ニカラグア共和国
ニカラグア共和国(Republic of Nicaragua)
基礎データ
令和6年8月28日
一般事情
1 面積
130,370平方キロメートル(北海道と九州を合わせた広さ)
2 人口
695万人(2022年 世界銀行)
3 首都
マナグア
4 民族
混血70%、ヨーロッパ系17%、アフリカ系9%、先住民4%
5 言語
スペイン語
6 宗教
憲法上宗教の自由を保障。カトリック、プロテスタント等
7 略史
年月 | 略史 |
---|---|
1502年 | コロンブスに「発見」される |
1573年 | グアテマラ総督領に編入 |
1821年 | スペインから独立 |
1823年 | 中米諸州連合結成 |
1838年 | 中米諸州連合から分離独立 |
1936年 | ソモサ将軍政権掌握 |
1979年 | サンディニスタ革命 |
1985年 | オルテガ大統領就任 |
1990年4月 | チャモロ大統領就任 |
1997年1月 | アレマン大統領就任 |
2002年1月 | ボラーニョス大統領就任 |
2007年1月 | オルテガ大統領就任(第1期) |
2012年1月 | オルテガ大統領再任(第2期) |
2017年1月 | オルテガ大統領再任(第3期) |
2022年1月 | オルテガ大統領再任(第4期) |
政治体制・内政
1 政体
立憲共和制
2 元首
- ダニエル・オルテガ・サアベドラ大統領
- (任期5年)
3 議会
一院制(定員92名、任期5年)
4 政府
- (1)首相 首相職無し
- (2)外相 デニス・モンカダ・コリンドレス
5 内政
- 1821年にスペインから独立。1823年に中米諸州連合を結成、1838年に同連合から分離・独立。
- 1936年にアナスタシオ・ソモサ・ガルシア将軍が大統領に選出されて以来、1979年までの43年間ソモサ一族が独裁政治を続けたが、1970年代末になると、ソモサ独裁に反対する中道・左派が幅広く結集し、1979年7月、武力によりソモサ独裁政権を倒し、サンディニスタ民族解放戦線(FSLN)主導による革命政権を樹立した(サンディニスタ革命)。
- その後、革命政権は急速に左傾化し、国内の政治闘争が深刻化した。同時に、1981年に米国でレーガン政権が発足し、反革命武装勢力「コントラ」への支援と対ニカラグア経済制裁が行われた。1985年にはオルテガ大統領が就任したが、内戦が激化するとともに、ハイパーインフレ等により経済活動は滞り、ニカラグア社会は極度に混乱・疲弊した。
- 1987年の中米和平合意に沿って、1988年、政府・反政府勢力との間で暫定停戦合意が成立。1990年には、国連等による国際監視の下、大統領選挙が実施され、国民野党連合(UNO)で親米保守派のチャモロ候補が勝利した。チャモロ政権は、平和構築、民主化、経済自由化という大変革に着手し多くの成果を残した。
- 1997年に発足したアレマン政権(立憲自由党:PLC)は、経済自由化を推し進める政策をとり、経済構造、行政組織、司法制度改革等を実施したが、1999年以降は、野党FSLNと政治合意を結び二大政党に有利に働くよう憲法改正や選挙法の改正を行った。
- 2002年に発足したボラーニョス政権(PLC)は汚職に対して断固たる対応をとり、アレマン政権時代の汚職を厳しく追求し(アレマン元大統領を逮捕)、主要派閥アレマン派との関係が悪化し、内政危機に陥ったが、米州機構(OAS)等の仲介が功を奏し、ボラーニョス大統領は2007年1月までの任期を全うした。
- 2006年11月の大統領選挙の結果、2007年1月、オルテガ大統領が就任し、17年ぶりに政権に復帰した。オルテガ政権は、主要課題である貧困削減に向け、低所得者向けプログラム等を推進した。
- 2011年11月の大統領選挙では、「大統領の連続再選は憲法違反」との非難も上がったが、オルテガ大統領は出馬し、60%超の高い得票率で再選を果たした。なお、大統領の連続再選問題については、2009年10月、オルテガ大統領の申し立てに対し、ニカラグア最高裁が、「憲法の連続再選禁止規定は同じく憲法が定める「法の下の平等」原則に抵触するため適用不可」と判断し、同国最高選管もこれを追認したため、オルテガ大統領再選への道が開かれていた。
