ハイチ共和国
ハイチ共和国(Republic of Haiti)
基礎データ
一般事情
1 面積
27,750平方キロメートル(北海道の約1/3程度の面積)(世銀)
2 人口
1,158万人(2022年 世銀)
3 首都
ポルトープランス
4 民族
アフリカ系(95%)、その他(5%)
5 言語
フランス語、ハイチ・クレオール語(共に公用語)
6 宗教
キリスト教(カトリック、プロテスタント等)、ブードゥー教等
7 略史
年月 | 略史 |
---|---|
1492年 | コロンブスのイスパニョーラ島「発見」 |
1697年 | イスパニョーラ島の西側がフランス領となる(リスウィク条約)。 |
1795年 | 仏西戦争の結果、全島がフランス領となる。 |
1804年 | フランスから独立 |
1915年~1934年 | 米国による軍事占領 |
1957年~1986年 | F.デュバリエ及びJ.C.デュバリエ父子による独裁 |
1987年 | 民主憲法発布 |
1991年 | 前年12月の大統領選挙の結果、2月にアリスティッド大統領が就任。9月、軍事クーデター。 |
1994年 | 9月、軍が退陣に同意、多国籍軍が展開。10月、アリスティッド大統領帰国。なお、多国籍軍は1995年3月に国連ハイチ・ミッション(UNMIH)に移行し、97年に撤退。 |
1996年2月 | プレヴァル大統領就任 |
2001年2月 | アリスティッド大統領就任(2期目) |
2004年 | 2月、アリスティッド大統領が国外脱出。同月から多国籍軍が展開し、6月に国連ハイチ安定化ミッション(MINUSTAH)に移行。 |
2006年 | 5月、プレヴァル大統領就任(2期目) |
2010年1月 | ハイチ大地震 |
2011年5月 | マルテリー大統領就任 |
2017年2月 | モイーズ大統領就任 |
2017年 | 国連ハイチ安定化ミッション(MINUSTAH)から国連ハイチ司法支援ミッション(MINUJUSTH)に移行。なお、MINUJUSTHは2019年に撤退し、国連ハイチ統合事務所(BINUH)が設立。 |
2021年 | 7月7日、モイーズ大統領暗殺 7月20日 アンリ首相就任 |
2021年 | 8月14日 ハイチ南西部地震 |
政治体制・内政
1 政体
立憲共和制
2 元首
大統領(任期5年)。ジョヴネル・モイーズ大統領が2021年7月に暗殺され、空席。
3 議会
二院制(上院30議席、下院119議席)。(注:2019年以降、議会選挙が実施できておらず、2020年1月に下院議員全員、上院議員20名が任期切れとなり、また、2023年1月に残る上院議員10名も任期切れとなった。)
4 政府
- (1)首相名
- アリエル・アンリ
- (2)外相名
- ジャン・ビクトール・ジェネウス
5 内政
- (1)イスパニョーラ島は1492年にコロンブスに「発見」されてスペインの植民地となるが、1697年のリスウィク条約により同島の西部は仏領となった。1795年の仏西戦争により全島が仏領となり、1804年に中南米最初の独立国としてハイチが独立。なお、イスパニョーラ島の東部は1814年に分離してスペインに帰属し、1822年から44年までのハイチによる軍事占領を経て、ドミニカ共和国として独立。
- (2)仏からの独立以来、ハイチでは独裁、政変、軍部の政治介入など不安定な政情が続き、対外債務の問題を抱える。1915年から1933年にかけて米国による軍事占領を受けており、また、1957年から1986年にかけてデュバリエ父子の独裁が続いた。
- (3)その後、軍事政権下ながら1987年に民主憲法が発布されるが、軍部の政治介入が続く。1990年12月の民主的な選挙の結果、翌91年2月にアリスティッド大統領が就任するが、同年9月の軍事クーデターにより同大統領は国外退避。国連による制裁、多国籍軍の派遣の決定、カーター米元大統領の仲介を経て、軍が退陣し、1994年10月にアリスティッド大統領の復帰が実現した。
