欧州連合(EU)

概況

令和7年6月9日

一般事情

1 欧州連合(EU:European Union)の概要

 欧州連合条約に基づく、経済通貨同盟、共通外交・安全保障政策、警察・刑事司法協力等のより幅広い分野での協力を進めている政治・経済統合体。

 経済・通貨同盟については、国家主権の一部を委譲。域外に対する統一的な通商政策を実施する世界最大の単一市場を形成している。その他の分野についても、加盟国の権限を前提としつつ、最大限EUとしての共通の立場を取ることで、政治的にも「一つの声」で発言している。

2 加盟国(27か国)

 アイルランド イタリア エストニア オーストリア オランダ キプロス ギリシャ クロアチア スウェーデン スペイン スロバキア スロベニア チェコ デンマーク ドイツ(加盟時西ドイツ) ハンガリー フィンランド フランス ブルガリア ベルギー ポーランド ポルトガル マルタ ラトビア リトアニア ルーマニア ルクセンブルク(英国は2020年1月31日を以てEUを離脱)

3 総面積

412万平方キロメートル(出典: Eurostat)(日本の約11倍)

4 総人口(2024年)

4億4, 931万人(出典: Eurostat)(日本の約3.6倍)

5 略史

年月 略史
1952年 欧州石炭鉄鋼共同体(ECSC)設立(パリ条約発効)。原加盟国:フランス、ドイツ、イタリア、オランダ、ベルギー、ルクセンブルク
1958年 欧州経済共同体(EEC)、欧州原子力共同体(EURATOM)設立(ローマ条約発効)
1967年 3共同体の主要機関統合(総称 欧州共同体(EC))
1968年 関税同盟完成
1973年 英国、アイルランド、デンマーク加盟
1979年 欧州議会初の直接選挙実施、欧州通貨制度(EMS)導入
1981年 ギリシャ加盟
1986年 スペイン、ポルトガル加盟
1987年 「単一欧州議定書」発効
1992年末 域内市場統合完成
1993年11月 マーストリヒト条約発効(欧州連合(EU)発足)
1994年1月 欧州経済領域(EEA)発足
1995年1月 オーストリア、スウェーデン、フィンランド加盟
1999年1月 経済通貨同盟第3段階への移行(ユーロの導入)
1999年5月 アムステルダム条約発効
2002年1月 ユーロ紙幣・硬貨の流通開始
2004年5月 中・東欧等10か国が加盟
2007年1月 ブルガリア、ルーマニア加盟
2009年12月 リスボン条約発効
2013年7月 クロアチア加盟
2020年1月 英国、EUを離脱

経済

1 GDP(出典:IMF World Economic Outlook Database, Oct. 2024

19兆4,031億ドル(2024年)

2 一人当たりGDP(出典:World Bank, World Development Indicators)

41,422ドル(2023年)

3 主要経済指標

  2025年
見通し
2026年
見通し
実質GDP成長率 1.5% 1.8%
インフレ率 2.4% 2.0%

(出典:欧州委員会2024年秋の経済見通し)

  2025年
見通し
2026年
見通し
失業率 5.9% 5.9%
財政収支(対GDP比) -3.0% -2.9%

(出典:欧州委員会2024年秋の経済見通し)

4 貿易総額(EU27か国)(出典:Eurostat

(1)輸出
2兆5,841億ユーロ(2024年、EU域外)
(2)輸入
2兆4,371億ユーロ(2024年、EU域外)

5 主要貿易相手国(2024年)(出典:Eurostat

(1)輸出
米国(20.6%)、英国(13.2%)、中国(8.3%)、スイス(7.5%)、トルコ(4.3%)、日本(2.6%)、ノルウェー(2.4%)
(2)輸入
中国(21.3%)、米国(13.7%)、英国(6.7%)、スイス(5.6%)、ノルウェー(4.0%)、トルコ(4.0%)、インド(2.9%)

6 為替レート(出典:欧州中央銀行)

 1ユーロ=163.77円(2023年12月27日~2024年12月23日の平均)

