エクアドル共和国
エクアドル共和国(Republic of Ecuador)
基礎データ


一般事情
1 面積
25.6万平方キロメートル(本州と九州を合わせた広さ)
2 人口
1,826万人(2023年、IMF)
3 首都
キト
4 民族
欧州系・先住民混血77.5%、先住民7.7%、アフリカ系・アフリカ系との混血4.8%、欧州系2.2%(2022年、国勢調査)
5 言語
スペイン語(他にケチュア語、シュアール語等)
6 宗教
国民の大多数はカトリック教徒
7 略史
年月 | 略史 |
---|---|
1822年 | グラン・コロンビアとして、スペインより独立 |
1830年 | グラン・コロンビアより分離独立 |
1979年 | 民政移管 |
2007年1月 | コレア大統領就任 |
2008年10月 | 新憲法発効 |
2009年4月 | コレア大統領再任 |
2013年5月 | コレア大統領(第二期) |
2017年5月 | モレノ大統領就任 |
2021年5月 | ラッソ大統領就任 |
2023年11月 | ノボア大統領就任 |
政治体制・内政
1 政体
共和制
2 元首
ダニエル・ロイ・ヒルクリスト・ノボア・アシン大統領(2023年11月就任。任期は2025年5月まで。)
3 議会
一院制(任期4年:計137議席)
4 政府
- (1)首相名 首相職無し
- (2)外相名 マリア・ガブリエラ・ソメルフェルド・ロセロ 外務・移民大臣
5 内政
1822年の独立後、クーデターによる政権交代が繰り返され、1979年の民政移管以降は、民主主義体制は維持されてはいるものの、政情不安が継続していた。
かかる国政の混乱及び寡占的な政治経済構造に対する国民の歴史的な不満を背景に、貧困層の多数の支持を得て、コレア大統領が2007年1月に大統領に就任した。コレア大統領は大統領選挙の公約(新憲法制定のための制憲議会の設置等)を、議会に確たる支持基盤を持たない中で積極的に推し進め、2008年10月20日新憲法発効を実現。2009年4月26日に新憲法に基づく総選挙が実施され、コレア大統領が再選した。コレア大統領に対する支持は根強く、2013年2月の選挙でも約57%の得票率で再選を果たし、大統領選と同時期に実施された国会議員選において与党国家同盟党は137議席中100議席を占める大勝を果たした。
2013年5月に発足した第2次コレア政権は、メディアに対する規制の強化や大統領の三選を禁止する規定の改定を含む憲法改正を進めるなど、より強権的な政治運営を進めた。一方で、経済を重視し、産業多角化を目指し、海外投資に対する関心を表明するなど、少しずつ開放経済に向けた改革を進めた。2014年後半からの国際的な原油安とドル高を受けた財政の悪化や輸入規制等の対抗措置により国民生活に影響が出た。大統領による相続税改正法案等の国会への提出を契機として、労働者、先住民等一部の国民の不満が高まり、2015年6月以降全国各地で抗議活動が継続的に発生した。
2017年4月2日、与党モレノ候補(前副大統領)と野党ラッソ候補との間で大統領選挙決選投票が実施され、モレノ候補が51.15%を獲得して、大統領に当選した。また、国会議員選挙では、議会(一院制)の中で国家同盟党(AP)が議席を減らし(100議席から74議席へ)、野党各党が議席を増やした。モレノ政権は、コレア前政権を継承し、社会的再分配や社会資本整備を重要視するも、原油・一次産品価格低迷の中、ドル化経済の貿易収支の悪化への対応、財政の緊縮と建て直し、対外債務の再交渉、産業の多角化と外国投資誘致等の課題に対応し、より自由、かつ開放的な経済を目指した。また、2018年2月4日には汚職対策や憲法改正に関する立場を問う国民投票が実施された。
2021年4月の大統領決選投票にて、ギジェルモ・ラッソ候補がコレア元大統領派である希望のための団結(UNES)のアラウス候補に僅差で勝利し、同年5月に大統領に就任した。
