欧州連合(EU)
ユーロ圏の金融政策と欧州中央銀行制度
1 金融政策
単一通貨ユーロが誕生して以降、ユーロ圏の金融政策は、欧州中央銀行(ECB)及び各国中央銀行からなる欧州中央銀行制度(ESCB)を通じて単一の金融政策として行われる。各国中央銀行は、定められた金融政策方針に従って、各国内で金融政策を実施することを任務としている。
(1)金融政策の運営方針
物価の安定が経済成長や雇用の増大に資するとの考えの下、金融政策の第一義的な目的は、物価の安定を維持することである。ただし、欧州中央銀行(ECB)は物価安定の目的に反しない限りにおいて、欧州共同体の全般的な経済政策(経済成長や雇用の増大等)を支持することになっている。ECBでは、現在、中長期的に2%の物価上昇を目指すとする物価安定目標を掲げている。
(2)金融政策の実施
金融政策は、ECB内に設置された政策理事会の策定した指針のもとに、役員会が具体的な指示を作成して各国の中央銀行に送るという流れで実施される。各国中央銀行は、この指示に基づいて、金融政策の中心となる公開市場操作等を実施する。
(3)ECBによる金融政策の現状(PDF)
2 欧州中央銀行制度(ESCB)
(1)ESCBの概要
ア 構成(欧州連合条約第129条第1項、第282条第1項及び第2項)
ESCBは、ECB及びEU加盟国中央銀行から構成され、ECBの意思決定機関である政策理事会及び役員会により運営される。
イ 政策目的(欧州連合条約第127条第1項、第282条第2項)
ESCBの第一義的な政策目的は物価安定の維持。ただし、物価安定の目的に反しない限りにおいて、欧州共同体の全般的な経済政策(経済成長や雇用の増大等)を支持する。
ウ 基本的任務(欧州連合条約第127条第2項)
- 金融政策の決定と実施
- 加盟国の公的外貨準備の保有と運用
- 外国為替操作の実施
- 決済制度の円滑な運営の促進
エ ユーロ非参加国中央銀行の位置付けとユーロシステム
ユーロ非参加国中央銀行は、特別の地位を有するESCBのメンバーであり、ユーロ非参加国独自の金融政策の実施が許容されているとともに、ユーロ圏の単一金融政策の決定及び実施には加わらない。また、ユーロ非参加国中央銀行を除いたECB及びユーロ圏中央銀行を合わせて、ユーロシステムと呼ばれており、ユーロ圏の単一金融政策を決定し、実施する。
(2)欧州中央銀行(ECB)の機関
ア 役員会(Executive Board)
役員会は、総裁、副総裁、専務理事(4名)から構成(合計6名)。政策理事会の決定・指示に沿って金融政策を実施し、ユーロ圏の中央銀行に対し必要な指示を与える。
役職 | 氏名 | (任期満了年月) | (前職) |
---|---|---|---|
総裁 | クリスティーヌ・ラガルド | 2027年10月 | 国際通貨基金(IMF)専務理事 |
副総裁 | ルイス・デ・ギンドス | 2026年5月 | スペイン経済・産業・競争力大臣 |
専務理事 | フランク・エルダーソン | 2028年12月 | オランダ中央銀行理事 |
フィリップ・レーン | 2027年5月 | アイルランド中央銀行総裁 | |
ファビオ・パネッタ | 2027年12月 | イタリア中央銀行上級副総裁 | |
イザベル・シュナーベル | 2027年12月 | ボン大学教授(金融経済学) |
イ 政策理事会(Governing Council)
政策理事会は、役員会メンバー6名とユーロ圏の中央銀行総裁19名から構成(合計25名)。金融政策を決定する権限を有するECBの最高意思決定機関。
ウ 一般理事会(General Council)
一般理事会は、ECB総裁及び副総裁、ユーロ圏・非ユーロ圏の各国中央銀行総裁(28名)から構成(合計30名)。ユーロ圏と非ユーロ圏の中央銀行との協力の場。