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平成23年5月2日
ンジャイ・セネガル共和国首相閣下,
ニョン・セネガル共和国外務大臣閣下,
各国閣僚の皆様,
各国大使の皆様,
各国及び機関の首席代表の皆様,代表団の皆様,
並びに御列席の皆様
日本国外務大臣の松本剛明でございます。我が国の震災被災者に対し,黙祷を捧げていただき,ありがとうございます。
3月11日,我が国の東部は,観測史上世界4番目の規模の巨大地震に襲われました。ほどなくして,所により10メートル,15メートルを超える大津波が押し寄せ,町や村が根こそぎ海に流されました。現時点で,外国人も含め,2万5000人を超える人々が死亡または行方不明となっています。
福島第一原子力発電所も津波で大きな被害を受け,電源喪失により原子炉及び使用済燃料プールの冷却ができないという事態となりました。
震災直後から,皆様はじめ数多くの国々,地域及び国際機関が温かい支援の手を差し伸べてくださいました。震災直後から派遣された緊急援助隊には,困難な状況の中で捜索救助やがれき除去,医療支援等を行っていただきました。
また,数多くの国・地域・機関から毛布・水・食料等の支援物資も到着し,順次被災地に届けられている他,世界各地から義援金が続々と日本へと寄せられています。アフリカ各国からの心のこもった御支援を始めとして,今回の震災に際して示された国際社会の連帯に,日本国政府及び国民を代表して,深甚なる感謝を申し上げます。
日本国民は,皆様の御支援に勇気づけられています。そして,自らの力と,国際社会よりいただいたお力添えを合わせて,この未曾有の国家的危機からより強い日本となって必ず再生・復活することを固く決意しています。我々は,皆様から示された連帯の気持ちを忘れません。この会議を予定通り開催し,今こうして私がお話申し上げていることも,日本がアフリカとの連帯をこれまで以上に強めていくという我が国の強い意思の表れです。
我が国としては,今般の大震災を乗り越えて,これまで同様,国際社会の平和と安定のため積極的役割を果たしていきます。また,TICAD IVにおいて我が国が行った公約を含め,既に表明した国際的コミットメントを誠実に実現していくとの決意に何ら変わりはありません。
ここで,福島第一原子力発電所の事故について一言申し上げます。政府は現在,事態の収束のために,IAEAや各国の助言と協力を得て,あらゆる方法を検討しながら全力で取り組んでいるところです。また,4月17日には,東京電力が福島原発事故の収束に向けたロードマップを公表しました。政府としても,これを契機に,これまでの「応急措置の段階」から計画的に事態の収束を目指す「計画的・安定的な措置の段階」に移行していきたいと考えています。
原発事故への対応について,我が国は今後とも最大限の透明性をもって国際社会に対する情報提供を行っていく所存です。また,我が国は,今回の事故で得た知見と経験を最大限の透明性をもって国際社会と共有し,原発の安全性向上に貢献していく考えです。
御列席の皆様,
私は,日本政府,TICAD共催者である国連,UNDP,世銀,AU委員会(AUC)を代表し,第三回TICAD閣僚級フォローアップ会合への皆様の御参加を心より歓迎します。また,ワッド大統領閣下,ンジャイ首相閣下,ニョン外相閣下をはじめ,セネガル政府の皆様には,ホスト国として,本会合の運営に多大なる御協力をいただき,厚く御礼申し上げます。
今次会合より,AUCが共催者となられたことを心より歓迎します。これにより,TICADの特徴の一つであるアフリカのオーナーシップ尊重が大きく促進されることとなり,大変喜んでおります。TICADにおけるAUCの益々の御活躍を期待致します。
ニョン・セネガル共和国外務大臣閣下,
各国閣僚の皆様,
各国大使の皆様,
各国及び機関の首席代表の皆様,
代表団の皆様,
並びに御列席の皆様
まず,このセッションの議題に沿って,「横浜行動計画」が前回のフォローアップ会合以降も引き続き順調に実施されてきていることを御報告します。
「2012年までに対アフリカODAを18億ドルに倍増する」との公約に関しては,昨年, 我が国がアフリカに供与したODAの総額が暫定値で20.5億ドルに達し,金額の上では昨年,この公約を達成したことになります。日本政府として民間投資を支援し,倍増させるとの目標についても,2009年までの5か年の平均値は42億ドルとなり,現時点では目標の34億ドルを上回っています。その他の公約も, 概ね順調に実施されています。詳細は,配布させていただいた「年次進捗報告2010年」を御覧ください。
次に,今後の「横浜行動計画」をどのように実施していくのかについて申し述べます。
開会式でも述べましたが,我が国は,今般の大震災を乗り越えて,国際社会の平和と安定のため積極的役割を果たしていく考えに変わりはありません。様々な取組を包含するTICAD IVの公約を,引き続き誠実に実現していくとの決意をここに改めて表明します。
その中で,特に今年は,今回の震災によって得られた貴重な教訓をアフリカ支援に活かしてまいります。
自然の猛威に直面しているのは,我が国もアフリカも同じです。今般の震災への対応で得られた貴重な知見は,アフリカ諸国にしっかりとお伝えし,共有するとともに,今後のアフリカ支援に活かしていきます。このため,我が国は,年内に,アフリカ各国政府の防災関係者を日本に招き,自然災害に対する「強靱な経済・社会作り」をテーマとしたセミナーを開催します。
また,TICADが目指してきた経済成長に重点を置いたアフリカ開発の有効性は,今や国際社会のコンセンサスとなっています。我が国政府としては,官民連携を強化しつつ,民間セクターの活動を引き続き後押ししていく考えです。この観点から,アフリカの経済成長に資するために,我が国企業が参画する円借款事業を積極的に実施していくとともに,そのために,対象国・対象分野について柔軟に対応していきます。また,今回のフォローアップ会合を契機として,新規の円借款の供与も加速していきたいと考えます。
