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日米共同記者会見(概要)

平成20年7月8日

 6日、午後5時10分より約30分間、福田総理は北海道洞爺湖のザ・ウィンザーホテル洞爺において、ブッシュ大統領とともに、日米首脳会談後の共同記者会見を行ったところ、概要以下のとおり。

1.冒頭、福田総理より概要以下のとおり述べた。

(1)ただ今、ブッシュ大統領と約1時間にわたり大変充実した会談を行った。会談ではまず、過去数十年に亘り日米同盟によってこの地域の平和と安定が維持されたとの認識で一致した。その上で、ブッシュ政権が発足した2001年1月以来の約7年半の間、安全保障、経済、人的交流など様々な面で日米同盟が飛躍的に深化したことを確認し、これを一層強化していくことで一致した。

(2)まず安全保障面においては、9・11後のテロとの闘いやイラク復興支援における協力、米軍再編の「ロードマップ」への合意とその着実な実施、弾道ミサイル防衛の共同開発と迎撃実験の成功等が示すとおり、日米間の協力が一層具体化、着実化し、幅も広がった。

(3)北朝鮮については、私からは、1)北朝鮮の完全な核放棄の実現に向け、申告の検証が極めて重要である、2)非核化と同時に拉致問題の解決が重要である、3)引き続き米国と緊密に協力していきたい、旨述べたのに対し、ブッシュ大統領は私の発言に同意され、特に拉致問題について自分は拉致問題を決して忘れない、拉致問題に関する日本の立場を明確に支持する米国の立場にいささかも変わりはなく、その解決に向け日本と引き続き緊密に連携していきたいとの発言があり、心強く感じた。
 私とブッシュ大統領との間で一致したとおり、北朝鮮の核と拉致の問題について、引き続き、日米で緊密に連携して対処していきたい。

(4)また経済面でも、日米両国の相互依存関係は一層強化されており、我が国の対米直接投資は2000年以降で約3割増加し、在米日系企業は米国内で約60万人を雇用している。米国の対日直接投資も約6割増加した。

(5)更に草の根レベルでの日米間の相互理解は高いレベルとなっている。先に私が訪米した際に発表した「日米交流強化のためのイニシアティブ」のフォローアップを着実に進め、同盟の基礎を揺るぎないものにしていきたい。

(6)私は、今後更に日米同盟を深化させていくためには、こうした日米交流に加え、アジアでの政策協調を強化すること、更に気候変動、アフリカ開発や防災における日米の連携の強化が重要であろうと説明し、大統領より賛同を得た。

(7)アフリカ開発については、保健分野を中心に、日米で協力することで一致した。

(8)防災については、近年アジアで頻発する大規模な災害を受け、アジアにおける防災協力強化に向けて、日米間の協力を強化していきたい。

(9)気候変動についても、私とブッシュ大統領の間で話し合った。この問題は人類が直面する最も深刻な挑戦の一つであり、子孫に美しい地球を残すことが我々の責務であること、そのためG8サミットに向け引き続き協力していこうというのが私と大統領の共通の認識である。

(10)現下の原油価格・食料価格高騰が世界経済に深刻な影響を与えており、迅速な対応が必要であるとの認識でも一致した。緊急支援策から短期・中長期の政策につき、日米更にG8で協議し、協力したい。

2.次に、ブッシュ大統領より概要以下のとおり述べた。

(1)総理のおもてなしと、この美しい場所へのご招待に感謝する。ローラと私は今晩の総理と総理夫人との夕食会を本当に楽しみにしている。私は、我々が重要かつ有意義な議論を行ったという貴総理の評価に同意する。

(2)我々は朝鮮半島の非核化のための日米間の協力を始めとする、様々な議題について意見交換を行った。私は、日本において北朝鮮問題がセンシティブな問題であることを完全に理解している。私は日本の人々が、拉致問題が無視されないようにしたいと感じていること、そして、北朝鮮が完全に協力的(forthcoming)であるかどうかについて疑念を有していることを認識している。私は、本プロセスは、しっかりとした検証を要する、複数の段階を有するプロセスであると考えている。一つ確かなことは、北朝鮮はプルトニウム関連活動に関する申告を行い、寧辺(ヨンビョン)の原子炉の冷却塔を爆破したことである。これは検証済みであり、前向きな行動でもあるが、今後より多くの行動がとられる必要がある。我々はウラン濃縮、核拡散、人権侵害及び弾道ミサイル計画に懸念を有している。私は、本プロセスは、「行動対行動」を伴う複数の段階を有するプロセスであると考えている。総理より横田夫人の著書を頂いた。私は、幸い彼女と大統領執務室で面会する機会があり、彼女の幼い娘さんの拉致に関する話に強く胸をうたれた。自分も娘を持つ父親として、自分の娘が消えてしまうということがどのようなことであるのか、想像できない。したがって私が総理に対して電話で、また過去に述べたとおり、米国は拉致問題について総理を見捨てない。