7 財政

予算額(2021~2027年)約2,018億ユーロ

8 経済概況

 欧州経済は、停滞が続いた後、緩やかに成長を回復。賃金の購買力が徐々に回復し、金利が低下するにつれ、消費は更に拡大の見込み。全体として、EU域内需要が引き続き経済成長を牽引する見込み。2022年末よりインフレ率の低下が継続し、サービス部門における価格圧力は依然として高いが、賃金上昇の減速や生産性の向上等により、2025年初頭から緩やかになると見込まれる。

 (2024年11月、欧州委員会の経済見通しを基に作成)

日本・EU関係

1 外交関係

1959年
駐ベルギー大使を3共同体日本政府代表に任命。
1974年
駐日欧州共同体委員会代表部設置(2009年に駐日欧州連合代表部に名称変更)。
1975年
欧州共同体日本政府代表部開設(1996年に欧州連合日本政府代表部に名称変更)。

2 政治関係

  1991年7月の「日本・EC共同宣言」(ハーグ)に基づき多方面にわたる密接な協力関係を構築。1991年以来「日EU定期首脳協議」(EU側より議長国首脳及び欧州委員会委員長が出席。リスボン条約発効(2009年12月)以降は、EU側は欧州理事会議長及び欧州委員会委員長が出席)を原則年1回の頻度で開催(前回2023年7月、ブリュッセル)。

3 経済関係

(1)対日貿易(出典:財務省・貿易統計)

(ア)貿易額(2024年)
日本の輸出 9兆9,665億円
日本の輸入 11兆8,690億円
(イ)対日貿易主要品目(2023年)
日本の輸出 自動車、科学光学機器、自動車の部分品、有機化合物、原動機
日本の輸入 医薬品、自動車、科学光学機器、バッグ類、有機化合物

(2)直接投資(出典:財務省)

(ア)フロー(2024年)
日本の対外直接投資(日本からEU) 3兆5,683億円
日本の対内直接投資(EUから日本) 2,349億円
(イ)ストック(2023年末時点)
日本の対外直接投資(日本からEU) 46兆1,464億円
日本の対内直接投資(EUから日本) 5兆6,190億円

4 文化関係

 日EUの文脈でのセミナー等の知的交流のほか市民交流・文化交流の促進を目的とした様々な交流事業が実施されている。2015年6月、俳句を通じた交流強化のため、ファン=ロンパイ元欧州理事会議長に「日EU俳句交流大使」を委嘱した(委嘱期間2年間、2023年6月に更新)。