- (4)1995年12月の大統領選挙の結果、1996年2月にプレヴァル大統領が就任し、民主的な政権交代替が実現する。2000年の大統領選挙の結果、2001年2月にアリスティッド大統領が就任するが(2期目)、反対派・野党はこれを受け入れず、政治情勢は混迷する。2004年2月、反対派の活動が先鋭化する中、アリスティッド大統領は国外に脱出した。アレクサンドル暫定大統領(前最高裁長官)の要請を受けて国連安保理決議により国連多国籍軍が展開し、同多国籍軍は同年6月に国連ハイチ安定化ミッション(MINUSTAH)に移行。
- (5)2006年には一連の選挙(大統領選挙、国会議員選挙、地方選挙)が実施され、プレヴァル大統領が就任する(2期目)。同大統領の下でアレクシー首相が就任するが、上院での内閣不信任案可決により、2008年にピエール=ルイ首相、さらに2009年にベルリーヴ首相に交替。
- (6)2010年1月12日(日本時間1月13日)、首都ポルトープランス近郊でマグニチュード7.0の地震発生。ハイチ政府の発表によると死者30万人以上の被害。国連はMINUSTAHの増員を決定。同年3月にはニューヨークでハイチ支援国会合が開催された。
- (7)2010年11月と2011年3月(決選投票)の大統領選挙の結果、5月にマルテリー大統領が就任。同大統領が指名した首相候補が議会に2度にわたり否決されるという政治空白を経て10月にコニーユ首相が就任したが、2012年5月にラモット首相、2015年1月にポール首相に交替している。
- (8)2015年10月大統領選挙(第1回)は2016年11月に再実施されることとなり、再選挙の結果を受けて、2017年2月にモイーズ大統領が就任。モイーズ大統領の下、3月にラフォンタン首相に就任するが、2018年7月に石油関連製品の値上げに反対する暴動を受けて辞任。9月にセアン首相が就任するが、2019年3月に不信任決議により辞任。その後、1年にわたり首相が空席となる。
- (9)2019年に予定されていた選挙が実施できなかったことから、2020年1月、下院議員全員と上院議員20名が任期切れで失職。
- (10)2020年3月、ジュトゥ首相が就任するが、2021年4月に辞任。ジョゼフ外相が首相を兼任。7月7日、モイーズ大統領が私邸にて武装グループに襲撃されて殺害される。7月5日にモイーズ大統領から首相に指名されていたアリエル・アンリ氏が7月20日に首相に就任した。
- (11)2021年8月14日、ハイチ南西部でマグニチュード7.2の地震発生。死者2,248名を含め被災者は約15,000人にのぼり、また、137,700軒以上の家屋が全半壊。
- (12)2022年9月11日、アンリ首相の石油製品値上げに関する発表を受け、全土で抗議活動・略奪行為等の社会騒擾事案が発生。また、武装集団(ギャング)による石油ターミナル封鎖が約2か月間続き、全土で燃料不足が発生し、社会・経済活動が麻痺状態になる。
- (13)2023年1月、残る上院議員10名も任期切れで失職となり、上・下両院の議席全てが空席となる。
外交・国防
1 対外関係
- (1)主要支援国である米国、カナダ、フランス等との関係を重視。
- (2)1996年2月、キューバと国交を回復。2002年7月、カリブ共同体(CARICOM)に加盟。ラテンアメリカ・カリブ共同体(CELAC)メンバー
- (3)治安維持、選挙監視等の分野で国連及びOASの役割・協力に依存。
- (4)台湾承認国。
2 軍事力
- (1)予算
- 7百万米ドル(2017年)(ミリタリーバランス2018)
- (2)兵力
- 兵力規模500人(陸軍500人)、予備軍50人(ミリタリーバランス2020)
1994年までは兵力規模7,400人(陸軍7,000人、海軍250人、空軍150人)の軍事力を有していたが、1995年のアリスティッド大統領復帰後に軍は解体された。2004年に、国際連合ハイチ安定化ミッション(MINUSTAH)が設立され、治安回復に努めてきた。MINUSTAHは2016年11月までにハイチ国家警察(PNH)に権限を委譲して撤収。ハイチでは、2015年末に小規模の軍隊が復活。
経済(単位 米ドル)
1 主要産業
農林水産業、縫製業、建設業、軽工業、卸売業・小売業、その他サービス業
2 GNI
186億米ドル(2022年 世銀)
3 一人当たりGNI
1,610米ドル(2022年 世銀)
4 GDP成長率
-1.7%(2022年 世銀)
5 インフレ率
