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日米間の「安全かつ円滑な貿易」に関する取組

平成20年7月

1.背景

 2001年9月11日の米国同時多発テロ事件の後、米国は、テロ対策の一環として、物流におけるセキュリティ対策措置を強化。この結果、適法な貿易にまで効率性の低下やコスト上昇といった影響が及ぶようになった。

 このような状況を受け、貿易の安全性の向上と円滑な物流を両立させる必要性への認識が国際的に高まり、APECや世界税関機構(WCO)においても「安全かつ円滑な貿易」に関する議論が行われるようになった。

2.「新世紀の日米同盟」

 日米間でも2006年6月に発表された「新世紀の日米同盟」において、「テロの脅威に対処しつつ合法的な物、サービス、人及び投資の効率的な移動を確保」することについての協力強化が謳われた。

3.経済界の声

 日米の経済界からは、米国の各種のセキュリティ対策措置が、物流における迅速性・円滑性・効率性を阻害しているとして懸念が表明されている。2006年11月に開催された日米財界人会議の共同声明は、「物流のサプライチェーンセキュリティの確保と貿易円滑化の調和を目指す二国間対話の場を創設することを両国政府に強く要望」した。

4.日米間の「作業計画」

 上記「新世紀の日米同盟」を受け、2006年12月の日米次官級経済対話において、日米の専門家間で物流の円滑化と安全の両立を目指す作業に取組むことに合意。その後、事務的やりとりを通じ、作業計画に合意、2007年4月の日米首脳会談に合わせ、同作業計画が承認された。

 同作業計画においては、日米両国が、日米間、アジア太平洋地域、そして世界の貿易の安全性と効率性を同時に高めることを謳い、具体的な協力として、1)専門家間の日米「安全かつ円滑な貿易」スタディ・グループの立上げ、2)貨物ターゲティング手法の共同研究、3)先進貨物セキュリティ技術の研究・開発に関する協力、4)海上セキュリティに関する協力、を掲げている。

5.日米「安全かつ円滑な貿易」スタディ・グループ

 上記作業計画を受け、2007年7月にスタディ・グループ第一回会合、11月に第二回会合を開催。日米の関係省庁担当者が日米間の物流におけるボトルネックに関する議論や、日米の各々のAEO(Authorized Economic Operator)プログラム(=貨物のセキュリティ管理と法令遵守の体制が整備されたサプライチェーン上の関連事業者を認定し、税関手続の簡素化等の便益を与える制度)の紹介及びその相互認証に向けた議論、米国が新たに導入を検討している「10+2ルール」(事前提出が義務づけられている貨物情報につき、荷主に対し10項目、船社に対し2項目を追加するもの)及び米国向けコンテナ貨物100%検査要求についての議論等を行っている。

(注)米国向けコンテナ貨物100%検査要求

 2007年8月3日、2012年7月から全ての米国向けコンテナ貨物に対し外国港にて積荷前に検査(画像検査及び放射線検査)を実施することを要求する条項を含む法律(「9.11委員会勧告実施法」)が成立。我が国やEU等は、本要求は国際物流を大きく阻害しかねないとして懸念を表明。(我が国は、2007年10月、加藤駐米大使より、米政府関係閣僚及び米議会関係委員会の幹部に対して、本条項に懸念を表明する書簡を発出。)

 我が国は、本条項が世界の物流を阻害することのないよう米国に求めるとともに、円滑な物流との両立に向け、日米「安全かつ円滑な貿易」スタディ・グループ等の場を通じ、引き続き協議していく。

6.具体的な協力

(1)コンテナ・セキュリティ・イニシアティブ(CSI)

 CSIは、米国向け海上コンテナ内に大量破壊兵器等を隠匿し米国内で爆発させるテロを未然に防止するため、米国向けコンテナ貨物を船積みする米国外の港に米国税関職員を派遣し、当該国の税関当局と協力して、ハイリスク・コンテナの特定・検査を実施する取組。

 2002年9月、日米税関当局がCSI試行開始について合意し、現在、相互主義に基づき、米国の税関職員が東京、横浜、名古屋及び神戸の4港に、日本の税関職員がロサンゼルス・ロングビーチ港に派遣され、ハイリスク・コンテナの特定作業に係る協力を行っている。

(2)メガポート・イニシアティブ(MI)

 MIは、放射性物質の拡散を防止するため、世界の主要港に放射性物質検知施設を設置するという、米国政府が推進する取組。

 米国政府は、MIについて、主要関係国に対して積極的な働きかけを行っており、これまでに、中国、台湾、韓国等を含む27カ国・地域との間で実施合意を結んでいる(2008年5月現在)。

 2008年7月、日米両政府は、MIのパイロット・プロジェクトを横浜港(南本牧ふ頭)において、本年度中に実施することを発表。

(3)MATTS

 MATTS(Marine Asset Tag Tracking System)は、コンテナに取り付けられたタグにより、コンテナの積載時から開梱まで常時監視を可能とし、不法開封等の異常を探知するという、米国土安全保障省が開発中のシステム。本システムにつき、日米政府が協力して海上輸送実証実験を行っている。

(4)貨物ターゲティング手法の共同研究

 我が国は、外国政府として初めて、米国ナショナル・ターゲティング・センターに我が国税関職員を派遣。リスク貨物選別のためのターゲティング手法につき日米間で共同研究を行っている。

(5)AEO相互認証

 アジア・ゲートウェイ戦略会議「物流(貿易関連手続等)に関する検討会」が2007年5月にまとめた「貿易手続改革プログラム」において、日米が協調し、セキュリティ関連制度の相互認証の可能性を含め議論を促進すること、上記スタディ・グループ等も活用しつつ、両国のプログラムに関する情報交換及びレビューを実施することが定められた。

 2007年6月より、日米の税関当局間で相互認証に向けた実務者協議を開始。

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