欧州
マルタ共和国(Republic of Malta)
基礎データ
一般事情
1 面積
316平方キロメートル(淡路島の半分)
2 人口
約54万人(2023年)
3 首都
バレッタ
4 言語
マルタ語及び英語が公用語
5 宗教
カトリック
6 略史
年月 | 略史 |
---|---|
1964年9月21日 | 独立(英連邦に加入) |
1971年6月~ | 労働党政権 |
1974年12月13日 | 共和制(総督を廃し、大統領制となる) |
1979年3月31日 | 英軍撤退 |
1987年5月~ | 国民党政権 |
1996年9月~ | 労働党政権 |
1998年9月~ | 国民党政権 |
2013年3月~ | 労働党政権 |
2017年6月~ | 労働党政権 |
2022年4月~ | 労働党政権 |
政治体制・内政
1 政体
共和制
2 元首
ミリアム・スピテリ=デボノ大統領(2024年4月4日就任)
3 議会
- (1)構成 一院制 (原則65議席(比例代表制、13選挙区から各5名選出)、任期5年)
- (2)現議会勢力(2022年4月召集、79議席)
- (注)マルタ議会の総議席数は基本的に65だが、得票率と議席数の不均衡を是正する措置があり、現在の総議席数は79となっている。
- 労働党(与党) 44議席
- 国民党(野党) 35議席
4 政府
労働党単独政権(2022年4月28日第二次アベーラ内閣発足)
- (1)首相:ロバート・アベーラ
- (2)外相:イアン・ボージュ
5 内政
- (1)1987年5月の総選挙では、過去16年間にわたる労働党政権に終止符が打たれ、親西側路線への復帰を提唱する国民党が政権を獲得。国民党は、EC加盟申請やマルタでの米・ソ首脳会談の開催等の外交上の実績、好調な経済を背景に、1990年代を通して(1996年から1998年までを除く。)政権を維持。
- (2)2003年3月EU加盟の是非を問う国民投票は賛成多数(53.6%)となり、翌年5月マルタはEU加盟を実現した。2003年4月に行われた総選挙では、一貫してEU加盟を支持してきた国民党政権が、EU加盟に反対の立場を採ってきた野党労働党に対して勝利を収めた。
- (3)2013年3月9日に行われた総選挙では、水道・電力料金の引下げなどを訴えた野党労働党が約55%の得票率を得て勝利し、3月11日ムスカット労働党政権が誕生した。2017年6月3日に行われた総選挙でも、労働党が約55%の得票を得て、第二次ムスカット内閣が発足した。ムスカット政権は、かつての労働党政権時代の方針を変更し、親EU路線に基づく政権運営を行った。
- (4)2020年1月13日、ムスカット首相が辞任。同月、労働党党首に選出されたアベーラ議員が首相に就任した。
- (5)2022年3月の総選挙では、新型コロナ対策や経済運営が国民に評価された労働党が単独過半数を維持し、第二次アベーラ内閣が発足した。
- (6)2024年4月4日、ヴェッラ大統領が任期を終了。同日、元国会議長のミリアム・スピテリ=デボノ氏が大統領に就任した。
外交・国防
1 外交基本方針
- (1)2000年2月から開始したEU加盟交渉は順調に進み、2004年5月にEUに加盟。2008年1月には、目標であったユーロ導入も実現した。現在のマルタにとっては、EU及びユーロ圏諸国と緊密に連携していくことが外交の基本方針。
- (2)1995年、マルタはNATOとの「平和のためのパートナーシップ(PfP)」に加盟したが、1996年の労働党政権時代に一旦脱退。2008年3月の総選挙に勝利した国民党率いるゴンズィ首相の取組により、2008年4月にマルタはPfP再加盟を果たした(マルタは現在でもNATO未加盟。)。
- (3)地理的位置から北アフリカからの不法移民問題が懸案となっており、EU全体で対策に取り組むべきという立場を採っている。2017年前半は初めてEU議長国を務め、難民対策を優先事項に掲げた。また、2020年には移民に関する西地中海5+5外相対話の共同議長をチュニジアとともに務めた。