- 2014年12月、憲法改正により、大統領の無期限再選が可能となった。
- 2016年11月の大統領選挙では、オルテガ大統領が70%超の得票率で連続三選(通算4期目)された。副大統領にはオルテガ大統領夫人であるムリージョ大統領府広報官が選出された。同日に行われた国会議員選挙でも、与党FSLNが92議席中71議席を獲得した。
- 2018年4月、社会保障改革を発端とした反政府抗議デモが勃発し、警察やパラミリタリーによる武力を用いた弾圧等により300名以上が死亡。 同年5月以降、政府と市民同盟(経済界、学生、市民団体等)の間で国民対話を開始したものの頓挫した。
- 2021年11月の大統領選挙では、オルテガ大統領が70%超の得票率で連続四選された。前期同様、ムリージョ夫人が副大統領を務める。同日に行われた国会議員選挙でも与党FSLN党が92議席中75席を獲得した。
- 2022年11月の地方統一選挙では与党FSLN党が全153市長選挙で勝利した。
外交・国防
1 外交基本方針
- (1)1979年からのサンディニスタ政権時代は、キューバやソ連等社会主義諸国との関係が緊密であったが、チャモロ政権以後、米国との関係を修復し全方位外交を展開。2007年に発足したオルテガ現政権は、米州人民ボリバル同盟(ALBA)への参加を通じたベネズエラやキューバとの関係を一層緊密化させるとともに、イランやロシアとの関係を強化している。2021年12月の中国との外交関係再開後は、同国との関係を深化。移民や貿易面では深いつながりを有する米国との関係も維持されているものの、オルテガ大統領の反米的発言も目立つ。
- (2)中米統合機構(SICA)加盟国(中米司法裁判所所在)。
- (3)2021年大統領選挙が、自由・公正・透明性に欠き民主的な正当性を有していないとして、米州機構(OAS)を含む国際社会から批判を受けたオルテガ政権は、同年11月、同機構からの離脱を通告する書簡を発出し、2023年11月に正式に脱退した(OAS憲章により脱退は離脱通告から2年後と規定)。
- (4)北朝鮮と外交関係あり。
- (5)2021年12月に台湾と断交し、中国との外交関係を再開。
2 軍事力(2021年ミリタリーバランス)
- (1)国家安全保障予算 79百万米ドル(2020年)
- (2)兵役 志願制(1990年に徴兵制廃止)
- (3)兵力 12,000人(陸軍10,000人、海軍800人、空軍1,200人)
経済
1 主要産業
主に農牧業(コーヒー、牛肉、金、豆、砂糖、乳製品)
2 GDP(名目)
178.2億米ドル(2023年 世界銀行)
3 一人当たりGNI
2,270米ドル(2023年 世界銀行)
4 経済成長率
4.6%(2023年 世界銀行)
5 物価上昇率
5.6%(2023年 開発情報庁(INIDE))
6 失業率
2.5%(不完全雇用率:40.3%)(2023年 ニカラグア中央銀行)
7 貿易総額
- (1)輸出(F.O.B)
- 4,034百万米ドル(2023年 ニカラグア中央銀行)
- (2)輸入(C.I.F)
- 8,326百万米ドル(2023年 ニカラグア中央銀行)
8 主要貿易品目
- (1)輸出
- 金、牛肉、コーヒー、乳製品、砂糖、豆等(2023年 ニカラグア中央銀行)
- (2)輸入
- ディーゼル・ガソリン・潤滑油、食料品、自動車、原油、医薬品等(2023年 ニカラグア中央銀行)
9 主要貿易相手国(2024年1-4月 ニカラグア中央銀行)
- (1)輸出
- 1位 米国(34.4%)、2位 カナダ(11.1%)、3位 エルサルバドル(10.2%)、4位 メキシコ(5.7%)、5位 コスタリカ(5.2%)(日本(0.2%))
- (2)輸入
- 1位 米国(24.9%)、2位 中国(14.6%)、3位 グアテマラ(9.8%)、4位 コスタリカ(8.1%)、5位 エルサルバドル(7.8%)(日本(2.5%))
10 通貨
コルドバ
11 為替レート
1米ドル=約36コルドバ(2024年6月 ニカラグア中央銀行)
12 対外公的債務
8,608.6百万米ドル(2024年第1四半期 ニカラグア中央銀行)
13 経済概況
