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平成20年12月4日
12月3日~5日、カチンスキ・ポーランド大統領及び令夫人は、公式実務訪問賓客として日本を訪問しました。カチンスキ大統領は、4日に麻生総理大臣との首脳会談を行った他、河野衆議院議長及び江田参議院議長との会談、中曽根外務大臣による表敬、京都視察等を行いました。
4日(木曜日)午後6時30分より午後7時30分まで、麻生総理大臣は、カチンスキ大統領と首脳会談を行い、二国間関係及び国際情勢につき意見交換を行ったところ、概要以下のとおりです。両首脳は、首脳会談に続き共同記者発表を行うと共に、夕食会において打ち解けた雰囲気の中懇談を行いました。
(1)二国間関係
(イ)冒頭、麻生総理より、昨年5月のポーランド訪問時のカチンスキ大統領の歓待に謝意を表した上で、基本的価値観を共有し、欧州で一層存在感を増すポーランドとの関係を重視している旨述べました。両首脳は、伝統的に友好な両国関係の基盤の下で、国際社会の安定と繁栄のため、両国で一層協力していくことで一致しました。
(ロ)両首脳は、来年の日・ポーランド国交樹立90周年、2010年のショパン生誕200周年を通じて、両国関係を政治、経済、文化等、幅広い分野で、更に発展させていくことで一致しました。国交樹立90周年については、ロゴ・マークが発表されました。
(ハ)両首脳は、両国間の政治レベルの活発な交流を歓迎するとともに、二国間の政策対話に加え、日本とポーランド、チェコ、スロバキア、ハンガリーの4カ国からなるヴィシェグラード4カ国との「V4+1」協力の強化について意見が一致しました。これに関連して、12月中旬にワルシャワで「V4+1」政策対話(実務者レベル)を開催することで合意しました。
(ニ)両首脳は、両国の経済関係に更なる発展の余地があることで一致しました。麻生総理からは、製造業の伝統と実力のあるポーランド経済への日本の経済界の高い関心に言及しつつ、ポーランド側の投資環境整備に向けた一層の努力に対する期待を表明しました。
カチンスキ大統領より、約200社という日本企業のポーランド進出は喜ばしい、今後更に一層日本企業の対ポーランド直接投資を期待する、ポーランド製造業への高い評価に感謝する、ポーランドの製造業は、今はEUとの関係で造船、製鉄等一定の制約下にあるが、現下の国際経済危機勃発以降、EU各国もより拡大志向の政策に転換する傾向もあり、新しい機会が訪れる可能性もあろう旨述べました。
(ホ)麻生総理より、両国間の一層の相互理解、交流促進を図るため、来年1月から、日本文化発信ボランティアをポーランドに派遣する予定を表明しました。カチンスキ大統領よりこれを歓迎しつつ、日本が長い伝統と歴史を有する国であることに今回改めて思いを致した、日本の歴史についてポーランドのみならず欧州においてもっと知らしめても良いのではないかと思う旨述べました。
(2)国際場裡における協力
両首脳は、国連安保理改革、気候変動等国際社会が直面する諸問題について、今後ともパートナーとして一層緊密な協力を行っていくことを確認しました。
(イ)国連安保理改革については、カチンスキ大統領より、ポーランドとしても改革が必要との立場である、現在の安保理は現在とは異なった政治的時代のものであると考えている、間違いなく重要な国が外れている状況にある、と述べました。両首脳は、国連安保理改革の早期実現の必要性とともに、今後の政府間交渉において緊密に協力していくことにつき意見が一致しました。
(ロ)両首脳は、気候変動に関し、ポーランドのポズナンで開催されている気候変動枠組条約第14回締約国会議(COP14)の成功に向けた協力を確認するとともに、今後、京都議定書の下での具体的な協力の可能性を追求していくことを確認しました。
(3)地域・国際情勢
(イ)両首脳は、世界経済、欧州情勢等に関し幅広く意見交換を行いました。
(ロ)世界経済に関する議論では、欧州、アジアの現状分析を行うと共に、その関連で、中国、ロシアといった新興経済国の状況にも議論が及びました。
カチンスキ大統領は、ポーランド経済は目下のところ現在の世界経済危機から直接の大きな影響は受けていないが、グローバルな世界経済の動向には常に注意を払っている状況であるとの説明がありました。また、カチンスキ大統領より、ポーランドにとって、隣人であるロシアは益々大きな存在となりつつある、現下の国際経済危機はロシア経済に対し大きな影響を及ぼしているようであり、エネルギーを中心とするロシア経済の動向につき今後も注視が必要である、との見方を述べました。
麻生総理からは、各国は自国の経済がもはやグローバルな世界経済の中で密接に相互依存しあう状況になっていることを意識しつつある、中国を含めアジア諸国が内需拡大等自律的な経済成長の道をとるようにしていくことが重要である、との考えを披露すると共に、ワシントンで開催されたG20などで表明した日本の考え方を踏まえながら、G20での合意の迅速かつ着実な実施に向け各国と協調して取り組んでいくとの考え方を述べました。
(ハ)カチンスキ大統領の質問に答え、麻生総理より、アフガニスタン情勢に関し、テロとの闘いは正念場であり、日本がアフガニスタンの安定と復興のためできる限りの支援を行う考えであることを説明しました。
(ニ)グルジア情勢、対ロシア関係については、主にカチンスキ大統領より発言があり、グルジアの領土的一体性の確保という原則が重要である、EU加盟国たるポーランドは、ロシアに対し、EUがロシアの重要なパートナーであるということときちんと理解させることが重要であると考えている、と述べました。
(1)カチンスキ大統領の今次訪日は、同大統領にとって初訪日であり、ポーランド大統領の公式訪問としては約14年ぶりでした。両首脳が、2009年の日・ポーランド国交樹立90周年を目前に控えたこの時期に、二国間関係が幅広い分野で順調に発展していることを確認すると共に、政治、経済、文化等、幅広い分野において、関係の一層の発展を図っていく点で合意したことは極めて有意義でした。
(2)また、両首脳は、国連安保理改革、気候変動といった国際社会の重要課題について協力方針を確認することができました。
(3)さらに、世界経済、欧州及びアジア情勢、アフガニスタン復興支援をはじめとする双方にとっての重要な国際・地域情勢についても意見を交換し、共通の認識を確認することができました。