アイルランド

基礎データ

令和6年4月12日
アイルランド国旗

一般事情

1 面積

7万300平方キロメートル(北海道の面積の約8割強)

2 人口

約515万人(2022年アイルランド国勢調査)

3 首都

ダブリン(人口約145.8万人、2022年アイルランド国勢調査)

4 言語

アイルランド語(ゲール語)及び英語

5 宗教

約69%がカトリック教徒(2022年アイルランド国勢調査)

6 略史

年月 略史
12世紀 イングランド王国による植民地支配の開始
1801年 グレートブリテン王国がアイルランドを併合し、グレートブリテン及びアイルランド連合王国(以下「英国」)となる
1916年 イースター蜂起(独立を目指す武装蜂起。英国軍により鎮圧)
1919年~1921年 対英独立戦争
1922年 英連邦内の自治領「アイルランド自由国」となる。北部6県(現在の北アイルランド)は英国領にとどまる
1937年 新憲法の公布。「アイルランド」となる
1949年 英連邦を離脱し、共和国であることを宣言(国名は「アイルランド」のまま)
1955年 国連加盟
1973年 EC(後のEU)加盟
1998年 北アイルランドに係る和平合意(通称:「ベルファスト合意」)成立
1999年 ユーロ導入(ユーロ創設メンバー)

政治体制・内政

1 政体

共和制

2 元首

マイケル・D・ヒギンズ大統領(2018年11月11日就任。任期7年、現在2期目)(注)大統領の任期は最長2期。

3 議会

二院制(下院優位。下院160議席(任期5年、解散あり)、上院60議席)

政党名 下院 上院
与党 共和党(FF) 37 21
統一アイルランド党(FG) 33 16
緑の党 11 5
野党 シン・フェイン党(SF) 36 3
労働党 7 5
その他・無所属・空席 36 9
合計 160 59(1議席空席)

(2024年3月時点)

4 政府

  • 共和党(FF)・統一アイルランド党(FG)・緑の党の三党連立政権。
  • (1)首相 サイモン・ハリス
  • (2)副首相、外相兼国防相 ミホル・マーティン

5 内政

 2020年2月総選挙において、それまで野党第一党だった共和党が第一党となり、躍進したシン・フェイン党が僅差で第二党、それまで与党であった統一アイルランド党は第三党となった。2020年6月、4か月半に及ぶ連立政権成立に向けた調整の結果、共和党、統一アイルランド党及び緑の党の三党連立政権が発足。首相は共和党と統一アイルランド党が順に務めることとなり、マーティン共和党党首が2022年12月16日まで首相を務め、同年12月17日にヴァラッカー統一アイルランド党党首が首相に就任。2024年3月20日、ヴァラッカー首相は党首の即日退任と首相を辞任する意向を突如発表。同年4月9日、統一アイルランド党新党首のハリス前継続/高等教育・研究・イノベーション・科学相が、アイルランド史上最年少の首相に就任。次回総選挙は2025年3月22日までに実施予定。

外交

1 外交方針

  • (1)アイルランドは、従来、EUとの関係、多国間外交、歴史的なつながりの深い英国や米国との関係を重視した外交を展開。また、近時、日本を始めとしてアジア・太平洋地域との関係強化に力を入れている。2020年6月に発足したマーティン連立政権の政策プログラムは、前政権と同様、対EU関係と多国間外交を重点分野に掲げていた。2022年12月に首相輪番制により首相に就任したヴァラッカー前首相も前政権の外交方針を引き継いだ。
  • (2)アイルランドは、英国との歴史的・経済的つながりの強さ及び英国とEU諸国とのほぼ唯一の陸上国境を有することから、英国のEU離脱(Brexit)の影響を最も受ける国とされる。アイルランドと陸続きである北アイルランド(英国に属する)との間で自由な物流を確保するため、英国とEUとの間では北アイルランド議定書が発効しているが、2023年2月にEUと英国の間で「ウィンザー枠組み」が合意されるなど、その円滑な履行に向けた努力が続けられている。
  • (3)アイルランドの国際的な関与や影響力の拡大を目標に、2018年、「グローバル・アイルランド」戦略を掲げ、幅広い地域との外交関係の強化を推進中。同戦略の下、2020年1月に発表された「2025年までのアジア太平洋地域戦略」で日本は重点国の一つとされ、2025年にアイルランド・ハウス東京が開設予定。2023年10月、「アジア太平洋地域におけるグローバル・アイルランド戦略」の最新版を発表。
  • (4)国連外交では、2022年末まで、国連安全保障理事会非常任理事国を務めた。国連平和維持活動(PKO)には、1958年以降途切れることなく計7万人を派遣しており、国連の欧州その他のグループ(WEOG)の中でPKO参加者数の人口比が最も大きい。2023年9月時点で、国連レバノン暫定隊(UNIFIL)を含むミッションに約540名を派遣中。なお、軍事的中立政策を掲げ、北大西洋条約機構(NATO)には非加盟(NATO平和のためのパートナーシップ(PfP)には1999年から参加)。2023年11月、NATOと新たな協力文書(国別適合パートナーシップ(ITPP))に合意した。

