中東
シリア・アラブ共和国(Syrian Arab Republic)
基礎データ


一般事情
1 面積
18.5万平方キロメートル(日本の約半分)
2 人口
2,387万人(2024年推定値 CIA The World Factbook)
3 首都
ダマスカス
4 人種・民族
アラブ人:約75%、クルド人:約10%、アルメニア人等その他:約15%
(2024年 CIA The World Factbook)
5 公用語
アラビア語
6 宗教
イスラム教:87%(スンニー派 74%、アラウィ派、シーア派など 13%)、キリスト教:10%、ドルーズ派:3%
(2024年 CIA The World Factbook)
7 略史
年月 | 略史 |
---|---|
1918年 | オスマン・トルコより独立 |
1920年 | 仏の委託統治領となる |
1946年 | 仏より独立 |
1958年 | エジプト・シリアによるアラブ連合共和国成立 |
1961年 | シリアがアラブ連合共和国から離脱 |
1970年 | ハーフェズ・アサド国防相(当時)がクーデターにより政権奪取 |
2000年 | ハーフェズ・アサド大統領逝去、バッシャール・アサド大統領就任 |
2024年 | シャーム解放機構を主とする反体制派が暫定政権を樹立。アサド大統領はロシアへ亡命。 |
政治体制・内政
1 政体
共和制
2 元首
アフマド・シャラア大統領(2025年1月就任)
3 議会
一院制(人民議会)(210議席、任期30か月(更新可能))
(注)2025年6月、人民議会選挙最高委員会は、選挙管理委員会を設置し、今後、暫定選挙制度及び選挙実施スケジュールを策定すると発表。
4 政府
- (1)首相
- なし
- (2)外相
- アスアド・シャイバーニー(2025年3月外相就任)
5 内政
- (1)2024年12月以前の状況
- 1970年以来シリア大統領職にあったハーフェズ・アサド大統領は、長期安定政権を維持したが、2000年6月10日に69歳で死去。その後、次男バッシャール(長男バーセルは事故死)に政権が移譲された。2011年3月中旬以降、各地で反政府デモが発生し、反政府勢力に過激派武装勢力なども参加してシリア政府当局との間で暴力的衝突に発展した(シリア危機)。こうした衝突がその後も継続する中、2014年以降はイスラム過激派勢力である「イラクとレバントのイスラム国(ISIL)」が勢力を拡大し、また、関係国がシリア情勢への関与を深めた。
2011年のシリア危機勃発以降全土で約40万人以上の死者、約690万人以上の国内避難民が発生し、周辺諸国等に約550万人以上の難民が流出(国連等、2022年12月時点)したとされ、今世紀最悪の人道危機と言われた。
シリア危機以降の紛争による被害に加え、2023年2月に発生したトルコ南東部を震源とするマグニチュード7.8の地震によりシリア国内においても死傷者を含む多数の被災民と物的被害が生じ、人道状況は更に悪化した。
シリア危機の政治的解決に向けては、安保理決議第2254号(2015年)に沿った政治プロセスの進展を図るべく、国連仲介の下、2016年以降、「シリア人対話」が開催されていたが、2018年1月以降中断されたままとなっていた。 - (2)2024年12月以降の状況
- 中東地域における情勢の変化を捉え、北西部イドリブを拠点としていたシャーム解放機構(HTS)を中心とする反体制派は攻勢を強め、12月8日にはダマスカスを制圧、アサド大統領はロシアに亡命した。12月9日、アサド政権のジャラリ首相は、シャーム解放機構が2017年に政治部門として設立した「シリア救済政府(以下、暫定政権)」に権限を委譲することで合意した旨発表し、2025年3月1日までに移行を実施すると宣言した。2025年1月29日、シリア革命勝利宣言会議(軍事作戦部勢力とシリア革命勢力が参加)が実施され、シャラア総司令官を移行期間中の暫定大統領に任命する旨発表した。2月24日及び25日、第一回国民対話を実施した。3月には、シャラア暫定大統領が憲法宣言を受領し正式に裁可し、また、全23名の閣僚リストが発表された。
