アフリカ

世界地図 アジア | 北米 | 中南米 | 欧州(NIS諸国を含む) | 大洋州 | 中東 | アフリカ

第2回TICAD閣僚級フォローアップ会合
気候変動セッション
岡田外務大臣発言

平成22年5月3日
英語版はこちら

(冒頭)

 地球の温暖化は疑いのない事実です。アフリカは干ばつや洪水の頻発・激化、感染症の広域化、農業生産の不安定化等の深刻な悪影響を被っています。全世界でこの問題への取組を強化しなければなりません。

 私は、長年に亘り気候変動問題に取り組んできました。鳩山総理が昨年9月に国連気候変動首脳会合で表明した、2020年までに1990年比25%削減との中期目標は、一昨年私が民主党の地球温暖化対策本部長を務めた際に作り上げたものです。本年、国際交渉の正念場を迎える気候変動問題を、我が国外交の最重要課題の一つとして取り組む決意です。

(交渉)

 世界の温室効果ガス排出マップはこの20年で大きな変化を遂げました。図を御覧下さい(図1)。(英語版PDF)

 ここで明らかなのは、開発途上国、中でも昨今経済成長の著しい国・地域における排出量が急増していることです。アフリカでも2.6%から3.0%に伸びており、今後一層伸びることが予想されます。我々の課題は、より多くの国と地域が経済成長を実現する中、世界全体で如何に温室効果ガスの排出を削減し、地球温暖化を食い止めるかということです。

 我が国が一貫して主張しているのは、全ての主要国の参加する公平かつ実効性のある国際枠組みを構築することです。我が国は既に相当な努力を行ってきましたが、更に25%削減との意欲的な中期目標を掲げました。しかし、世界における我が国のCO2排出量の割合は約4%に過ぎません。したがって、我が国のみが高い目標を掲げても気候変動を止めることはできません。米国や中国の他、新興途上国を含むすべての主要排出国が意欲的な削減目標・行動を設定し、国際的にコミットすることが不可欠です。そのコミットメントを確実にするためには、1つの枠組みの下に全ての国を位置付ける法的文書に合意する必要があります。

 同時に、気候変動による悪影響に脆弱なアフリカや島嶼国等の懸念に優先的に応える必要があります。そのためには、緩和、適応、資金、技術等の主要な論点をすべて含む包括的な合意が不可欠です。

 昨年末のCOP15では、大変困難な交渉の末、コペンハーゲン合意がまとめられました。全体会合において同合意が採択されず、留意されたのみだったのは残念ですが、世界の各地域、交渉グループを代表する主要国の首脳による包括的な合意であり、法的文書の作成に向けた重要な一歩です。現在までに世界の排出量の80%以上を占める120以上の国が賛同を表明しています。

 私は、2月の第14回AU総会において、AUとしてコペンハーゲン合意を支持し、すべてのメンバー国に対し、同合意への賛同をUNFCCC事務局に文書で提出することを奨励する旨決定されたことに敬意を表します。これまでに33か国のアフリカ諸国が文書を提出したと承知しており、今後更に賛同国が増えることを期待しています。交渉が本格化する中、今まで以上に途上国の声を反映させる必要があります。国際社会において、グループとしての存在感を示す力を持つアフリカが一致団結して臨めば、主要なプレーヤーとなるのは明らかです。

(鳩山イニシアティブ)

 途上国が気候変動問題に対応するためには、大規模な資金の動員が必要です。我が国は、昨年のCOP15において、2012年末までの約3年間の短期資金手当として約150億ドルの支援を表明しました。

 次の図を御覧ください(図2)。(英語版PDF)「鳩山イニシアティブ」は、気候変動対策に積極的に取り組む途上国に対し短期的に積極的な支援を約束するもので、「迅速な実施」と「優先順位の高い分野への手当」の2点を特徴としています。

 「迅速な実施」については、既存の組織や基金を使い、可能な限り速やかに支援が現場に届くようにします。我が国は「進捗状況報告」でも、既に着手した案件の事例を紹介していますが、我が国のアフリカ向け支援はこの2年間で既に総額10億ドルを超えます。

 「優先順位の高い分野への手当て」とは、アフリカでの緊急性の高いニーズ、すなわち水不足及び洪水の被害に対する支援、持続可能な農業のための灌漑施設の導入、低炭素社会実現に向けたエネルギーインフラの整備支援といった取り組みです。クリーン開発メカニズム(CDM)活用のための人づくり、制度構築支援も重要です。森林保全のために、我が国は研修事業を進めていますが、衛星技術を利用した森林状況把握の技術移転、森林利用の効率化やエネルギー転換支援など、より多角的に現地のニーズを反映させていきます。我が国は、気候変動分野においてもTICADの基本原則に則り、引き続き、各国のオーナーシップを尊重し、的確な支援を積極的に実施していきます。

(提案)

 以上を申し上げたうえで、私から2つの提案があります。

 第一に、国連プロセスに貢献するため、日本・アフリカ間の気候変動政策対話の推進を提案します。すべての主要経済国が参加する公平かつ実効性のある国際枠組み、緩和、適応、資金、技術のあらゆる論点をカバーする枠組みを構築する必要性を明確に認識している点で、アフリカ諸国と我が国の立場は共通しています。日本・アフリカ間の意思疎通を一層図りながら、COP議長国を共に支え、コペンハーゲン合意を無にせず有意義な成果を出すよう、協力していきたいと思います。

 第二に、今秋に日本で開催される生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)の機会をとらえ、森林保全と気候変動に関する閣僚級関心国会合を主催します。アフリカの多くの森林保有国が関心を有する森林の減少及び劣化に由来する排出削減(REDD+)の重要性については、コペンハーゲン合意に明確に位置付けることができました。森林保全はCOP10においても重要なテーマの1つです。「鳩山イニシアティブ」においても優先分野の1つであり、アフリカ諸国向けに約1億ドルの無償資金協力の供与を既に決定したところです。この会合において、支援の具体化における様々な課題、すなわち計画作成や技術移転、体制整備について、各国の経験に基づいた活発な議論を行っていきたいと思います。

(最後に)

 本セッションでの議論を通しての結果、気候変動分野において我が国とアフリカ諸国が立場を共有することが確認され、今後の交渉に我々が協力して取り組んでいく決意を、世界に向けて力強く発信できることを期待します。

 御清聴ありがとうございました。


Adobe Acrobat Readerダウンロード Adobe Systemsのウェブサイトより、Acrobatで作成されたPDFファイルを読むためのAcrobat Readerを無料でダウンロードすることができます。左記ボタンをクリックして、Adobe Systemsのウェブサイトからご使用のコンピュータのOS用のソフトウェアを入手してください。

このページのトップへ戻る
第二回TICAD閣僚級フォローアップ会合 | TICAD(アフリカ開発会議) | 目次へ戻る