中東

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日本国とクウェート国の間の共同声明
(仮訳暫定版)

平成20年7月

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 福田康夫日本国内閣総理大臣の招聘により、シェイク・ナーセル・アル・ムハンマド・アル・アハマド・アル・サバーハ・クウェート国首相は、2008年7月26日から29日まで日本を公式訪問し、ハイレベルの派遣団が随行した。

 天皇陛下は、滞在中のシェイク・ナーセル・アル・ムハンマド・アル・アハマド・アル・サバーハ殿下と御会見になった。

 日本とクウェートの間では、日本側が福田康夫閣下、クウェート側がシェイク・ナーセル・アル・ムハンマド・アル・アハマド・アル・サバーハ殿下を代表とする公式の議論も行われた。双方は、近年の日本・クウェート関係の飛躍的な発展に大いなる満足の意を表明し、こうした二国間の繁栄に恵まれた関係を更に発展させるとの決意を確認しつつ、今般のシェイク・ナーセル・アル・ムハンマド・アル・アハマド・アル・サバーハ・クウェート国首相の日本訪問が、両国間関係の強化のために歴史的な機会であるとの重要性に留意した。

  1. 双方は、両国間の外交関係樹立50周年である2011年に、両国国民の相互理解と友好関係を増進するために行われる、両国要人の相互訪問と、政治・経済・文化・学術・観光・学生交流等、多岐に亘る分野を含む各種記念行事の成功に期待を表明した。
  2. 双方は、商業・経済分野を中心とする様々な分野における二国間関係の発展に満足の意を表明し、日本・クウェート民間合同委員会が果たしてきた役割を賞賛した。双方は、経済・商業分野をはじめとする全ての分野における協力を更に活発化させるための合同委員会設立に関する覚書が署名されたことを歓迎した。
  3. 双方はまた、両国の外務省の二国間協議開催に関する覚書が署名されたことを歓迎した。
  4. 双方は、世界の石油市場の安定は、世界経済の健全で持続可能な成長のための要であるとの共通の見解を再確認した。この観点から、双方は、現在の原油価格水準は前例のないものであり、消費国・産油国双方の利益に反するとの見方で一致した。日本側は、主要な石油生産・輸出国としてのクウェートの重要な役割を評価し、来年前半に石油生産量を増加するとのクウェートのイニシアティブを歓迎した。クウェート側は、日本への石油の安定した供給を保証するとのコミットメントを表明した。双方は、上流をはじめとする石油部門における技術協力を強化するとの強い希望を再確認し、第一段階としてCO2原油高次回収に関する共同研究プロジェクトを開始することを決定した。
  5. 双方は、エネルギーの安定供給を確保しつつ、自然環境を保護し、経済成長を達成するため、再生可能エネルギー及び省エネルギーを推進することの重要性を確認した。この観点から、双方は、再生可能エネルギー、省エネルギー及び水の保全、エネルギー管理及び代替エネルギー分野における、長期にわたる経験や先進技術を基に、二国間協力の強化を図っていくことを決定した。この点に関し、双方は、クウェート電力・水省と豊田通商株式会社との間の太陽熱複合発電プロジェクトに関する大幅な進捗を歓迎し、同プロジェクトの実施のために継続的な支援を行う意向を表明した。また、双方は2007年5月に発表した共同声明に示されたような再生可能エネルギー及び省エネルギープロジェクトを支援する意向を表明した。
  6. 双方は、所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とクウェート国との間の条約に関する継続中の交渉を歓迎し、可能な限り早期の妥結に向け努力する意向を表明した。また、双方は、日本と湾岸協力理事会(GCC)との間の自由貿易協定(FTA)交渉の重要性を確認し、できる限り早期に大筋合意に達するとの決意を表明した。クウェート側は、両国間の投資の促進及び相互の保護に関する合意に向けた交渉を開始したいとの希望を表明した。
  7. クウェート側は、2002年12月の「日・クウェートの環境問題や技術移転における協力イニシアティブ」で開始された、クウェート湾の浄化や石油業界の高度化、人材開発プログラム等の環境プロジェクトの分野における二国間の継続的な協力に評価の意を表明した。また、クウェート側は2004年11月のクウェート国における環境保護政策基本計画についても謝意を表明した。双方は、環境教育プログラム「KIDS ISO 14000」のクウェートへの試験的導入の成果を評価し、クウェートにおいてこのプログラムを一貫した形で拡大し、支援していく意向を表明した。
  8. クウェート側は、G8北海道洞爺湖サミット及び第4回アフリカ開発会議(TICAD IV)において示された日本のイニシアティブを賞賛し、日本側は、クウェートによるKFAED(クウェート・アラブ経済開発基金)及び赤新月社を通じたアフリカを含む諸国の開発のための支援を評価した。