27.3%(2022年), 44.5%(2023年推定値)(IMF)
6 失業率
未詳
7 総貿易額
- (1)輸出
- 9.6億米ドル(物品のみ)(2021年 WTO)
- (2)輸入
- 32億3,200万米ドル(物品のみ)(2021年 WTO)
8 主要貿易品目
- (1)輸出
- 衣類、加工品、カカオ、マンゴー、コーヒー
- (2)輸入
- 食料品、加工品、燃料、鉱物原料
9 主要貿易相手国
- (1)輸出
- 未詳
- (2)輸入
- 未詳
10 通貨
グルド
11 為替レート
1米ドル≒137,05グルド(2023年7月)
12 経済概況
- (1)ハイチ経済は、小規模農家を中心とする農業経済であったが、輸出農産物の競争力低下などを背景に農業が衰退し、都市への人口流出が加速。1970年代以降はインフォーマルセクターを中心とした産業がGDPの50%超を占めている。安価な労働力を背景に縫製産業の発展が一部で見られるが、政情不安、自然災害及び武装集団(ギャング)の活動活発化に伴う社会騒擾の頻発等により経済活動が妨げられ、厳しい経済情勢が続いている。
- (2)2008年9月、同国付近を連続通過したハリケーンにより、死者約800名を含む被災者が約80万人にのぼったほか、同国GDPの約15%に相当する損失を被った。
- (3)2010年1月、耐震性のないコンクリート造りの家屋に集住する首都近郊で、大規模な地震が発生し、死者約31万人を含め被災者は約370万人(ハイチ政府発表)にのぼり、同国GDPの約120%に相当する約78億ドルの損失を被った。
- (4)2016年10月、ハリケーン・マシューにより、ハイチ経済は打撃を受け、GDPの約5分の1に相当する約20億ドルの損失を被った。農業セクターにおいては5億8千万ドル相当の被害を受け、同国の収穫物の90%が被害を受けた。
- (5)2021年8月、南西部地域においてマグニチュード7.2の地震が発生し、死者2,248名を含め被災者は約15,000人にのぼり、また、137,700軒以上の家屋が全半壊し、16億ドルの経済的損失を被った。
- (6)2019年以降は4年連続のマイナス成長を記録。2022年10月以降はインフレ率が45%以上を記録している。
経済協力(単位 億円)
1 日本の援助実績
- (1)有償資金協力(2020年度まで、交換公文ベース)なし
- (2)無償資金協力(2020年度まで)591.04億円
- (3)技術協力実績(2020年度まで、JICA経費実績ベース)43.14億円
- (4)2010年ハイチ大地震以降の我が国の支援(PDF)
- (5)2016年10月のハリケーン・マシューにより、死者数は500名以上に上るなど甚大な被害を受けたのに対し、日本政府は、緊急援助物資や食糧を供与した他、国連児童基金(UNICEF)、国連世界食糧計画(WFP)、国際赤十字・赤新月社連盟(IFRC)及び国連開発計画(UNDP)を通じて、3百万米ドルの緊急無償資金協力を実施。
- (6)蔓延するハイチのコレラ被害に対し、2018年3月日本政府は、国際連合の国連マルチパートナー信託基金(ハイチのコレラ対策)に約101万ドルを拠出。
- (7)2021年8月に発生した南西部地震に対しては、国連世界食糧計画(WFP)、国際移住機関(IOM)、国連児童基金(UNICEF)及び国際赤十字・赤新月社連盟(IFRC)を通じて、3.25百万ドルの緊急無償資金協力を実施。
- (8)また、2022年12月には、国連開発計画(UNDP)を通じて、南西部の保健医療施設再建支援に加え、治安情勢改善に向けた約3百万ドルのハイチ国家警察支援を実施。
- (9)2023年1月には、国連児童基金(UNICEF)、国連世界食糧計画(WFP)、及び国際赤十字赤新月社連盟(IFRC)を通じて、コレラ対策のための300万ドルの緊急無償資金協力を実施。
- (10)2023年2月には、国連世界食糧計画(WFP)を通じた食糧援助を実施。
2 主要援助国(2019年、OECD/DAC)
- (1)米国
- (2)EU
- (3)カナダ
- (4)フランス
- (5)日本
二国間関係
1 政治関係