5 要人往来

(1)往訪(1991年以降)
年月 要人名
1991年7月 海部総理大臣(第1回日EC定期首脳協議、ハーグ)
1992年7月 宮沢総理大臣(第2回日EC定期首脳協議、ロンドン)
1993年1月 渡辺副総理(欧州委員会訪問)
1994年5月 羽田総理大臣(欧州委員会訪問)
1995年6月 村山総理大臣(第4回日EU定期首脳協議、パリ)
1997年6月 橋本総理大臣(第6回日EU定期首脳協議、ハーグ)
1999年6月 小渕総理大臣(第8回日EU定期首脳協議、ボン)
2000年5月 森総理大臣(プローディ欧州委員会委員長会談、ローマ)
2001年12月 小泉総理大臣(第10回日EU定期首脳協議、ブリュッセル)
2003年5月 小泉総理大臣(12回日EU定期首脳協議、アテネ)
2005年5月 小泉総理大臣(第14回日EU定期首脳協議、ルクセンブルク)
2006年5月 麻生外務大臣(バローゾ欧州委員会委員長表敬、ブリュッセル)
2007年1月 安倍総理大臣(バローゾ欧州委員会委員長会談、ブリュッセル)
2007年6月 安倍総理大臣(第16回日EU定期首脳協議、ベルリン)
2009年5月 麻生総理大臣(第18回日EU定期首脳協議、プラハ)
2011年5月 松本外務大臣(バローゾ欧州委員会委員長表敬、ブリュッセル)、
菅総理大臣(第20回日EU定期首脳協議、ブリュッセル)
2014年5月 安倍総理大臣(第22回日EU定期首脳協議、ブリュッセル)
2014年6月 安倍総理大臣(日EU首脳会談、ブリュッセル)
2015年1月 岸田外務大臣(日EU外相会談、ブリュッセル)
2016年5月 安倍総理大臣(日EU首脳会談、ブリュッセル)
2017年3月 安倍総理大臣(日EU首脳会談、ブリュッセル)
2017年7月 安倍総理大臣、岸田外務大臣(第24回日EU定期首脳協議、ブリュッセル)
2018年4月 河野外務大臣(日EU外相会談、ブリュッセル)
2018年10月 安倍総理大臣(日EU首脳会談、ブリュッセル)
2019年4月 安倍総理大臣(第26回日EU定期首脳協議、ブリュッセル)
2019年9月 安倍総理大臣(欧州連結性フォーラム、ブリュッセル)
2019年12月 茂木外務大臣(日EU外相ワーキングランチ、マドリード)
2021年5月 茂木外務大臣(日EU外相会談、ロンドン)
2022年2月 林外務大臣(日EU外相会談、ミュンヘン)
2022年3月 岸田総理大臣(フォン・デア・ライエン欧州委員会委員長との会談、ブリュッセル)、
岸田総理大臣(ミシェル欧州理事会議長との会談、ブリュッセル)
2022年4月 林外務大臣(日EU外相ワーキングランチ、マドリード)
2022年6月 岸田総理大臣(ミシェル欧州理事会議長との会談、エルマウ)
岸田総理大臣(フォン・デア・ライエン欧州委員会委員長との会談、エルマウ)
2023年4月 林外務大臣(日EU外相ワーキングランチ、日EU・EPA合同委員会第4回会合、ブリュッセル)
2023年5月 林外務大臣(スウェーデン・EU共催「インド太平洋閣僚会合」、ストックホルム)
2023年7月 岸田総理大臣(第29回日EU定期首脳協議、ブリュッセル)
2023年12月 岸田総理大臣(ミシェル欧州理事会議長との懇談、フォン・デア・ライエン欧州委員会委員長との会談、ドバイ)
2024年5月 上川外務大臣(日EUハイレベル経済対話、パリ)
2024年6月 岸田総理大臣(フォン・デア・ライエン欧州委員会委員長との懇談、プーリア)
2024年7月 上川外務大臣(G7貿易大臣会合、日EU・EPA合同委員会第5回会合、ビラ・サン・ジョバンニ(イタリア))
2024年9月 岸田総理大臣(ミシェル欧州理事会議長との会談、フォン・デア・ライエン欧州委員会委員長とのワーキングランチ、ニューヨーク)
2025年4月 岩屋外務大臣(第2回日・EU外相戦略対話、ブリュッセル)
(2)来訪(1992年以降)
年月 要人名
1993年7月 クリストファーセン欧州委員会副委員長(欧州委員会委員長代行)(第3回日・EC定期首脳協議)