- (1)1990年に発足したチャモロ政権以降、ニカラグアは、内戦で破壊された経済の再建のため、経済安定化、構造調整、累積債務削減に重点を置く政策を講じ、1995年には経済成長率4.2%を達成した。また、1990年に1万%を越えていたインフレ率も、1997年には7.3%まで減少した。2018年までは年間経済成長率4%台を維持、その後2018年の社会騒乱の影響、2020年の2度のハリケーン並びに新型コロナウイルスの影響によりマイナス成長が続いたものの直近3年間は回復傾向にある(21年:10.3%、22年:3.8%、23年:4.3%)。
- (2)米・中米・ドミニカ(共)自由貿易協定(DR-CAFTA)が、2006年4月に発効。1998年にメキシコ、 2008年1月に台湾、2009年11月にパナマ、2012年10月にチリとの自由貿易協定(FTA)が発効。中米EU経済連携協定が2013年8月に発効。2018年2月には中米・韓国FTAが締結され、2019年10月以降、ニカラグアを皮切りに順次発効。2024年1月には中国・ニカラグア自由貿易協定(FTA)が発効。
- (3)2012年、ニカラグア両大洋間運河建設法が国会で可決され、運河庁が設立された。2013年には、香港企業HKC社へのコンセッション付与を含む運河関連法案が可決され、HKC社傘下のHKND社が計画を進め、2014年には、運河ルートが発表され、起工式が実施された。しかし2024年5月、HKC社の破産を受けて同関連法令が国会で撤廃され、同運河建設の実現は不透明となっている。
- (4)2018年4月に始まった政情不安による投資の低迷、投資家からの信頼度の低下、そしてコロナウイルス感染症拡大によるGDPマイナス成長から回復基調にあったものの、21年大統領選挙の正当性欠如に対し米国・EUからの制裁が強化され、今後、国際金融機関からの融資の見直し等経済成長への不透明感が高まっている。
経済協力
1 日本の援助実績
- (1)有償資金協力(2022年度までの累計、E/Nベース)275.15億円
- (2)無償資金協力(2022年度までの累計、E/Nベース)849.85億円
- (3)技術協力実績(2022年度までの累計、JICA経費実績ベース)282.61億円
2 主要援助国(単位:百万ドル)(2022年OECD/DAC)
- (1)米国(31.6)
- (2)韓国(26.8)
- (3)スペイン(15.9)
- (4)スイス(13.7)
- (5)カナダ(8.0)(日本(4.5))
二国間関係
1 政治関係
伝統的に友好関係。1935年2月外交関係樹立、1941年12月からの外交関係中断を経て、1952年11月 外交関係再開。1963年に相互に大使館を開設。
2 経済関係
対日貿易
- (1)貿易額(2023年 財務省貿易統計)
- 輸出 44.69億円
- 輸入 194.30億円
- (2)主要品目(2023年 財務省貿易統計)
- 輸出 コーヒー、衣類、動植物性原材料、ゴマ等
- 輸入 機械類及び輸送用機器、鉄鋼、化学製品、ゴム製品等
3 文化関係
- 文化無償資金協力(一般・草の根)累計13件、5億6,768万円
(2023年度まで)
4 在留邦人数
94名(2024年7月現在)
5 在日ニカラグア人数
106名(2023年12月現在 法務省)
6 要人往来
年月 | 要人名 |
---|---|
1967年 | 村上勇特派大使(ソモサ大統領就任式) |
1974年 | 坂田道太特派大使(ソモサ大統領就任式) |
1977年 | 永野重雄経済使節団 |
1987年 | 列国議会同盟(IPU)議員団(団長 小宮山重四郎衆議院議員) |
1990年 | 唐沢俊二郎特派大使(チャモロ大統領就任式) |
1991年 | 鈴木宗男外務政務次官 |
1993年 | 土屋義彦埼玉県知事 |
1997年1月 | 佐々木満特派大使(アレマン大統領就任式) |
1998年12月 | 斉藤斗志二衆議院議員 |
1999年6月 | 土屋品子衆議院議員 |
2001年8月 | 山口泰明外務大臣政務官 |
2002年1月 | 斉藤斗志二特派大使(ボラーニョス大統領就任式) |
2003年 | 若林秀樹参議院議員 |
2005年2月 | 有馬政府特使(外交関係樹立70周年記念式典) |
2005年10月 | 常陸宮同妃両殿下 |