1956年4月、外交関係再開。相互に大使館を開設。2010年1月のハイチ大地震を受け、2010年2月から2012年12月まで自衛隊施設部隊をハイチPKOに派遣。また、ハイチ大地震以来、2019年3月末までに総額3.2億ドル超の復興・開発支援を実施。
2 経済関係
- (1)対日貿易
-
- (ア)貿易額(2022年 財務省貿易統計)
- 対日輸出 3.54億円
- 対日輸入 1.94億円
- (イ)主要品目
- 対日輸出 衣類
- 対日輸入 自動車、機械類及び輸送用機器
3 在留邦人数
19名(2022年10月現在)
4 在日当該国人数
43名(2022年12月現在)(法務省)
5 要人往来
年月 | 要人名 |
---|---|
1984年8月 | 山下徳夫衆議院議員 |
1994年11月 | 今井澄参議院議員 |
1995年10月 | 黒柳徹子ユニセフ親善大使 |
1996年2月 | 白川勝彦衆議院議員(大統領就任式特派大使) |
1999年5月 | 今井澄参議院議員 |
1999年8月 | 愛知和男衆院議員 |
1999年11月 | 今井澄参議院議員 |
2002年5月 | 谷垣禎一衆議院議員一行(超党派議員団一行6名) |
2006年5月 | 山中燁子外務政務官(大統領就任式特派大使) |
2006年7月 | 山中燁子外務政務官(ポルトープランス支援会合政府代表) |
2007年8月 | 菅義偉総務大臣(総理大臣特使) |
2010年1月 | 藤田幸久参議院議員、首藤信彦衆議院議員 |
2010年2月 | 中谷元衆議院議員、井上信治衆議院議員 |
2010年2月 | 谷合正明参議院議員 |
2010年3月 | 岡田克也外務大臣、長島昭久防衛大臣政務官 |
2010年4月 | 泉健太内閣府政務官 |
2011年1月 | 東祥三内閣府副大臣 |
2011年5月 | 山花郁夫外務大臣政務官(大統領就任式特派大使) |
2011年9月 | 山根隆治外務副大臣 |
2012年4月 | 渡辺周防衛副大臣 |
2013年8月 | 西村康稔内閣府副大臣 |
2017年2月 | 薗浦健太郎外務副大臣(大統領就任式総理特使) |
2019年11月 | 鈴木馨祐外務副大臣 |
年月 | 要人名 |
---|---|
1983年5月 | エスティメ外相 |
1984年5月 | ウェイル企画相 メルセルン蔵相 |
1984年9月 | ラフォンタン風土病対策庁長官 |
1985年3月 | フランベール農業相 ブランシャール企画相 |
1987年3月 | レガラ内務国防相 |
1987年6月 | メナジェ農業相 |
1989年2月 | サンピエール情報調整相(大喪の礼) |
1990年11月 | P.C.ラトルチュ外務・宗務相(即位の礼) |
1991年4月 | レイ経済財政相 ベルナルダン企画対外協力行政相(IDB総会) |
1996年7月 | アリスティッド前大統領(UNDP国際会議) |
1996年9月 | ドルセアン公共事業相 |
1997年5月 | ヴォルテール大統領補佐官 |
1997年9月 | サバラ上院外務委員長 |
1999年11月 | プレヴァル大統領補佐官(大統領夫人) |
2000年11月 | ジェルマン商工相(第1回日・カリコム外相会議) |
2005年1月 | アブラハム外相(神戸防災会議) |
2005年4月 | バザン財務相及びピエール対外協力相(IDB沖縄総会) |
2009年1月 | ベルリーヴ対外協力相(神戸防災会議) |
2009年6月 | アレクシー元首相 |
2010年7月 | コリモン=フェティエール通商・産業相(IDB招聘) |
2010年9月 | ドウラトゥール観光相(第2回日・カリコム外相会議) |
2012年7月 | カジミール外務担当閣外相(世界防災閣僚会議in東北) |
2012年10月 | ジャン=マリ経済・財務相(IMF・世銀東京年次総会) |
2012年12月 | マルテリー大統領(実務訪問賓客) |
2014年11月 | ブリュテュス外相(第4回日・カリコム外相会合) |
2018年2月 | ジュラ・コミュニケーション担当大統領顧問兼大統領広報官 |
2019年10月 | ボシット・エドモン外相(即位の礼) |
6 二国間条約・取極
- 1963年 通商協定(1959年署名)
- 2005年 技術協力協定(2005年署名)