1993年10月 ヴァン・ミールト欧州委員会副委員長
1993年11月 ブリタン欧州委員会副委員長
1995年6月・9月 ブリタン欧州委員会副委員長
1996年4月・5月 ブリタン欧州委員会副委員長
1996年9-10月 ブルートン・アイルランド首相、サンテール欧州委員会委員長(第5回日EU定期首脳協議)
1996年12月 ヘンシュ欧州議会議長
1997年9月 ブリタン欧州委員会副委員長(ASEM経済閣僚会議)
1998年1月 ブレア英首相、サンテール欧州委員会委員長(第7回日EU定期首脳協議)
1998年10月 ブリタン委員会副委員長他(日・EU閣僚会議)
2000年7月 シラク仏大統領、プローディ欧州委員会委員長(第9回日EU定期首脳協議)
2002年4月 プローディ欧州委員会委員長(公式実務訪問賓客)
2002年7月 ラスムセン・デンマーク首相、プローディ欧州委員会委員長(第11回日EU定期首脳協議)
2004年6月 アハーン・アイルランド首相、プローディ欧州委員会委員長(第13回日EU定期首脳協議)
2006年4月 シュッセル・オーストリア首相、バローゾ欧州委員会委員長(第15回日EU定期首脳協議)
2008年2月 ぺテリング欧州議会議長
2008年4月 ヤンシャ・スロベニア首相、バローゾ欧州委員会委員長、(第17回日EU定期首脳協議)
2008年7月 バローゾ欧州委員会委員長(北海道洞爺湖サミット)
2010年4月 ファン=ロンパイ欧州理事会議長、バローゾ欧州委員会委員長、アシュトン外務・安全保障政策上級代表(第19回日EU定期首脳協議)
2011年11月 アシュトン外務・安全保障政策上級代表
2013年10月 アシュトン外務・安全保障政策上級代表
2013年11月 ファン=ロンパイ欧州理事会議長、バローゾ欧州委員会委員長(第21回日EU定期首脳協議)
2015年5月 トゥスク欧州理事会議長、ユンカー欧州委員会委員長、モゲリーニ外務・安全保障政策上級代表、マルムストローム貿易担当欧州委員(第23回日EU定期首脳協議)
2016年4月 モゲリーニ外務・安全保障政策上級代表(G7広島外相会合)
2016年5月 トゥスク欧州理事会議長、ユンカー欧州委員会委員長(G7伊勢志摩サミット)
2017年6月・7月 マルムストローム貿易担当欧州委員(日EU・EPA交渉)
2018年7月 トゥスク欧州理事会議長、ユンカー欧州委員会委員長(第25回日EU定期首脳協議)
2018年10月 カタイネン欧州委員会副委員長(日EUハイレベル産業・貿易・経済対話)
2019年4月 マルムストローム貿易担当欧州委員(日EU・EPA第1回合同委員会)
2019年6月 トゥスク欧州理事会議長、ユンカー欧州委員会委員長(G20大阪サミット)
2019年10月 モゲリーニ外務・安全保障政策上級代表(即位の礼)
2022年5月 第28回日EU定期首脳協議
2022年9月 ミシェル欧州理事会議長(故安倍晋三国葬儀、岸田総理大臣・ミシェル欧州理事会議長会談)
2023年5月 ミシェル欧州理事会理事長、フォン・デア・ライエン欧州委員会委員長(G7広島サミット)
2023年10月 ドムブロウスキス欧州委員会上級副委員長兼貿易担当欧州委員(G7貿易大臣会合、日EUハイレベル経済対話)
2023年11月 ボレル外務・安全保障政策上級代表(G7外相会合)
2024年11月 ボレル外務・安全保障政策上級代表(第1回日EU外相戦略対話)
(3)テレビ会議
年月 会議名
2020年5月 日EU首脳協議
2021年1月 EU外務理事会(茂木外務大臣)
2021年2月 日EU・EPA合同委員会第2回会合(茂木外務大臣)
2021年5月 第27回日EU定期首脳協議
2022年2月 フランス・EU共催「インド太平洋閣僚会議」(林外務大臣)
2022年3月 日EU・EPA合同委員会第3回会合(林外務大臣)
2022年10月 日EUハイレベル経済対話(林外務大臣)
2023年6月 日EUハイレベル経済対話(林外務大臣)