(3)我々は、イラク及びアフガニスタンにおける日本の貢献について意見交換を行い、私より、日本政府と日本国民がイラクやアフガニスタンの人々に対して自由の恩恵を気付かせる手助けを行ったことに対する感謝を表明した。

(4)我々はイランが、検証可能な形で濃縮計画を停止することによって、国際社会の正当な要求に応えることの重要性について意見交換を行った。

(5)我々は、ビルマ(ママ)について意見交換を行う機会はなかったが、私は福田総理に対し、本件を提起するつもりであった。私はビルマについて深い懸念を有している。同国政府の最近の自然災害に対する対応はよく言っても不十分なものであり、我々はミャンマー政権に対して、アウン・サン・スーチー女史を解放するよう要請している。

(6)我々はG8サミットについても意見交換を行った。私は今回のG8サミットが成功することを確信している。私は今回で8回のサミットに出席したことになるが、G8サミットが成功するかそれほどの成功に至らないかについて、よく分かるようになった。今回のG8サミットは成功するであろう。

(7)我々は多くの話をした。私は福田総理がこの会談について説明責任を強く感じておられることを高く評価している。また、飢餓に対する食料支援や、苦難に対する恵みを約束したら、その約束を履行しなければならない。福田総理がこの点を理解してくれたことに私は感謝する。また、福田総理が顧みられない熱帯病に懸念を有し、またアフリカの国々における保健従事者の訓練を支援しようとしていることにも感謝する。そのような訓練は、彼らを各々の国々で情け深い市民にするだろう。

(8)また、食料及びエネルギーについて話したい。更に他の2つの議題について、きちんと時間を割いて話したい。一つはWTOドーハ・ラウンドである。WTOドーハ・ラウンドは、自由で公正な貿易を促進する好機であるとともに、開発アジェンダの重要な部分となるであろう。そして重要なことは、世界中の貧しい人々に対して我々は援助を与えることができるが、彼らを救う最善の方法は、貿易を通じたものであるということであり、これは証明された事実である。そしてドーハ・ラウンドにとって、7月-21日だと思う-の閣僚会合を成功させる好機が到来している。

(9)次に環境について、私の考えを話したい。また日米が共に関心を有するイシューについていかに進め得るかについて私の考えを話したい。また、クリーンエネルギーの研究に関して日米両国が真に世界をリードしていることを人々に分かってもらいたい。

(10)私は、日本の記者が先般米国を訪れた際に、バッテリー技術に関して日本がいかに世界をリードしているかについて話をした。そして私は、米国がゴルフカートではなく普通の乗用車にバッテリー技術を活用することができるようになると期待しており、それは我々の石油依存度を大幅に引き下げてくれるだろう。
 今回の会談は、このことについて話すよい機会であったし、また他にも共通の関心事項について前に進めるための議論ができた。

(11)私は、福田総理のおもてなしに心より感謝しており、また非常に率直な意見交換ができたことを嬉しく思う。

3.続いて質疑応答が行われたところ、概要以下のとおり。

【問】福田総理は、2050年までに世界全体の温室効果ガスの排出量を半減させるという長期目標でG8が合意することにブッシュ大統領からの協力はとりつけられたのか。

【答】
(福田総理)
 先ほど述べたように、長期目標を含めた気候変動問題についても、ブッシュ大統領との間で、G8に向けて引き続き協力していこうということで一致した。またG8として長期目標について合意するかは、現在もG8として協議が続けられている。そして、今の段階では、明後日に我々首脳がしっかり協議を行うということを述べたい。

【問】ブッシュ大統領に伺いたい。大統領は、長期目標の設定には中国やインドの参加が不可欠であるとおっしゃっているが、G8が長期目標で合意すると言うことに今回協力されるつもりであるのかまず伺いたい。また温暖化の悪影響を受けているアフリカへの支援について大統領がどのようにお考えになっているかをお聞きしたい。