2 軍事

  • (1)国防費 約12億300万ユーロ(2024年度予算)
  • (2)兵役  志願制
  • (3)兵力  約7,550名(ただし、予備役は含まない。)

(陸軍 6,136名、海軍 725名、空軍 725名:2023年12月現在。アイルランド政府)

経済

1 主要産業

金融、製薬、情報通信、食品・飲料

2 GDP(IMF推計)

5,336億ドル(2022年)

3 一人当たりGDP(IMF推計)

103,311ドル(2023年)

4 経済成長率(IMF)

  2015年 2016年 2017年 2018年 2019年 2020年 2021年 2022年
経済成長率(%) 25.2% 2.0% 8.9% 9.0% 4.9% 5.9% 13.5% 9.4%

5 物価上昇率(IMF)

  2015年 2016年 2017年 2018年 2019年 2020年 2021年 2022年
物価上昇率(年度末%) 0.3% -0.2% 0.5% 0.7% 1.0% -1.1% 5.6% 8.1%

6 失業率(IMF)

  2015年 2016年 2017年 2018年 2019年 2020年 2021年 2022年
失業率(%) 10.0% 8.4% 6.7% 5.8% 5.0% 5.8% 6.3% 4.5%

7 総貿易額(2022年 アイルランド中央統計局)

  • (1)輸出 2,085億ユーロ
  • (2)輸入 1,410億ユーロ

8 主要貿易品目(2021年 アイルランド中央統計局)

  • (1)輸出 化学品(医薬品等)、機械・輸送機器(航空機を含む。)
  • (2)輸入 機械・輸送機器(航空機を含む。)、化学品(医薬品等)

9 主要貿易相手国(2021年 アイルランド中央統計局)

  • (1)輸出 米国、ドイツ、英国
  • (2)輸入 英国、米国、中国

10 通貨

ユーロ

11 経済概況

  • (1)1990年代半ばから高成長(「ケルトの虎」経済)が続いたが、1999年のユーロ導入が誘発した不動産バブルが、2008年のリーマン・ショックを機に崩壊し、経済危機に陥った。
  • (2)経済危機下の政府は、2010年末にEU/IMF財政支援プログラムを受け入れ、増税・社会福祉費削減等の財政改革を敢行した。また、バブルの影響が軽微であった外資系企業が、アイルランド経済の回復に大きく寄与し、2013年12月に同支援プログラムからの脱却を果たした。
  • (3)2014年から4年続けてEU一の経済成長率を達成した。コロナ禍においても好調を維持した製薬及びICT分野が経済をけん引し、2020年はEU圏で唯一のプラス成長、2021年は先進国トップの経済成長を果たした。他方、アイルランドは英国と米国への貿易依存度が高いことから、英国・EU間の関係や米国経済政策の動向を注視するとともに、貿易の多角化を進めている。

二国間関係

1 全般

 日本とアイルランドは、1957年の外交関係樹立以前からの長い友好の歴史を有し、普遍的価値を共有する重要なパートナーである。2013年には両国首脳の相互訪問が行われた。2017年には、外交関係樹立60周年の機会を捉えてハイレベルの相互訪問や多数の行事が行われた。2022年にはマーティン首相が訪日した。グローバルな課題への対応、経済関係、人的つながりなどの幅広い面での協力の推進を目指している。

