ハイチ共和国

基礎データ

令和5年8月29日
ハイチ共和国国旗

一般事情

1 面積

27,750平方キロメートル(北海道の約1/3程度の面積)(世銀)

2 人口

1,158万人(2022年 世銀)

3 首都

ポルトープランス

4 民族

アフリカ系(95%)、その他(5%)

5 言語

フランス語、ハイチ・クレオール語(共に公用語)

6 宗教

キリスト教(カトリック、プロテスタント等)、ブードゥー教等

7 略史

年月 略史
1492年 コロンブスのイスパニョーラ島「発見」
1697年 イスパニョーラ島の西側がフランス領となる(リスウィク条約)。
1795年 仏西戦争の結果、全島がフランス領となる。
1804年 フランスから独立
1915年~1934年 米国による軍事占領
1957年~1986年 F.デュバリエ及びJ.C.デュバリエ父子による独裁
1987年 民主憲法発布
1991年 前年12月の大統領選挙の結果、2月にアリスティッド大統領が就任。9月、軍事クーデター。
1994年 9月、軍が退陣に同意、多国籍軍が展開。10月、アリスティッド大統領帰国。なお、多国籍軍は1995年3月に国連ハイチ・ミッション(UNMIH)に移行し、97年に撤退。
1996年2月 プレヴァル大統領就任
2001年2月 アリスティッド大統領就任(2期目)
2004年 2月、アリスティッド大統領が国外脱出。同月から多国籍軍が展開し、6月に国連ハイチ安定化ミッション(MINUSTAH)に移行。
2006年 5月、プレヴァル大統領就任(2期目)
2010年1月 ハイチ大地震
2011年5月 マルテリー大統領就任
2017年2月 モイーズ大統領就任
2017年 国連ハイチ安定化ミッション(MINUSTAH)から国連ハイチ司法支援ミッション(MINUJUSTH)に移行。なお、MINUJUSTHは2019年に撤退し、国連ハイチ統合事務所(BINUH)が設立。
2021年 7月7日、モイーズ大統領暗殺
7月20日 アンリ首相就任
2021年 8月14日 ハイチ南西部地震

政治体制・内政

1 政体

立憲共和制

2 元首

大統領(任期5年)。ジョヴネル・モイーズ大統領が2021年7月に暗殺され、空席。

3 議会

二院制(上院30議席、下院119議席)。(注:2019年以降、議会選挙が実施できておらず、2020年1月に下院議員全員、上院議員20名が任期切れとなり、また、2023年1月に残る上院議員10名も任期切れとなった。)

