育課程での日本語教育の進展を歓迎し、日本としての最大限の支援を改めて表明した。
グエン・タン・ズン首相は、ベトナム人研修生に対する研修・技能実習プログラムを高く評価し、プログラムの継続の重要性を強調した。安倍晋三総理は、プログラムに対するベトナムの見方に留意し、プログラムが強化され、適切に実施されることの重要性を強調した。双方は、両国の経済関係を更に促進する上で、ビジネス関係者の交流の円滑化が重要であるとの認識を共有し、双方が、数次短期滞在査証の発給を促進することについて意見が一致した。
双方は、昨年12月のダラット・フラワーフェスティバルの際の日ASEANフラワーツーリズムセミナー及びハイレベル推進会議並びに本年8月のベトナムにおけるジャパン・フェスティバル2006が両国間の相互理解を促進する上で成果があったことを歓迎するとともに、将来、両国においてこのようなフェスティバルが開催されることを含め、民間における更なる交流を希望することを表明した。
双方は、地域及び国際社会の諸問題に関する協力を進めることが重要であるとの認識を共有した。双方は、人間の安全保障について国際社会として共同で取り組んでいくべきであることを認めた。
さらに、安倍晋三総理は、2006年のAPEC議長国としてのベトナムの建設的な役割を評価し、双方は、11月のAPEC首脳会議の成功に向けて更に協力していく意向を表明した。双方は、東アジア首脳会議(EAS)、ASEAN+3その他の枠組みを通じて、東アジア共同体の実現に向けて具体的優先分野での協力及び経済統合を進める決意を再確認した。双方は、メコン地域開発において開発のパートナーとして両国の経験を活用し協力していく用意があることを表明した。
双方は、安全保障理事会を含む国連の早期改革に向け引き続き協力していく決意を再確認し、国連改革は国連憲章の基本原則を更に強固なものとしつつ、国連の活動の効率性及び民主性の向上を強化するものであるべきであるとの見方を共有した。
グエン・タン・ズン首相は、日本が国連安全保障理事会常任理事国となることに対するベトナムの支持を再確認した。安倍晋三総理は、ベトナムが、2008年から2009年までの任期で国連安全保障理事会非常任理事国になることへの日本の支持を表明した。
双方は、ベトナムが包括的核実験禁止条約(CTBT)を批准したことに満足の意を表しつつ、大量破壊兵器(WMD)の拡散、国際テロリズム、麻薬取引及び人身売買は、安全保障及び安定に対する深刻な脅威であると認識し、これらの脅威に共同で対処するため、二国間及び多国間の協力を強化することにつき見解を共有した。
双方は、アジアや地球の持続可能な開発にとって、成長著しいベトナムにおいて経済発展と環境保全の好循環を作り出すことが重要であるとの認識を共有した。双方は、両国政府が3R(Reduce-廃棄物の発生抑制、Reuse-再使用、Recycle-再生利用)や3Rイニシアティブの文脈でのベトナムにおける廃棄物の適正処理等について協力するとの意図を表明した。
双方は、最近の朝鮮半島情勢に深い懸念を表明した。双方は、核実験に反対し、北朝鮮に対し、事態を更に複雑化させてはならず、六者会合に即時に戻るべきであり、この問題に関する六者会合の共同声明及び国連安保理決議1695号及び1718号の実施に向け取り組むべきであると強く促した。双方は、北朝鮮が、拉致問題を含め、その他の国際社会の安全保障上及び人道上の懸念に対応することが必要であることを強調した。
双方は、グエン・タン・ズン首相の初の日本公式訪問の成果に対し、日本とベトナムの友好的かつ多面的協力関係に新たな段階を開くものとして、満足の意を表明した。
2006年10月19日、東京