2 政治関係

(1)首脳の相互訪問(2013年)

 2013年6月、安倍総理大臣が日本の現職総理として初めてアイルランドを訪問。同年12月にはケニー首相が訪日。日・アイルランド首脳会談において、両国関係の強化・発展に向けた共同宣言「イノベーションと成長のためのパートナーシップ」が発表された。

(2)外交関係樹立60周年(2017年)

 外交関係樹立60周年に当たる2017年には、ハイレベルの相互訪問(下記「要人往来」参照)が頻繁に行われるとともに、両国において多数の祝賀行事や文化行事が開催された。同年中、両国外相の相互訪問を始めとして、ドナフー公共支出・企業・イノベーション相、フィッツジェラルド副首相兼ビジネス・企業・イノベーション相、クリード農業・食糧・海洋相が訪日し、ハイレベルでの交流が行われた。2018年1月には、中根副大臣が60周年クロージング式典のためアイルランドを訪問した。

(3)マーティン首相の訪日(2022年)

 外交関係樹立65周年に当たる2022年には、マーティン首相が訪日した。岸田総理は、同首相と首脳会談及びワーキングランチを実施し、両首脳は日アイルランド共同声明「共通の野心によるパートナーシップの前進」を発出した。同共同声明は、グローバルな課題への対応、経済関係、人的つながりなどの幅広い面での協力の推進を掲げている。

3 経済関係

(1)貿易額・主要貿易品目(2023年 財務省貿易統計)(注:サービス貿易を除く。)

 日本にとってアイルランドはEU加盟国中、第9位の輸出相手、第4位の輸入相手であり、日本の輸入超過。アイルランドからは主に医療用品・化学工業用品、光学・精密機器(コンタクトレンズ等)を輸入。日本からは機械、車両・輸送機器、医療用品・化学工業用品等を輸出。

対アイルランド貿易額(単位:億円)
日本からアイルランドへ アイルランドから日本へ 輸出入の差異
2016年 826 6,904 -6,078
2017年 920 5,521 -4,601
2018年 1,188 7,607 -6,420
2019年 991 7,482 -6,492
2020年 951 7,031 -6,080
2021年 1,109 7,472 -6,349
2022年 3,269 8,638 -5,370
2023年 2,462 8,880 -6,417

(2)投資(日銀国際収支統計)

 日本の対アイルランド投資は、アイルランド政府が企業誘致優先分野として掲げるICT、製薬及び金融分野向けが中心だが、近年は再生可能エネルギー分野の進出も目立つ。アイルランドから日本へは、主にICT、ヘルスケア関連への投資が行われている。

直接投資フローの推移(単位:億円)
日本からアイルランドへ アイルランドから日本へ
2014年 564 -1,603
2015年 -946 -1,495
2016年 2,823 226
2017年 2,323 -1,667
2018年 7,261 393
2019年 62,742 -71
2020年 -38,330 109
2021年 653 -898
2022年 9,025 909

(注)投資フロー:資本撤退や投資回収分はマイナスとして計算されている。

4 在留邦人数

3,036名(2023年10月 外務省在留邦人数調査統計)

5 在日アイルランド人数

1,268名(2023年6月 法務省在留外国人統計)

6 訪問者数

  • (1)日本からアイルランドへ 約22,500人(2019年 アイルランド中央統計局 注:北アイルランドを含む。)
  • (2)アイルランドから日本へ 22,985人(2023年 日本政府観光局)

