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日ラオス共同声明
「恒久的な友好関係及び地域の繁栄に向けた包括的パートナーシップの強化」

骨子英文


  1. チュンマリー・サイニャソーン・ラオス人民民主共和国(以下「ラオス」という。)国家主席兼ラオス人民革命党書記長(以下、「チュンマリー国家主席」という。)は、日ラオス外交関係樹立55周年を記念して、2010年3月2日から同6日までの間、初めて日本国を公式に訪問した。チュンマリー国家主席は、訪問中、天皇陛下と御会見になり、鳩山由紀夫内閣総理大臣と会談したほか、政界・経済界のリーダーを含む各界要人と面会した。2010年3月4日に行われた鳩山総理大臣とチュンマリー国家主席との会談において、双方は二国間関係及び協力に関する幅広い事項並びに共通の関心事項である地域・国際情勢について意見交換を行った。

両国関係の総括と今後の展望

  1. 双方は、日本とラオスが50年以上にわたる外交関係及び協力の中で培ってきた強固な関係及び相互信頼は両国共通のかけがえのない資産であることを確認した。双方は、かかる伝統的な友好関係及び充実した協力関係を恒久的な友好関係及び地域の繁栄に向けた包括的パートナーシップを通じて前進させ、次世代に継承していくとの希望と意思を表明した。
  2. 日本側は、ラオスが大いなる社会経済発展を遂げたことを賞賛し、ラオスの発展に向けた取組を支援するため、ラオスへのODAを拡充する政策を継続していくことを改めて表明した。ラオス側は、ラオスの国家開発に対する日本側からの継続的な支援を高く評価するとともに、これを効率的かつ効果的に活用していく意向を表明した。
     また、ラオス側は、メコン地域や種々の国際的な枠組みにおける発展のために日本が行っている積極的かつ実りある貢献を評価し、この点における協力を今後一層強化していくとの意図を改めて表明した。

広範な交流・協力の促進

  1. 双方は、両国関係を新たな高みへと発展させていくためには、人的交流が重要であるとの認識で一致した。これに関し、双方は、今後様々なレベル・分野において人的交流・協力をさらに推進することを改めて確認した。
  2. 双方は、首脳、政府関係者、国会議員から青少年を含む草の根レベルまで、様々なレベルでの交流を推進することを改めて確認した。また、双方は、両国の地方自治体間の連携を推進することを確認した。双方は、安全保障・防衛、ビジネス、日本におけるラオス留学生の受入れを含めた学術等の様々な分野で人的交流を推進することを改めて確認した。
  3. 双方は、様々な分野における協力を推進することを再確認した。これに関し、双方は観光促進並びに日本語及びラオス語の普及のための協力を増進することの重要性を確認した。この関連で、日本側は、2007年1月より有効となったラオス側による日本人に対する観光査証免除措置の決定を改めて評価する一方、ラオス側は日本人観光客のラオスへの関心を高めるため、より一層努力することを表明した。
  4. 双方は、両国関係の更なる強化のため、外交当局高級事務レベル間の協議を立ち上げ、さらに推進していくことを決定した。
  5. 双方は、本年の日ラオス外交関係樹立55周年の機会を活用し、日本及びラオスに対する一般の関心を喚起するため、青少年交流事業、文化関連行事その他の事業を実施することを確認した。

経済関係の強化

  1. 双方は、両国間の経済協力の強化が、相互にとって中・長期的な利益となることを確認し、そのための努力を一層強化することで一致した。日本側は、ラオスの世界貿易機関(WTO)への早期加盟への支持を表明した。
  2. ラオス側は、日本からの直接投資の増加を引き続き支持し、投資環境改善に最大限努力することを確認した。双方はこの目的のために、日ラオス官民合同対話を今後一層活用していくことを確認した。また、双方はラオスにおける経済関連法の整備及び投資協定の運用の進展のため、引き続き協力していくことで一致した。
  3. 双方は、ラオスにおける近隣国との連結性を含むハード及びソフト両面にわたるインフラの整備に向け、引き続き協力していくことを再確認した。日本側は、ビエンチャン特別市の総合的開発に向けたラオス側の取組への支援を表明した。また、日本側は、太陽光発電や森林保全等の環境・気候変動分野における案件への支援を実施することを表明し、ラオス側はこれに対する謝意を表明した。さらに、双方は、官民連携による案件を発掘・実施していくことで一致した。

地域の平和と安定

  1. 双方は、2009年11月の第1回日本・メコン地域諸国首脳会議(以下「第1回日メコン首脳会議」という。)における首脳間の合意を満たすため、地域の平和、安定及び相互信頼を促進すべく、二国間の協調を強化していくことで一致した。
  2. 双方は、六者会合が、朝鮮半島において検証可能かつ不可逆的な非核化を達成し、恒久的な平和と安定を確保するために、引き続き最も有効な枠組みであることを認識した。双方は、過去の六者会合においてなされた約束及び関連する国連安全保障理事会決議を完全に実施することの重要性を認識し、北朝鮮に対し、六者会合に可及的速やかに復帰するよう要請した。双方は、拉致問題が包括的な解決が必要とされる人道上の深刻な懸念である旨認識した。
  3. 双方は、本年ミャンマーで行われる総選挙に向けた進展を歓迎し、同選挙が透明性を有し、自由で公正な、かつ、すべての関係者が参加する包含的なものとなることを信じる旨表明した。双方は、ミャンマーにおける国民和解及び民主化プロセスを加速するための良好な環境が形成されることへの期待を共有した。

