ルーマニア

基礎データ

令和5年8月7日
ルーマニア国旗

一般事情

1 面積

約23.8万平方キロメートル(本州とほぼ同じ。)

2 人口

約1,903万人(2022年)(出典:ルーマニア国家統計局)

3 首都

ブカレスト(人口約216万人、2022年、(出典:ルーマニア国家統計局)

4 民族

ルーマニア人(83.5%)、ハンガリー人(6.1%)など

5 言語

ルーマニア語(公用語)、ハンガリー語

6 宗教

ルーマニア正教、カトリック、プロテスタント

7 国祭日

12月1日(統一記念日)

8 略史

年月 略史
106年 ローマ帝国によるダキア征服
271年 ローマ軍撤退
14世紀 ワラキア公国、モルドバ公国が建国される
15世紀末頃 オスマン帝国の宗主下に入る
1859年 モルダビア・ワラキア連合公国成立
1878年 オスマン帝国から独立
1881年 カロル1世が即位し、ルーマニア王国発足
1918年 トランシルバニア等との統一宣言
1947年 王制を廃止し、人民共和国樹立、共産主義体制へ
1989年 政変により共産党一党独裁を廃止し、国名をルーマニアに改称
2004年 NATO加盟
2007年 EU加盟

政治体制・内政

1 政体

共和制

2 元首

クラウス=ヴェルナー・ヨハニスKlaus Werner IOHANNIS)大統領(2014年12月就任、2019年11月再選。任期5年)

3 議会

二院制(上院136議席、下院330議席)、任期4年

4 政府

(1)首相
イオン・マルチェル・チョラク(Ion Marcel CIOLACU
(2)外相
ルミニッツァ・テオドラ・オドベスク(Luminița Teodora ODOBESCU

5 内政

  • (1)2014年11月に行われた大統領選挙の結果、中道右派候補のヨハニス国民自由党(PNL)党首(当時)が、中道左派候補で現職首相であったポンタ候補(社会民主党:PSD)を破って当選した。この結果、2期10年を務めたバセスク前大統領に続き、3期連続で中道右派の大統領が誕生した。
  • (2)2015年11月以降、テクノクラート内閣が政府を率いていたが、2016年12月11日に実施された議会総選挙において、中道左派の社会民主党(PSD)が圧勝し、同党を中心とした連立政権が誕生。その結果、大統領と内閣/議会との間で「ねじれ」が生じた。
  • (3)しかし、政権運営を巡って連立与党が分裂し、2019年10月、ダンチラ内閣(PSD)に対する内閣不信任決議案が採択。その後、同年11月にオルバン内閣(PNL)が議会で承認され発足し、大統領と内閣間での「ねじれ」が解消された。さらに同月、大統領選挙が実施され、ヨハニス大統領が再選された。2020年2月、地方選挙に関する法律改正法案に異議を唱えたPSDを中心とする動議によりオルバン内閣は一旦退陣したものの、翌3月、コロナ危機を乗り切るため同内閣が復活した。
  • (4)2020年12月の議会総選挙では、PNLは獲得議席数ではPSDに敗れたものの、USR-PLUS(ルーマニア救国同盟・自由統一連携党(当時名称、現USR、ルーマニア救国同盟))、UDMR(ハンガリー人民主同盟)と共に、クツ連立内閣を発足させた。しかし、連立内の対立により2021年10月、クツ内閣不信任決議案が提出・承認され、12月、チウカ首相率いるPNL・PSD・UDMRからなる大連立内閣が発足した。大連立の事前合意を受け2023年6月に首相が交代し、PNL・PSDからなるチョラク内閣が発足した。なお、UDMRは大連立政権から離脱した。

外交・国防

1 外交基本方針

  • (1)EU・NATO関係及び米国との戦略的パートナーシップを外交の基軸に置き、欧州への更なる統合(シェンゲン協定加盟や将来のユーロ圏加入)、地域における安全保障の提供国となることを目指す。
  • (2)隣国であるモルドバ、ウクライナや西バルカン諸国の欧州統合を積極的に支援している。
  • (3)政府は経済外交を重視しており、アジアを含む同志国との関係強化を目指している。