【答】
(ブッシュ大統領)
 気候変動問題に関して、私は建設的な意見を持っている。私は常に、気候変動問題の解決には共通の理解が必要であるとの考えを支持しており、その共通の理解は目標設定から始まるものである。また、私の意見は現実的であり、中国やインドがこの問題の解決に向けて同じ思いを共有しなければ、我々はこの問題を解決できないであろう。
 また、私は、この問題に関する福田総理のリーダーシップに感謝しており、我々は引き続き努力しており、その結果、建設的なステートメントを発出できるかどうかわかるだろう。
 アフリカ支援については、まず理解してほしいのは、乳幼児が蚊に刺されたというだけで無為に死んでいるということであり、だから、先進国は薬品はもちろんのこと、蚊帳や殺虫剤の提供をもっと行わなければならない。私のアフリカへの懸念は同時に、非常に多くの人々がHIV/AIDSで命を落としているという事実にある。こうした理由から、アメリカ議会は政府と手を組んで、150億ドルの支援を決め、人々が抗レトロウイルス薬を入手できるようにしたり、孤児の支援を行ったり、効果的な予防プログラムを適切に行うための支援を行っているのである。今日では、抗レトロウイルス薬を接種した人の数は、5万人から170万人に達している。
 私は、飢えに苦しむ人々を懸念しており、環境の話になると、我々は非常に建設的な議論ができるであろう。私は、環境について憂慮している。しかし、今日アフリカ大陸では非常に多くの人々が苦しんでおり、今こそ富裕な国々が何らかの行動を起こすときである。

【問】ブッシュ大統領に質問したい。石油価格が上昇し、米国経済も深刻な低迷傾向を続ける中、世界のリーダーはいかなる行動をとるのか。また、ドル高は原油価格の上昇につながると言われるが、ドル高につながる市場介入を支持するか。

【答】
(ブッシュ大統領)
 米国経済は、我々が期待するほどには堅調(robust)ではない。第1四半期にはプラスの成長がみられた。第2四半期についてはこれから見極めたい。どちらにしても、これまでの私の在任中ほとんどの期間ほどは経済は良い状態にはない。議会においては、景気刺激策を盛り込んだ法案が通り、現在、米国民に所得税を還付するプロセスに入っているが私はこれが良い影響を与え続けることを期待している。また、住宅ローン関連法案が通るよう議会と協働する。
 既に失業対策関連法案が議会で可決された。しかし依然、外国産原油への依存という問題が残っている。これまで7年の間、議会に対し、国内にある原油をもっと探査するよう求めてきた。今こそ、独立記念日の議会休会が開けた後、アラスカ自然保護区(ANWR(Arctic National Wildlife Refuge))及び大陸棚外端部(Outer Continental Shelf)の採掘アクセスを増やして、米国は、原油供給量増大に向けた責任を果たしていると言えるようにするべきである。
 そして炭化水素エネルギー源への依存から、先端技術の新時代へ移行できるようにすべきである。ドルに関しては、米国は強いドル政策を支持しており、我々の経済力がドル相場に反映されると信じている。

【問】福田総理に質問したい。気候変動について米の対応は前向きになっていると考えるか。

【答】
(福田総理)
 気候変動に関する米国の対応については、日米間でも様々なレベルで話し合いが続いており、米国も大きな方向性を見失っているとは認識していない。日米間で協議をしている限り、お互いの意見内容が合ってきているように思う。今回のG8において、自分は議長であり、米国の協力をお願いした。そしてそのことについて理解を得たと思っている。その結果は、明後日の会議の結論ということで見て頂きたい。

【問】ブッシュ大統領に伺いたい。北朝鮮について、先日、北朝鮮が核開発計画について「申告」を行ったが、この中には、核兵器が含まれていない。大統領は、そのような申告に満足しているのか。これに伴って、テロ支援国家の指定解除を議会に通報することを決定されたが、日本では拉致問題への影響について懸念が高まっている。大統領は「拉致問題は決して忘れない」としているが、テロ支援国家指定解除後、米国が北朝鮮に拉致問題の解決を迫る手段として何が残るのか。

【答】
(ブッシュ大統領)
 北朝鮮は最も多くの制裁の対象となっている国であり、またそうあり続けるであろう。制裁を取り除く方法は、検証可能な方法で、北朝鮮が約束を守ることである。今の質問を聞いていると、テロ支援国家指定解除がすなわち制裁解除であるといった考え方が含まれているように思う。もしそうお考えだとしたら、それは正しくない。私はあなた(質問者)がそう考えていると推測するわけではないが、北朝鮮は非常に多くの制裁をかけられている国なのである。北朝鮮が制裁を解除されるためには、多くの義務を履行しなければならないのである。
 それゆえに、私は「行動対行動」と言っているのである。そして最初の行動がとられた。今、確かなことが一つある。繰り返しになるが、テレビでご覧になられたかもしれないが、冷却塔の爆破は、検証可能で、前向きな行動である。しかし私が冒頭発言で述べたとおり、我々は他にもいくつか懸念を有している。その一つが、当然ながら拉致問題である。

