シエラレオネ共和国
シエラレオネ共和国(Republic of Sierra Leone)
基礎データ
令和6年9月9日


一般事情
1 面積
71,740平方キロメートル(日本の約5分の1)
2 人口
約879万人(2023年、世銀)
3 首都
フリータウン(Freetown)
4 民族
テムネ人、メンデ人、リンパ人、クレオール(黒人と白人との混血)等
5 言語
英語(公用語)、クリオ語、メンデ語、テムネ語他
6 宗教
イスラム教60%、キリスト教10%、アニミズム信仰30%
7 略史
年月 | 略史 |
---|---|
15世紀 | ポルトガル人航海士が上陸 |
1787年 | 英国で奴隷貿易廃止促進協会が設立され、黒人移住希望者のシエラレオネへの入植が開始 |
1792年 | 首都フリータウンが建設される |
1807年 | 英国で奴隷貿易禁止法が成立して以降、英国等からの多くの解放奴隷がシエラレオネに流入 |
1808年 | 英国領植民地化 |
1896年 | 英国の保護領となる |
1924年 | 新憲法制定 |
1931年 | ダイヤモンド鉱が発見される(採掘ラッシュは50年代以降に本格化) |
1958年 | 憲法改正 |
1960年7月 | ミルトン・マルガイ氏が初代首相に就任 |
1961年4月 | 英国から独立 |
1964年4月 | アルバート・マルガイ氏(初代首相マルガイ氏の異母弟)が首相に就任 |
1968年4月 | フリータウン市長であったシアカ・スティーブンス(全人民会議(ACP)創設者)が首相に就任 |
1970年9月 | ダイヤモンド産業国有化 |
1971年4月 | 共和国となり、スティーブンス氏が大統領に就任(1976年に再選) |
1978年5月 | 新憲法制定によりAPCのみの単一政党制が導入される |
1985年10月 | 大統領選挙、軍事司令官ジョセフ・サイドゥ・モモ少佐が当選 |
11月 | モモ大統領就任 |
1987年3月 | クーデター未遂 |
1991年3月 | 革命統一戦線(RUF)武装蜂起、内戦突入 |
1992年4月 | 軍事クーデター |
5月 | ストラッサー大尉を議長(元首)とする暫定政府発足 |
1996年1月 | ビオ准将による無血クーデター |
2月 | 大統領・議会選挙、カバ大統領選出 |
1997年5月 | 軍事クーデター、カバ大統領ギニアへ脱出 |
6月 | 軍事革命評議会議長であるコロマ少佐が国家元首に就任 |
1998年3月 | 軍事革命評議会が駆逐されカバ大統領がフリータウンに帰還 |
1999年7月 | ロメ和平合意が成立 |
10月 | 国連安保理は、ロメ和平合意を実施するための国連シエラレオネミッション(UNAMSIL)の派遣を決定 |
2000年5月 | RUFによる国連PKO要員500名の拘束事件が発生 |
11月 | シエラレオネ政府、RUF間で停戦合意成立 |
2001年5月 | 武装解除の実施方法について政府、RUF間で合意成立 |
2002年1月 | カバ大統領が武装解除完了宣言 |
3月 | カバ大統領が国家非常事態の終了宣言 |
5月 | 大統領・議会選挙。現職のカバ候補が圧倒的多数の得票率で再選 |
2003年6月 | ダイヤモンド輸出禁止が解除(禁止措置は2000年から同年まで有効) |
2004年2月 | カバ大統領がDDR委員会の解散を宣言 |
2005年12月 | UNAMSIL完全撤退 |
2006年1月 | 国連シエラレオネ統合事務所(UNIOSIL)活動開始 |
2007年8月 | 大統領・議会選挙 |
9月 | 大統領選挙決選投票、コロマ大統領就任 |
2008年10月 | 国連シエラレオネ統合平和構築事務所(UNIPSIL)活動開始 |
2009年3月 | 与野党支持者間の衝突による「3月暴動」発生 |
4月 | UNIPSILの仲介で与野党の共同コミュニケ発足 |