2 軍事

(1)予算
約52億米ドル(出典:ミリタリーバランス2022)
(2)兵力
総兵力7万1,500人(陸軍3万5,500人、海軍6,800人、空軍11,700人、総合軍1万7,500人)

(出典:ミリタリーバランス2022)

経済

1 主要産業

サービス業(59.1%)、工業(20.5%)、建設業(6.2%)、農林・水産業(4.5%)(2021年、出典:ルーマニア国家統計局)

2 GDP

約3,018.5億米ドル(2022年、出典:IMF)

3 一人当たりGDP

15,850米ドル(2022年、出典:IMF)

4 経済成長率

4.8%(2022年、出典:IMF)

5 物価上昇率

16.4%(2022年、出典:IMF)

6 失業率

5.6%(2022年、出典:IMF)

7 総貿易額

(1)輸出
919億5,300万ユーロ(2022年、出典:ルーマニア国家統計局)
(2)輸入
1,260億5,400万ユーロ(2022年、出典:ルーマニア国家統計局)

8 主要貿易品目

(1)輸出
機械・電子部品、輸送用機器、食品、冶金製品、化学製品、鉱物製品、衣類等
(2)輸入
機械・電子部品、化学製品、鉱物製品、冶金製品、食品、輸送用機器、衣類等

(2022年、出典:ルーマニア国家統計局)

9 主要貿易相手国

(1)輸出
ドイツ、イタリア、ハンガリー、フランス、ブルガリア
(2)輸入
ドイツ、イタリア、ブルガリア、ハンガリー、ポーランド

(2022年、出典:ルーマニア国家統計局)

10 通貨

レイ

11 為替レート

1ユーロ=4.9315レイ(2022年平均、出典:ルーマニア中央銀行)

12 経済概況

  • (1)1989年の体制転換直後には、高インフレ率、マイナス経済成長となるなど、ルーマニア経済は混乱を来したが、2000年以降には、安価な労働力やEU加盟への期待感を背景として外国直接投資も増加し、高い経済成長率を維持した。2005年にはインフレをほぼ収束させ通貨のデノミネーションを実施した。しかし、EU加盟後は、その頃に発生したサブプライムローン問題に端を発する世界経済危機の影響を受け景気が後退し、2009年以降、ルーマニアは再びマイナス成長に陥った。
  • (2)他方で、景気後退を機に、それまでの消費に頼る経済成長ではなく、生産と輸出を増加させる健全な経済成長を目指した結果、2011年にはGDP成長率がプラスに転じ、さらにその後、国内消費も回復傾向に向かったことにより、2016年に5%、2017年に6.9%、2018年に4.1%、2019年に4.1%の成長を記録した。
  • (3)2020年はルーマニア経済も新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、GDP成長率は-3.9%を記録した。2021年は新型コロナウイルス感染症関連の各種制限は継続されていたものの、景気は回復基調となりGDP成長率は5.9%を記録した。2022年2月にロシアによるウクライナ侵略の影響により、経済は一時的に停滞したものの、その後、3月に新型コロナウイルス感染症に対する各種制限が撤廃されたこともあり、消費が拡大し、2022年のGDP成長率は4.8%(IMF)となっている。

二国間関係

1 全般・政治関係

  • (1)日・ルーマニア関係は、1902年両国の駐オーストリア公使が外交関係樹立のための最初の協議を行ったことに遡る(1921年在京ルーマニア公使館開設、1922年在ルーマニア日本公使館開設)。2022年には外交関係樹立100周年を迎えた。その後、両国は、外交関係を1944年に断絶したが、1959年に回復し、それ以来、良好な関係を維持している。
  • (2)2002年、交流100周年を記念して両国で各種記念行事が開催され、イリエスク大統領が訪日し(2月)、清子内親王殿下がルーマニアを御訪問された(10月)。
  • (3)2007年1月、ルーマニアのEU加盟の機会に麻生外務大臣がルーマニアを訪問。同年2月、タリチャーヌ首相がルーマニア首相として初訪日した。
  • (4)2009年、外交関係再開50周年を迎え、両国において各種記念行事が実施された他、秋篠宮同妃両殿下がルーマニアを御訪問され(5月)、バセスク大統領夫妻が日本を公式実務訪問した(2010年3月)。
  • (5)2011年3月に発生した東日本大震災後には、政府及び民間の様々なレベルから各種支援及び応援がルーマニアから寄せられ、2012年3月に開催した東日本大震災追悼・復興式典にはバセスク大統領夫妻も参加した。
  • (6)2013年、コルラツェアン外相の訪日に際し(2月)、両国外相間で「日本-ルーマニアの新たなパートナーシップに関する外相共同声明」が署名された。
  • (7)2018年1月、安倍総理が日本の総理大臣として初めてルーマニアを訪問し、ヨハニス大統領との間で日・ルーマニア首脳会談が行われ、両国の戦略的パートナーシップ構築に向けた関係強化を確認した。
  • (8)2019年5月、ヨハニス大統領夫妻が即位の礼正殿の儀参列のため訪日。2022年9月、チウカ首相及びチョラク下院議長が安倍元総理の国葬儀のため訪日。2023年3月にはヨハニス大統領が訪日し、岸田総理との間で「日ルーマニア戦略的パートナーシップ構築に関する共同声明」(PDF)別ウィンドウで開くが署名され、両国関係は格上げ強化された。

