南スーダン共和国
南スーダン共和国(The Republic of South Sudan)
基礎データ


一般事情
1 面積
64万平方キロメートル(日本の約1.7倍)
2 人口
1,501万人(2023年 IMF)
3 首都
ジュバ
4 人種・民族
ディンカ族、ヌエル族、シルク族、ムルレ族、バリ族、他多数
5 言語
英語(公用語)、アラビア語、その他部族語多数
6 宗教
キリスト教、イスラム教、伝統宗教
7 略史
年月 | 略史 |
---|---|
1899年 | 英国とエジプトによる北部及び南部スーダンの共同統治。 |
1955年 | 南部スーダンの自治や独立を求め、武装蜂起が発生。第1次スーダン内戦勃発。 |
1956年 | 南部を含むスーダンが英国から独立。 |
1960年代 | 南部の分離独立を求める運動が拡大。 |
1972年 | アディスアベバ和平合意が成立(南部スーダンに南部政府を設置し、部分的自治権を付与)。 |
1983年 | 第2次スーダン内戦勃発。(2005年の南北包括和平合意(CPA)の締結まで、アフリカで最長の内戦となる。) |
2005年 | 南北包括和平合意(CPA)が成立。国連スーダン・ミッション(UNMIS)設立。 |
2010年4月 | 総選挙実施、バシール・スーダン大統領再選、キール南部政府大統領当選。 |
2011年1月 | 南部独立の住民投票実施。 |
2011年7月 | 南スーダン共和国独立。国連南スーダン共和国ミッション(UNMISS)設立。 |
2012年1月 | スーダン政府との石油に関する交渉が停滞、原油生産停止を決定。 |
2012年9月 | スーダン政府とともに、二国間の未解決課題に関する9つの合意文書に署名。 |
2013年4月 | 原油生産の再開。 |
2013年12月 | 首都ジュバにおいて大統領警護隊同士が衝突。 |
2015年8月 | IGAD(政府間開発機構:東アフリカの地域経済共同体)等の仲介により、衝突解決合意(南スーダンにおける衝突の解決に関する合意文書)が成立(恒久的停戦や国民統一暫定政府設立等を規定)。 |
2016年4月 | 国民統一暫定政府 設立。 |
2016年7月 | 首都ジュバにおいてキール大統領派とマシャール第一副大統領派が衝突。 |
2017年5月 | キール大統領が国民対話の開始と一方的敵対行為停止を宣言。 |
2017年12月 | 衝突解決合意の再活性化を目指し、IGADがハイレベル再活性化フォーラムを開催。南スーダン関係者が敵対行為停止等に合意。 |
2018年2月、5月 | ハイレベル再活性化フォーラム開催。 |
2018年6月 | 南スーダン関係者が恒久的停戦を含むハルツーム宣言を採択。 |
2018年9月 | 再活性化された衝突解決合意に署名。 |
2019年5月 | 南スーダン関係者が暫定準備期間の6か月の延長に合意。 |
2019年11月 | 南スーダン関係者が暫定準備期間の100日間の延長に合意。 |
2020年2月 | キール大統領は10州制への復帰を決定。 |
2020年2月 | 新国民統一暫定政府設立。 |
2022年9月 | 和平合意期間の24か月延長が決定(2025年2月まで)。 |
2024年9月 | 和平合意期間の再度の延長(24か月、2027年2月まで)が決定。 |
政治体制・内政
1 政体
共和制
2 元首
サルヴァ・キール・マヤルディト(Salva KIIR Mayardit)大統領(2011年7月)
3 議会
二院制(暫定国民立法議会550議席(ITGoNU(332)、SPLM/A-IO(128)、SSOA(50)、OPP(30)、FDs(10))、全州評議会66議席(選出議員50名+大統領指名議員16名)
4 政党
- 与党:SPLM-IG、SPLM-IO、SSOA、FD、OPPの五党で国民暫定統一政府を構成
