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麻生太郎日本国内閣総理大臣とグロリア・マカパガル-アロヨ・フィリピン共和国大統領は、2009年6月17日から20日までのアロヨ大統領が日本の賓客として訪日した機会に、建設的かつ前向きな対話を行った。両首脳は、2006年12月の「親密な隣国間の包括的協力パートナーシップに関する日本・フィリピン共同声明」に基づきつつ、将来に向けて戦略的パートナーシップを育むために二国間関係を一層拡大・強化していくこと、特に日比EPAの発効や現下の世界経済危機の影響を緩和する必要性を踏まえ、日比関係の新時代を開くべく二国間経済関係を強化する決意を表明した。
1.1 両首脳は、2006年12月に「親密な隣国間の包括的協力パートナーシップ」が構築されて以後、両国の多面的な協力関係が幅広い分野で進展していることを確認した。両首脳は、日比EPAの発効も踏まえ、両国が今後この長年の生産的な関係を一層発展させ、将来に向けて戦略パートナーシップを育むことで一致した。
1.2 両首脳は、現下の経済危機の克服のため両政府があらゆる努力を行うことで一致した。アロヨ大統領は、現下の経済危機に対応するための日本のイニシアティヴを高く評価した。この危機の中、特に日比EPAの実施により、アジアが「世界に開かれた成長センター」として世界経済に貢献できるように、その成長力強化と内需拡大に向け、両首脳は、日比間の更なる経済関係強化のため、以下2.を中心とする協力を両政府が推進することで一致した。
2.1 両政府は、日比EPAの枠組みを活用し、特に日本からフィリピンへの投資を促進することにより、フィリピン国内の雇用を創出し、地域の需要を拡大する。このため、潜在的な日本側の民間投資需要を掘り起こすべく、両政府は民間団体との対話を強化し、民間ニーズにきめ細かく適合する経済協力を推進し、インフラ整備及び人材育成事業に焦点を合わせ、投資環境整備を推進する。両首脳は、三つの小委員会、中でも重要な第1回ビジネス環境整備小委員会が2009年6月15日にマニラで開催されたことを歓迎した。
2.2. 両政府は、日比EPAの便益が十分に享受されるよう日比EPAの円滑な実施について協力する。両政府は、283名の看護師及び介護福祉士候補者が日本において研修を開始したことを歓迎した。両政府はその円滑な活動実施のためきめ細かく連携していく。
2.3 両国間の人的交流増等を踏まえ、両政府は、社会保障協定締結の可能性を検討するための作業部会を可能な限り早期に実施する。
2.4 アロヨ大統領は、本年3月に独立行政法人国際協力機構(JICA)により最大約93億円(1億ドル)が供与された「第2次開発政策支援計画」並びに本日交換公文署名を行った「農業支援政策金融計画」、「物流インフラ開発計画」及び「カミギン島防災復旧計画」等に対する日本の支援と協力に謝意を表明した。アロヨ大統領は、オーロラ州のフィリピン大学医学部の病院建設要請案件にJICAが調査団を派遣したことに謝意を表明する共に、オーロラ経済特区に資するインフラ整備案件への期待を表明した。両政府間の経済協力を円滑に取り進めるため、アロヨ大統領は、既に両政府が署名済みの技術協力協定について、比上院と共に批准プロセス完了を促進するよう比政府があらゆる努力を払う意向を表明した。
2.5 両首脳は、6月3日に発出された世界経済・金融危機に関する東アジア首脳会議による共同プレス声明及び世界経済・金融危機対応におけるASEAN+3協力に関する共同声明を想起し、金融安定の維持、また経済成長の落ち込み回避に焦点を当てた政策による対応の必要性を再確認した。両首脳は、チェンマイ・イニシアティヴのマルチ化(CMIM)及びアジア債券市場育成イニシアティヴ(ABMI)を始めとした地域の金融協力イニシアティヴが大きく進展していることを歓迎した。二国間金融協力に関し、両首脳は、円スワップ及びサムライ債発行支援について協議が開始されたことを歓迎した。また、両首脳は、東アジアASEAN経済研究センター(ERIA)、アジア開発銀行(ADB)及びASEAN事務局に対し、BIMP-EAGA等の広域イニシアティヴの調整、促進、高度化及び拡充に貢献し、民間部門の参加を促進する、整合性のとれたマスタープランを準備するため協働する奨励した。