2 経済関係

  • (1)両国間の貿易量は、日本からの輸出591億円、ルーマニアからの輸入1,553億円(2022年、出典:財務省貿易統計)であり、日本からは自動車、自動車部品、鉄鋼等を輸出し、ルーマニアからはたばこ、機械類、木製品等を輸入している。
  • (2)ルーマニアに進出する日系企業数は112社(2022年4月現在)。日系企業の対ルーマニア投資は、ブカレスト近郊及びハンガリーに近いトランシルバニア地方に集中しており、製造業では、JTI(日本たばこ)、光洋ルーマニア(JTEKT)、住友電装、矢崎総業、マキタ等が進出。分野別に見れば、自動車産業関連の投資が中心であり、これに伴いワイヤーハーネス用電気回路部品等、自動車部品の日本からの輸入が増加している。その他、2011年には住友商事が子会社を通じて農業商社ALCEDO社を、2013年にはNTTデータがクルージュ・ナポカ市に本社を置くITサービス企業EBSを、2016年にはアサヒビールが大手ビール会社URSUS社を買収するなど、日本企業が投資に関心をもつ分野が多様化してきている。
  • (3)販売業ではホンダ・トレーディング、ブリヂストン、ミツトヨ(測定装置)等が進出しており、人口約2,000万人というルーマニアの販売市場の大きさが着目されている。

3 経済協力

 日本は体制転換後のルーマニアの民主化・市場経済化を支援するため、1991年から技術協力、文化無償資金協力による経済協力を開始し、その後1996年のコンスタンティネスク大統領の訪日を契機に円借款及び一般無償資金協力の実施を開始した。これまでのルーマニアへの円借款供与案件として、「コンスタンツァ南港整備計画(約128億円)」、「道路整備計画(約92億円)」、「ブカレスト=コンスタンツァ間鉄道近代化計画(約256億円)」、「トゥルチェニ火力発電所環境対策計画(約287億円)」があり、ルーマニア側から高い評価を得ている。2010年3月、バセスク大統領の訪日の際に「ブカレスト国際空港アクセス鉄道建設計画(約419億円)」にかかる交換公文が署名された(同円借款は我が国最後の対ルーマニア円借款。着工が遅れていたが、2021年12月に2032年までの円借款延長手続きが行われ、2022年から着工)。

 また、草の根レベルにおける協力として、1997年以降青年海外協力隊を派遣し、2008年12月の終了までの期間に青少年活動や医療の分野を中心として延べ112人が派遣された。ルーマニアに対する支援は、同国の経済発展状況及びEU加盟を踏まえ、段階的に縮小され、2011年度末に全て終了した。

(1)日本の援助実績(2010年度までの累計)(単位:億円)
(ア)無償資金協力 26.76
(イ)技術協力実績 98.47
(ウ)有償資金協力 1182.40
(2)主要援助国(2004年)((注)005年からDACリストから卒業)
ドイツ、フランス、米国、日本、スイス