- 野党(和平合意非署名勢力):United People’s Alliance、NAS等
5 政府
- 第一副大統領:リエク・マシャール・テニー
- 副大統領:ベンジャミン・ボル・メル
ジョセフィーヌ・ラグー
タバン・デン・ガイ
レベッカ・ニャンデン・デ・マビオール - 外務・国際協力大臣:マンデー・セマヤ・クンバ
6 内政
2011年7月9日、スーダンから分離・独立。新生国家としての体裁づくりに着手。しかしながら、国造りで目に見えた成果が見られる前に、与党スーダン人民解放運動(SPLM)内の派閥抗争(キール大統領派対マシャール前副大統領派)が激化。
2013年12月、首都ジュバにおいて、大統領警護隊同士の衝突が発生。ジュバの治安はすぐに回復したが、その後各地で衝突が続き、多くの難民が発生した。
2015年8月、政府間開発機構(IGAD)及び関係諸国等による仲介により、「南スーダンにおける衝突の解決に関する合意文書(衝突解決合意)」が、関係当事者によって署名された。合意文書署名を受けて、合同監視評価委員会(JMEC)が立ち上がり、2016年4月にマシャール元副大統領が第一副大統領に就任、国民統一暫定政府が設立された。
しかしながら、同年7月、ジュバ市内でキール大統領派とマシャール第一副大統領派(反主流派)が衝突。ジュバの治安はすぐに回復したが、その後各地で衝突が続き、さらに多くの難民が発生した。キール大統領は、ジュバ衝突後にジュバから逃避したマシャール第一副大統領を解任し、新たに反主流派代表となったタバン・デン鉱山大臣を第一副大統領に任命した。
2017年5月、キール大統領は、国内の平和と安定を促進するため、国民対話の開始と一方的敵対行為停止を宣言(その後、国民対話運営委員会が各地で対話を継続。)。また、同年6月、IGADは、衝突解決合意の再活性化を図るため、ハイレベル再活性化フォーラム(HLRF)の開催を発表。12月にHLRF第1回会合が開催され、南スーダン関係者が敵対行為停止等に合意(HLRF会合は2018年2月及び5月にも開催。)。2018年6月、協議の場所がアディスアベバからハルツームに移され、南スーダン関係者が恒久的停戦を含むハルツーム宣言を採択。同年8月には、暫定政府の体制に合意し、同年9月にはアディスアベバで再活性化された衝突解決合意(R-ARCSS)が署名された。
その後南スーダンでは、R-ARCSSに従って、合意の実施業務が開始されたが、暫定準備期間(8か月)内に新国民統一暫定政府の設立のための準備が完了せず、南スーダン関係者は暫定準備期間を2019年5月には6か月、2019年11月には更に100日間延長することについて合意した。
2020年2月15日、キール大統領は従来の政府見解(32州制の維持)を撤回し、10州制への復帰を決定する旨の発表を行った。南スーダン関係者は、州の数と境界線の問題に関する政府の譲歩を歓迎し、同年2月22日、新国民統一暫定政府が設立された。
2022年9月1日、RJMEC会合において暫定期間の24か月延長が採択され、和平プロセスのロードマップが承認された。
2024年9月18日、RJMEC会合において暫定期間の再度の24か月延長が採択された。
外交・国防
1 外交方針
- (1)スーダン共和国との密接な関係の維持
- (2)国連及び地域機関等との連携の強化
- (3)東アフリカ近隣諸国、米国及び中国等との経済関係促進
2 軍事力(出典:ミリタリーバランス2020)
- (1)予算 7,010万ドル
- (2)兵役 不明
- (3)兵力 18.5万人
経済
1 主要産業
原油、農業、林業、畜産業、漁業
2 GDP
70.1億ドル(2023年 IMF)
3 一人当たりGDP
467.07ドル(2023年 IMF)
4 経済成長率
5.6%(2023年 IMF)
5 物価上昇率
27.8%(2023年 IMF)
6 失業率
13%(2022年、ILO推定)