地域開発協力

  1. 双方は、2008年12月に発効した日ASEAN包括的経済連携(AJCEP)協定の円滑な運用に努めることを再確認した。
  2. 双方は、ASEAN憲章の実施における進展に満足の意をもって留意するとともに、ASEAN憲章に規定された普遍的・地域的価値を引き続き共有していくことを確認した。
  3. 双方は、メコン地域の要衝にあるラオスが安定的かつ持続的な発展を遂げることが、ASEANの統合、並びに2015年までのASEAN共同体構築及び長期的な目標としての東アジア共同体の構築にとって有益であるとの考えで一致した。日本側は、ASEAN域内の開発格差是正のための支援を引き続き実施することを表明し、ラオス側はこれに対し謝意を述べた。また、双方は、日本アセアンセンターの活動が、日ASEAN間及び日ラオス間協力の増進のために効果的であることを確認した。
  4. 双方は、第1回日メコン首脳会議で発出された「第1回日本・メコン地域諸国首脳会議東京宣言」及び「日メコン行動計画63」に記述された事項の実施がラオス及びメコン地域全体の発展及び繁栄にとり極めて重要であること並びにその実施について協力することを確認した。日本側は、メコン地域における課題の克服及び同地域における人材の育成・活用の推進のために引き続きメコン地域諸国に対し支援を行っていくことを表明し、ラオス側はこれを高く評価した。

国際場裡におけるパートナーシップの強化

  1. 国連改革
     双方は、国連改革、特に安全保障理事会改革が緊急に必要であることを再度表明した。双方は、国連安全保障理事会がより広く代表的、効果的で、かつ透明性を持った機関となるよう、国連安全保障理事会の常任・非常任理事国双方の議席が拡大されるべきとの見解で一致した。この点に関し、ラオス側は、日本が国連安全保障理事会の常任理事国になることを引き続き支持する旨表明し、日本側はこれに対する深い謝意を示した。
  2. 環境・気候変動
    (1)双方は、第1回日メコン首脳会議で一致した、「緑あふれるメコン(グリーン・メコン)に向けた10年」イニシアティブの下で協力していくことを確認した。ラオス側は、2009年12月にデンマークのコペンハーゲンで開催された国連気候変動枠組条約第15回締約国会議(COP15)で策定されたコペンハーゲン合意に賛同することで、環境・気候変動問題に関する日本のイニシアティブを改めて支持するとともに、温室効果ガスの排出削減等の気候変動対策に積極的に取り組むとの意思を表明した。日本側は、途上国に向けた財政・技術支援を高めることを目的とする「鳩山イニシアティブ」の下で、気候変動による否定的な影響を緩和し、これに適応するためのラオスの取組を支援するとの意思を表明した。双方は、単一かつ包括的な法的文書に合意することによる、公平かつ効果的な枠組みの設立に向け、建設的に取り組むことを確認した。
    (2)ラオス側は、2009年9月のケッサナー台風の影響への対処における日本からの支援に対する謝意を表明した。
    (3)ラオス側は、日本が生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)の議長国を務めることに留意し、生物多様性保全に向けた日本の取組を評価した。また、日本側は、メコン河イルカの保護のための協力措置について検討を進めていく意思を表明した。
  3. 人間の安全保障
     双方は、人間の安全保障の重要性を確認し、これを促進、実現するために共に取り組む意思を表明した。
  4. 軍縮・不拡散
    (1)双方は、2010年核兵器不拡散条約(NPT)運用検討会議に向けたプロセスを含む軍縮・不拡散分野における協力を推進することで一致した。
    (2)双方は、クラスター弾に関する条約の履行の促進及び支持において協力していくことを表明した。双方は、本条約の30か国目の批准を歓迎し、本年8月1日の本条約発効を心待ちにしている旨表明した。日本側は、ラオスが本年11月にクラスター弾に関する条約第1回締約国会議を開催するとの提案を歓迎し、同会議が成功裏に成果を上げるよう、ラオスによる準備と開催に協力する用意があることを表明した。また、日本側は様々なチャネルを通じ、開発の三角地帯のラオス側地域を含めた、ラオスにおける不発弾処理のため引き続き支援していくことを改めて表明した。
  5. 国際捕鯨委員会
     ラオス側は、国際捕鯨委員会における日本の立場を引き続き支持することを表明し、日本側からは謝意が示された。
  6. 国際組織犯罪
     双方は、国境を越えた組織犯罪、とりわけ違法麻薬及び人身取引に対処するため、国内、国際双方のレベルで引き続き協力していく意思を改めて表明した。

 2010年3月4日、東京

鳩山由紀夫
日本国内閣総理大臣
チュンマリー・サイニャソーン
ラオス人民民主共和国国家主席
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