  9. クウェート側は、相互理解の深化のための「日本とイスラム世界との文明間対話」にかかる日本のイニシアティブを評価した。日本側は、第7回文明間対話セミナーを主催するとのクウェートの意図に謝意を表明した。
  10. 双方は、両国間で進行中の教育協力や人的交流、特に、日本政府によるクウェート教職関係者の研修プログラム、クウェート大学生涯学習センターにおける日本語講座の開講、クウェートにおける在クウェート日本大使館による帰国留学生懇談会の開催などにつき、心から満足の意を表明した。双方は、教育分野においてこうした協力を更に拡大する方法につき検討することを決定した。
  11. クウェート側は、G8北海道洞爺湖サミット及び主要国経済会合の成果、並びに日本のイニシアティブである「クールアース50」及び「クールアース推進構想」を評価した。双方は、日本とクウェートが、共通だが差異のある責任及び各国の能力の原則にしたがって、すべての主要経済国が責任ある形で参加する、実効性のある2013年以後の枠組みの構築プロセスに積極的に参加することで見解を共有した。双方は、特にセクター別アプローチは温室効果ガスの排出を削減するための有益な手段であると認識した。日本側は、2007年11月のリヤド石油輸出国機構(OPEC)首脳会議において表明された、クウェートによる炭素回収貯蔵を含む気候変動対策のための1億5千万米ドルのプレッジを歓迎した。
  12. 双方は、世界全体にとり中東の安定が極めて重要であることを強調した。双方は、中東和平プロセス、イラク復興、テロとの闘いに特に重点を置きつつ、同地域の安定と繁栄のために緊密に協力することを再確認した。
  13. 双方は、イラク情勢を概観し、イラクの治安情勢における画期的な進展がもたらされたことによる前向きな展開を歓迎した。また、双方は、イラク及び同国民に安定と安全をもたらすために、国民融和の達成と政治プロセスの成功のためにあらゆる努力を尽くすことの重要性を強調するとともに、イラクの主権と一体性への支持を確認した。クウェート側は、イラクの復興と安定に対する日本の貢献に評価の意を表明し、日本側は、イラク人道復興支援活動の実施にあたってのクウェート側の協力に深い謝意を表明した。
  14. 双方は、大量破壊兵器(WMD)及び運搬手段の拡散が国際社会の平和と安定に深刻な脅威をもたらし、核兵器不拡散条約(NPT)をはじめとする軍縮・不拡散の枠組みを強化するためには、一層の協力が不可欠であるとの見解を共有した。この関連で、双方はイランの核問題について議論するとともに、すべての中東諸国に対してNPTに加入するよう求めること、国際的に正統な決議に従い、中東地域をあらゆる大量破壊兵器及び運搬手段のない地域とし、また、イランに対して関連の国連安全保障理事会決議を完全に遵守するよう求めていくことの重要性を強調した。双方はまた、イランの核問題について平和的解決に至ること、及びイランに対して国際社会との対話を継続し、この問題に関して国際原子力機関(IAEA)に全面的に協力するよう求めることの重要性を確認した。
  15. 双方は、関連の国連及び安全保障理事会の決議、アラブ・イニシアティブ及びロードマップに基づき、地域に公正で包括的かつ永続的な平和を達成することの重要性について、見解を共有した。クウェート側は、「平和と繁栄の回廊」を含む、中東和平プロセスにおける日本の積極的な貢献を評価した。双方はこれらを含むパレスチナ人への支援に関する情報共有と協力の強化を決定した。
  16. レバノン情勢の議論において、双方は、スレイマン国軍司令官閣下のレバノン共和国大統領への選出と、フアード・セニオラ閣下が率いる統一政府の樹立宣言を歓迎した。この点において双方は、政治勢力及び政党に対し、レバノンの統一と独立が保全される形で、対話を継続し、最高位の国益を優先することで、安全と安定を回復するよう求めた。
  17. 双方は、あらゆる形態のテロリズムを強く非難し、テロと闘うために、二国間及び国連を含む多国間の枠組みの中で協力を促進していく決意を強調した。
  18. 朝鮮半島情勢に関し、双方は、2005年9月の六者会合共同声明の完全かつ迅速な履行及びミサイルによる脅威の除去への支持で一致した。日本側は、拉致問題を含む日朝間の懸案事項を解決するために、日朝協議を進展させることへの決意を表明し、クウェート側はそれに対する強い支持を表明した。
  19. 双方は、国連の包括的改革の必要性があるとの認識を共有した。双方は特に、常任理事国及び非常任理事国の議席数拡大を含む、安全保障理事会の早期改革に関する政府間交渉の開始について支持を表明した。

2008年7月29日 東京にて

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