次に,将来のTICADプロセスについて申し述べます。TICADは5年毎に日本で首脳会合を開催していますが,現在,TICAD IVからほぼ3年が経過しました。中間点を過ぎ,我々は,今後のTICADのあり方について議論すべき時を迎えています。
広域インフラの整備や農業振興を通じて成長を促進しつつ,人間の安全保障を重視したアプローチを取るというTICADの包括的なスタンスは,今後も維持されるべきでしょう。
しかしながら,アフリカは進化を続けており,TICADもそれに合わせて,不断に変わっていかなければなりません。アフリカ諸国は,世界経済危機から力強く回復しつつありますが,成長が加速化するに伴い,社会的・経済的格差が際だつ傾向もあります。このような格差や脆弱性にも目を向け,アフリカ諸国の成長パターンを,全ての人が恩恵を受け(inclusive),社会面・環境面を含めて真に持続可能でバランスのとれたものとすることが今後の重要なテーマとなるのではないでしょうか。例えば,食料価格の上昇に対する脆弱性や,多くの若者に職が与えられていない等の問題にも,光を当ててはどうでしょうか。また,日本としても,アフリカ諸国の発展に応じ,より効果的な支援を行うべく,例えば保健,農業といったセクターに対し,我が国援助スキーム全てを有機的に投入するプログラム・アプローチを導入する努力を行う所存です。
本日の我々の議論が,TICADプロセスの将来に向けた我々の道を照らし出すものとなることを期待します。
次に,日本国の外務大臣として,アフリカ大陸の幾つかの国で起きている歴史的な変化に一言ずつ触れたいと思います。
コートジボワールでは,ウワタラ新大統領の下で,平和への回帰と国民の和解が進むことを期待します。そして,選挙結果の尊重という今回の結末が,今後のアフリカ各国の大統領選挙における一層の民意の尊重に資することを期待します。
スーダンについては,7月9日に予定される南部の分離・独立に向け,南北スーダン間の様々な課題にかかる交渉が円滑に進むことを強く期待します。我が国は,このような南北スーダン両当事者の努力を引き続き積極的に支援していきます。
ソマリアについては,AUを筆頭とする国際社会の努力により,モガディシュをめぐる状況が僅かながらも好転していることを歓迎します。我が国は,引き続き,国際社会とともに,TFG(暫定連邦政府)による問題解決への政治的努力が払われることを期待し,それを支援していきます。
北アフリカでの歴史的な変革(change)については,特に,チュニジア及びエジプトにおける民主的な政治体制への移行のための取組を政治的,経済的に支援していきます。リビアにおける恐ろしい暴力は直ちに停止されなければなりません。我が国は,一般民間人を保護するため,国連安保理決議に則ってとられる措置を支持します。また,停戦に向けた国連とAUの調整された外交努力を注視しています。
これらの問題の底流にある貧困,失業,治安,ガバナンスといった様々な課題に,TICADは取り組んできました。我が国は引き続き,アフリカ大陸の平和と安定に向けた協力を積極的に行っていく所存です。
次に,グローバルな課題への対応について申し述べます。我が国は,今回の大震災を経て,国際社会との連帯の重要性を心より認識しました。国際社会の主要な一員として,これまで以上に積極的にグローバルな課題に取り組む覚悟です。
まず,環境・気候変動について,我が国は,アフリカ諸国との間で,低炭素社会への移行を一層推進するためのビジョンを共有したいと考えています。そして,本年末に南アフリカで開催されるCOP17や2012年に開催されるリオ+20の場においても,議論の先導役を果たしていく考えです。特に,COP17の成功に向け,アフリカ諸国と緊密に連携するとともに,ニーズに応じた支援を継続し,アフリカ諸国の気候変動対策を後押し致します。
次に,MDGsについては,昨年総理が表明した保健,教育分野の「菅コミットメント」に基づく支援の他,昨年9月の国連首脳会合のフォローアップ会合を本年6月2日及び3日に日本で開催し,MDGs達成に向けた国際社会の流れを力強く後押ししていきます。また,この機会に,2015年以降の国際的な開発目標のあり方についても議論を深めていく考えです。本会合は,国際社会との連帯を示す重要な機会であり,各国・機関からハイレベルの参加を頂くことができれば,日本にとっても大きな励みとなります。
なお,MDGsの重要な要素である保健分野の取組として,明日,日本国際交流センター等により,「アフリカにおける保健と人間の安全保障」のセミナーが当ホテルにおいて開催される予定です。
次に,国連は世界の平和と繁栄を推進する上で,普遍性を有する唯一の機関であり,グローバルな課題の解決に効果的に対応できるものでなければなりません。とりわけ,安保理改革はアフリカを含む国際社会の総意です。そして今,日本は,改革の扉を開く提案を行っており,多くの国がこの提案に賛同しています。この高まった機運を逃すべきではありません。アフリカ諸国にも是非この提案を支持して頂き,ともに早期の改革実現,アフリカの常任議席の創設に向けて取り組みましょう。
最後になりましたが,今回の大震災を通じ,アフリカ諸国から御支援をいただき,TICADを通じて18年間培ってきた日本とアフリカの連帯が,強く,太く,そして温かいものになっていることを強く感じました。「困難な時の友こそ真の友」と申します。今一度,感謝を申し上げるとともに,日本のアフリカ支援の方針は今後とも決して揺らがないことを強調致しまして,締めくくりと致します。
御清聴ありがとうございました。