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日米間の規制改革及び競争政策イニシアティブ
(3年目の対話に向けた要望書の交換について)
平成15年10月24日
- 24日、外務省において、藤崎一郎外務審議官は、ジョセット・シャイナー米国次席通商代表との間で、規制改革及び競争政策に関する要望書を交換した。
- この要望書は、今般3年目を迎える「日米規制改革及び競争政策イニシアティブ」の枠組みの下で、日本政府及び米国政府のそれぞれが、日米経済発展のために改善が必要であると考える相手国の規制・制度をとりまとめたものである。今後、日米間で順次会合を開催し、本日交換した要望事項について建設的な議論を行うこととしている。
- 米国の規制・制度には、依然として、必ずしも国際基準に調和しないもの、自由貿易の理念にそぐわないもの、公正な競争を阻害しかねないものが見られる。また、日本政府としては、2001年9月の同時多発テロ以降に米国政府がとってきている様々なテロ対策措置の重要性は十分理解するものであるが、同時に、これらが日米間ひいては地球規模での経済活動や人の交流を阻害しないよう望んでおり、今後、特にこの点を大きな柱として、米国政府と有益な議論を行う考えである。
- 政府としては、今後、このような基本認識に立ち、本日手交した要望書を十分反映させる形で、米国政府の規制・制度・政策の改善を求めていく方針である。
要望書(和文(PDF)
/英文(仮訳)(PDF)
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対米要望の趣旨と目的
(PDFはこちら:和文(PDF)
/英文(仮訳)
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日米両国は、日米経済の発展のため、相互に規制と競争政策に関する問題点を指摘し、議論した上で、建設的な対策をとるための努力を続けてきた。その議論の場として、2001年、「日米規制改革及び競争政策イニシアティブ」が設置された。
3年目の対話において、相互利益促進の観点から、我が国は米国に対して以下の趣旨で要望を行うこととした。
日本国民の円滑な米国訪問、滞在を実現するために:
- 8月からすべての米国ビザ申請者に面接が義務付けられた。また、米国滞在許可証の延長手続に3か月から1年もの長期間を要している。このように、米国の領事関連の制度・規制によって、日本人の米国訪問・滞在にますます大きな困難と負担が伴ってきている。
- テロ対策の重要性について理解は共有するが、これによって、日米間の経済・人的交流に不都合が生じているのみならず、日本国民が持っていた「アメリカ=自由の国」のイメージが損なわれつつある。
- 経済のみならず日米が同盟国であり友好国であるとの観点から、このような制度・規制を合理的なものにすることを目指す。
グローバル化時代における外国企業のビジネス環境改善とコスト低減のために:
- 産業の基本制度である度量衡(長さ、大きさ、重さ)において、米国ではメートル法の導入が遅れている。このように、世界最大の経済大国であり世界経済の牽引車である米国が、世界標準にそぐわない制度を未だ有しており、企業活動のグローバル化に伴い弊害が増大している。
- 連邦制度のもとで、50の州ごとに制度・規制が異なっている。電気通信、エネルギー分野などにおいて、州をまたいで広域事業を行おうとする者は、事業が展開されているすべての州に対して異なった形式・内容で届出・申請・報告をしなければならず、無用のコストを負わされている。
- 米国の外交政策や国土安全のための制度の中には、企業の投資や取引意欲を萎縮させるものがある。これら諸制度の発動基準が明確でないために、企業が必要以上に罰則の適用を恐れてしまうためである。制裁法や貨物の保安(セキュリティ)をはじめとする措置が明確・合理的に運用され、企業活動に対する悪影響が排除されることを望む。
自由貿易と競争促進のために:
- 米国には、世界経済の成長の根本的な原動力である自由貿易と競争の促進にそぐわない制度がある。連邦政府調達における米国製品購入義務づけ、米国船舶に対する巨額の運航補助金などは、競争力のある外国企業を不当に排除し、結果として米国経済そのものの効率性を弱めている。
米国市場の信頼回復のために:
- 米国の経済と市場への信頼維持は、世界経済の安定成長にとって不可欠の条件である。エネルギーや通信業界の経営スキャンダル、北米北東部大停電が世界に衝撃を与えたのはそのためである。透明かつ安定した競争条件の確保のため、米国政府の一層の努力を期待する。
要望事項要約
(PDFはこちら:和文(PDF)
/英文(仮訳)(PDF)
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(総論)
- 米国の規制の中には、未だに国際基準に調和していないもの、自由貿易の理念に反するもの、公正な競争を阻害するものがある。引き続きこれらの撤廃・改善を要望する。
- 3年目の対話で日本政府が特に関心を有するのは、テロ対策強化のための米国政府による一連の規制強化である。これらの措置が日米間の通商関係及び人的交流を不当に阻害する要因になることを恐れている。規制改革イニシアティブの枠組のもとで、これら安全保障上の要請と円滑な経済活動をいかに両立させることが可能であるか、米国政府と建設的・生産的な議論を行いたい。
(各論)
1.領事事項
米国に在留する又は米国を訪問する
日本国民の円滑な移動、生活及びビジネス活動を確保するため、以下の事項を要望する。これら規制による悪影響を除去し、
日本国民の米国訪問・滞在インセンティブを維持することは、米国経済にとっても重要である。
- 米国政府が各国の生体情報(バイオメトリクス)搭載旅券導入計画の内容を判断し、各国に対して査証免除を継続するかどうか決定する際の基準を早急に明らかにすること。
- US-VISITプログラムによる査証入国者からの生体情報取得について、個人情報の厳格な管理のための具体的措置、及び空港での混雑緩和策を明らかにすること。
