19日,インドネシア・バリにおいて,第6回東アジア首脳会議(EAS)が開催されたところ,概要以下のとおり(議長:ユドヨノ・インドネシア大統領,我が国から野田総理出席)。
1.EASのレビューと将来の方向性
(1)総論
野田総理より,EASへの米露の初参加を歓迎した上で,EASをこれまでの実務分野の協力に加え,政治・安全保障分野の取組の強化を通じて地域の共通理念や基本的なルールを確認し,具体的協力につなげる首脳主導のフォーラムとして発展させたい旨を発言。他の参加国からも同様に米露のEAS参加を歓迎し,今後政治・安全保障分野の協力を強化していくべきである旨の発言があった。
(2)海洋
野田総理より,海洋はアジア太平洋地域を連結する公共財であり,紛争の平和的解決,航行の自由,国連海洋法条約を含む国際法の遵守といった海洋に関する基本的なルールの重要性については参加国の間で共有されているものと理解している旨発言。
会議後に発出された「互恵関係に向けた原則に関するEAS首脳宣言」(仮訳)(英文(PDF))では,前文で国際法における確立された原則へのコミットメントが再確認されると共に海洋に関する国際法が地域の平和と安定の維持のために必須の規範を含むとの認識が確認され,今後EASが依拠すべき原則として国際法の尊重及び紛争と相違の 平和的解決が明記された。
また,野田総理より,海洋における協力のあり方について政府関係者と民間有識者が参加して幅広く自由に意見交換できる場を設けることが重要である旨を指摘。他の参加国からも野田総理の提案を支持するとの発言があり,また,その他の国からも反対の意見は出されなかった。
一部の国から,南シナ海の領有権問題については国際法に従って平和的に解決されることが重要であるとの発言があった他,7月の中ASEAN外相会議の際に南シナ海に関する行動宣言(DOC)のガイドラインに合意されたことを歓迎し,今後法的拘束力のある行動規範(COC)が策定されることへの期待が表明された。
(3)防災協力
野田総理より,東日本大震災の経験と教訓を共有し,より災害に強い地域の構築に貢献したい旨述べた上で,来年日本で大規模自然災害に関する国際会議を開催するとの提案に加え,2015年に予定の第3回国連防災世界会議を我が国で開催する意向を表明した。また,防災協力強化のためのインドネシアと豪州の共同提案が提示され,各国から歓迎された。多くの国から,この地域は自然災害が多く発生する地域であり,災害予防や緊急援助等の体制構築についてEASでしっかりと議論していく必要がある旨の発言があった。
(4)軍縮・不拡散
野田総理より,東アジアの軍縮・不拡散体制の強化が重要であり,拡散に対する安全保障構想(PSI)未参加国の参加を期待する旨発言。また多くの国からも不拡散体制の強化の必要性が強調された。
(5)民主的価値の共有
野田総理より,民主的価値を共有するため,バリ民主主義フォーラムを十分に活用していくことは有意義である旨を発言。この関連でミャンマーの民主化及び国民和解に向けた一連の前向きな動きを評価すると共に,ミャンマーが引き続き国際社会との対話を強化することを期待する,国際社会としても,ミャンマーの 民主化及び国民和解に向けた取組を支援することが重要である旨述べた。
(6)連結性
野田総理より,ASEAN域外国を含む東アジア全体の連結性強化が重要であり,アジア総合開発計画も活用しつつ,取組を進めるべきである旨発言。会議後には「ASEAN連結性に関するEAS首脳宣言」(仮訳)(英文(PDF))が発出された。
(7)経済・貿易
野田総理より,東アジア自由貿易圏構想(EAFTA)及び東アジア包括的経済連携構想(CEPEA)の双方について,新たな作業部会を早期に設置し,東アジアでの貿易投資の自由化に向けた検討を加速させたい旨述べた。
(8)低炭素成長
野田総理より,「東アジア低炭素成長パートナーシップ構想」等の推進により,低炭素成長モデルの構築を図りたい,本構想の下,明年4月に東京で国際会議を開催したく,各国の賛同を得たい旨発言。豪州からも日本の提案を支持する発言があった。
(9)その他
野田総理より,エネルギー,青少年交流,教育,科学技術分野における協力の重要性を指摘し,我が国として積極的に対応する旨発言。特に青少年交流につい ては,東日本大震災を受け,新たに2013年3月末までに,北米も含め約10,000人規模の青少年交流の実施を検討している旨発言。
また,多くの国から現在の世界経済情勢が欧州の金融危機を契機として不安定になっていることに対する懸念が表明され,かかる状況の中でアジア太平洋地域の成長がより重要性を増している旨の発言があった。
2.地域・国際情勢
(1)北朝鮮情勢
野田総理より,北朝鮮の核・ミサイル開発は現実の脅威であり,ウラン濃縮活動の即時停止を含め,安保理決議に規定された核放棄を北朝鮮に強く迫る必要がある,最近の南北対話・米朝対話を歓迎するが,非核化等に向けた具体的行動は見られておらず,引き続き北朝鮮の決断を強く求めていくことが六者会合による取組が進展を生むために極めて重要である旨発言。また,野田総理より,拉致問題を含む北朝鮮の人権状況を引き続き強く懸念しており,北朝鮮人権状況決議を 重視している旨及び拉致問題の解決に向け各国の協力を得たい旨を述べた。