ニューヨークを訪問中の前原外務大臣は,23日(木曜日)午前8時30分から約50分間,クリントン米国務長官と会談したところ,概要以下のとおり。
1.日米関係
- (1)日米安保
前原大臣より,現在の東アジアの状況にかんがみて,日米同盟はアジア太平洋の公共財であると考えており,同盟の深化が必要である,戦略対話を通じて日米の協力関係を更に強化したい旨述べ,クリントン長官から賛同する旨の発言があった。また,前原大臣より,米国のアジア太平洋地域への関与という文脈で,米国が来年から東アジア首脳会議(EAS)に正式に参加することは,アジア太平洋を重視するものとして心強く思う,安保分野に限らず経済分野でも米国との関係を強化していきたい旨述べた。
普天間飛行場移設問題につき,前原大臣より,5月28日の日米合意を踏まえて,粘り強く沖縄の理解を求めるべく努めていきたい旨述べた。
- (2)牛肉輸入再開問題
前原大臣より,4月の日米農相間協議等を踏まえて,月齢制限の見直しも含めて双方が受け入れ可能な解決に向けて現実的に議論していきたい旨述べた。これに対し,クリントン長官より,そうした議論を楽しみにしているとの発言があった。
- (3)高速鉄道
前原大臣より,日本としては日米の協力をより重層的なものにしていく観点から,米国の高速鉄道への日本の参入を考えている旨述べ,クリントン長官より,フォローアップしていきたい旨発言があった。
- (4)子の親権
クリントン国務長官より,子の親権に関し,日本のハーグ条約締結につき改めて要請があり,これに対し,前原大臣より,国内にも様々な意見があり,検討すべき論点も多々あるが,早期に結論を得るべく検討を行っていきたい旨述べた。
2.アジア太平洋地域情勢
- (1)北朝鮮
クリントン長官より,北朝鮮の今後について,日本とも協議していきたい,我々の主たる目的は朝鮮半島の非核化である旨述べた。これに対し,前原大臣より,9月28日に予定される朝鮮労働党代表者会議なども注視しながら米と戦略的な対話を行っていきたい旨述べた。
- (2)中国
双方で対中関係について議論し,昨今の海洋を巡る問題について関心をもって注視するとともに,今後,日米で緊密に連絡をとっていくことで一致した。東シナ海において発生した事件についても意見交換を行った。クリントン長官からは,日米安保条約第5条が尖閣諸島に適用されるという米国の立場について発言があった。
3.グローバルな課題
- (1)イランの核問題
クリントン長官より,我が国が9月3日に決定した安保理決議第1929号に付随する措置につき謝意が表明された。前原大臣からは,本件は,米国と同様,核不拡散という観点から深刻な問題であると認識しており,これを放置すると中東の不安定化に繋がる可能性もあるところ,米国と歩調を合わせていきたい旨述べた。
- (2)アフガニスタン・パキスタン
クリントン長官より,日本の多額の支援に感謝する旨述べるとともに,アフガニスタンの警察官への給与や再統合等についての50億ドルの支援は不可欠である,パキスタンの洪水など更に支援が必要となっており,このような危険な地域の安定化に協力していきたい旨述べた。これに対し,前原大臣より,アフガニスタンには今後5年間で最大約50億ドル程度の支援を適切に実施していく,パキスタンの洪水については自衛隊のヘリコプター部隊及び医療チームを派遣してきている旨述べた。
- (3)軍縮・不拡散
クリントン長官より,IAEA平和利用イニシアティブについて日本の貢献を歓迎する旨述べ,前原大臣より,クリントン長官のイニシアティブを高く評価するとともに,来年度予算として350万ドルを概算要求している,多くの国が参加するよう米国とともに働きかけていきたい旨述べた。