ラッソ大統領は、新型コロナワクチン接種計画を積極的に展開し、当初は高い支持率を維持したが、所得増税等を含む税制改革法成立等が影響し、支持率を落とした。また、少数与党(全議席137議席中12議席)として厳しい国会運営を強いられる中、コロナ禍からの経済回復、2022年6月に起きた先住民族主導の大規模全国デモ及び同団体との交渉、悪化する治安への対応等、政治運営は困難を極めた。2023年5月、野党勢力による大統領弾劾追求の結果、ラッソ大統領は国会を解散し、同年8月に実施されることとなった大統領選挙及び国会議員選挙で国民の信を問うこととなった。
2023年10月、大統領選挙決選投票にて、ダニエル・ノボア候補が左派候補に僅差で勝利し、同年11月にエクアドル史上最年少の大統領として就任した。ノボア政権では国内の治安改善が喫緊の課題となっている。2024年1月8日、犯罪組織リーダーの脱獄を機に国内全土を対象に60日間の非常事態宣言を発令し、翌9日には大統領令にて国内が犯罪組織との武力衝突状態にある旨宣言。国内の治安回復に向け、大型刑務所の建設や国境及び港の取締り強化等を進めている。
外交・国防
1 外交基本方針
モレノ政権は、左派的な外交姿勢から大きく方向転換し、2018年6月末には、約30年ぶりにペンス米国副大統領がエクアドルを訪問する等、米国との関係改善を内外に強く発信した。
2018年6月にバレンシア外務大臣が就任して以降、太平洋同盟への参加表明、米州ボリバル同盟脱退、OECDへの加盟意思の表明、南米諸国連合(UNASUR)脱退等、中道寄りで自由主義的な政策を推進した。
2021年5月に発足したラッソ政権は、標榜する「エクアドルを世界へ、世界をエクアドルへ」の方針の下、積極的な外交活動を展開。2023年1月には安保理非常任理事国入りした他、マルチの枠組みを尊重し、IMF等国際金融機関との関係強化を目指した。
2023年11月に発足したノボア政権は、引き続きマルチの枠組みを尊重し、米国、EU、国際金融機関(IMF等)との関係強化を目指す姿勢を示している。
2 軍事力
- (1)予算 16.70億ドル
- (2)兵役 (1年)
- (3)兵力 39,600人(陸軍24,000人、海軍9,400人、空軍6,200人)
(ミリタリー・バランス2024年版)
経済
1 主要産業
鉱工業(石油)、農業(バナナ、カカオ、コーヒー)、水産業(エビ)
2 GDP
1,187億ドル(2023年、IMF)
3 一人当たりGNI
6,391ドル(2022年、世銀)
4 GDP成長率
1.4%(2023年、IMF)
5 物価上昇率
2.3%(2023年、IMF)
6 貿易額
- (1)輸出 311.3億ドル(2023年、エクアドル中銀)
- (2)輸入 291.3億ドル(2023年、エクアドル中銀)
7 主要貿易品
- (1)輸出 石油、えび、バナナ、鉱物資源、魚介加工品(缶詰)、カカオ、生花
- (2)輸入 石油製品、自動車、医薬品、大豆搾油残渣
8 主要貿易相手国
- (1)輸出 米国、中国、パナマ、チリ、ペルー
- (2)輸入 米国、中国、パナマ、コロンビア、ペルー
9 通貨
米ドル(2000年3月より)
10 近年の経済政策
エクアドル経済の特徴として、2000年に自国通貨であるスクレを廃止し、米ドルを法定通貨として採用したこと、及び原油が輸出の約5割を占め、バナナ、カカオ、コーヒー、水産加工品(主にエビ)、生花等の一次産品が残りのほとんどを占めることがあげられる。
