アジア
国連安全保障理事会決議第2094号の我が国における実施に関する同理事会への報告(概要)
平成25年6月6日
(注:安保理決議第2094号パラ25は、以下2.についてのみ報告を求めているが、我が国の対北朝鮮措置の全体像を明らかにするとの立場から、以下1.及び3.についても記載。)
1.我が国の基本的立場
(1)本年2月の北朝鮮による核実験は、北朝鮮が大量破壊兵器の運搬手段となり得る弾道ミサイル能力を増強していることと併せ考えれば、我が国の安全に対する重大な脅威であると共に、核兵器不拡散条約(NPT)を中心とする国際的な軍縮不拡散体制に対する重大な挑戦であり、北東アジア及び国際社会の平和と安全を著しく損なうものとして断じて容認できない。
(2)我が国は、決議第1718号、第1874号、第2087号及び第2094号を実施するために必要な措置を誠実かつ積極的に実施してきた。
(3)決議第2094号は、北朝鮮による核実験に対する国際社会の強い非難及び核・弾道ミサイル開発に対する深刻な懸念を示す重要な決議。我が国は決議の早期かつ完全な実施の重要性及び決議の実効性確保のため各国が措置を最大限に協調して実施する必要性を強調する。
(4)我が国は、引き続き、制裁委員会(1718委員会)と密接に協力し、その作業に貢献する。
2.決議第2094号に基づく措置(報告が義務づけられている措置)
(1)金融面の措置(主文8、11、12、13、15)
(ア)決議第2094号で指定された2団体・3個人を資産凍結対象として追加指定。(決議第2087号で指定された6団体・4個人も指定済み。)
(イ)核・ミサイル計画及び安保理決議が禁止する他の活動に寄与する金融サービスの提供の禁止については、既に実施済みであったが、改めて金融機関等に対し決議の内容を周知。
(ウ)(A)北朝鮮の金融機関による国内での支店の設置や子会社の設立禁止を担保すべく、銀行法の運用で免許等を与えないとの方針を対外発表。また、(B)北朝鮮の金融機関への持分譲渡及び(C)北朝鮮の金融機関とのコルレス関係の確立・維持を控えるよう、金融機関等に要請。
(エ)(A)自国の金融機関による北朝鮮での支店の設置や子会社の設立禁止を担保すべく、銀行法の運用で認可を与えないとの方針を対外発表。また、(B)自国の金融機関による北朝鮮での口座開設禁止を担保すべく、金融機関等に要請。
(オ)我が国は、決議採択以前から、核・ミサイル計画及び安保理決議が禁止する他の活動等に寄与し得るものも含め、北朝鮮に対する公的資金支援は行わないこととしている。
(2)人の移動に関する措置(主文9、10)
(ア)決議第2094号で指定された3個人について、入国管理法に基づき入国及び通過防止措置を実施済み。(決議第2087号で指定された4個人も措置を実施済み。)(我が国は、北朝鮮籍者の入国は特別の事情のない限り認めていない。)
(イ)決議禁止行為に関与したと見なす者等があれば、入国管理法に基づき入国及び通過防止措置をとることが可能。また、それらの者が北朝鮮籍者である場合、適用可能な国内法令に従い国外退去処分とすることが可能。
(3)物品に関する措置(主文20、22、23)
(ア)我が国は、決議第2094号で指定された禁輸対象品目(核関連2品目、ミサイル関連5品目、化学兵器関連1品目、及び奢侈品)を含め、北朝鮮との間の全ての品目の輸出入禁止措置をとっている。
(イ)我が国は、決議第2094号で指定された禁輸対象品目のうち、奢侈品については貨物検査の対象としており、他の禁輸対象品目については貨物検査の対象品目とするための必要な手続を進めている。
(4)貨物検査(主文16、17)
(ア)我が国は、決議第1874号により貨物検査が要請されたことから、既存の法令に加え、貨物検査法を制定し、これを確実に実施してきている。決議第2094号を受け、関連安保理決議によって供給、販売、移転又は輸出が禁止されている品目を積載している疑いのある場合等には、貨物検査法を含む現行法令に基づく検査を行う等、引き続き厳正に対処する。
(イ)貨物検査要請を拒否した船舶が我が国の港への入港を希望した場合には、貨物検査法を含む現行法令に基づき当該船舶の検査を確実に実施する。
(5)航空輸送等の制限(主文18、19)
(ア)関連安保理決議によって供給、販売、移転又は輸出が禁止されている品目を積載している疑いのある航空機の離着陸・上空通過のための許認可申請があった場合には、これを認めない。
(イ)制裁を逃れること等を目的とした北朝鮮の航空機及び船舶の移転に関する情報があった場合には、関係省庁は外務省を通じて1718委員会に情報提供することとする。
(6)北朝鮮外交官に対する警戒強化(主文24)
我が国は、外交官を含め、北朝鮮籍者の入国は特別の事情がない限り認めていない。
3.我が国独自の対北朝鮮措置
平成21年7月(決議第1874号に基づく報告書の提出)以降、我が国は以下の独自の対北朝鮮措置を実施。
(1)人の移動
我が国は、平成18年7月以来、在日の北朝鮮当局職員の北朝鮮を渡航先とした再入国は原則として禁止してきたところ、平成25年2月、この措置を、かかる職員が行う当局職員としての活動を実質的に補佐する立場にある者にも拡大。
(2)金融面の措置
(ア)平成22年5月、北朝鮮を仕向地とする支払手段等の携帯輸出について届け出を要する金額(下限額)を30万円超から10万円超に引き下げると共に、北朝鮮に住所等を有する自然人等に対する支払について報告を要する金額(下限額)を1,000万円超から300万円超に引き下げ。
(イ)平成25年4月、決議第2094号の趣旨を踏まえ、北朝鮮の核関連、その他の大量破壊兵器関連、及び弾道ミサイル関連の計画等に関与する者として、安保理決議では指定されていない1団体及び4個人を資産凍結対象として追加指定。