2012年11年 | 大統領・議会選挙、コロマ大統領再選 |
2014年3月 | UNIPSIL活動終了 |
2018年3月 | 大統領・議会等選挙 |
2018年4月 | ビオ大統領就任 |
政治体制・内政
1 政体
共和制
2 元首
ジュリウス・マーダ・ビオ(Julius Maada BIO)大統領(2018年4月就任。2023年6月に再選。現在2期目。)
3 議会
国民議会(一院制)
4 政府
- (1)首相 (ポストなし)
- (2)外相 ティモシー・ムサ・カッバ(Hon. Mr. Timothy Musa KABBA)外務・国際協力大臣
5 内政
- (1)シエラレオネでは、1991年に反政府軍(RUF)が蜂起し、同国で産出されるダイヤモンドを財源に、反政府戦闘行為が断続的に継続。1996年3月、大統領選挙を経てカバ大統領が就任したが、1997年5月、政府軍下級兵士による軍事クーデターが起こりカバ大統領はギニアへ脱出。1998年に西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)監視団(ECOMOG)によってクーデター派が駆逐され、カバ大統領による合法政権が復帰した。1999年10月、国連安保理は、政府勢力と反政府勢力の間の和平合意を実施するため国連シエラレオネミッション(UNAMSIL)の派遣を決定し、DDR(元兵士の武装・動員解除、及び社会復帰)計画が展開された。
その後、2000年5月にRUFによる国連PKO要員拉致事件が続き、再び緊張が高まったが、ECOWAS諸国の仲介により、2000年11月のシエラレオネ政府とRUFとの間での停戦合意、更に、2001年5月の両者間の武装解除に関する合意がもたらされ、状況は沈静化した。DDRの進展を受け、2002年1月18日、カバ大統領は、シエラレオネにおける武装解除の完了宣言を行い、続いて同年3月1日には国家非常事態の終了宣言を行った。同年5月、大統領・議会選挙が自由・公正かつ平和裡に実施され、カバ候補が再選された。 - (2)国内の治安は、最大時で17,000名の要員で展開したUNAMSILによる治安維持及び軍・警察の機能強化により保たれていたが、2004年9月に全ての州において治安維持の責任がシエラレオネ警察に返還された。UNAMSILは2005年12月末日に完全撤退した。
UNAMSILの活動は(ア)統治体制の確立、(イ)DDR、(ウ)治安回復及び軍・警察の体制確立、(エ)ダイヤモンド採掘・売買のコントロール、(オ)グッド・ガバナンス構築を柱とするものであったが、それぞれ大きな成果が見られ、アフリカPKOにおけるグッド・プラクティスとして国際社会からの称賛を得た。
2006年1月より平和構築プロセスに移行すべく国連シエラレオネ統合事務所(UNIOSL)が活動を開始。UNIOSLの後継として2008年10月より政治・平和構築分野に活動を絞った小規模な国連シエラレオネ統合平和構築事務所(UNIPSIL)が活動を開始(2014年3月活動終了)。 - (3)2007年8月及び9月には、カバ大統領の任期満了に伴い、大統領・議会選挙及び大統領選挙決選投票が平和裡に行われ、野党全人民議会党(APC)のアーネスト・コロマ氏が新大統領に就任した。同選挙は、2005年末の国連PKO撤退後初の選挙であり、国連平和構築委員会(PBC)の最初の検討対象国であるシエラレオネの平和と安定にとっての試金石として国際社会からも注目された。
- (4)コロマ大統領は、任期一期目では、「変化のためのアジェンダ」を通した電力、道路等のインフラ、保健、教育等の諸課題に取り組み、二期目では「繁栄のためのアジェンダ」を策定し、上記問題に加え、貧困削減、人材育成や若年層支援等に取り組んだ。