外交
1 2024年以前の状況
シリアは、中東和平問題等の中東情勢の鍵を握る重要な立場にあったが、2005年2月のハリーリ・レバノン元首相の暗殺事件以来、米仏による対シリア圧力が強まり、国際社会において孤立してきた。2011年のシリア危機勃発以降、欧米諸国などはシリア政府によるシリア国民に対する激しい弾圧等を踏まえシリアに対する経済制裁措置を累次にわたり講じてきた他、アラブ連盟は2011年11月以降シリア政府の同連盟参加資格を停止してきたが、2023年5月に復帰を承認した。
2013年8月のシリアにおける化学兵器使用を巡る問題を受け、シリアは同年中に化学兵器禁止条約(CWC)に加入し、2016年1月までにシリア政府が申告した化学兵器の廃棄を完了した。しかし、その後もシリアにおける化学兵器使用事案は頻発しており、シリア政府による申告との整合性に疑念が生じていた。シリア危機の政治的な解決に向けて、我が国や欧米諸国を始めとする国際社会は、安保理決議第2254号等に沿ったシリア危機の政治的解決に向けたシリア政府による真摯な対応を求めてきた。この他、アサド政権が国土の多くを回復して優勢となる中、一部アラブ諸国によるシリアとのハイレベルでの関係再構築の動きが見られた。一方、主要西側諸国は、アサド政権による化学兵器使用や人権蹂躙行為等を理由に、シリア政府への再関与には慎重な姿勢を維持した。
2 2024年12月以降の状況
アサド政権に代わり暫定大統領に任命されたシャラア大統領は、2025年2月、初の外国訪問として、サウジアラビア、トルコに加えてヨルダンを訪問し首脳レベルでの会談を実施。これに欧米諸国との外交を活発化させた。
また、2024年12月以降、トルコや中東諸国、欧州諸国の外相がダマスカスを訪問した。2025年3月中旬には韓国がシリアとの外交関係開設に基本合意した。
国防(軍事力)
1 予算
不明(ミリタリーバランス 2024年)
2 兵力等
- (1)兵力:
- 16万9,000人(うち陸軍13万人、海軍4,000人、空軍・防空軍3.5万人)
- (2)予備役兵:
- 10万人
- (3)兵役:
- 徴兵制度 30か月
(以上、ミリタリーバランス 2024年)
経済(単位 米ドル)
1 主要産業
繊維業、食品加工業
2 GDP(購買力平価)
975.3億ドル(一人当たり 4,600ドル)(2020年推定値 CIA The World Factbook)
3 GDP成長率
-0.18%(2020年推定値 CIA The World Factbook)
4 インフレ率
28.1%(2017年推定値 CIA The World Factbook)
5 失業率
5013.3%(2022年推定値 CIA The World Factbook)
6 貿易
- (1)輸出 16.5億ドル(2020年推定値 CIA The World Factbook)
- 主要輸出品:オリーブオイル、リン酸、スパイス、綿、トマトなど
- 主要輸出先:トルコ(29%)、サウジ(16%)、レバノン(10%)、インド(10%)、UAE(5%)
- (2)輸入 37.5億ドル(2020年推定値 CIA The World Factbook)
- 主要輸入品:煙草、プラスチック類・製品、小麦粉、植物油など
- 主要輸入元:トルコ(49%)、UAE(11%)、中国(8%)、エジプト(7%)、レバノン(3%)
7 為替レート
- (1)通貨:
- シリア・ポンド
- (2)為替レート:
- 1ドル=11,055シリア・ポンド(公定レート)(2025年6月 シリア中央銀行)
8 経済概況
- (1)2011年3月以降、シリア当局の反政府デモに対する弾圧と暴力に対して、欧米諸国等が石油の禁輸措置などを含む経済制裁措置を実施。この点、長年の紛争により、シリア政府の外貨準備高は著しく減少したとみられ、シリア・ポンドの価値も著しく下落した。また、紛争が長期化する中で、発電所などの社会インフラの多くも破壊され、経済情勢は著しく悪化した。