【問】福田総理に伺う。総理からブッシュ大統領に、テロ支援国家指定解除について再考を求めたのか。求めなかったとすれば、それはなぜか。また、テロ支援国家指定解除後、米国に北朝鮮に解決を迫るために具体的にどのような協力や支援を求めていくつもりか。

【答】
(福田総理)
 核の問題については新しい段階に入っており、これは成功させなければならない、この成功は日本にとっても必要である。他方、拉致問題の解決も同時に成功させなければならない。核問題の進展の中で、拉致問題の進展をはかっていく、そのために、北朝鮮と真剣な議論をしなければならないという状況である。現在北朝鮮との間で拉致問題に関して進展はないが、今後進展があるよう交渉していきたい。拉致問題が進展しないことから核問題も進展しないことがあってはならない。拉致問題と核問題は両方一緒に解決することが我が国にとって極めて重要なことであり、北朝鮮にとっても必要なことである。

【問】ブッシュ大統領は、中国五輪開会式に出席すると決断したが、その背景にある大統領の考え方について伺いたい。米国民が懸念している中国国内の人権問題、宗教の自由問題及びスーダンやミャンマーの状況について、懸念する同盟国や友好国にどのような話をしているのか。また、過去7年間、中国の現政権に対する米国の政策の成果についてどう説明するのか。

【答】
(ブッシュ大統領)
 オリンピックは米国の選手を励ます機会であり、スポーツのイベントであると考えている。私は、名誉なことに中国の2人の国家主席と任期中にお会いし、会うたびに宗教の自由と人権について話をしてきた。そして私がオリンピック開会式に行くことにしたのは、私の懸念を表明する場として北京オリンピックを必要としていないからである。また、中国国民も世界の指導者の決定を非常に注意深く見守っている。北京オリンピックに出席しないことは、中国国民に対して失礼なことであり、そのことは、今後、中国指導部と率直に話すことを難しくするであろう。だから私は行くことにしているのである。そして自分もアスリートたちを励ますことを楽しみにしている。また選手も、自分の国の大統領が来て、自国の旗を振ってくれるのを見れば励まされるであろう。
 我々は中国との共通の関心事項のいくつかにおいて、前進を遂げている。他方、前進していない分野もある。しかし、私の考えは非常にクリアである。すなわち、社会は宗教を尊重すべきであり、それこそが社会というものであり、また人々は宗教活動家をおそれるべきでないということである。また結局のところ、真に敬虔な人々は、隣人を愛するものであり、中国は、その人民に自由に宗教活動を行わせることで、より利益を得るだろう。少なくともダライ・ラマ14世との会談においては少し進展があったようだ。自分は、ダライ・ラマ14世に対する支持を公に表明した最初の大統領である。自分は北京オリンピックに行くことを故主席に伝えた。胡主席は快く思わなかったかもしれないが、私は宗教の自由を信じている、と述べた。北京に行ったら、再び会談するかもしれないが、この問題(宗教の自由)は取り上げられるだろう。

【問】福田総理は、米国大統領選に関心を払っているか。とりわけ、2人の候補者の対日本、ひいては対アジア政策の立場について、違いがあると思うか。

【答】
(福田総理)
 (私に対する質問は、ブッシュ大統領に対する質問と同様の趣旨であると理解してよろしいか、と確認した上で)
 北京オリンピック開会式に出席するかについては、まだ公式に表明せずにいた。なぜ表明していなかったかと言えば、オリンピック開会式の翌日に、日本で重要な行事があり、それにも出席することが時間的に可能かどうかをチェックしていたからである。しかし、出席が可能であることがわかったので、今この場で、初めて公式に北京オリンピック開会式への出席を発表したい。大統領も同趣旨のことをおっしゃっていたが、オリンピックはスポーツの祭典であり、選手には大いにスポーツ精神を発揮してほしい、ということで私もそれを慫慂しているし、また日本から多数の有望な出場選手がおり、これらの選手を激励したいと考えている。北京オリンピックを政治問題に絡める必要はない。中国が様々な課題を抱えているという指摘はあるが、中国はそれらの課題の克服に向け、努力し改善している最中であると理解しており、今後の中国の動向を注視していきたい。我が国は過去にいろいろな経験をしてきた。米国からもそうであったが、批判をされたような行動もあった。そういう現実を経験して今に至ったわけであり、それほど偉そうなことを言える立場であるのか、謙虚に反省しながら日々政治活動を行っているということである。
 中国が混乱してほしいとか、中国国民が不幸になってほしいなどということは、全く考えていない。中国は隣人であり、隣人が健全で明るい国家になってほしいと常に思っており、そのような願いを込めて、開会式に出席するつもりである。

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