6 日本・EU間の条約・取極

1974年
欧州共同体委員会の代表部設置・特権免除協定
1989年
欧州原子力共同体との制御核融合協力協定
2002年
相互承認に関する日本国と欧州共同体との間の協定(MRA)
2003年
反競争的行為に係る協力に関する日本国政府と欧州共同体との間の協定
2006年
原子力の平和的利用に関する協力のための日本国政府と欧州原子力共同体との間の協定
2007年
日・欧州原子力共同体核融合エネルギー協定
2008年
税関に係る事項における協力及び相互行政支援に関する日本国政府と欧州共同体との間の協定
2011年
刑事に関する共助に関する日本国と欧州連合との間の協定
2011年
日EC科学技術協力協定
2019年
日EU経済連携協定(EPA)及び戦略的パートナーシップ協定(SPA)
2021年
日・EU航空安全協定
2024年
日EU経済連携協定(EPA)改正議定書

政策

1 経済統合

(1)関税同盟と共通農業政策(CAP)

 経済統合の柱。加盟国間の貿易に対する関税・数量制限を撤廃し、域外に対する共通関税率と共通通商政策を適用。農業分野における関税同盟と共同市場を形成するため、加盟国の農業政策を統一化することを目的として、1962年から共通農業政策(CAP)を導入。直接支払い等を中心とする価格・所得政策(第1の柱)と農村振興政策(第2の柱)により構成されている。これまで、生産高とリンクした直接支払いから、生産要素と切り離し(デカップリング)、過去の受領額に応じた単一直接支払いの導入(2003年)や環境・気候変動課題への対応をより重視した制度への見直し(2013年)などが実施された。

 2023年1月から施行された新CAPでは、より公平で環境に配慮した、実績に基づき、欧州の農業従事者の持続可能な未来を確保し、小規模農業従事者に対象を絞った支援を提供し、EU加盟国が地域の状況に適応した対策を講じるための柔軟性を高めている。

(2)域内市場統合の完成

 域内市場統合白書(1985年)と単一欧州議定書(1987年)に基づき、人・モノ・サービス・資本の移動が自由な単一市場を完成させるため、1992年末までに物理的・技術的・財政的障害の除去を目的とした約280項目の自由化・共通化のためのEU法令を採択。2000年に発出されたリスボン戦略に呼応し、残るサービスの自由移動の障害を除去するためのサービス指令が2006年12月欧州理事会で採択。

(3)経済通貨同盟(EMU)

 加盟国間の外国為替相場の変動率を一定の幅に抑えるため1979年より実施されていた欧州通貨制度(EMS)をさらに一歩進め、各通貨間の相場の固定と単一通貨の導入を行ったもの。欧州連合条約に盛り込まれた手続に従い、1994年に後の欧州中央銀行(ECB)の前身である欧州通貨機構(EMI)を設立、各国の経済・財政政策の収斂を図り、物価の変動率や財政赤字のGDPに対する比率等に関する基準を満たした11か国が1999年1月1日より単一通貨ユーロを導入した。ユーロ貨幣の流通が開始されたのは2002年1月1日。2001年1月にギリシャ、2007年1月にスロベニア、2008年1月にマルタ、キプロス、2009年1月にスロバキア、2011年1月にエストニア、2014年1月にラトビア、2015年1月からリトアニア、2023年1月からクロアチアがユーロを導入し、現在、ユーロ圏は20か国。

2 政治統合

 1993年に発効した欧州連合条約(マーストリヒト条約)に将来の防衛分野での協力も視野に入れた共通外交・安全保障政策(CFSP)、加盟国国民に共通の市民としての基本的な権利(地方自治体選挙権等)を認める欧州市民権の導入、司法・内務分野の協力等が盛り込まれた。これに基づき、主要な国際問題に関する共通の行動や、移民、国境管理、テロ・麻薬対策などに関する協力を行っている。特に、1999年のアムステルダム条約発効以降、CFSPが強化され、安全保障分野についても、これまでに文民・軍事両面で30を超える危機管理ミッション(ESDP。ただしリスボン条約の発効によりCSDPに改名)がアフリカ、中東、アジア等に幅広く派遣され、国際社会の平和と安定に貢献している。また、2009年のリスボン条約発効により外務・安全保障政策上級代表ポストが創設された。2010年7月に欧州対外活動庁(EEAS)の設置が決定され、2011年1月に正式発足した。

3 EU拡大

1958年(EC)原加盟国:
ドイツ、フランス、イタリア、ベルギー、オランダ、ルクセンブルク
1973年(EC)第1次拡大:
英国、アイルランド、デンマーク
1981年(EC)第2次拡大:
ギリシャ
1986年(EC)第3次拡大:
スペイン、ポルトガル
1995年(EU)第4次拡大:
オーストリア、スウェーデン、フィンランド
2004年(EU)第5次拡大:
ポーランド、チェコ、ハンガリー、エストニア、ラトビア、リトアニア、マルタ、キプロス、スロバキア、スロベニア
2007年(EU)第6次拡大:
ブルガリア、ルーマニア
2013年(EU)第7次拡大:
クロアチア
2020年1月31日:
英国のEU離脱