- (5)2014年、ギニアで発生したエボラ出血熱の流行がシエラレオネにも拡大。多くの人が犠牲となり社会・経済システムも大きな損害を受けた。2015年末までに概ね収束し、2016年3月にWHOは西アフリカのエボラ出血熱を「国際的な公衆衛生上の緊急事態」として扱うことを終了する旨宣言した。
- (6)2018年3月7日、大統領・議会選挙等が実施され、3月31日に行われた決選投票の結果、野党シエラレオネ人民党候補のビオ氏が与党全人民会議のカマラ候補(元外相)を破り勝利した。ビオ大統領は、2024年6月の大統領選挙で再選され、現在二期目を務めている。
外交・国防
1 外交基本方針
非同盟主義、内政不干渉、各国の主権尊重を基軸とし、地域レベルにおいてはマノ河同盟(MRU)、西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)の一員として協力するなど、近隣諸国との関係は密接。2005年8月以来、安保理改革に取り組むAUの10か国委員会(C10)の議長国を務めている。
2 軍事力(ミリタリーバランス2024年版)
- (1)予算 0.20億ドル(2023年)
- (2)兵役 志願制
- (3)兵力 8,500人(うち海軍200人)
経済(単位 米ドル)
1 主要産業
鉱業(ダイヤモンド等)、農業(コーヒー、ココア)
2 GDP
約38.1億米ドル(2023年、世銀)
3 一人当たりGNI
560ドル(2023年、世銀)
4 経済成長率
3.43%(2023年、世銀)
5 物価上昇率
36.43%(2023年、世銀)
6 失業率
3.2%(2023年、世銀(ILO推定値))
7 総貿易額(2023、ITC)
- (1)輸出 約15.10億ドル
- (2)輸入 約18.90億ドル
8 主要貿易品目(2021、ITC)
- (1)輸出 鉱物、木材、貴石、貴金属等
- (2)輸入 食糧(米)、車両・車両部品、機械類
9 主要貿易相手国(2023年、ITC)
- (1)輸出 中国、インド、ベルギー、オランダ、アイルランド
- (2)輸入 中国、インド、米国、ベルギー、トルコ
10 通貨
レオン
11 為替レート
1米ドル=21.3レオン(SLE)(2023年、世銀)
12 経済概況
- シエラレオネでは、従来一次産品(ダイヤモンド、金、鉄鉱石、ボーキサイト、カカオ、コーヒーなど)が高い輸出能力を有し、主要な外貨獲得源となっていた。約12年にわたる内戦の結果、鉱物資源の輸出停止、農業生産の大幅低下及び社会的インフラの破綻等により経済は著しく停滞した。2002年の内戦終結以降、国際社会の支援により、国内経済、行財政及び地方コミュニティの再建を進めている。現在の主な経済部門は、農業(GDPの約60%)と鉱業。2007年に就任したコロマ大統領は、第一期目には「変化のためのアジェンダ」、第二期目には「繁栄のためのアジェンダ」を策定し、主としてインフラ開発に取り組んだ。
- 2014年以降ギニアで発生したエボラ出血熱がシエラレオネにも拡大。多くの人が犠牲となり、社会・経済システムも大損害を受けた。2015年末までに概ね収束し、2016年3月にWHOは西アフリカのエボラ出血熱を「国際的な公衆衛生上の緊急事態」として扱うことを終了する旨宣言した。シエラレオネにおける感染者数は計14,124名、3,956名が死亡。資源価格の低下とあわせ、2015年の経済成長率はマイナスとなったが、2016年には一定程度回復。
- 2018年に就任したビオ大統領は、選挙期間中に発表した「New Direction」政策をもとに、雇用創出、質の高い教育へのアクセス、若者のエンパワメント、収賄と汚職への対策等に取り組んでいる。
経済協力
1 日本の援助実績(単位:億円)(2022年までの累積)
- (1)円借款(借款契約ベース) 20.00
- (2)無償資金協力(交換公文ベース) 315.50
- (3)技術協力(JICA経費実績ベース) 105.69
