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「太平洋島嶼国支援検討委員会」(第5回太平洋・島サミット)第1回会合・議事要旨
(英語版はこちら)
1.日時:
平成20年11月25日(火曜日)16時00分-18時00分
2.場所:
グランドプリンスホテル赤坂「五色の間」(橙光)
3.出席者
参加者:
委員(草野委員、小林委員、鴇田委員、中野委員、野田委員)
外務省(御法川大臣政務官、小原アジア大洋州局参事官、岩間大洋州課長、本清国別開発協力第一課長)
この他、関係省庁・団体がオブザーバーとして参加。
4.議事次第
(1) 開会
(2) 御法川外務大臣政務官挨拶
(3) 委嘱書の交付
(4) 議事運営方法等に関する説明
(5) 座長選任
(6) 委員による自己紹介
(7) 外務省からの説明(小原アジア大洋州局参事官)
(8) 自由討議
(9) 次回会合の日程、懇親会案内
(10) 閉会
5.議事概要
(1)御法川政務官による開会挨拶
我が国政府は、明年5月に北海道トマムで「第5回太平洋・島サミット」を開催することを決定。太平洋島嶼国支援検討委員会は、その開催に向けた準備として、第4回太平洋・島サミットで我が国が打ち出した太平洋島嶼国支援策である「沖縄パートナーシップ」の実施状況・成果のレビュー、及びそのレビューを踏まえた上で、我が国の今後の対太平洋島嶼国における支援のあり方につき検討して頂くもの。
我が国は約10年前の1997年に第1回太平洋・島サミットを主催し、以降3年に一度、我が国としてこの地域の発展に関与すべく支援策を打ち出してきた。
我が国の大洋州地域に対する支援の中核をなすODAについてみると、昨今のODA予算をめぐる厳しい状況の中、太平洋の島国への援助実績は近年、我が国二国間ODAの約1%強の割合で推移してきている。
他方、この間、他の主要ドナー国は太平洋島嶼地域への支援を強化してきており、日本の存在感は依然として高いものの、相対的には低下しつつあるのではないかと危惧している。
我が国は、島国の友人として、同じ視点に立ってこれまでも気候変動、持続可能な開発等島国が抱える種々の課題に取り組んできた。しかしながら、島サミットプロセスが約10年を経過した今、次の10年を見据えた戦略・ビジョンが求められている。今回の委員会は、太平洋島嶼地域に造詣の深い専門家のみならず、開発の分野にそれぞれの立場から関わってこられた大学の先生、NGO、経済界の方等に幅広く声をかけさせて頂き、様々な角度からこの地域への支援・関与の在り方につきご意見を伺わせて頂ければと考えている。明年春に有意義な提言をおまとめ頂き、次回島サミットが日本、島嶼国双方にとり節目となるような会合になるよう準備したいと考えているので、ご協力よろしくお願い申し上げる。
(2)座長選任
小林委員の座長選任につき、全委員より賛同を得る。
(3)小林座長の冒頭発言
- 島サミットも10年経過し、開催地も含め、今後の島サミットがどうあるべきかを考える時期にきている。支援策については、アイデアは前回までに出尽くした感があるが、次の10年のビジョンを考える時期にあると考える。成果文書につき、実際に実行に移せたか、また実行できなかったものがあるとすればその原因は何か、を踏まえながら、議論を行っていきたい。
- 太平洋島嶼国への支援を検討する際に留意しなければならないのは、押し付けと捉えられないよう配慮する必要がある点である。太平洋島嶼地域への主要ドナーの援助と比較すると、日本の援助は非常に評価されており、旧宗主国による援助とは違うという認識も持たれている。かかる状況の中、中国が途上国による途上国支援というアプローチで同地域への援助を強化している。日本が援助を外交の1つとして考える場合、このような状況を念頭において議論して頂きたい。
(4)外務省からの説明
小原外務省アジア大洋州局参事官より、御法川政務官の冒頭挨拶を踏まえた形で、我が国の太平洋島嶼国政策の概要、太平洋・島サミットの経緯、太平洋島嶼国を取り巻く状況等について説明。また、我が国が今後この地域に対してどのような協力を行っていくべきかについては、この地域の我が国にとっての外交上の重要性や「パシフィック・プラン」に代表される島嶼国側のニーズ等を踏まえた上で、気候変動や持続可能な開発といった分野、そして分野横断的な人と人の交流・人造りといった面での協力を指摘。また、今述べた協力の重点分野はあくまでも一案であり、本検討委員会でまさに検討されるべき性質のものである、と発言した。
(5)各委員の自由討議
(イ)日本の対太平洋島嶼地域協力の現状についての意見
- 私どもの調査によれば、日本のこの地域における援助に対する評価は、様々な改善点もあるものの、総じて高いといえる。日本はプロジェクトベースの目に見える援助が中心であり、また青年海外協力隊の存在もあいまって、良く顔の見える援助であり、大変高く評価されているとの印象。