- (4)マルタと中国は伝統的に友好国。マルタは、2018年に「一帯一路」構想に関する覚書に署名しており、2021年にはバルトロ外相が中国を訪問した。その後も、2023年9月に王毅中国外交部長がマルタを訪問してヴェッラ大統領を表敬し、同年11月にはボージュ外相が訪中。
- (5)2024年6月の欧州議会選挙では、野党国民党が与党労働党と同議席を獲得(それぞれ3議席)。
2 軍事力
- (1)予算 7,390万ユーロ(ミリタリー・バランス2024)
- (2)兵役 志願制
- (3)兵力 1,700人(ミリタリーバランス2024)
経済
1 主要産業
製造業(主に、半導体、繊維、造船、船舶修理)、観光、ゲーム産業、金融サービス
2 GDP
209.6億米ドル(2023年 IMF統計)
3 一人当たりGDP
38,670米ドル(2023年 IMF統計)
4 経済成長率
5.6%(2023年 IMF統計)
5 物価上昇率
5.7%(2023年 IMF統計)
6 失業率
2.5%(2023年 IMF統計)
7 総貿易額
- (1)輸出 4,516百万ユーロ
- (2)輸入 8,577百万ユーロ
(2023年 マルタ国立統計局統計)
8 主要貿易相手国(2021年 世銀)
- (1)輸出 ドイツ、イタリア、フランス、日本、シンガポール
- (2)輸入 イタリア、英国、フランス、カナダ、スペイン
9 通貨
ユーロ(2008年1月に導入。)
10 経済概況
- (1)天然資源に乏しく、市場規模も小さいマルタは、主要な物資を輸入に依存している。貿易収支の赤字は主要産業である観光業からの収入で補填するというパターンを維持しており、経常収支の赤字幅は比較的小さい(マルタは年間250万人以上の観光客が訪れる観光立国。)。
- (2)1980年代半ばまでは安価かつ豊富な労働力に基づく経済構造であったが、1980年代後半から政権を担当した国民党によって、経済の自由化が図られ、高度な技術・専門性を有する労働力による付加価値経済及び輸出志向型製造業への転換が行われた。現在の労働党政権の下でもこのような路線は基本的に引き継がれており、政府は、海外投資の誘致、オフショア・ビジネスの活性化、学術機関の誘致やメディカル・ツーリズムを含む観光業の一層の発展、大型インフラ開発等に積極的に取り組んでいる。
- (3)最近はオンラインゲーム産業、金融サービス(ブロックチェーンや仮想通貨等)が伸びており、EU内でもトップレベルの経済成長を遂げている(2023年はGDP5.6%成長)。
- (4)マグロ畜養が盛んで、日本にとってクロマグロの輸入元として第1位(約6,900トン(2022年時点))。
二国間関係
1 政治関係
- 1965年 外交関係開設
- 1974年 在マルタ日本名誉総領事館設置
- 1996年 在本邦マルタ観光局開設
- 2003年 在本邦マルタ名誉総領事館設置
- 2018年 在広島マルタ名誉領事館設置
- 2019年 在京都マルタ名誉領事館設置(2022年閉鎖)
- 2020年 在本邦マルタ大使館設置
- 2024年 在マルタ兼勤駐在官事務所開設
(注)参考:第一次世界大戦時に英国の要請を受け、地中海方面に派遣された日本海軍の艦隊は「地中海の守り神」と呼ばれた。1917年、駆逐艦「榊(さかき)」が潜水艦の攻撃を受け大破し、その際に亡くなった59名及び戦病死者12名を加えた71名をまつる慰霊碑がマルタの英軍墓地内に建てられている。1921年4月には、当時皇太子殿下であった昭和天皇が同慰霊碑を御参拝になった。同墓碑は所要の修復を経て、今日に至るまで維持・管理されている。
2 経済関係
- (1)貿易額(2023年 財務省貿易統計)
- 輸出(日本からマルタへ) 244億円
- 輸入(マルタから日本へ) 246億円
- (2)主要品目
- 輸出(日本からマルタへ):機械類及び輸送機器、船舶類、自動車 等
- 輸入(マルタから日本へ):食料品、魚介類及び同調製品、機械類及び輸送用機器、電気機器 等