7 総貿易額
- (1)輸出
- 46.5億ドル程度(2021年 世銀)
- (2)輸入
- 40.4億ドル程度(2021年 世銀)
8 主要貿易品目
- (1)輸出
- 原油等
- (2)輸入
- 車両等
9 主要貿易相手国
- (1)輸出
- 中国等
- (2)輸入
- UAE、中国、ケニア等
10 通貨
南スーダン・ポンド(SSP)
11 為替レート
変動相場制:1米ドル=約1097.3SSP(2024年1月8日付け南スーダン中央銀行)
12 経済概況
政府収入の大部分を原油生産・輸出に依存。油価の低迷と不安定な治安が影響し、政府の財政状況は深刻。外貨準備はほぼ枯渇し、現地通貨の対ドル減価が継続(2015年12月変動為替相場制導入。)しており、インフレが常態化している。
経済協力
1 主要援助国・機関
米国、英国、ドイツ、EU等
2 我が国の援助(2005年以降)
- (1)我が国は、2005年4月にオスロで開催されたスーダン支援国会合において平和の定着のために当面1億ドルの支援実施を表明し、2008年までに約2億ドルの支援を実施。更に2008年5月、第3回スーダン・コンソーシアム会合で、南北包括和平合意(CPA)履行期間後期に向け、当面約2億ドルをプレッジ。
- (2)2009年1月、約1,600万ドル(約15.75億円)のDDR(武装解除・動員解除・社会再統合)支援、同10月に約1,000万ドル(約10億円)の総選挙支援実施を決定。
- (3)2010年7月、817万ドル(約7.7億円)の南部住民投票支援を決定。
- (4)2012年以降、ナイル架橋建設計画(事業費112.29億円)、ジュバ市水供給改善計画(事業費65.08億円)等の無償資金協力を実施中。
- (5)2013年12月の情勢悪化以降、我が国はこれまで、国際機関を通じて総額約2億ドルの対南スーダン人道・復興・開発支援を実施(2014年1月に約2,500万ドル、2015年2月に約8,800万ドル、2016年2月に約3,100万ドル、2017年2月に約2,240万ドル、2018年2月に約3,400万ドル、2019年2月に約2,500万ドル、2020年1月に約1,200万ドル、2021年1月に約1,500万ドル、2022年1月に約792万ドル、2023年1月に約2,100万ドル、2024年1月に約1,600ドルの支援を決定。)。
- (6)我が国は、2017年以降、IGAD、CTSAMVM、及びRJMECを通じた南スーダンの和平プロセス支援を実施。2020年には、再活性化された衝突解決合意(R-ARCSS)の実施のために、IGADに1.08百万ドル、CTSAMVMに37万ドル、RJMECに14万ドルの資金協力によって合意の実施促進に貢献したほか、仮宿営地設置のために国際平和協力法に基づきIGADに対して約4億5千万円規模の物資協力を実施した。
3 日本の援助実績
- (1)有償資金協力(2019年度までの累計) 実績なし
- (2)無償資金協力(2019年度までの累計、交換公文ベース) 311.36億円
- (3)技術協力(2019年度までの累計、経費実績ベース) 106.79億円
二国間関係
1 政治関係
- (1)我が国の南スーダン承認 2011年7月9日
- (2)公館設置
-
- 我が方公館
- 2013年7月1日に在南スーダン・日本国大使館を開設
- 先方公館
- 2022年3月25日に在日本・南スーダン大使館を開設
2 経済関係(対日貿易)(財務省貿易統計)
- (1)品目
- 輸出 再輸出品、はちみつ等
- 輸入 中古乗用車、バス・トラック、配電盤、医薬品、タイヤ等
- (2)貿易額
- 輸出 約105万円(2022年度)
- 輸入 約22億6,982万円(2022年度)
3 文化関係
- (1)一般文化無償 なし
- (2)文化協定 なし
4 在留邦人数
