バチカン
バチカン(Vatican)
基礎データ


一般事情
1 定義
バチカンとは、「教皇聖座(Holy See)」と「バチカン市国(Vatican City State)」の総称。「教皇聖座」とは、カトリック教徒の総本山、また「教皇の国」を意味し、宗教機関でありながら、国としての側面も持つローマ教皇及びローマ教皇庁(政府に相当)を総称した概念。一方、「バチカン市国」とは、「教皇聖座」に居所を提供している領域としての国家を指す。約14億人とも言われる信者を擁するカトリック教会の最高機関であり、国家としての側面も持つ。
バチカン市国(Vatican City State)
1 面積
約0.44平方キロメートル(日本の皇居は約1.15平方キロメートル)
このほか、市国外のイタリア領土内に所有する施設あり(ローマ市内のいわゆる四大聖堂のような教会や教皇の別邸であるガンドルフォ城など)。
2 人口
バチカン国籍保有者は618人(2023年6月)であるが、全員がバチカン市国内に居住している訳ではなく、その多くはイタリア国内に居住している(バチカン国籍を保有し且つ市国内に居住する者は246人)。一方で、バチカン国籍を保有せずバチカン市国に職務等で居住する者の合計は764人である。
3 言語
公用語はラテン語。ただし、外交用語にはフランス語、日常会話ではイタリア語を使うことが多い。
4 宗教
キリスト教(カトリック)
5 略史
年月 | 略史 |
---|---|
64年頃 | ネロ皇帝の迫害により殉教したイエスの使徒ペテロが、バチカンの丘に葬られる。 |
349年 | ペテロの墓の上に、聖ピエトロ聖堂建設。 |
756年 | カロリング朝ピピンによるローマ教皇に対するラヴェンナ等の都市の寄進(教皇領の始まり)。 |
1870年 | イタリア軍、教皇領ローマを接収(「ローマ問題」)。 |
1929年 | イタリアとローマ教皇庁との間でラテラノ条約締結(イタリアはバチカン市国を独立した主権国家として承認)。 |
2013年 | 教皇フランシスコ就任 |
6 元首
ローマ教皇(立法、行政、司法の全権を行使)
7 政治機関
教皇に立法権、行政権及び司法権が属する。立法権は教皇の名の下にバチカン市国教皇委員会(任期5年)が権利を行使。行政権はバチカン市国教皇委員会委員長が教皇の名の下に、行政長官として行使。司法権は教皇の名の下でバチカン市国の司法制度に設立された諸機関が行使。
政治体制・内政
1 政体
絶対君主制。
2 元首
ローマ教皇フランシスコ(第266代、2013年3月13日就任、アルゼンチン出身)
3 議会
絶対君主制のため議会は無し。ただし、議会に準じる司教会議(シノドス)において、世界各地の上位聖職者がカトリック教会の指針について協議している。通常1~4年に1度開催。また特定のテーマに関する特別司教会議が開催されることもある。
4 政府
教皇の公務執行中央機関であるローマ教皇庁(Curia Romana)が政府に相当する。その最高機関は国務省で、内務省に相当する総務庁、外務省に相当する外務庁及び大使人事等を扱う在外公館担当庁等が設置されている。
- (1)首相名 ピエトロ・パロリン国務長官(イタリア出身)
- (2)外相名 ポール・リチャード・ギャラガー外務長官(英国出身)
外交・国防
1 外交基本方針
- (1)バチカンの外交目標は、キリスト教精神を基調とする正義に基づく世界平和の確立、人道主義の昂揚にある。そのための武力紛争の回避、人種的差別の廃止と人権の確立、発展途上国に対する精神的・物質的援助等がバチカン外交の特色とされる。多国間主義の推進も重視。
- (2)現在184の国・地域等と外交関係を有する(欧州で唯一、台湾と国交有り)。特に、1989~1991年にかけ東欧諸国と相次いで外交関係を開設又は再開し、1994年6月、イスラエルとも歴史的な外交関係樹立を達成。近年では、ロシア(2009年12月)、マレーシア(2011年7月)、モーリタニア(2016年12月)、ミャンマー(2017年5月)と外交関係を樹立(中国、ベトナム、サウジアラビア等とは外交関係未開設)。