2.6 日本の「アジア経済倍増に向けた成長構想」に関連して、アロヨ大統領は、日本が3月に表明した「環境投資支援イニシアティヴ」といった同成長構想の目的を達成するのに資するような具体的な二国間協力案件形成につき強い関心がある旨表明し、麻生総理は、フィリピンから具体的な要請があれば積極的に検討の用意がある旨表明した。
2.7 BIMP-EAGAの枠組みの下、地域経済発展のための海洋部東南アジアの後発地域開発に向けて、両首脳は、観光、水産資源管理及び人材育成の3分野を重点分野としていくことで一致した。また、両首脳は、昨年2回にわたり日・BIMPの高級事務レベル会合が開催されたことを歓迎し、アロヨ大統領は日本側の積極姿勢を評価した。
3.1 両首脳は、将来に向けて戦略的パートナーシップを育むため、両国関係を更に発展させるべく、以下を始めとした協力を推進することで一致した。そのために、両首脳は、次官級政策協議の1年半毎の開催、外務・防衛当局間協議及び防衛当局間協議の原則毎年開催、海洋及び領事分野での対話等の政策対話を促進することで一致した。
3.2 ミンダナオ和平につき、麻生総理は、比政府とモロ・イスラム解放戦線(MILF)との間の和平交渉の早期再開の重要性を強調し、地域情勢が和平交渉再開に資するよう、特に中部ミンダナオにおいて敵意の増大を防ぐべく双方が最大の自制を行うべき旨指摘した。アロヨ大統領は、これらの目的を達成するために全力で努力する決意を表明するとともに、国際監視団(IMT)のマンデート更新及びIMTへの復興・開発担当アドバイザー2名の継続派遣を含むIMTの活動再開についての早期の合意を求めたい旨表明した。麻生総理は、全面的な支援を表明し、ミンダナオ和平プロセス進展のための協力を表明した。
3.3 両首脳は、ソマリア沖やマラッカ海峡等における海賊問題が、海上の安全保障及び海洋航行の安全に対して脅威となっている重大な問題との認識を共有した。アロヨ大統領は、日本が自衛隊の艦船や哨戒機の派遣等を通じてこの問題に積極的に対応していることについて高く評価した。
3.4 北朝鮮について、両首脳は、「関連国連安保理決議への目に余る無視及び違反となる5月25日に北朝鮮により行われた核実験に対して断固非難」することを含む国連安保理決議第1874号を歓迎した。また国際平和と安全への脅威となり関連国連安保理決議違反となる4月5日に北朝鮮がおこなったミサイル発射を非難した。両首脳は、更に関連安保理決議の実施の重要性を強調した。麻生総理は、拉致、核、ミサイルといった北朝鮮の諸懸案の包括的解決の必要性を強調し、アロヨ大統領は全面的な支持と協力を表明すると共に、六者会合を始めとした平和的及び外交的な解決の必要性を強調した。
3.5 アロヨ大統領は、日本の地域及び国際場裏における貢献を高く評価し、日本の国連安全保障理事会常任理事国入りへの力強い支持を改めて表明した。麻生総理は、フィリピンによる支持に謝意を表明した。両首脳は、安保理改革の早期実現に向け、政府間交渉で緊密に協力し続けることを確認した。
3.6 気候変動問題に関し、双方は、すべての主要経済国が責任ある形で参加する、2013年以降の実効的な国際枠組み構築のため、国連気候変動枠組条約の下、緊密に協力していくことで一致した。麻生総理は、我が国の「クールアース推進構想」に対するフィリピンの賛同に謝意を表明し、日比間で構築した「クールアース・パートナーシップ」に基づき、今後もフィリピン側の要望を踏まえつつ引き続き協力していきたい旨表明した。アロヨ大統領は「クールアース・パートナーシップ」構築に係る日本のイニシアティヴを賞賛すると共に、日本の支援に対し謝意を表明した。
3.7 両首脳は、フィリピンと米国が共催しフィリピンにおいて実施された最初のARF災害救援実動演習(VDR)が、ARFの初めての具体的かつ形有る協力として、成功裏に実施されたことを歓迎した。両首脳は、地域安全保障を進展させテロ対策、国際組織犯罪、災害支援、不拡散及び軍縮、海上安全保障及び平和維持といった非伝統的な安全保障上の懸念に対処するARFの役割を強化するため、ARFの枠組みでの両国の協力をさらに進めることで一致した。
3.8 両首脳は、日フィリピン刑事共助条約(MLAT)の第1回非公式協議を可能な限り早期に開催することを歓迎した。
3.9 地上デジタルテレビ放送の方式に関し、麻生総理が日本方式の採用に向けたフィリピン政府の支援を求めたのに対し、アロヨ大統領は、フィリピン政府が日本方式の優位性を真剣に検討し、早期に決定する旨述べた。
2009年6月18日、東京において
麻生太郎
日本国内閣総理大臣
(署名)
グロリア・マカパガルーアロヨ
フィリピン共和国大統領
(署名)