
アジア | 北米 | 中南米 | 欧州(NIS諸国を含む) | 大洋州 | 中東 | アフリカ
EU「サービス指令」(2006/123/EC)の概要
(域内市場におけるサービスに関する指令)
- 本指令は、「リスボン戦略」の重要な政策手段の一つとして、会社設立の自由及びサービス提供の自由についての法的・行政的障害を除去することによって、EU域内のサービス市場自由化を達成することを目的としている。
- 欧州委員会が採択した指令案は、当初、事業所等を設置しないサービス貿易に対して「母国法主義」(注)原則を導入し、他国で生じる行政手続きや経費を削減することを目指していたが、この原則が適用されれば、他の加盟国から安価なサービスが提供され、自国労働者の社会生活水準の切り下げにつながるとして、特に仏での欧州憲法条約に関する国民投票の否決の背景の一つとなったとも言われ、結局、欧州議会第一読でこの原則は削除され、代わって、加盟国はサービス提供者の「サービスを提供する権利」を尊重し、自国におけるサービス活動への自由なアクセス及びその実施を保証しなければならないとの規定が盛り込まれた(第16条)。
- 本指令を巡って議論が紛糾した背景には、各加盟国ともサービス市場自由化には賛成であるが、サービス市場開放に積極的な英、蘭や東欧諸国と、雇用の安定を重視する仏、独等で立場の違いがあったためとも言われている。
- 指令は2006年12月に欧州理事会で採択され、同年12月28日に発効した。加盟国は、発効後3年以内に国内法化しなければならない。
(注)「母国法主義」(country of origin principle)とは、母国の法令等によって許可されている場合には、他の加盟国の許可を得ることなく、その国でサービスを提供し得るとの原則。本指令案では、他のEU加盟国内に事業所等を設立せず、労働者が移動してサービスを提供する場合ー多くの適用除外範囲が設定されているがーに母国法主義が基本的に適用される。例えば、経営コンサルタントが、事務所設置国(母国)より他の加盟国に出張して業務を行い、終了すればまた母国に戻るケースがこれに当たる。