3 文化関係
- 1991年9月 日本文化週間(海上自衛隊練習艦隊の寄港)
- 1994年12月 マルタ大学に図書寄贈(国際交流基金事業)
- 1996年9月 手塚治虫展
- 2005年7月 日本文化週間(日・マルタ修好40周年、日・EU市民交流年)
- 2010年11月 日本文化紹介イベント「ニッポン・ナイト」
- 2011年7月 トニオ・ボージュ・マルタ副首相兼外相主催「日本の被災者支援のためのコンサート」
- 2012年3月 「連帯の力:東日本大震災一周年行事」
- 2015年11月 日・マルタ外交関係樹立50周年記念行事(山田外務大臣政務官出席)
- 2016年11月 和菓子・茶道を通じた日本の食文化紹介イベント
- 2017年1月 着物紹介イベント
- 2018年3月 「日EU・EPAに関するセミナー」
- 2018年11月 欧州文化首都2018ヴァレッタ・ジャパンデー等における着物レクデモ及び日本映画上映会
- 2019年3月 「東アジア情勢と海上安全保障に関する講演会」
4 東日本大震災支援
2011年7月13日、マルタ外務省内において、ボージ副首相兼外相が主催する日本の被災者支援のためのコンサートが行われた。コンサートには、ボージ副首相兼外相、グレック外務省事務次官、国会議員、駐マルタ各国大使など多数が出席し、コンサートの最後には、ボージ副首相兼外相から河野駐マルタ大使(イタリア常駐)に対し、マルタ政府から日本赤十字宛の寄附金が手交された。
2012年3月23日、バレッタにあるマルタ商工会議所で、「連帯の力:マルタにおける東日本大震災一周年行事」を実施し、マルタ政府関係者等多くの出席を得た。冒頭、河野大使から出席者に対し、日本が着実に復興していること及びマルタによる支援への感謝の意を伝えた。
5 在留邦人数
293人(2023年)
6 在日マルタ人数
40~50人(2023年)(2024年 在京マルタ大使館)
7 要人往来(肩書はいずれも当時のもの。)
年月 | 要人名 |
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1984年 | 政府派遣官民経済使節団(溝口大使団長) |
1991年6月 | 渡部恒三衆議院議員(日・マルタ友好議連会長)他国会議員団 |
1998年11月 | 中山正暉衆議院議員(衆議院公式派遣/国対班) |
2005年7月 | 森山真弓衆議院議員 |
2006年7月 | 海部俊樹元総理大臣 |
2015年11月 | 山田美樹外務大臣政務官 |
2017年5月 | 安倍晋三総理大臣 |
2017年10月 | 山下雄平内閣府大臣政務官 |
2019年9月 | 山下雄平参議院議員(日・マルタ友好議連事務局長)他国会議員団 |
2024年2月 | 深澤陽一外務大臣政務官(在マルタ兼勤駐在官事務所開所式) |
年月 | 要人名 |
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1985年 | トリゴナ外相 |
1989年2月 | タボーネ外相(大喪の礼) |
1990年8月 | アダミ首相、ガレア社会政策相 |
1990年11月 | タボーネ大統領(即位礼正殿の儀) |
1991年9月 | フェネック海事長官 |
1993年2月 | デ・マルコ副首相兼外相 |
1995年9月 | ボンニチ経済相(高級実務者招聘) |
1996年4月 | ボンニチ経済相 |
1997年9月 | ヴェラ副首相兼外相(外務省賓客) |
2000年10月 | ボンニチ経済相 |
2018年7月 | ムスカット首相 |
2019年10月 | ヴェッラ大統領(即位礼正殿の儀) |
2022年9月 | ボージュ外務・欧州・貿易相(故安倍晋三国葬儀) |
8 二国間条約・取極等
- 貿易協定(1968年11月署名)
- 査証及び査証料の相互免除取極(1973年2月)
9 外交使節
- マルタ共和国駐箚日本大使(イタリア常駐) 鈴木 哲
- 日本駐箚マルタ共和国大使 アンドレ・スピテリ