4 文化関係

 ルーマニアにおける日本文化に対する関心は高い。多くの文化面での交流がある中で、音楽や演劇分野での交流は特に盛んで、ヨーロッパ最大級の演劇祭の一つとして知名度を増しつつあるシビウ国際演劇祭には、毎年日本から劇団が参加している。
 また、日本研究・日本語学習に対する関心も高く、ルーマニアにおける日本語学習者数は東欧ではポーランドに次いで多く、約1,900名にのぼる(2021年度海外日本語教育機関調査)。ブカレスト大学は、2005年に日本研究コースの修士課程を開設し、2010年に日本研究センターを設立した。さらに、バベシュ・ボヤーイ大学(クルージュ・ナポカ市)が2017年に、ブカレスト経済大学が2018年にそれぞれ日本文化センターを設立するなど、日本研究・日本文化発信の拠点が整備されている。

 大学間交流も活発に行われており、ブカレスト大学及びバベシュ・ボヤーイ大学はそれぞれ6校の日本の大学と学術交流協定を締結しているほか、10校以上のルーマニアの大学が、30校近くの日本の大学と学術提携している。(2022年12月時点)。

5 在留邦人数

372名(2022年10月現在)

6 在日当該国人数

2,248名(2022年6月現在)

7 要人往来

(表)最近の主な要人往来
日本から ルーマニアから
2000年   ロシュカ公共機能相
2001年   11月 ヴァカロイウ上院議長
2002年 9月 倉田参議院議長
10月 清子内親王殿下
1月 ジョアナ外相
(アフガン復興支援会合出席)
2月 イリエスク大統領(公式実務訪問賓客)
9月 ドルネアーヌ下院議長
11月 ディジュマレスク首相府通商担当次官(前駐日大使)
2003年   3月 ムシェテスク民営化相
5月 ラドゥ政府特別代表(NATO・EU統合及び持続可能な開発担当) (旧王家王子殿下)
12月 テオドレスク文化・宗教相(2003年世界遺産会議出席)
2004年 9月 麻生総務大臣(万国郵便連合(UPU)総会出席)  
2005年   1月 ボルベイ公共事業・国土整備担当相(国連防災会議出席)
3月 ヴィンクレル通商担当相
5月 バセスク大統領、コポス副首相他(博覧会賓客)
11月 ウングレアーヌ外相(外務省賓客)
2006年   3月 ヴィンクレル通商担当相
2007年 1月 麻生外務大臣 2月 タリチャーヌ首相(実務訪問賓客)
2008年   4月 シラギ中小企業・貿易・観光・自由業相
2009年 5月 秋篠宮同妃両殿下  
2010年   3月 バセスク大統領(公式実務訪問賓客)。バコンスキ外相、ヴラデスク財相他が同行。
2013年 8月 谷垣法務大臣(日ルーマニア友好議連会長)
12月 岸外務副大臣
2月 コルラツェアン外相(外務省賓客)
10月 コストイユ高等教育・科学研究・技術開発担当相
2014年   5月 ヴォイネア予算担当相
2015年   7月 バニチョイユ保健相
2016年   6月 ドラグ公共財務相
11月 グリゴレスク・エネルギー相
2017年 7月 岸外務副大臣 9月 ラウファー・ビジネス環境・貿易・起業相
2018年 1月 安倍総理大臣 2月 トアデル法務相
5月 オプレア・ビジネス環境・貿易・起業相
6月 トリフ観光相
2019年   6月 テオドロビッチ公共財務相(G20財務大臣・中央銀行総裁会合)
10月 ヨハニス大統領(即位の礼正殿の儀参列)
2021年   8月 ノヴァク青年・スポーツ相(東京2020パラリンピック競技大会)
2022年   9月 チウカ首相及びチョラク下院議長(故安倍元総理国葬儀参列)
10月 ロマシュカーヌ文化相
2023年 5月 西村経済産業大臣 3月 ヨハニス大統領(実務訪問賓客)

8 二国間条約・取極

  • 1960年 貿易支払協定
  • 1969年 通商航海条約
  • 1975年 文化取極、科学技術協力取極
  • 1977年 租税条約
  • 1995年 青年海外協力隊派遣取極

9 外交使節

  • (1)駐ルーマニア日本国大使 植田浩特命全権大使
  • (2)在京ルーマニア大使 オヴィディウ・ドランガ(Ovidiu DRANGA)特命全権大使
ルーマニアへ戻る