4 政府

(1)首相名
アリエル・アンリ
(2)外相名
ジャン・ビクトール・ジェネウス

5 内政

  • (1)イスパニョーラ島は1492年にコロンブスに「発見」されてスペインの植民地となるが、1697年のリスウィク条約により同島の西部は仏領となった。1795年の仏西戦争により全島が仏領となり、1804年に中南米最初の独立国としてハイチが独立。なお、イスパニョーラ島の東部は1814年に分離してスペインに帰属し、1822年から44年までのハイチによる軍事占領を経て、ドミニカ共和国として独立。
  • (2)仏からの独立以来、ハイチでは独裁、政変、軍部の政治介入など不安定な政情が続き、対外債務の問題を抱える。1915年から1933年にかけて米国による軍事占領を受けており、また、1957年から1986年にかけてデュバリエ父子の独裁が続いた。
  • (3)その後、軍事政権下ながら1987年に民主憲法が発布されるが、軍部の政治介入が続く。1990年12月の民主的な選挙の結果、翌91年2月にアリスティッド大統領が就任するが、同年9月の軍事クーデターにより同大統領は国外退避。国連による制裁、多国籍軍の派遣の決定、カーター米元大統領の仲介を経て、軍が退陣し、1994年10月にアリスティッド大統領の復帰が実現した。
  • (4)1995年12月の大統領選挙の結果、1996年2月にプレヴァル大統領が就任し、民主的な政権交代替が実現する。2000年の大統領選挙の結果、2001年2月にアリスティッド大統領が就任するが(2期目)、反対派・野党はこれを受け入れず、政治情勢は混迷する。2004年2月、反対派の活動が先鋭化する中、アリスティッド大統領は国外に脱出した。アレクサンドル暫定大統領(前最高裁長官)の要請を受けて国連安保理決議により国連多国籍軍が展開し、同多国籍軍は同年6月に国連ハイチ安定化ミッション(MINUSTAH)に移行。
  • (5)2006年には一連の選挙(大統領選挙、国会議員選挙、地方選挙)が実施され、プレヴァル大統領が就任する(2期目)。同大統領の下でアレクシー首相が就任するが、上院での内閣不信任案可決により、2008年にピエール=ルイ首相、さらに2009年にベルリーヴ首相に交替。
  • (6)2010年1月12日(日本時間1月13日)、首都ポルトープランス近郊でマグニチュード7.0の地震発生。ハイチ政府の発表によると死者30万人以上の被害。国連はMINUSTAHの増員を決定。同年3月にはニューヨークでハイチ支援国会合が開催された。
  • (7)2010年11月と2011年3月(決選投票)の大統領選挙の結果、5月にマルテリー大統領が就任。同大統領が指名した首相候補が議会に2度にわたり否決されるという政治空白を経て10月にコニーユ首相が就任したが、2012年5月にラモット首相、2015年1月にポール首相に交替している。
  • (8)2015年10月大統領選挙(第1回)は2016年11月に再実施されることとなり、再選挙の結果を受けて、2017年2月にモイーズ大統領が就任。モイーズ大統領の下、3月にラフォンタン首相に就任するが、2018年7月に石油関連製品の値上げに反対する暴動を受けて辞任。9月にセアン首相が就任するが、2019年3月に不信任決議により辞任。その後、1年にわたり首相が空席となる。
  • (9)2019年に予定されていた選挙が実施できなかったことから、2020年1月、下院議員全員と上院議員20名が任期切れで失職。
  • (10)2020年3月、ジュトゥ首相が就任するが、2021年4月に辞任。ジョゼフ外相が首相を兼任。7月7日、モイーズ大統領が私邸にて武装グループに襲撃されて殺害される。7月5日にモイーズ大統領から首相に指名されていたアリエル・アンリ氏が7月20日に首相に就任した。
  • (11)2021年8月14日、ハイチ南西部でマグニチュード7.2の地震発生。死者2,248名を含め被災者は約15,000人にのぼり、また、137,700軒以上の家屋が全半壊。
  • (12)2022年9月11日、アンリ首相の石油製品値上げに関する発表を受け、全土で抗議活動・略奪行為等の社会騒擾事案が発生。また、武装集団(ギャング)による石油ターミナル封鎖が約2か月間続き、全土で燃料不足が発生し、社会・経済活動が麻痺状態になる。
  • (13)2023年1月、残る上院議員10名も任期切れで失職となり、上・下両院の議席全てが空席となる。

外交・国防

1 対外関係

  • (1)主要支援国である米国、カナダ、フランス等との関係を重視。
  • (2)1996年2月、キューバと国交を回復。2002年7月、カリブ共同体(CARICOM)に加盟。ラテンアメリカ・カリブ共同体(CELAC)メンバー
  • (3)治安維持、選挙監視等の分野で国連及びOASの役割・協力に依存。
  • (4)台湾承認国。

2 軍事力

(1)予算
7百万米ドル(2017年)(ミリタリーバランス2018)
(2)兵力
兵力規模500人(陸軍500人)、予備軍50人(ミリタリーバランス2020)

 1994年までは兵力規模7,400人(陸軍7,000人、海軍250人、空軍150人)の軍事力を有していたが、1995年のアリスティッド大統領復帰後に軍は解体された。2004年に、国際連合ハイチ安定化ミッション(MINUSTAH)が設立され、治安回復に努めてきた。MINUSTAHは2016年11月までにハイチ国家警察(PNH)に権限を委譲して撤収。ハイチでは、2015年末に小規模の軍隊が復活。

経済(単位 米ドル)

1 主要産業

 農林水産業、縫製業、建設業、軽工業、卸売業・小売業、その他サービス業

2 GNI

186億米ドル(2022年 世銀)

3 一人当たりGNI

1,610米ドル(2022年 世銀)

4 GDP成長率

-1.7%(2022年 世銀)