7 要人往来

(1)往訪(2000年以降)
年月 要人名
2000年10月 紀宮殿下
2002年4月 尾身沖縄及び北方対策担当大臣兼科学技術政策担当大臣
2002年5月 谷口財務副大臣
2003年6月 高円宮妃殿下
2004年3月 原田文部科学副大臣
2005年5月 天皇皇后両陛下
2006年7月 赤松厚生労働副大臣
2007年3月 田中財務副大臣
2007年5月 福井農林水産大臣政務官
2012年9月 山根外務副大臣
2012年12月 榛葉外務副大臣(OSCE関連会合)
2013年5月 下村文部科学大臣
2013年6月 安倍総理大臣
2013年7月 山本衆議院予算委員長(日・アイルランド友好議連会長)ほか
衆議院予算委員会議員団
2017年1月 岸田外務大臣
2017年7月 高円宮妃殿下
2018年1月 中根外務副大臣
2020年2月 宮下内閣府副大臣(金融担当)
2022年11月 吉川外務大臣政務官
(2)来訪(2004年以降)
年月 要人名
2004年6月 バーティ・アハーン首相(日EU 定期首脳協議)
2005年3月 マッカリース大統領(非公式)
2005年3月 トレーシー外務省兼首相府国務相(博覧会賓客)
2006年3月 ローチ環境・遺産・地方自治相
2006年5月 ダーモット・アハーン外相
2006年6月 マーティン企業・貿易・雇用相
2007年3月 オマリー保険・児童相兼外交関係開設50周年アイルランド政府特使
2007年11月~12月 ダーモット・アハーン外相(外務省賓客)
2008年2月 コクラン農業・漁業・食糧相
2008年6月 ライアン通信・エネルギー・天然資源相
2009年1月 カウエン首相(実務訪問賓客)
スミス農業・漁業・食糧相(上記同行)
マクギネス企業・貿易・雇用担当国務相(上記同行)
2010年3月 オキーフ教育・科学相
2010年6月 ライアン通信・エネルギー・天然資源相
2011年10月 ギルモア副首相兼外務・貿易相
2012年10月 ヌーナン財務相(世銀・IMF総会)
シャーロック雇用・企業・イノベーション担当国務相
2012年12月 オダウド環境・コミュニティ・地方自治担当国務相
2013年3月 ヴァラッカー運輸・観光・スポーツ相
2013年7月 ブルートン雇用・企業・イノベーション相
2013年10月 シャーロック研究・イノベーション担当国務相
2013年12月 ケニー首相
コーヴニー農業・食糧・海洋相
2014年2月 バーク上院議長
2014年3月 フィッツジェラルド青少年・児童相
2015年3月 ハウリン公共支出・改革相
2016年9月 マーフィー国務相(財政・電子政府・公共調達担当)
2016年10月 ハリガン国務相(訓練・技能担当)
2016年11月 オコナー雇用・企業・イノベーション相
2017年2月 フラナガン外務・貿易相
2017年3月 ドナフー公共支出・改革相
2017年9月 フィッツジェラルド副首相兼ビジネス・企業・イノベーション相
2017年11月 クリード農業・食糧・海洋相
2018年3月 マーフィー住宅・計画・地方自治相
2019年3月 マディガン文化・伝統・アイルランド語地域相
2019年6月 クリード農業・食糧・海洋相
2019年8月 ブリーン国務相(貿易・雇用・ビジネス・EU単一市場・データ保護担当)(TICADVII出席)
2019年9月 ダーシー金融サービス担当相
2019年10月 ハンフリーズ企業・ビジネス・イノベーション相
2019年10月 ロス運輸・観光・スポーツ相
2019年10月 オドノバン上院議長(即位礼正殿の儀参列)
2022年3月 バーク国務相(地方政府・計画担当)
2022年7月 マーティン首相
2022年8月~9月 マコナログ農業・食糧・海洋相
2022年9月 ハケット国務相(土地利用・生物多様性担当)(故安倍晋三国葬儀参列)
2023年2月 オファイール下院議長
2023年3月 チェンバーズ国際交通・道路交通・ロジスティクス担当兼郵政担当国務相
2023年5月 ドナフー公共支出・国家開発計画実現・改革相(ユーログループ議長)
2024年3月 オゴーマン児童・平等・障がい・統合・青年相

8 二国間条約・取極

  • 1966年 査証相互免除取極
  • 1974年 租税条約
  • 2007年 ワーキング・ホリデー制度(2019年 発給枠拡大に合意)
  • 2010年 社会保障協定

9 外交使節

  • (1)アイルランド駐箚日本国特命全権大使 丸山則夫
  • (2)本邦駐箚アイルランド特命全権大使 デミアン・コール

10 人物交流

 令和5年度JETプログラムに参加したアイルランド人青年は、112名(2023年7月1日時点)。

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