2 主要援助国(2021年)(百万ドル、支出純額)(OECD/DAC)
- (1)英国(69.75)
- (2)米国(52.55)
- (3)ドイツ(22.41)
- (4)アイルランド(19.18)
- (5)日本(16.06)
二国間関係
1 政治関係
日本は、1961年のシエラレオネ独立と同時に同国を承認。1973年に開設した在リベリア大使館が同国を兼轄し、1991年6月より在ガーナ大使館が兼轄。シエラレオネは、在中国大使館が日本を兼轄している。
2 経済関係
- (1)対日貿易
-
- (ア)貿易額(2023年 日本財務省貿易統計)
- 対日輸出 約48.90億円
- 対日輸入 約8.56億円
- (イ)主要品目
- 対日輸出 非鉄金属鉱(チタン鉱)、ダイヤモンド等
- 対日輸入 原動機、鉄道用車両、絶縁電線等、船舶類等
- (2)進出日本企業 2社(2023年10月)
3 文化関係
2016年リサイクル柔道着100着を送付、2017年以降柔道や空手の大使杯を実施
4 在留邦人数
26人(2023年10月現在)
5 在日当該国人数
78人(2023年12月現在)
6 要人往来
年月 | 要人名 |
---|---|
2003年7月 | 黒柳徹子国連児童基金(UNICEF)報善大使 |
2005年1月 | 佐藤アフリカ紛争・難民問題担当大使 |
2006年6月 | 佐藤アフリカ紛争・難民問題担当大使兼国連改革担当大使 |
2006年7月 | 日・AU友好議員連盟西部アフリカ訪問団(小此木団長) |
2007年8月 | 浜田外務大臣政務官 |
2016年8月 | 日・AU友好議員連盟代表団(三原朝彦議員、山際大志郎議員、牧原秀樹議員) |
2018年5月 | 逢沢一郎総理特使(日・AU友好議員連盟会長、大統領就任式出席) |
2018年8月 | 牧原秀樹厚生労働副大臣、牧島かれん議員(日・AU友好議員連盟) |
年月 | 要人名 |
---|---|
1969年5月 | スティーブンス首相 |
1979年2月 | コンテ外相他閣僚代表団 |
1983年3月 | コンテ外相 |
1987年9月 | コロマ運輸通信担当国務相 |
1989年2月 | コロマ外相(大喪の礼) |
1990年10月 | タキ天然資源相 |
1990年11月 | コロマ外相(即位の礼) |
1993年10月 | カルボ外務長官代行、カリム大蔵開発経済企画長官(TICAD I) |
1996年9月 | ジョナ国連常駐代表(オピニオン・リーダー) |
1998年10月 | ジョナ大蔵相(TICAD II) |
2001年12月 | JDロジャース開発経済計画副大臣(TICAD閣僚レベル会合) |
2003年9月 | ダラミー開発経済計画相(TICAD III) |
2005年10月 | シセイ開発計画副大臣他(JICA国際協力研修) |
2008年1月 | バングーラ外務・国際協力相(PBCシンポジウム) |
2008年5月 | コロマ大統領、バングーラ外相(TICAD IV) |
2011年11月 | ジュス外務国際協力副大臣(安保理改革に関する東京対話) |
2013年5月 | コロマ大統領、カマラ外務・国際協力相(TICAD V) |
2015年12月 | フォファナ保健相(UHC会議、グローバルファンド第五次増資準備会合出席) |
2017年12月 | フォファナ保健・衛生相(UHCフォーラム) |
2018年10月 | カバ外務・国際協力相(TICAD閣僚会合) |
2019年8月 | ビオ大統領(TICAD7) チュニス外務・国際協力相(随行) |
2019年10月 | ブンドゥ国民議会議長(即位礼正殿の儀) |
2024年8月 | アルガリ外務・国際協力副大臣(TICAD閣僚会合) |
7 二国間条約・取極
- 1991年7月 日・シエラレオネ民間漁業協定
- 2019年8月 日・シエラレオネ技術協力協定