- (3)キリスト教各派の一致促進(エキュメニズム)運動を推進するとともに、世界諸宗教対話会合を1986年から開催。
- (4)欧州安全保障協力機構(OSCE)、国際移住機関(IOM)等には「教皇聖座」として加盟。国連等にはオブザーバーとして参加。万国郵便連合(UPU)、国際電気通信連合(ITU)といった技術事項を取り扱う機構には「バチカン市国」として参加。
2 軍事力
スイス衛兵が教皇身辺と教皇宮殿の、市国警察がその他の警備に当たる(いわゆる軍隊は存在しない。)。
経済
1 通貨
ユーロ
2 経済概況
主としてイタリアを始めとするEU諸国からの輸入に依存2023年の教皇庁財政収支は8,300万ユーロの赤字。歳入は11億5,300万ユーロであり、世界のカトリック教徒からの献金4,840万ユーロ、バチカン銀行の献金積立金からの補填9,000万ユーロの他、バチカン美術館の文化事業の収益、保有不動産による歳入から構成されている。教皇庁資産は非公開。
二国間関係
1 歴史
- 1549年 フランシスコ・ザビエル、鹿児島に上陸。
- 1555年、フランシスコ・ザビエルから洗礼を受けた「薩摩のベルナルド(日本人)」が教皇パウロ4世に謁見。
- 1585年 九州のキリシタン大名が派遣した伊藤マンショら天正遣欧少年使節が教皇グレゴリウス13世及び教皇シスト5世に拝謁。
- 1615年 伊達政宗が派遣した支倉常長ら慶長遣欧使節が教皇パウロ5世に拝謁。
- 1942年 日本とバチカン、外交関係樹立(終戦後一時途絶)
- 1952年 日本とバチカン、外交関係再開。
- 1981年 教皇ヨハネ・パウロ2世訪日
- 2019年 教皇フランシスコ訪日
- 2022年 日本バチカン国交樹立80周年
2 日本におけるカトリック信者数
約42.2万人(司教29名(その内、枢機卿1名、大司教2名)(2022年)
3 在留邦人数
0名(2023年)
4 要人往来
年月 | 要人名 |
---|---|
1953年 | 皇太子殿下(当時) |
1965年 | 常陸宮同妃両殿下 |
1984年 | 皇太子殿下(当時) |
1993年 | 天皇皇后両陛下(当時) |
2005年 | 川口特派大使(元外務大臣。教皇ヨハネ・パウロ2世の葬儀出席) 武藤特派大使(元外務大臣。教皇ベネディクト16世の就任式出席) |
2009年 | 麻生総理大臣 |
2013年 | 森特派大使(元総理大臣。教皇フランシスコの就任式出席) |
2014年 | 安倍総理大臣 |
2016年 | 秋篠宮同妃両殿下(当時) 岸田外務大臣 |
2018年 | 三笠宮寛仁親王妃信子殿下 河野外務大臣 |
2022年 | 岸田総理大臣 |
年月 | 要人名 |
---|---|
1981年 | ローマ教皇ヨハネ・パウロ2世 |
1989年 | オッディ枢機卿(大喪の礼) |
1990年 | カプリオ枢機卿(即位礼正殿の儀) |
2008年 | マルティンス枢機卿、ディアス教皇庁福音宣教省長官 |
2009年 | マンベルティ外務長官(外務省賓客) トラン諸宗教対話評議会議長 |
2011年 | サラ開発援助促進評議会議長 |
2012年 | タークソン正義と平和評議会議長 |
2013年 | タークソン正義と平和評議会議長 |
2013年 | ファリーナ・バチカン図書館名誉館長(教皇特使) |
2015年 | モンテリーズィ枢機卿 ブルーゲス・バチカン図書館長 |
2017年 | ギャラガー外務長官(閣僚級招へい) アマート列聖省長官(高山右近列福式) フィローニ福音宣教省長官 |
2018年 | フィローニ福音宣教省長官 |
2019年 | モンテリーズィ枢機卿(即位礼正殿の儀 教皇特使) ローマ教皇フランシスコ(東京、長崎及び広島) (パロリン国務長官、フィローニ福音宣教省長官、ペーニャ・パーラ総務長官、ギャラガー外務長官同行) |
5 外交使節
- (1)バチカン国駐箚特命全権大使 千葉 明
- (2)本邦駐箚ローマ法王庁大使 フランシスコ・エスカランテ・モリーナ