2006年8月 | 猪口邦子内閣府特命担当大臣(少子化・男女共同参画) |
2007年1月 | 松島みどり特派大使(オルテガ大統領就任式) |
2008年6月 | 西村康稔衆議院議員 |
2012年1月 | 山根隆治外務副大臣(オルテガ大統領就任式) 西村康稔衆議院議員 |
2013年6月 | 西村康稔衆議院議員 |
2014年8月 | 土屋品子衆議院議員 |
2014年8月 | 参議院ODA調査団(団長:中西祐介議員) |
2015年7月 | 宇都隆史外務大臣政務官 |
2015年12月 | アントニオ猪木参議院議員 |
2017年1月 | 土屋品子特派大使(オルテガ大統領就任式) |
2017年5月 | 金子めぐみ総務大臣政務官 薗浦健太郎外務副大臣 |
2018年2月 | 堀井巌外務大臣政務官 |
2020年1月 | 鈴木馨祐外務副大臣 |
年月 | 要人名 |
---|---|
1985年 | レビテス観光庁長官 バレンスエラ建設相 ルイス対外協力相 |
1988年 | カルデナル文化相 ヒュッペル大蔵相 |
1989年 | ルイス対外協力相 ヒュッペル大蔵相(大喪の礼参列) |
1990年 | トレホス最高裁長官(即位の礼参列) |
1991年 | チャモロ大統領(公式実務訪問賓客) ロサーレス労働相(外務省招聘) |
1992年 | セサル国会議長(参議院招聘) |
1993年 | クルーガー対外協力相(PDD東京特別会合) |
1994年 | レアル外相(外務省賓客) |
1996年 | レアル外相(日・中米フォーラム) ベリー教育相 |
1996年12月 | モンタルバン次期外相(就任直前。外務省招聘) |
1997年10月 | マルティネス厚生相 |
1998年7月 | ソロルサノ水道庁長官 |
1999年2月 | ロブレト対外協力庁長官 |
2000年5月 | アレマン大統領 |
2000年6月 | エスコバル国会議長(小渕前総理大臣葬儀) |
2000年12月 | ロブレト教育相 |
2000年12月 | マレンコ水産庁長官 |
2002年6月 | モラレス通商振興副大臣(IWC下関会合) |
2002年11月 | ゴメス対外経済協力庁長官(中米エンカウンター・イン東京) |
2002年11月 | サルボ保健相 |
2004年5月 | ゴメス経済協力庁長官 |
2004年6月 | ボラーニョス大統領(公式実務訪問賓客) カルデラ外相(公式実務訪問随員) アラーナ通商産業振興相(公式実務訪問随員) |
2005年7月 | カルデラ外相(外務省賓客) |
2005年8月 | リソ副大統領(日本・中米首脳会議出席/博覧会賓客) カスティージョ特使(中米展) |
2006年11月 | サルボ農牧相 |
2007年9月 | マルティネス運輸インフラ相(一般無償業者契約) |
2008年7月 | マルティネス運輸インフラ相(外務省招聘) |
2009年10月 | モラレス副大統領(科学技術と人類の未来に関する国際フォーラム) |
2010年1月 | サントス外相(FEALAC外相会合) |
2011年5月 | マルティネス運輸インフラ相(一般無償業者契約) |
2011年6月 | サントス外相(MDGsフォローアップ会合) |
2011年10月 | マルティネス運輸インフラ相(一般無償業者契約) |
2012年5月 | バルトダノ投資貿易振興政府代表 |
2012年10月 | アコスタ財務相(IMF世銀総会) |
2013年6月 | サントス外相 |
2013年12月 | バルトダノ投資貿易振興政府代表 |
2014年5月 | オキスト国家政策担当大統領秘書官 |
2015年8月 | カスティージョ通信郵便庁長官 |
2016年3月 | オキスト国家政策担当大統領秘書官 |
2016年4月 | マルティネス運輸インフラ相 |
2016年10月 | オキスト国家政策担当大統領補佐官 |
2019年8月 | アコスタ財務・公債相 |
2019年10月 | モンカダ外相(即位の礼) |
2024年6月 | ジャクソン水産庁長官(水棲生物資源の持続的利用会合) |
7 二国間条約・取極
- 1991年 青年海外協力隊派遣取極
- 2001年 技術協力協定