2007年1月から2017年5月まで政権を運営したコレア大統領は、「大きな政府」を志向し、社会政策の拡充のほか、規制強化、保護貿易化等を進めた。また、コレア大統領は、2008年10月に大統領の権限強化、石油を含む天然資源の政府管理の強化等を定める憲法改正を達成後、国際原油価格の高騰を背景に外資系石油企業との契約を強制的に変更することで政府の歳入を増加させ、その財源を社会政策や公共投資に向けるポピュリズム的政策により支持率を維持した。これにより、貧困指数や失業率は改善されたものの、公的債務は増加した。対外的には、対米自由貿易協定(FTA)交渉を打ち切るなど自由貿易に反対の立場を明確にし、国内産業を優先する保護主義政策を採用した。第二次コレア政権では、エクアドルの持続的な経済開発のため、貿易省を設立し、EUとのFTA交渉を再開し2014年12月に合意に達するなど、それ以前と比べて経済を開放するための諸政策を進めた。他方で、2014年後半からの国際的な原油安とドル高を受け、自動車の輸入総量規制の強化・延長、幅広い輸入品に対する関税の引き上げ等の輸入規制措置を実施した。
2017年5月に就任したモレノ大統領は、同政権発足以降、より自由で開放的な経済を目指し、経済改革に注力した。2018年3月、経済構造の再構築、外国投資誘致や諸外国との貿易投資促進を課題として取り組んだ。またIMF、アンデス開発公社(CAF)、米州開発銀行(IDB)、ラ米準備基金(FLAR)及び世銀が、今後3年にわたり、総額102億ドルの融資をエクアドル政府に行うことが発表された。
2021年5月に就任したラッソ大統領は、IMFやIDB等の国際金融機関との連携について積極的な姿勢を示すとともに、自由貿易の促進と海外からの投資誘致を通してエクアドル経済の立て直し及び経済活性化を目指し、同年12月にはCPTPPに正式に加入申請を行った。
2023年11月に就任したノボア大統領は、ラッソ前政権の開放的な経済政策を踏襲しつつ、外国投資の誘致や中小企業の支援を通じた雇用創出を重視する姿勢を見せている。
経済協力
1 日本の援助実績(単位:億円)
- (1)有償資金協力(2021年度まで) 714.16
- (2)無償資金協力(2021年度まで) 386.43
- (3)技術協力実績(2021年度まで) 287.75
2 主要援助国(2020年)(単位:百万ドル、OECD/DAC)
- (1)フランス(142.44)
- (2)米国(58.80)
- (3)ドイツ(34.41)
二国間関係
1 政治関係
- 1918年8月26日、外交関係開設。
- 1954年9月30日、外交関係再開。
2 経済関係
- (1)対日貿易(日本財務省貿易統計)
-
- (ア)貿易額(2023年)
- 輸出 1,766億円
- 輸入 783億円
- (2)主要品目
- 輸出 原油、冷凍野菜、えび、バナナ、カカオ等
- 輸入 自動車(乗用車、バス・トラック等)、鉄鋼、軽油、一般機械(原動機、クレーン、建設用・鉱山用機械等、電気機器、タイヤ等
- (3)日本からの直接投資(2022~2023年度累計、エクアドル中銀)
- 121.6万ドル
3 在留邦人数
289人(2023年 外務省海外在留邦人数調査統計)
4 在日当該国人数
275人(2023年6月 法務省在留外国人統計)
5 要人往来
年月 | 要人名 |
---|---|
1979年8月 | 安孫子藤吉特派大使(大統領就任式) |
1984年8月 | 武藤嘉文特派大使(大統領就任式) |
1984年 | 北川外務政務次官 |
1988年8月 | 愛野興一郎特派大使(大統領就任式) |
1988年 | 武藤嘉文衆議院議員(日・エクアドル友好議連会長) |
1991年8月 | 武藤嘉文衆議院議員(日・エクアドル友好議連会長) |
1992年8月 | 中山正暉特派大使(大統領就任式) |
1993年11月 | 常陸宮同妃両殿下 |
1996年8月 | 野坂浩賢特派大使(大統領就任式) |
1998年8月 | 成瀬守重特派大使(大統領就任式) |
1998年11月 | 町村外務政務次官 |
2001年6月 | 石原都知事 |