4 EUの機構改革

 2004年及び2007年の拡大の結果、加盟国が27か国になったEUをより効率的・機能的にするため、EU関連条約の見直しが行われ、2007年12月に開かれた欧州理事会にて「リスボン条約」が署名され2009年12月1日に発効した。同条約の発効により、常任の欧州理事会議長の任命、EU外務・安全保障政策上級代表の任命、欧州対外活動庁の創設等機構改革及び共通外交・安全保障政策実施体制の強化、欧州議会・各国議会の権限強化等が行われた。

主要機関

1 欧州理事会(政治レベルの最高協議機関)

 EU各国首脳、欧州理事会議長及び欧州委員会委員長により構成(通常年4回開催)。欧州連合の発展に必要な原動力を与え一般的政治指針を策定する。共通外交・安全保障政策の共通戦略を決定。

  • 欧州理事会議長アントニオ・コスタ氏(Dr. António Luís Santos da Costa、元ポルトガル首相)(任期2年半、2024年12月に就任。)

2 EU理事会(決定機関)

 EU各国の閣僚級代表により構成されるEUの主たる決定機関(外務理事会、総務理事会、経済・財政理事会等分野毎に開催される)。外務理事会の議長はカヤ・カッラス(Ms. Kaja Kallas、前エストニア共和国首相)外務・安全保障政策上級代表。それ以外のEU理事会の議長は半年交代の輪番制議長国閣僚(2025年前半ポーランド、2025年後半デンマーク、2026年前半キプロス、2026年後半アイルランド)。

3 欧州委員会(執行機関)

 加盟国の合意に基づき欧州議会の承認を受けた委員で構成(各国1名の計27名、任期5年)。省庁に相当する「総局」に分かれ、政策、法案を提案、EU諸規則の適用を監督、理事会決定等を執行。

  • 欧州委員会委員長 ウァズラ・フォン・デア・ライエン氏(Dr. Ursula von der Leyen、元ドイツ国防相)
  • 上級副委員長 クリーン・公正で競争的な移行担当 テレサ・リベラ氏(Ms. Teresa Ribera、スペイン元副首相)
  • 貿易・経済安全保障、機関間関係・透明性担当欧州委員 マレシュ・シェフチョビチ氏(Mr. Maroš Šefčovič、元スロバキアEU代表部大使、前欧州委員会上級副委員長(欧州グリーンディール・機関間関係・先見性担当))他

4 欧州対外活動庁(執行機関)

 リスボン条約に基づき2011年1月に正式発足した、EU版外務省。欧州対外活動庁採用の職員、欧州委員会、EU理事会事務局、加盟国政府関係者から構成される。

  • 外務・安全保障政策上級代表 カヤ・カッラス氏(欧州委員会副委員長を兼務)

5 欧州議会(諮問・共同決定機関)

 諮問的機関から出発し次第に権限を強化、立法における理事会との共同決定権、EU予算の承認権、新任欧州委員会の一括承認権等を有する。議員定員は720名(2029年6月まで)、比例代表制(定員は各国の人口に配慮し配分、各国国内選挙法に基づき実施)により選出(前回選挙:2024年6月)。

  • 議長 ロベルタ・メッツォラ氏(Ms. Roberta Metsola、マルタ)

6 欧州連合司法裁判所(司法機関)

 EU法の解釈等を行うEUの裁判所。ルクセンブルクに所在。司法裁判所及び一般裁判所で構成される。司法裁判所は各加盟国から1名の裁判官及び11名の法務官、一般裁判所は各加盟国から2名の裁判官から構成される(それぞれ任期6年)。司法裁判所は、一般裁判所の判決等の控訴に加え、先行判決(加盟国の国内裁判所の事件でEU法上の問題が含まれる場合に、EU法の解釈を諮問できる制度)、加盟国によるEU法上の義務の不履行等について管轄権を有する。

7 その他

 欧州中央銀行(本部:フランクフルト)、欧州会計検査院(本部:ルクセンブルク)、経済社会評議会(本部:ブリュッセル)、地域評議会(本部:ブリュッセル)、欧州原子力共同体(本部:ブリュッセル)、欧州投資銀行(本部:ルクセンブルク)、ユーロジャスト(本部:ハーグ)、ユーロポール(本部:ハーグ)、欧州検察庁(本部:ルクセンブルク)、フロンテクス(本部:ワルシャワ)等が存在。

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