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近年、タイ料理レストランが増えるなど日本でもタイ料理は人気を高めています。なぜタイ料理が日本で人気なのか、日本人の視点からその素晴らしさを発信し続けるタイ料理研究家の氏家(うじけ)アマラー昭子さんにお話を聞きました。
氏家さんとタイ料理との出会いは21歳の時でした。学校関係で留学生と友達になったことがきっかけだったそうです。その後、商社員だったご主人とタイでご結婚され、2年間バンコクに在住しました。もともと氏家さんの叔父が戦時中にタイやインドネシアに駐留していた時の話を聞いていたこともあり、タイを身近に感じ、興味があったとのことです。氏家さんは、東南アジアのほとんどの国を訪問したことがあるそうですが、その中でもタイ料理が一番日本人に合う料理だと感じたそうです。タイ料理のすっぱい、辛い、甘い、しょっぱいという特徴が立体的な味を生み出し、日本人にとても馴染みやすいのだと言います。氏家さんは、タイ料理を地方でも広め、そこから新たな交流の輪を作りたいそうです。
タイ料理はごはんによく合う味、ご飯と一緒に食べるおかずというところが、お米が大好きな日本人にとって馴染みやすかったのではと氏家さんは言います。ところで、日本人が好きなタイ料理の味は時代が変わってもあまり変化していないそうで、従来から日本人の好む料理はタイの人々も日常的に食べている料理と同じとのことです。
ではタイの人と日本の人とでは、料理に対する考え方でどのような点が違うのでしょうか。それは、タイの人はより自分の味を求めようとするという点だと言えるでしょう。タイの食卓には4つの調味料が備えられています。砂糖、酢漬け唐辛子、ナンプラー漬け唐辛子、粉唐辛子です。タイの人は出来上がっている料理に自分の好みに合わせてこれらの調味料を加えていきます。日本では、出来ているものの味を変えることは料理人や作った人に失礼だという考え方がありますが、タイでは出来上がっているものでも自分の味に変えることは普通のことです。この点がタイの人と日本の人の料理に対する考え方の違いだと氏家さんはいと愛しむようにおっしゃいます。
このような姿勢を知る氏家さんは、タイにある食材、タイの調味料を使えば何でもタイ料理はあらゆる可能性を持っていると考えています。一見それが洋風でも和風でも、タイにある食材に、タイの調味料を使って調理するならば、それはまぎれもなくタイ料理なのだそうです。日本でもお味噌汁の味が各家庭によって異なるように、タイ料理もベースは本のレシピからとってきたものかもしれなくても、そこには各家庭のオリジナルがあるのだと言います。タイ料理にも我が家の味というものがあるのだそうです。
氏家さんはタイ料理を通して、日本とタイの人たちの間に友好が生じることを期待しています。それは料理に関してだけではなく、人々の間に広い意味での愛が存在することを意味しています。例えば、氏家さんはタイ料理セミナー等の収益金をタイの子供たちに奨学金として送るなど、様々なチャリティー活動を行っていますが、タイ料理を通じて自然な形で、タイと日本の人との友好が深まっていくことを望んでいるのだと言います。料理を通してタイを紹介しタイ料理を広めたい、そうすることによって、タイの人もきっと嬉しくなるはず、日本人に親近感を抱くはずだと考えています。しかしながら、日本にあるタイ料理レストランのコックはほとんどがタイの人です。もしもコックに日本人が増えるならば、それは本当の意味でのタイ料理が日本人の中で普及したと言えるのではないかとおっしゃっていました。
違う国の人同士が友好を深めていくには、何かその間に共通のものが必要であると考えられます。今日、日本で人気を集めているタイ料理の魅力を知ることによって、よりタイという国に親しみを感じるようになれました。日タイ修好120周年、今後も日本とタイの関係が良好であり続けるように、互いの国についてより深い関心を持ち続けていきたいです。
2007年9月
インタビュアー:川村(南東アジア第一課)