47名(2023年7月現在)
5 在日当該国人数
39名(2020年6月現在)
6 進出日本企業社数
2社(2023年7月現在)
7 要人往来(2005年以降)
年月 | 要人名 |
---|---|
2011年7月 | 菊田外務大臣政務官(独立式典出席) |
2011年10月 | 山根外務副大臣(官民合同ミッション) |
2011年10月 | 石田内閣府副大臣 |
2011年11月 | 自民党PKO調査団(中谷議員、今津議員) |
2011年12月 | 渡辺防衛副大臣 |
2012年12月 | 榛葉外務副大臣 |
2013年4月 | 左藤防衛大臣政務官 |
2013年5月 | 小野寺防衛大臣 |
2015年1月 | 中谷防衛大臣 |
2015年5月 | 宇都外務大臣政務官、石川防衛大臣政務官 |
2015年8月 | 赤澤内閣府副大臣 |
2016年10月 | 稲田防衛大臣 |
2017年2月 | 若宮防衛副大臣 |
2017年3月 | 柴山総理補佐官 |
2017年12月 | 佐藤外務副大臣 |
2018年8月 | 山本防衛副大臣 |
2019年5月 | 河野外務大臣 |
2023年1月 | 和田内閣府副大臣 |
年月 | 要人名 |
---|---|
2005年3月 | 国民統一移行チーム(JNTT) |
2007年10月 | ベンジャミン南部スーダン政府地域協力相 |
2009年3月 | ルカ・ビオン南部スーダン政府(GOSS)大統領府担当相、ベンジャミンGOSS地域協力相(TICADIVフォローアップ・シンポジウム) |
2009年10月 | パガン・アマム南部政府和平・CPA履行相(21世紀パートナーシップ促進招へいプログラム) |
2011年9月 | アン・イトーSPLM副幹事長(閣僚級招へい) |
2011年11月 | バルナバ・ベンジャミン情報・放送相(JICA研修) |
2012年9月 | コスティ・マニベ財務・経済計画相(閣僚級招へい) |
2013年6月 | サルヴァ・キール大統領、ニアル・デン外務・国際協力相(TICAD V) |
2015年3月 | ワニ・イッガ副大統領、アウット・デン・ジェンダー・人道・防災相(国連防災会議共同副議長) |
2016年10月 | ナディア・アロップ文化・青年・スポーツ相(スポーツ文化世界フォーラム) |
2016年12月 | アウット・デン・ジェンダー・児童・社会福祉相(WAW! 2016) |
2018年10月 | ニアル・デン外務・国際協力相(TICAD閣僚会合) |
2019年8月 | ワニ・イッガ副大統領、アディゴ・ニクウェチ農業相(TICAD7) |
2019年10月 | クオル・マニャン・ジュク国防・退役軍人担当相(即位の礼) |
2021年3月 | ルーベン・マドル・アロル司法・憲法相(第14回国際連合犯罪防止刑事司法会議(京都コングレス)) |
2022年7月 | レベッカ・ニャンデン副大統領(東京オリンピック開会式) |
2024年8月 | ラマダーン・モハメッド・アブダッラー・ゴッチ外相(TICAD閣僚会合) |
8 国連南スーダン共和国ミッション(UNMISS)への要員派遣
- (1)我が国は、国際平和協力法に基づき、UNMISSに対し、2011年11月から司令部要員を、また、2012年1月から2017年5月まで自衛隊施設部隊をそれぞれ派遣。
- (2)司令部要員:UNMISS司令部に対し、兵站全体の需要調整を行う兵站幕僚、データベースの保守管理等の業務を行う情報幕僚、施設業務に関する企画・調整を行う施設幕僚、及び航空機の運航支援に関する企画・調整を行う航空運用幕僚の計4名を派遣。
- (3)施設部隊要員:首都ジュバにおいて、国連施設内外で敷地造成等の国内避難民の支援活動や、道路整備等の活動を実施。2017年5月活動終了。
9 外交使節
- 南スーダン共和国駐箚日本国大使
小田切 敏郎特命全権大使