- (2)2024年12月以降の事態の推移を受けて、2025年2月以降、EU、英国、カナダ、米国がシリアに対する制裁を徐々に解除してきている。また、同年5月には、トランプ大統領がサウジアラビアにおいてシャラア大統領との会談を実施し、シリアに対する制裁を解除する旨発言した。さらに、6月には、対シリア制裁の原則的な解除を指示する大統領令を発出した。
経済協力
1 主要援助国
米国、ドイツ、英国、EU、カナダ、日本、イタリア、フランス、ノルウェー、スウェーデン、デンマーク
2 日本の援助(2022年度までの累計)
- (1)有償資金協力
- 約1,386.11億円
- (2)無償資金協力
- 約562.43億円
- (3)技術協力
- 約322.02億円
(出所:外務省国際協力局編『政府開発援助ODA国別データブック』)
(より詳細な情報は「国別データ集」参照)
二国間関係
1 政治関係
年月 | 略史 |
---|---|
1953年12月 | 国交樹立 |
1954年6月 | 在シリア日本国公使館開設 |
1958年3月 | 在ダマスカス日本国総領事館開設(エジプトとの合邦のため公使館廃止) |
1962年4月 | 在シリア日本国大使館となる。(エジプトとの合邦から分離独立) |
1978年12月 | 在日シリア大使館開設 |
(注)在シリア日本国大使館は、シリア国内の治安状況が悪化したことから、2012年3月に一時閉館。現在は、在レバノン日本国大使館内に臨時事務所を移転して業務を継続中。
2 経済関係
- 対シリア貿易(2024年財務省貿易統計)
-
- 輸出:
- 0.96億円
- 輸入:
- 0.2億円
(注)我が国は、シリア危機の解決を目指す国際平和のための国際的な努力に我が国として寄与するため、主要国が講ずることとした措置の内容に沿い、シリアのアサド大統領及びその関係者等に対し、外為法に基づく資産凍結等の措置を平成23年9月以降実施してきている。2025年5月30日、シリアをめぐる原価の情勢に鑑み、閣議了解「『シリアのアル・アサド大統領及びその関係者等に対する資産凍結等の措置』の一部解除について」(令和7年5月30日付)を行い、これに基づき、一部団体に対する資産凍結等の措置を解除した(同閣議了解後の制裁対象は合計59個人及び31団体)。
3 文化関係
シリアには、日本語教育機関としてダマスカス大学人文学部日本語学科、ダマスカス大学高等言語学院日本語科、アレッポ大学学術交流日本センターがある。
4 要人往来
年月 | 要人名 |
---|---|
2000年6月 | 河野外務大臣 |
2001年1月 | 石破防衛庁副長官 |
2001年8月 | 杉浦外務副大臣 |
2002年8月 | 参議院訪問団(関谷議員他) |
2002年11月 | 茂木外務副大臣(総理大臣特使) |
2003年3月 | 中山元外務大臣(総理大臣特使) |
2003年4月 | 川口外務大臣 |
2003年12月 | 逢沢外務副大臣(総理大臣特使) |
2004年3月 | 岡本総理大臣補佐官 |
2006年11月 | 有馬政府代表 |
2007年6月 | 浅野外務副大臣 |
2008年3月 | 有馬政府代表 |
2009年5月 | 西村外務大臣政務官 |
2009年8月 | 飯村政府代表 |
2010年5月 | 長島防衛大臣政務官 |
2011年2月 | 飯村政府代表 |
年月 | 要人名 |
---|---|
2001年3月 | ムアッリム外務次官 |
2002年7月 | リファーイ経済貿易相 |
2003年2月 | ダハル電力相 |
2003年2月 | アッタール元文化相 |
2004年2月 | ダルウィーシュ外務次官 |
2008年12月 | フセイン・シリア日本友好議員連盟会長 |
2009年1月 | ミクダード外務副大臣 |
2009年11月 | アガ文化相 |
2009年12月 | ダルダリ経済担当副首相 |
2011年1月 | シャアバーン大統領補佐官 |
5 二国間条約・取極
- 貿易取極(1953年署名)
- 司法共助取極(1957年署名)
- 日本青年海外協力隊派遣取極(1967年署名)
- 技術協力協定(1985年署名)