- 米国査証申請者に対する面接の実施に伴い日本国民が負っている負担を抜本的に軽減すること。
- 在日米国大使館への郵送による査証更新手続を復活すること。または国務省での査証更新手続を効率化すること。
- 日本人駐在員の扶養家族にも社会保障番号(SSN)を付与し、併せてSSN発給手続を迅速にすること。社会保障番号がない者には運転免許を発給していないイリノイ州の状況を改善すること。
- 滞在許可証(I-94)の延長手続を迅速化すること。
- 外国人に対しては査証有効期限までしか有効でない運転免許を発行している州に対し、連邦政府が制度の改善を働きかけること。
2.流通
- 米国政府による交通保安のための規制が物流の弊害にならないよう、手続の一部簡素化、両国当局間での意見交換の継続、最新技術による物流管理の効率化などを行うこと。
- 関税精算手続期間を短縮し、輸出入業者が直面している取引の不安定性を除去すること。
- 外航海運に関するジョーンズ法に基づいて連邦海事委員会(FMC)が外国船社に対して不当な要求を行っている事態を改善すること。
- 米国船社に対する巨額の運航補助金を撤廃すること。
- アラスカ原油輸送の際に課せられる米国籍船使用の義務付けなどの規制を撤廃すること。
- 外国籍船の運賃設定のあり方に対する一方的規制を撤廃すること。
3.貿易及び投資関連措置
- 政府調達について一定の割合で米国製品の購入を義務付けるバイアメリカン法及び関連法令を撤廃又は改善し、外国の安価・高品質な製品の調達機会を拡大すること。
- アンチダンピング措置及びセーフカード措置をWTO協定に整合した形で運用すること。
- 米国政府による国家安全保障を損なうおそれのある対米直接投資の審査(エクソン・フロリオ条項)を、WTO協定との整合性や透明性を確保した形で行うこと。
- 特許権者の地位を不安定にしたり特許を実施する者が不当な不利益を被る可能性がある米国特有の特許制度を改善すること。
- 世界標準であるメートル法を米国の公共・民間両部門において採用すること。
- 日本の輸入業者が再輸出規制の適用対象から除外されること、及び、適用対象から除外されるまでの当面の措置として、再輸出規制に関する輸出企業の負担を軽減するための措置を講ずること。
- 事業者に不当な負担を課す米国特有の時計関税算定制度・原産地表示制度を改善すること。
4.制裁法
国際法との整合性を確保しつつ、制裁法を慎重に運用し、第三国企業への適用を控えること。
個別具体的には:
- イラン・リビア制裁法の適用について、EU企業にこれまで認められてきているものと同等の扱いを今後日本企業にも認め、かつその旨を明らかにすることなど。
- キューバ制裁法の適用停止延長期間をより長期間にすること。
- 米国からミャンマーへの金融サービス輸出禁止措置について、その許可基準等を明確にし、事業者の予見可能性を高めること。
- 州・地方政府の制裁法が連邦政府の外交政策と整合的なものとなるよう働きかけること。
5.競争政策
- 連邦反トラスト法の適用除外について見直しを継続し、合理的でない制度は廃止すること。
6.法律サービス及びその他法律関連事項
- 米国での外国弁護士受入れを全州に拡大すること。
- 各州における外国弁護士の受入れに際して要件とされる職務経験期間及びその算定方法等を見直すこと。
- 企業に過大な負担となっている米国の製造物責任の緩和に向けた動きを推進すること。
7.公共工事
- 公共工事をめぐる紛争を裁判によらず迅速・円滑に解決する手段(仲裁など)を、連邦政府のみならず州政府・地方自治体においても整備すること。
8.電気通信
- 直接投資割合が一定水準以下の事業者に対してのみ無線局免許を付与するとの規制(日本では既に撤廃されている)を米国においても撤廃すること。
- 外国電気通信事業者の米国市場参入に関する審査基準の中には不当又は不明確なものがあるので、基準を撤廃又は明確化すること。
- 州をまたぐ広域通信事業の展開の弊害となりうる州間での規制の相違の調和を図ること。
- 3種類の異なるアクセス・チャージの間の格差を解消又は撤廃し、競争環境を整備すること。
- 国務省による商用衛星輸出許可関連手続を効率化し、かつ、許可基準を明確にすること。
- 市場環境の変化を踏まえ、ネットワーク回線終端装置(NCTE)に関する1990年の日米交換書簡を終了すること。
9.情報技術
- 米国内で保護が十分でない著作権(生の実演やビデオゲームの貸与に関するものなど)について、その保護を強化すること。
- デジタルコンテンツの海賊版対策に関する日米間の協力を進めること。
10.エネルギー
- 北米北東部停電の原因を徹底究明するとともに、系統信頼度向上のための措置を講じること。
- 連邦・州の規制の二重構造や州毎に異なる規制を改善すること。
- 公益事業持株会社法(PUHCA)廃止を含む包括エネルギー法案の早期成立に努めること。
- 公営事業体の在り方について早急に評価をとりまとめ、今後の方向性について検討を行うこと。
- 標準市場設計(SMD)を全米に展開する場合は、協調のとれた発電・送電設備の確保に配慮した制度設計を実施すること。
- 事業展開の予見可能性を低下させることのないよう、連邦エネルギー規制委員会(FERC)が規制方針を発表する場合は各方面から意見を十分に聴取すること。
- 卸市場における上限価格の設定が、市場支配力の乱用防止という目的に対して最も有効かつ効率的な手段であることを検証すること。
11.医療機器・医薬品
- 米国においては医薬品の承認申請などの際に、合意された国際調和基準と異なった要件を課している場合があるため、国際調和基準を遵守し、関連企業の負担を軽減すること。
- 日米間で、医薬品・医療用具の品質管理規則(GMP)及び承認申請資料の治験の実施に関する基準(GCP)の相互承認に向け実質的協議を開始すること。
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