5 インフレ率

27.3%(2022年), 44.5%(2023年推定値)(IMF)

6 失業率

未詳

7 総貿易額

(1)輸出
9.6億米ドル(物品のみ)(2021年 WTO)
(2)輸入
32億3,200万米ドル(物品のみ)(2021年 WTO)

8 主要貿易品目

(1)輸出
衣類、加工品、カカオ、マンゴー、コーヒー
(2)輸入
食料品、加工品、燃料、鉱物原料

9 主要貿易相手国

(1)輸出
未詳
(2)輸入
未詳

10 通貨

グルド

11 為替レート

1米ドル≒137,05グルド(2023年7月)

12 経済概況

  • (1)ハイチ経済は、小規模農家を中心とする農業経済であったが、輸出農産物の競争力低下などを背景に農業が衰退し、都市への人口流出が加速。1970年代以降はインフォーマルセクターを中心とした産業がGDPの50%超を占めている。安価な労働力を背景に縫製産業の発展が一部で見られるが、政情不安、自然災害及び武装集団(ギャング)の活動活発化に伴う社会騒擾の頻発等により経済活動が妨げられ、厳しい経済情勢が続いている。
  • (2)2008年9月、同国付近を連続通過したハリケーンにより、死者約800名を含む被災者が約80万人にのぼったほか、同国GDPの約15%に相当する損失を被った。
  • (3)2010年1月、耐震性のないコンクリート造りの家屋に集住する首都近郊で、大規模な地震が発生し、死者約31万人を含め被災者は約370万人(ハイチ政府発表)にのぼり、同国GDPの約120%に相当する約78億ドルの損失を被った。
  • (4)2016年10月、ハリケーン・マシューにより、ハイチ経済は打撃を受け、GDPの約5分の1に相当する約20億ドルの損失を被った。農業セクターにおいては5億8千万ドル相当の被害を受け、同国の収穫物の90%が被害を受けた。
  • (5)2021年8月、南西部地域においてマグニチュード7.2の地震が発生し、死者2,248名を含め被災者は約15,000人にのぼり、また、137,700軒以上の家屋が全半壊し、16億ドルの経済的損失を被った。
  • (6)2019年以降は4年連続のマイナス成長を記録。2022年10月以降はインフレ率が45%以上を記録している。

経済協力(単位 億円)

1 日本の援助実績

  • (1)有償資金協力(2020年度まで、交換公文ベース)なし
  • (2)無償資金協力(2020年度まで)591.04億円
  • (3)技術協力実績(2020年度まで、JICA経費実績ベース)43.14億円
  • (4)2010年ハイチ大地震以降の我が国の支援(PDF)別ウィンドウで開く
  • (5)2016年10月のハリケーン・マシューにより、死者数は500名以上に上るなど甚大な被害を受けたのに対し、日本政府は、緊急援助物資や食糧を供与した他、国連児童基金(UNICEF)、国連世界食糧計画(WFP)、国際赤十字・赤新月社連盟(IFRC)及び国連開発計画(UNDP)を通じて、3百万米ドルの緊急無償資金協力を実施。
  • (6)蔓延するハイチのコレラ被害に対し、2018年3月日本政府は、国際連合の国連マルチパートナー信託基金(ハイチのコレラ対策)に約101万ドルを拠出。
  • (7)2021年8月に発生した南西部地震に対しては、国連世界食糧計画(WFP)、国際移住機関(IOM)、国連児童基金(UNICEF)及び国際赤十字・赤新月社連盟(IFRC)を通じて、3.25百万ドルの緊急無償資金協力を実施。
  • (8)また、2022年12月には、国連開発計画(UNDP)を通じて、南西部の保健医療施設再建支援に加え、治安情勢改善に向けた約3百万ドルのハイチ国家警察支援を実施。
  • (9)2023年1月には、国連児童基金(UNICEF)、国連世界食糧計画(WFP)、及び国際赤十字赤新月社連盟(IFRC)を通じて、コレラ対策のための300万ドルの緊急無償資金協力を実施。
  • (10)2023年2月には、国連世界食糧計画(WFP)を通じた食糧援助を実施。

2 主要援助国(2019年、OECD/DAC)