2002年8月 | 植竹外務副大臣 |
2003年1月 | 村上誠一郎特派大使(大統領就任式) |
2006年7月 | 山中外務大臣政務官 |
2007年1月 | 浅野外務副大臣(大統領就任式) |
2008年11月 | 西村外務大臣政務官 |
2010年3月 | 内藤総務副大臣(総理特使) |
2011年1月 | 衆議院エクアドル訪問議員団(麻生元総理他) |
2012年8月 | 山根外務副大臣 |
2013年3月 | 上杉光弘衆議院議員他(第128回IPU会議) |
2013年5月 | 若林外務大臣政務官(大統領就任式) |
2014年4月 | 上川総務副大臣 |
2014年5月 | 亀岡内閣府政務官 |
2015年1月 | 参議院公式派遣団(中曽根元外相他)(アジア太平洋議員フォーラム) |
2016年12月 | 武井外務大臣政務官 |
2017年5月 | 西村康稔特派大使(大統領就任式) |
2018年1月 | 佐藤外務副大臣 |
2018年7月 | 野中農水政務官 |
2018年8月 | 河野外務大臣 |
2021年7月 | 宇都外務副大臣 |
2023年1月 | 林外務大臣 |
年月 | 要人名 |
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1985年 | スウェット蔵相 |
1987年7月 | エスピノサ・エネルギー鉱山相 |
1987年11月 | ガルシア外相 |
1989年2月 | バラガン最高裁長官(大喪の礼) |
1990年5月 | コルドベス外相(外務省賓客) |
1990年11月 | パロディ副大統領(即位の礼) |
1991年3月 | ベテル蔵相 |
1991年12月 | ドゥラン・バジェン大統領候補 |
1993年8月 | パレデス外相(外務省賓客) |
1994年3月 | ドゥラン・バジェン大統領(公式実務訪問賓客) |
1994年6月 | ロバリノ蔵相 |
1994年12月 | コレア蔵相 |
1995年5月 | レオロ外相(日・リオグループ・トロイカ外相会合) |
1995年11月 | アルミホス通貨審議会議長 |
1998年12月 | ドゥラン大統領府官房長官 |
1999年3月 | アヤラ外相(外務省賓客) |
2001年9月 | バスケス観光相(世界観光機関総会) |
2002年3月 | ノボア大統領(非公式) |
2002年6月 | モス貿易・工業化・漁業・競争力相 |
2008年8月 | バレンシア筆頭外務次官 |
2010年8月 | カラオラーノ電力・再生エネルギー相 グラス戦略部門調整相 |
2010年9月 | コレア大統領(実務訪問賓客)、パティーニョ外務・貿易・統合相他 |
2010年10月 | アギニャーガ環境相(生物多様性条約COP10) |
2011年9月 | モレノ副大統領 |
2012年4月 | エクアドル・日友好議員グループ(ダビラ会長他) |
2013年10月 | タピア環境相(水銀条約会合) |
2014年3月 | ポベダ戦略部門調整相、アルボノス電力・再生エネルギー相 |
2014年11月 | リバデネイラ貿易相 |
2016年9月 | イェペス外務副大臣 |
2017年11月 | オクレス危機管理庁長官 |
2017年12月 | カンパナ貿易相 |
2018年3月 | レオン通信情報社会相 |
2018年9月 | モレノ大統領、バレンシア外相他 |
2018年11月 | エクアドル・日友好議員グループ(サンチェス会長他) |
2019年10月 | バレンシア外務大臣(即位の礼) |
2021年7月 | パラシオス・スポーツ大臣(東京オリンピック競技大会) |
6 二国間条約・取極
- 1990年 青年海外協力隊派遣取極
- 1992年 技術協力協定(1994年10月発効)
- 2019年 租税条約(同年12月発効)