- また、日本は限られた予算の中で援助効果をあげるための様々な工夫(広域協力、NGOとの効果的連携等)がなされており、他の地域にも参考になるグッドプラクティスと呼ぶにふさわしい援助をしていると思う。だが、日本のODA全体に占める対太平洋島嶼地域支援の割合が約1%というのは、日本にとってのこの地域の重要性を鑑みた場合、また、他の地域への支援と比較した場合、明らかにバランスを失している。これは、全体のODAの減り方から見ても減りすぎのように思える。このままだと、「日本はこの地域を軽視しているのではないか」という誤解を生みかねない。日本はせっかく島サミットを開催し、この地域を重視している姿勢を示しているのであるから、以前の1.7%という割合に戻す努力、具体的にはこの地域へのODAを倍増するくらいの思い切った方向性をうちだし、日本が大洋州地域を重視している明確なメッセージを発するべきではないか。
- 援助の現場を見ると、過去のODAの援助施設が有効活用されていないケースもしばしば見受けられた。
(ロ)今後の協力を検討する際に留意すべき点
- 過去の島サミットがどう評価され、毎年のレビューがどういう形でなされているのかが今後の支援を考える上で重要。また、現地サイドには「支援慣れ」という側面も見受けられ、自立的視点が欠けているように思える。現地で真に意味のあるニーズを見極めていくことが、これからの支援に求められる。
- 人と人との交流の強化という方針に賛成。人づくり、人と人の交流は、オーナーシップを育み、援助の基礎をなす。その意味で、ASEANの現在の発展は日本のODA援助の賜物である。他国による、目立つ箱物を建てる援助には、援助国としてのエゴを感じる。
- 環境については、環境教育が重要。今後は、環境に関係するプロジェクトや施設を作ることを考えて欲しいと思う。例えば水質管理、ゴミ処理等の日本の素晴らしい技術と人づくりと併せ、その国の人に真に評価されるような援助を行って頂きたい。
- 中国による援助については、被援助国側に意見を聞くと、必ずしも評価しない旨述べることもあるが、こういった発言は額面通りにはとらない方がいいと思う。支援慣れしているということもあり、日本との関係では「日本の支援は素晴らしい、中国の支援はよくない」といいつつも、中国に対してはその支援への感謝の意を積極的に表明しているのではないか。また、中国の援助の質が必ずしも悪いという訳ではなく、アフリカに進出しているある日系民間企業関係者によれば、アフリカの道路の95%は中国企業が受注・建設しており、その出来映えも十分に国際基準を満たしている由。
(ハ)外務省に対する照会事項
- 過去4回のサミットで打ち出した支援策やイニシアティブを、外務省はどのように評価し、第5回につなげようとしているか。
- 今後の支援について、これまでの実績や日本の優位性をふまえて、どのような分野等に「選択と集中」をしていくお考えか。例えば、先程の支援の重点分野から、過去の島サミットで日本が積極的に推し進めてきた教育・保健が抜けているが、その理由如何。また、本年8月のPIF首脳会議コミュニケにある11の重点分野との整合性如何。
- 「沖縄パートナーシップ」では、日・PIF合同委員会で同パートナーシップのレビューを定期的に行うことになっているが、どのようなレビューがなされているのか。
- 太平洋島嶼地域支援を行っている他の援助国、就中中国や台湾の支援の内容如何。また、世界銀行やアジア開発銀行のこの地域への援助動向についても教示願いたい。
- 日、豪、ニュージーランド間の援助協調に関する検討状況如何。援助の手法の違う豪州とニュージーランドと一緒にやるということで、経済協力ということではなかなか難しいと思うが、どう考えているのか。
- 我が国の太平洋島嶼地域へのODAにおいて、どのような選択と集中が行われてきたのか。この地域への支援額が減少している中、分野別の濃淡はあるのか。たとえば、この分野の支援は日本としても思い入れがあるので他の分野に比べて削減率が低い、といったことがあるのか。
- この地域のガバナンスを十分に精査する必要があると考えるが、我が国の支援の重点分野に「ガバナンス」がない理由如何。外交の達成目標との関連で、この地域を日本としてどのように考えているのか。
(6)上記(5)(ハ)の照会に対する外務省の説明
- 先程説明した今後の我が国の支援の重点分野はあくまでも一案であり、今後の本件委員会における議論を踏まえ更に検討されるべき性質のもの。
- 第2回会合では前回サミットで我が国が打ち出した支援策の進捗状況の説明とあわせ、今回頂いた当省への照会事項への回答をさせて頂く予定。
- ODAの実績を伸ばすために、有償資金協力をどう活用するかも考える必要があり、この地域の国々に円借款を受けとる力があるかという点も考慮する必要がある。
- 太平洋島嶼国に対するODAの比率がこの数年間に低下したのは、イラクやアフガニスタンへの支援のような緊急的な要素によるもの、及びアフリカ支援の増加のように政策的指向の結果に依るもの。一方で、前回の島サミットのコミットメントに従い大洋州の実績を伸ばすために、昨年度来案件の形成に努めているところ。