  • (1)米国
  • (2)EU
  • (3)カナダ
  • (4)フランス
  • (5)日本

二国間関係

1 政治関係

 1956年4月、外交関係再開。相互に大使館を開設。2010年1月のハイチ大地震を受け、2010年2月から2012年12月まで自衛隊施設部隊をハイチPKOに派遣。また、ハイチ大地震以来、2019年3月末までに総額3.2億ドル超の復興・開発支援を実施。

2 経済関係

(1)対日貿易
(ア)貿易額(2022年 財務省貿易統計)
対日輸出 3.54億円
対日輸入 1.94億円
(イ)主要品目
対日輸出 衣類
対日輸入 自動車、機械類及び輸送用機器

3 在留邦人数

19名(2022年10月現在)

4 在日当該国人数

43名(2022年12月現在)(法務省)

5 要人往来

(1)往訪(1984年以降)
年月 要人名
1984年8月 山下徳夫衆議院議員
1994年11月 今井澄参議院議員
1995年10月 黒柳徹子ユニセフ親善大使
1996年2月 白川勝彦衆議院議員(大統領就任式特派大使)
1999年5月 今井澄参議院議員
1999年8月 愛知和男衆院議員
1999年11月 今井澄参議院議員
2002年5月 谷垣禎一衆議院議員一行(超党派議員団一行6名)
2006年5月 山中燁子外務政務官(大統領就任式特派大使)
2006年7月 山中燁子外務政務官(ポルトープランス支援会合政府代表)
2007年8月 菅義偉総務大臣(総理大臣特使)
2010年1月 藤田幸久参議院議員、首藤信彦衆議院議員
2010年2月 中谷元衆議院議員、井上信治衆議院議員
2010年2月 谷合正明参議院議員
2010年3月 岡田克也外務大臣、長島昭久防衛大臣政務官
2010年4月 泉健太内閣府政務官
2011年1月 東祥三内閣府副大臣
2011年5月 山花郁夫外務大臣政務官(大統領就任式特派大使)
2011年9月 山根隆治外務副大臣
2012年4月 渡辺周防衛副大臣
2013年8月 西村康稔内閣府副大臣
2017年2月 薗浦健太郎外務副大臣(大統領就任式総理特使)
2019年11月 鈴木馨祐外務副大臣
(2)来訪(1983年以降)
年月 要人名
1983年5月 エスティメ外相
1984年5月 ウェイル企画相
メルセルン蔵相
1984年9月 ラフォンタン風土病対策庁長官
1985年3月 フランベール農業相
ブランシャール企画相
1987年3月 レガラ内務国防相
1987年6月 メナジェ農業相
1989年2月 サンピエール情報調整相(大喪の礼)
1990年11月 P.C.ラトルチュ外務・宗務相(即位の礼)
1991年4月 レイ経済財政相
ベルナルダン企画対外協力行政相(IDB総会)
1996年7月 アリスティッド前大統領(UNDP国際会議)
1996年9月 ドルセアン公共事業相
1997年5月 ヴォルテール大統領補佐官
1997年9月 サバラ上院外務委員長
1999年11月 プレヴァル大統領補佐官(大統領夫人)
2000年11月 ジェルマン商工相(第1回日・カリコム外相会議)
2005年1月 アブラハム外相(神戸防災会議)
2005年4月 バザン財務相及びピエール対外協力相(IDB沖縄総会)
2009年1月 ベルリーヴ対外協力相(神戸防災会議)
2009年6月 アレクシー元首相
2010年7月 コリモン=フェティエール通商・産業相(IDB招聘)
2010年9月 ドウラトゥール観光相(第2回日・カリコム外相会議)
2012年7月 カジミール外務担当閣外相(世界防災閣僚会議in東北)
2012年10月 ジャン=マリ経済・財務相(IMF・世銀東京年次総会)
2012年12月 マルテリー大統領(実務訪問賓客)
2014年11月 ブリュテュス外相(第4回日・カリコム外相会合)
2018年2月 ジュラ・コミュニケーション担当大統領顧問兼大統領広報官
2019年10月 ボシット・エドモン外相(即位の礼)

6 二国間条約・取極

  • 1963年 通商協定(1959年署名)
  • 2005年 技術協力協定(2005年署名)
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